溺愛アルファの完璧なる巣作り

夕凪

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つがい

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 リヒトの、満月の瞳が真ん丸に見開かれた。
 彼は束の間、発情期の熱を忘れたように、呆然とユリウスを見つめていた。

 涙の膜がいっぱいに張っている。
 やがてリヒトは震えるような呼吸の後、小さな小さな声で、
「……つがいに?」
 と囁いた。
 まるで大きな声を出したら夢が覚めてしまうのでは、と疑うようなその様子に、ユリウスは思わず苦笑いを浮かべる。

 夢じゃないことを教えてあげたくて、ちゅ、とキスをした。
 ちゅ、ちゅ、と顔中を啄んで、下唇を軽く齧る。

「僕のオメガ。きみのここを噛みたい」

 うなじをまもる黒い首輪。その隙間に指を入れ、薄い皮膚を撫でる。
 ひくん、とリヒトの体が跳ねた。
 はふ……と熱っぽい吐息を漏らして、リヒトが頷く。

「ぼく、ぼくを、ゆぅりさまのつがいにしてください」

 初めての発情期ヒートで朦朧としているのだろうか。普段よりなお幼い話し方に、子どもの頃のリヒトが投影されて、ユリウスの胸が甘苦しく捩れた。

 山の中で見つけた、垢じみて、ぼろぼろで、死にかけの子ども。
 初対面のそのときから、この子は僕のオメガだと強く感じた。

 リヒトと名付け、一生懸命世話をした。眠りっぱなしのリヒトに食事を与え、歯を磨き、風呂に入れ、おむつを替えた。リヒトが熱を出したとき、食べ物を喉に詰めそうになったとき、そのたびにユリウスはハラハラし通しだった。

 やっと起きたと思ったら、この子は五感が弱い、とベルンハルトに診断されて。
 それでもリヒトは真っ直ぐに育った。

 可愛くて、可愛くて、可愛いリヒト。

 デァモント教団で彼がどう扱われていたかを知ったときには、この世のすべてを呪いたくなった。
 リヒトの五感が治るかもしれないとわかったときは、絶対にその方法を突き止めると誓った。
 治らなくてもいいという気持ちもあった。五感が弱いままでも、一生、ユリウスが手ずから世話をするから。
 でもリヒトがそれを望むなら、治してあげたかった。
 僕の目を治すお薬はありますか。そう問うてきたおのれのオメガに、喜びを与えてあげたかった。

 そしてリヒトはデァモントに奪われた五感を取り戻し、いまこうして、ユリウスの腕の中に居る。
 あのときの子どもが、発情ヒートを迎えるまでになったのだ。

 鍵を持つ指が、緊張とどうしようもない昂ぶりに震えた。
 いつもはスムーズに外せる仕掛けが、中々外れない。

 ユリウスは急く気持ちを抑え込み、幾度も鍵先を滑らせながら、ようやくそれを解錠することができた。

 カチャ、とささやかな音が鳴った。
 リヒトの首から、黒い首輪が外れた。

 リヒトが自身の首元を押さえた。やわやわとそこを撫でさすり、こちらを見上げたリヒトが、はにかむように笑った。

「なんだか、すぅすぅします」

 リヒトのその言葉尻を奪うように、唇を重ねた。
 うなじから後頭部にかけてを支えるように、手を差し込む。いつもあった革の感触はどこにもなくて、華奢で無防備な首筋にユリウスの理性は砕けた。

「ゆぅりさま、ゆぅりさま」

 口づけの合間に、リヒトがユリウスを呼ぶ。その声の甘さがたまらない。
 リヒトに着せていたおのれの寝間着を取り去ろうとすると、リヒトが身を捩って抵抗してきた。

「いやっ。ゆぅりさまのにおい、ぬぐの、いや」

 ぎゅうっと寝間着の前を握って拒否をするリヒトの、その可愛いこと。
 脳が沸騰しそうだ。

 ユリウスは自身も発情ラットの状態に入ってしまったことを自覚した。 

 やさしくしたい。
 やさしくしたい。
 でもそれ以上に、奪いたい。
 リヒトのすべてを、奪いたい。

 ユリウスは服の中に潜らせた手で、リヒトの体を撫で回した。
 さっきはくすぐったさと快感の区別もろくについていなかったリヒトだが、いまはすぐに反応を見せた。
 胸の粒をコリコリと弄ると、高い声を漏らす。

「ひぁっ、あっ、あっ……ああんっ、ゆ、ゆぅりさまぁ」

 裾をたくし上げると、下着をつけていなかったリヒトのそこが顕わになった。
 張り詰めた性器は雫をこぼして泣いており、ピンク色の先端は花の実のようにも見えた。

 そこよりもユリウスの意識を惹きつけてくるのは、性器の奥で淫液を滴らせている秘蕾だ。
 漂ってくる香りに誘われて、ユリウスはそこへ手を伸ばす。

 ぬるり、と熱くぬめった感触があった。
 ああ、と思わず息を漏らす。
 同時にリヒトも同じように喘いだ。

「ああっ、あっ、ゆぅりさま、さわって、なか、ぼくのなか、さわってください」

 泣きながら、リヒトが足を開いた。
 発情ヒートはオメガの本能だ。だから、わかるのだろう。
 ひとつになる方法を知らないと言っていたのに、いまはもうそこに、ユリウスを欲している。

 ユリウスは干上がった喉をごくりと鳴らした。
 リヒトの足を抱え上げ、尻の割れ目を辿る。ひくひくと蠢いていたそこに愛液をまとわりつかせた指を、ゆっくりと潜らせた。

「ひっ……あ、ああっ」

 リヒトの腰が動く。それに合わせて中もぎゅうっと収縮し、ユリウスの指を締め付けてくる。
 きつくて狭い孔を、中指で探った。
 ぬち、ぬち、と音がしている。
 ある個所を指の腹で押すと、リヒトの声が甘さを増した。

「ひぁんっ、あっ、あっ、あっ」

 喘ぎながら、掴んだ寝間着を鼻先まで持って来て、ユリウスの匂いを離すまいとしている。その仕草が可愛いのに扇情的で、まっさらな体のどこもかしこもがユリウスを誘っていた。
 中を弄る指を増やす前に、ユリウスはテーブルの上を探った。
 水差しと一緒にロンバードが準備したものが置かれている。性交時に使う潤滑油だ。とろみがあり、肌に良く口に入れても大丈夫な仕様になっているそれは、無臭で、フェロモン香を邪魔しないとしてアルファの間では人気があるものだった。
 
 リヒトのそこは充分な潤いがあったが、痛みなど毛先ほども与えたくないユリウスは、それをたっぷりと指に掬い、リヒトの孔をほぐした。

 おのれの下腹部では痛いほどにアルファの牡が昂っている。
 この小さな蕾に捻じ込んでしまいたくなる衝動を必死に抑え込みながら、手を動かした。
 
 リヒトがときに白い腹部を波打たせ、ときにソファを蹴って体を跳ねさせて、可愛い嬌声を撒き散らす。
 粘る水音もその強さを増していた。
 
「ゆ、ゆぅりさぁ、あっ、おなか、おかしいっ、あっ、ああっ」
「リヒト、ここに僕のが入るからね。ここが気持ちいいって覚えて」
「んぁぁっ、ゆ、ゆぅりさま、が、はいる?」
「そう。僕のこれを、きみに入れたい」
 
 ユリウスが下衣越しに、猛った性器を握った。
 とろりとしたリヒトの目が、下腹部に向けられ……リヒトがこくりと唾を飲み込んだ。

「ゆぅりさまの、おちんちん」
「うん」
「ほしいれす」
「まだもう少しほぐしてからね」
「ぼく、ほしいです」
 
 もがくように伸ばされたリヒトの手が、ユリウスのそこに触れようとする。

 性交なんてしたことないくせに、体を繋げるという意味も知らなかったくせに、この子はやっぱりオメガなんだなぁとユリウスは、本能でアルファを求めてくるその様を見て、しみじみと感じた。

 さっきは、ユリウスの陰茎を見たらリヒトが怖がると思い、彼の目から巧みに下腹部を隠していたユリウスだったが、いまのリヒトなら大丈夫かなと思い、羽織っていたシャツを脱ぎ捨て、下も取り払った。

 リヒトに煽られて発情ラットに入ったユリウスの性器を見て、リヒトが「ふわぁ」とおかしな声を漏らした。

「ゆぅりさまの、おっきい。ぼくとぜんぜんちがいます」

 無邪気な感想に、ユリウスは「うっ」と前屈みになってしまう。
 ダメだ。可愛い。可愛すぎる。

 ユリウスは潤滑油をてのひらに取りながら、
「リヒト、僕が入れるように頑張ってくれる?」
 と問いかけた。

 リヒトは「ふぁい」と返事をしたが、なぜかごそごそと動いてなにかを取ろうとしている。
 その動きを目で追っていると、どうやらユリウスが脱いだ下着が欲しいようだった。

 リヒトはどうにかそれを手繰り寄せると、寝間着のズボンと合わせてぎゅうっと胸元に抱きしめ、うふふと微笑んだ。

「ゆぅりさまのにおい、ふえました」

「……ああっ、もうっ!」
 
 おのれのオメガの暴力的な可愛さに、もはやユリウスは臨界点を超えた興奮をどうにもできずに、リヒトの体を抑え込み、切っ先を濡れたすぼまりにひたりと押し当てた。 



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