攻略なんてしませんから!

梛桜

文字の大きさ
36 / 71
試験開始です。

観戦はお静かに。

しおりを挟む


  観戦用の入り口は一見普通の大きな扉なのですが、魔法の暴発が起きても外には被害が出ないように、魔法防御の術が掛かっています。魔法攻撃の練習もしますので、会場全体に防御の魔法がしっかりと何重にも掛かっているのは、流石王国屈指の学園です。
 前世でいう体育館ほどの大きさの会場と、二階に上がれる階段があり、其処から試合を観戦出来るように普段は椅子などが置いてありますが、今は人数が人数ですので避けられています。

 (だけど、忘れてましたわねぇ…。ルチルのチームメンバーが攻略対象者を集めたチームだというのを)

  二階席に上がった途端、増える女生徒の数。いや、これ、本当にどっから増殖したよ?私達の試合の時は全然だったよね?制服から見るに、魔法特進科と貴族科と普通科。騎士科も一応ちらほら居ますが、圧倒的なのはやはり関係の無い女生徒です。たまに戦術データを取るための子も居ますが。

「あれ?ギベオン様、人型になっていないんですね?」
「本当ね、でもこのギベオンの方が可愛いですわ。尻尾のもふもふ具合が良く解って最高ですし」

 ニコニコとギベオンに目をやる私に、アズラとセレナは拗ねた顔をしてます。アイクお兄様は肩を震わせて笑うのを堪えていますが、マーカサイト様は相変わらずですね。とにこやかな微笑みをくれました。モフモフ好きはいつでも全力ですとも。

「ルチルレイ嬢の聖獣様なら、何度か人型になられましたが、その後から観覧希望者が殺到した様で…。相手方からの苦情もあり、人型を控えているそうです」
「全力を出せないのは不利ですわね、その辺りはどうなってますの?」
「もともと、ラズーラ殿下の炎魔法とジャスパーの剣技で敵無しですから」

(ここにも居たな、チートを手に入れた攻略対象者が)

 魔力を練りこんだお菓子を食べていたのは、何も我が家の兄弟達だけではありません。ラズーラ殿下はリィ様から、ジャスパー様はアイクお兄様やマーカサイト様から頂いていたようで。火属性が炎に特化したのがラズーラ殿下、剣技をより強くしたのがジャスパー様です。

「ラズ殿下は兎も角、ジャスパーは只の剣術馬鹿なんだけどね」
「アイクお兄様…」

 (アイクお兄様は、時たまジャスパー様にとても厳しいです。普段はとても仲良しですよ、ラズーラ殿下を補佐する面では本当に息ぴったりですし、長年の付き合いもありますから家族よりも地を見せている気がします)

 それにしても……。
 オブシディアンと違って、ギベオンは昼間でも自由に人型になれる魔力を持っています。当然夜の方が力は増しますし、ギベオンの世界である闇の中へと入れば無敵です。でも、どこに居てもどんな姿でも差無く力を使えてこそ真の聖獣だと、オブシディアンに教えを説いているギベオンです。狼の姿でもきっと大丈夫でしょう。

 (でも、人型になったからって観戦者が殺到するとかって、解せぬ。あの魅惑のモフモフの方がいいでしょう!?求む激しく同意!)

「ラズ殿下とリィ殿下だけなら、こっそりの方がいいかと思ったんだけどね」
「アイクお兄様甘いですわ、リィ様は平民の女性の中でも大人気でしてよ。それに、マウシット様も入ってますから、普通科の女生徒も沢山居ますわね」
「マウシット様は、試合には出ないのですけどね…」
「アズラ、そこはしーっよ。言っちゃ駄目」

 ルチルのチームは守護聖獣のギベオンに、ラズ様リィ様ジャスパー様、参謀としてマウシット様が参加しているので、貴族科の生徒が殺到するのは仕方無いです。王族に宰相を務める上位貴族の子息、そして王族の覚えも目出度い騎士様です。
 二階席が一杯なのも納得なのですが、私、アイクお兄様とアズラが一緒で本当に良かった!この観客数だったら入り口で挫けてますもの!

「あの、僕が獣化しようか?少しは隙間出来るかも」
「うん、駄目。それだと、こっそりにならないよアズライト」
「あ、そうか…」

 アズラの提案をマーカサイト様があっさりと却下してましたが、此処でアズラが獣化したら目立つよりも阿鼻叫喚再びですよ。混乱必死、駄目絶対。にっこり笑って駄目出ししたマーカサイト様、アズラには昔から強い。


「其処の平民、席を空けなさい!」


 只でさえぎゅうぎゅうの観覧席なのに、聞こえてきたのは空気を読まない偉そうな声。ざわざわと驚きの声が広がっていきます。まぁ有るとは思っていましたが、こんな場所でやる必要なくないですか?見たいなら最初から席を取っておきなさいよって話です。

「え、で、でも…。私今日はずっと此処で場所をとってて」
「平民が煩いのよ、此方の方は侯爵家の御令嬢様なのよ!?」
「そうよそうよ!」
「ですけど、次は友達の応援もありますし」
「私は、席を空けなさいと言っているのよ。私は貴方と違って、王子様の婚約者にもなる身分ですのよ」

 騒ぎの元へと野次馬よろしく顔を出してみると、気の弱そうな普通科の女生徒が絡まれています。相手は命令するのに慣れた貴族科の令嬢のようですね。というか、侯爵だって?どこの家の馬鹿ですか。
  聞こえて来る話は、女生徒は次のルチル達の対戦相手の友達のようです。そりゃ全力で応援したいですよね。普通科の生徒って事は騎士科か魔法特進科にいらっしゃる生徒のお友達でしょうし、対戦相手はまだ見ていませんが、もしかしたら恋人かもしれないじゃないですか。

 「アイクお兄様、どなたか見えまして?」
 「ああ、デマント侯爵家の御令嬢だよ。末の令嬢だね」

 アイクお兄様に誰か確認して貰うと、この方のお姉様がラズ様の婚約者候補として名前が上がっている方でした。デマント侯爵家は王家の財政を管理している家ですが、最近きな臭いとラズーラ殿下が言っていたのを覚えています。
 まぁ、家柄で候補とか勝手に言ってるんだろうけど、残念ながらラズーラ殿下は家柄だけでは見向きもなさいませんし、そもそも候補はお姉様の方ですからね。大事なことですから何度でも言います。

(貴女は候補にすらなりません、デマンド家の末娘の成績は最下位から数えたほうが速い)

「私が行きますわ、セレナをお願い致します」
「アリア、僕が共を。こんなに人が多いと潰されちゃうから」
「ありがとう、お願いするわアズラ」

 生徒の視線が集中している場所へは、確かに行くだけでも大変です。アズラに守って貰いつつ、向かっていくので骨が折れます。此処までよく歩いたわねあの方。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

処理中です...