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上位試験開始
試合の後は。
しおりを挟む『優勝はラズーラチーム』
風魔法により、騎士科・魔法特進科合同試合の結果が学園中に流されていく。その声を聞き泣き疲れた瞳を擦っていると、優しく微笑みを浮かべるアイクお兄様と目があった。
「もう『夢幻術』は解けたようだね」
「はい、ご心配おかけしました」
「がう」
「「うにゃあ」」
獣化して一緒に泣き止むまで癒してくれたアズラも、ずっと側でスリスリと小さな体を摺り寄せてくれていたハウライトとオブシディアンにもお礼を言って微笑みかけた。私得なモフモフ天国ですが、このままこうしているわけにもいかないのが哀しいところです。
試験結果を先生につけて貰わないと、折角の準優勝が勿体無いですからね。
「アメーリア姉様、もう大丈夫ですか?」
「マーカサイト様も、ご心配をおかけしましたわ。一緒に参加してくださってありがとございます」
「元から、回復要員として控えるように言われてましたから」
優しい笑みを浮かべるマーカサイト様と笑みを交わし、救護室から移動しました。
(ルチルも考えましたわね、私だけを『夢幻術』にかけるなんて)
腕にはオブシディアンも抱いていたのに、術をうけたのは私だけでした。ギベオンの闇魔法の操作能力にも脱帽ですわね。
「残念ですわ…」
「もうちょっとだったのに、惜しかったねアリア。でも次の年にはセレナも居るから、優勝狙え…」
「どうせ同じ術をかけるなら、私もモフモフ天国のほうが良かった」
私の言葉を試合に対しての言葉と思っていたアズラが、がっくりと項垂れました。ええ、顔文字でも表現できます、あのがっくりです。肩だけじゃすまなかったようですね。気を取り直してゆっくり立ち上がると、アズラの瞳がうるうると涙目です。なんて可愛い。
「だーかーら!僕いるよね!?ハウライト様だってオブシディアン様だってモフモフ出来るよね!?」
「其れとコレとは別モフですわ!」
「何、別モフって」
「あの大型獣のふわふわの毛並み、手だけではなく身体までふっかりと沈み込むあの感触。心地の良い最上級の毛布に包まれているかの様な幸せ感に、気持ちのいい肉球!大型の獣をモフモフ出来る機会なんてそうそうありませんのよ!」
「何で其処で力説できるの!?」
何故か漫才を始めてしまった私とアズラに、アイクお兄様がお腹を抱えて笑っています。又アイクお兄様のツボを押してしまったようですわ。アイクお兄様は一度笑うと結構長いのです。
「マーカサイト様、ジャスパー様の回復はどうなりました?アイクお兄様が氷魔法を使ってましたので、少し気になってしまって…」
「回復魔法をかけたので大丈夫ですよ、ジャスパーもラズーラ殿下の火魔法で温まっていたようです」
「何だ、氷の城壁はまだまだ平気だったんだ」
「試験ではやり過ぎですよ、アイドクレーズ兄様」
楽しそうに話をしながら廊下を歩いていると、反対方向から走ってくるふわふわ揺れる金色の髪。私の顔を見た瞬間輝くような笑顔になり、甘く蕩けていくアメジストゴールドの瞳。
「アリア!」
「リィ様、優勝おめでとうございます」
「もう大丈夫?どこも痛いとかない?」
「はい、大丈夫ですわ」
にっこりと笑みを浮かべて返事をすると、ぎゅっと抱き締められる腕の力に瞳を瞬いた。走って来たせいで温かい身体と、ふわりと香ってくる花の匂い。私が無事だと確かめる為に、苦しいくらいに抱き締められるけど、痛くはない。
「リィ様…」
「僕が、僕の光魔法が弱いから…」
微かに震えるリィ様の身体をぎゅっと抱き締め、背中をそっと撫でると、不安に揺れたリィ様の瞳がじっと私を見つめてくる。今にも泣きそうなその顔、滅茶苦茶母性本能刺激されて困るんですけど!可愛いんだよ!シリアスぶっ壊してごめんなさいね!?
「リィ様、試験中に敵を助けてはいけませんわ。私達だって、ジャスパー様に遠慮の無い攻撃をいたしましたもの」
「でも、アリアをあんなに泣かせるのは駄目」
「実力を見る試験です、ルチルレイ様とギベオンは自分の力を使ったのです。アイクお兄様も、私も使いましたわ」
(ええ、特にアイクお兄様が。水でいいのに氷にしましたもの。物理的にかなり痛かっただろうな)
結構泣いていたようなので、初めてみたリィ様はかなり吃驚したんでしょうね。私は前世での夢の中だったし、起きたら起きたでアイクお兄様のお陰でスッキリしてます。ギベオンにはしっかりモフモフで返して貰おうとも思ってます。
(でも、逢えたのはとても嬉しかったんですよ。本当に)
「アメーリア様!」
「あら、優勝おめでとうルチルレイ様」
「わた、私…っ、わたしっ」
リィ様に遅れてやってきたルチルレイも、涙で顔がぐしゃぐしゃです。何だこの純粋無垢な二人は、天使か。天使でしかない。ルチルレイの足元には、ちょっとだけしゅんとしたギベオンもいて、明日雨じゃなくて槍でも降りそうだな。と思わず笑ってしまった。
「容赦の無い作戦だったなアメーリア嬢。アイドクレーズも、本気で魔法を打てるのが俺だけだからって、嬉しいのは分かるが手加減くらいしろよ!」
「いい気味だ。何も考えないで無謀に突っ込んでくるからだろう?それに、試合だからな」
「…いや、でも…もうちょっと手加減」
「お前に手加減していたら、うちの子達が危ないじゃないか」
珍しく言い合いをするアイクお兄様ですが、もっと珍しいのは、拗ねた顔をするアイクお兄様です。可愛いなんてもんじゃない!!幼い時のショタアイクお兄様が今此処に!あのあどけない顔が拗ねる事で戻ってくるなんて、ジャスパー様GJですわ!
「二人共、アリアが驚いているぞ?」
(いえ、表面では驚いてますが心の中では悶えてます)
反論は飲み込んで、リィ様から離れて一応臣下の礼を取ります。本当今更ですけど、リィ様に抱き締められていたので、許してくださいな。
アイクお兄様もアズラも礼をしていますが、ラズ様が直ぐに楽にと戻されます。
「ラズ殿下、おめでとう御座います。流石、ラズ殿下とリィ殿下ですね。息がぴったりでした」
「それはアトランティ家の兄妹も同じだろう?アリアを指揮官に据えるとは思っても無かったが、確かにいい采配だったな」
「ありがとうございます」
「アリアも中々だった、王宮魔術師でも目指しているのか?」
(いいえ、私が目指してますのは騎士団専属魔術ですわ!声に出してしまうとアイクお兄様が怖いのでいいませんが!)
にっこりと微笑みを返すだけにして、その場を濁すだけにします。王宮魔術師なんて、礼儀厳しいですから嫌ですよ、まったりモフモフも出来なくなるじゃないですか。私は騎士団専属になって、まったりとモフモフ達と癒される生活を選びます!なんたって、騎士団には騎獣が居ますのよ!
私の笑顔に、アイクお兄様がじっと見てきますが、こういう時はアイクお兄様と視線を合わせてはいけません。きっと氷の微笑みを向けられてしまいますからね!
「申し訳ありません、先程の試合の優勝・準優勝の組は学園長室へとお呼びです」
ほのぼのする暇ももらえず、不穏な空気を抱えて連行されるようですね。
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