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番外編【やきもち編】
前編
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※本編完結前の時間軸です。
【笑顔の理由】の前に挿し込みたかったんですが、忘れていました。すみません。
海さんの車で走ること一時間。
久々に。真城へ遊びにやってきました。
といっても、遊び目的で来たのは僕だけで、海さんは龍一様といつものお仕事のお話をするためだから、真城へ着いたら別れちゃうんだけどね。
この日を楽しみにしていた僕は、もう車の中でニコニコしっぱなし。その度に、隣で運転している海さんに苦笑されながら、ほっぺを抓られてるんだけど。いひゃい。
「嬉しいのはわかりますが、約束はちゃんと覚えていますね?」
「ふん。ほほえへいりゅよ」
みょんっと、戻される僕のほっぺ。良かった。ちゃんと喋られるぞ。僕は抓られていた方のほっぺを擦りながら、昨日交わした海さんとの約束を口にする。
「向こうに着いたら、誰かれ構わず笑わないこと。海さん以外の男の人に、気を許しちゃいけないこと。海さん以外の人に遊ばれないこと。あとこれ絶対。浮気をしないこと」
だよね? と、海さんを見ると、「そうです」と頷いた。
海さんが何度も何度も呪文のように繰り返すもんだからスラスラっと言えちゃうお約束事だけど……。海さんってば心配性だなぁって思う。僕は海さんの奥さまなんだし、結婚した当初よりは自覚もしっかりあるつもりなんだよ。ガードだって固くなったんだし。それにそれに、僕は絶対に浮気なんてしないんだから。もうちょっと奥さまを信用して欲しいなって思っちゃう。
僕にしてみれば、どこ行ってもモテモテの海さんこそ、気をつけてもらいたいもんだよ。ついこの前だって、女の子にモテモテだったし。一昨日だって。昨日だって!
……って、あれ? 僕よりも海さんの方が守らなくちゃいけないんじゃないの? むかむか。
「柳。いつまで車にいるつもりですか? 着きましたよ」
「へ?」
いつの間にか。車は真城の敷地内にある駐車場へと着いていました。うぅ。考え過ぎると周りが見えなくなっちゃうこの癖、なんとかしたい……。
と、思いつつも、シートベルトを外して上着を羽織り、いそいそと助手席から降りる僕。
「手土産も持ちましたね?」
「うん!」
両手でしっかりと、龍一様御用達の和菓子屋さん、「福ふく」の大福を持って、僕達は真城のインターフォンを押した。
出迎えてくれたのは、真城のお兄さんたち。久しぶりに会ったけど、お兄さんたちは僕のことを覚えてくれていた。なぜか、隣にいる海さんを見て声が裏返っていたけれど。どうしたのかな?
そして、メインの龍一様と一緒に出てきてくれたのが。
「おっ。柳ちゃん! 久しぶりだなぁ!」
「遠藤さん! こんにちはっ」
遠藤宗治郎さん。この真城で龍一様の右腕? として務めている、お兄さんたちの直属の上司のおじさんだった。真城に居た時、龍一様も僕のことを可愛がってくれてたけど、その次くらいに可愛がってくれたのが、この遠藤さんだった。僕も憧れちゃうような大きくて厳つい身体を持っているのに、可愛い物が好きだったり、甘い物が好きだったりと、僕と気が合う面白い人なんだよ。顔は怖いけど。
手土産を持ったまま、僕は遠藤さんに挨拶をすると、遠藤さんはその大きな手で僕の頭を鷲掴むように撫でてくれた。
「ははっ。しばらく見ないうちにすっかり大きくなったりとかしてないなぁ! うん。変わってなくて安心したわ!」
「ホント? えへへ~! ……え?」
あれ? 褒められてない?
「ほれ。高い高~い!」
「わああっ!? 遠藤さんっ!?」
首を傾げたと同時に、僕の身体はひょいっと、遠藤さんによって抱きあげられる。頭のてっぺんが高い天井まで届くほど抱きあげられて、まるで幼稚園児のように扱われることに、僕は大きな声を出した。
「お、下ろして! 下ろして遠藤さん~!」
「体重も変わらないな~! ちゃんと食べてるか?」
「食べてるよっ! 食べてるもん!」
あまりに軽々と持ち上げられるもんだから、僕は抗議しつつジタバタと足をバタつかせた。わかった、わかったと。ようやく下ろされると、あやされるように頭にポンと手を乗せられる。
「む~!」
「そう怒るなよ。可愛いなぁ、柳ちゃんは」
「遠藤さん!」
お土産の大福を、手提げ袋ごとぶんぶんと振りまわすと、「俺の大福!」と、龍一様に止められました。だって! だって遠藤さんが!
「柳」
「あ、海さんっ」
おっと、いけない、いけない。海さんを置いてけぼりにしちゃってた。ちゃんと紹介しないとね。
首を横にブンブンと振って気持ちを切り替えた僕は、海さんに向かって遠藤さんを紹介した。
「こちらは遠藤さん。真城でずっと龍一様と一緒にお仕事している人で、僕もお世話になった人だよ。それから……」
今度は遠藤さんに向かって、海さんを紹介する。
「遠藤さん。こちらは僕の旦那さまの海さんです」
シンプルだけど、事情はわかっているはずだから、紹介はこれでいいと思うんだ。すると、やっぱりと言うべきか。
「ああ、知ってるよ……どうも。ご無沙汰しております」
「ええ。お久しぶりです」
と、二人は互いに挨拶を済ませた。二人とも背が高いもんだから、迫力あるよね~。でもなんでかな。さっきまで和やかな感じだったのに、なぜか冷たい風みたいなのが流れてくるんだけど。おかしいな。
くるりと周りを見渡すと、これまたなぜか、他のお兄さんたちの顔がものすご~く強張っていた。汗が噴き出している人もいるし……大丈夫?
お兄さんたちの心配をすると、龍一様が傍で「やれやれ」と、事態をわかっているようなため息をついた。
しかし、いつまでも玄関で油を売っているわけにもいかないので。
「じゃあ、俺らは向こうで茶でもしばいてるか」
「うんっ。じゃあね、海さん。また後でね」
「ええ」
僕は海さんと別れ、遠藤さんと一緒に、別のお部屋に行くことになった。
【笑顔の理由】の前に挿し込みたかったんですが、忘れていました。すみません。
海さんの車で走ること一時間。
久々に。真城へ遊びにやってきました。
といっても、遊び目的で来たのは僕だけで、海さんは龍一様といつものお仕事のお話をするためだから、真城へ着いたら別れちゃうんだけどね。
この日を楽しみにしていた僕は、もう車の中でニコニコしっぱなし。その度に、隣で運転している海さんに苦笑されながら、ほっぺを抓られてるんだけど。いひゃい。
「嬉しいのはわかりますが、約束はちゃんと覚えていますね?」
「ふん。ほほえへいりゅよ」
みょんっと、戻される僕のほっぺ。良かった。ちゃんと喋られるぞ。僕は抓られていた方のほっぺを擦りながら、昨日交わした海さんとの約束を口にする。
「向こうに着いたら、誰かれ構わず笑わないこと。海さん以外の男の人に、気を許しちゃいけないこと。海さん以外の人に遊ばれないこと。あとこれ絶対。浮気をしないこと」
だよね? と、海さんを見ると、「そうです」と頷いた。
海さんが何度も何度も呪文のように繰り返すもんだからスラスラっと言えちゃうお約束事だけど……。海さんってば心配性だなぁって思う。僕は海さんの奥さまなんだし、結婚した当初よりは自覚もしっかりあるつもりなんだよ。ガードだって固くなったんだし。それにそれに、僕は絶対に浮気なんてしないんだから。もうちょっと奥さまを信用して欲しいなって思っちゃう。
僕にしてみれば、どこ行ってもモテモテの海さんこそ、気をつけてもらいたいもんだよ。ついこの前だって、女の子にモテモテだったし。一昨日だって。昨日だって!
……って、あれ? 僕よりも海さんの方が守らなくちゃいけないんじゃないの? むかむか。
「柳。いつまで車にいるつもりですか? 着きましたよ」
「へ?」
いつの間にか。車は真城の敷地内にある駐車場へと着いていました。うぅ。考え過ぎると周りが見えなくなっちゃうこの癖、なんとかしたい……。
と、思いつつも、シートベルトを外して上着を羽織り、いそいそと助手席から降りる僕。
「手土産も持ちましたね?」
「うん!」
両手でしっかりと、龍一様御用達の和菓子屋さん、「福ふく」の大福を持って、僕達は真城のインターフォンを押した。
出迎えてくれたのは、真城のお兄さんたち。久しぶりに会ったけど、お兄さんたちは僕のことを覚えてくれていた。なぜか、隣にいる海さんを見て声が裏返っていたけれど。どうしたのかな?
そして、メインの龍一様と一緒に出てきてくれたのが。
「おっ。柳ちゃん! 久しぶりだなぁ!」
「遠藤さん! こんにちはっ」
遠藤宗治郎さん。この真城で龍一様の右腕? として務めている、お兄さんたちの直属の上司のおじさんだった。真城に居た時、龍一様も僕のことを可愛がってくれてたけど、その次くらいに可愛がってくれたのが、この遠藤さんだった。僕も憧れちゃうような大きくて厳つい身体を持っているのに、可愛い物が好きだったり、甘い物が好きだったりと、僕と気が合う面白い人なんだよ。顔は怖いけど。
手土産を持ったまま、僕は遠藤さんに挨拶をすると、遠藤さんはその大きな手で僕の頭を鷲掴むように撫でてくれた。
「ははっ。しばらく見ないうちにすっかり大きくなったりとかしてないなぁ! うん。変わってなくて安心したわ!」
「ホント? えへへ~! ……え?」
あれ? 褒められてない?
「ほれ。高い高~い!」
「わああっ!? 遠藤さんっ!?」
首を傾げたと同時に、僕の身体はひょいっと、遠藤さんによって抱きあげられる。頭のてっぺんが高い天井まで届くほど抱きあげられて、まるで幼稚園児のように扱われることに、僕は大きな声を出した。
「お、下ろして! 下ろして遠藤さん~!」
「体重も変わらないな~! ちゃんと食べてるか?」
「食べてるよっ! 食べてるもん!」
あまりに軽々と持ち上げられるもんだから、僕は抗議しつつジタバタと足をバタつかせた。わかった、わかったと。ようやく下ろされると、あやされるように頭にポンと手を乗せられる。
「む~!」
「そう怒るなよ。可愛いなぁ、柳ちゃんは」
「遠藤さん!」
お土産の大福を、手提げ袋ごとぶんぶんと振りまわすと、「俺の大福!」と、龍一様に止められました。だって! だって遠藤さんが!
「柳」
「あ、海さんっ」
おっと、いけない、いけない。海さんを置いてけぼりにしちゃってた。ちゃんと紹介しないとね。
首を横にブンブンと振って気持ちを切り替えた僕は、海さんに向かって遠藤さんを紹介した。
「こちらは遠藤さん。真城でずっと龍一様と一緒にお仕事している人で、僕もお世話になった人だよ。それから……」
今度は遠藤さんに向かって、海さんを紹介する。
「遠藤さん。こちらは僕の旦那さまの海さんです」
シンプルだけど、事情はわかっているはずだから、紹介はこれでいいと思うんだ。すると、やっぱりと言うべきか。
「ああ、知ってるよ……どうも。ご無沙汰しております」
「ええ。お久しぶりです」
と、二人は互いに挨拶を済ませた。二人とも背が高いもんだから、迫力あるよね~。でもなんでかな。さっきまで和やかな感じだったのに、なぜか冷たい風みたいなのが流れてくるんだけど。おかしいな。
くるりと周りを見渡すと、これまたなぜか、他のお兄さんたちの顔がものすご~く強張っていた。汗が噴き出している人もいるし……大丈夫?
お兄さんたちの心配をすると、龍一様が傍で「やれやれ」と、事態をわかっているようなため息をついた。
しかし、いつまでも玄関で油を売っているわけにもいかないので。
「じゃあ、俺らは向こうで茶でもしばいてるか」
「うんっ。じゃあね、海さん。また後でね」
「ええ」
僕は海さんと別れ、遠藤さんと一緒に、別のお部屋に行くことになった。
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