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(番外編)ともに、歩く。
裏側のお話3-1
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「いいわ~。尊いわ~」
アマーリエが両手を組み合わせてうっとりと呟いた。
彼女の視線の先には、三の扉から祭壇までの距離を歩幅を合わせて歩く、ユリウスとリヒトの姿がある。
一歩、一歩。ユリウスは優雅に、リヒトは一生懸命足を踏み出しては、互いに視線を合わせて微笑み合う。
しあわせそのものという二人を見たエミールも、アマーリエと同じ感想を抱いた。
「可愛いですねぇ」
ほぅ、と吐息混じりにそう言えば、エミールの声を聞き漏らすことのないクラウスがこちらへと顔を寄せて、低く囁いた。
「おまえの方が可愛いが」
「……真面目な顔でなに言ってんですか」
弟の結婚式でなにを張り合うのかと呆れて、てのひらでクラウスの顔を押すと、クラウスがなぜ怒られたのかわからないという表情でまばたきをした。
その真っ直ぐの視線に、このひとは変わらないなぁ、とエミールはしみじみ思う。
この国のアルファは愛情表現が重すぎる。
いや、この国の、ではなく、ミュラー家のアルファたちは、と言い換えるべきか。
エミールは式典の場を見渡し、ここに集う顔ぶれがリヒトに要らぬ緊張を与えないメンバーで固められていることを確認し、感嘆の息を吐いた。
王族の婚姻の儀とは思えぬほどの少人数だ。
おのれのオメガのためなら慣例をも捻じ曲げる。そんなユリウスの覚悟を見た気がして、感心するやら呆れるやらである。
すごいのはユリウスの二人の兄、マリウスとクラウスがそれぞれの立場などそっちのけで、末弟のこの決断を全面的に支持していることだった。
国王と騎士団長がそれでいいのか、と少し心配になるが、エミールが口を挟むような問題でもない。
祭壇の前に並んだ二人へと、戸籍局局長のハインツが署名の儀の前口上を述べているが、それもまた驚くほど短くシンプルなものになっていて、婚礼の儀がこれほど短時間で終わるのならば自分のときもそうしてほしかった、と心底思ったエミールであった。
しかし、当時のことを思えばそれも無理な話なのか。
エミールはふぅと吐息した。
署名の儀を終えてこちらを振り返ったときのリヒトの笑顔のあまりの可愛さに、うっかりユリウスの気持ちが理解できそうになる。
確かに、この笑顔と引き換えならば式典を短縮するぐらいどうということもない。
そう思えるほど可愛い笑顔だ。
「リヒト、おめでとうございます」
エミールの祝福に、リヒトが花がほころぶように笑う。
「ありがとうございます、エミール様、アマル様」
ぴょこんとこちらに頭を下げたリヒトへと、アマーリエがまた「尊いわぁ」と呟いた。
わかる。真っ白な衣装に身を包んだ今日のリヒトは、天使も妖精も超越した可愛さがあった。
満月のような瞳はキラキラと輝き、頬は興奮にほんのりと染まって、ぎゅうっと抱きしめたくなるほどである。
けれどユリウスの目の前でリヒトをハグするなんて真似はできなくて、エミールはアマーリエがうっかりそれをしないよう彼女のドレスの後ろを引っ張っておかなければならなかった。
ふと、鼻を啜る音が聞こえてきて、後ろを振り返る。
そこではリヒト付きの侍従、テオバルドが腕で顔を覆って号泣していた。
なんだかんだでこの侍従もリヒトを可愛がっているのだ。今日の着付けも彼が担当したというのだから、テオバルドの小器用さには舌を巻く。
エミールはそっと彼の傍に近寄り、ハンカチを差し出した。
「使いなさい」
「い、いえっ、畏れ多いっ」
ずびっと鼻を啜って、テオバルドが首を横に振り、おのれのポケットから灰色のハンカチを引っ張り出した。
ごしごしと顔を拭う侍従を見ながら、エミールは、自分も平民の出なのになと思った。
王族と結婚をしたからいまこの場に居るけれど、元を辿ればエミールはサーリーク王国の片田舎の出身だ。畏まられるような身分ではないのに、と思うがこれはもう仕方ないのだろう。
「いい式でしたね」
エミールがそう声を掛けると、テオバルドがひぇっと短く叫び、それからこくこくと頷いた。
リヒトを介してエミールとはよく顔を合わせているのに、なにをいまさら緊張するのだ、とエミールは首を傾げたが、ふと見ればクラウスがこちらを凝視しているではないか。
たしかにこれは怖い。
「すみません。配慮が足りませんでした」
なぜ自分が、と思いつつもエミールはテオバルドへ謝りつつ、さりげなく距離を取る。
テオバルドが「いえ」と首を振って、
「そうやって自覚していただけるだけでありがたいです」
と返事をした。
彼の視線の先には、無自覚代表のリヒトが居る。たしかにリヒトは、あれだけユリウスに大切にされているにも関わらず、その自覚に乏しい。
「あなたも大変ですねぇ」
同情を込めてテオバルドを労い、エミールはクラウスと並んでリヒトを囲む輪の中に入った。
アマーリエが両手を組み合わせてうっとりと呟いた。
彼女の視線の先には、三の扉から祭壇までの距離を歩幅を合わせて歩く、ユリウスとリヒトの姿がある。
一歩、一歩。ユリウスは優雅に、リヒトは一生懸命足を踏み出しては、互いに視線を合わせて微笑み合う。
しあわせそのものという二人を見たエミールも、アマーリエと同じ感想を抱いた。
「可愛いですねぇ」
ほぅ、と吐息混じりにそう言えば、エミールの声を聞き漏らすことのないクラウスがこちらへと顔を寄せて、低く囁いた。
「おまえの方が可愛いが」
「……真面目な顔でなに言ってんですか」
弟の結婚式でなにを張り合うのかと呆れて、てのひらでクラウスの顔を押すと、クラウスがなぜ怒られたのかわからないという表情でまばたきをした。
その真っ直ぐの視線に、このひとは変わらないなぁ、とエミールはしみじみ思う。
この国のアルファは愛情表現が重すぎる。
いや、この国の、ではなく、ミュラー家のアルファたちは、と言い換えるべきか。
エミールは式典の場を見渡し、ここに集う顔ぶれがリヒトに要らぬ緊張を与えないメンバーで固められていることを確認し、感嘆の息を吐いた。
王族の婚姻の儀とは思えぬほどの少人数だ。
おのれのオメガのためなら慣例をも捻じ曲げる。そんなユリウスの覚悟を見た気がして、感心するやら呆れるやらである。
すごいのはユリウスの二人の兄、マリウスとクラウスがそれぞれの立場などそっちのけで、末弟のこの決断を全面的に支持していることだった。
国王と騎士団長がそれでいいのか、と少し心配になるが、エミールが口を挟むような問題でもない。
祭壇の前に並んだ二人へと、戸籍局局長のハインツが署名の儀の前口上を述べているが、それもまた驚くほど短くシンプルなものになっていて、婚礼の儀がこれほど短時間で終わるのならば自分のときもそうしてほしかった、と心底思ったエミールであった。
しかし、当時のことを思えばそれも無理な話なのか。
エミールはふぅと吐息した。
署名の儀を終えてこちらを振り返ったときのリヒトの笑顔のあまりの可愛さに、うっかりユリウスの気持ちが理解できそうになる。
確かに、この笑顔と引き換えならば式典を短縮するぐらいどうということもない。
そう思えるほど可愛い笑顔だ。
「リヒト、おめでとうございます」
エミールの祝福に、リヒトが花がほころぶように笑う。
「ありがとうございます、エミール様、アマル様」
ぴょこんとこちらに頭を下げたリヒトへと、アマーリエがまた「尊いわぁ」と呟いた。
わかる。真っ白な衣装に身を包んだ今日のリヒトは、天使も妖精も超越した可愛さがあった。
満月のような瞳はキラキラと輝き、頬は興奮にほんのりと染まって、ぎゅうっと抱きしめたくなるほどである。
けれどユリウスの目の前でリヒトをハグするなんて真似はできなくて、エミールはアマーリエがうっかりそれをしないよう彼女のドレスの後ろを引っ張っておかなければならなかった。
ふと、鼻を啜る音が聞こえてきて、後ろを振り返る。
そこではリヒト付きの侍従、テオバルドが腕で顔を覆って号泣していた。
なんだかんだでこの侍従もリヒトを可愛がっているのだ。今日の着付けも彼が担当したというのだから、テオバルドの小器用さには舌を巻く。
エミールはそっと彼の傍に近寄り、ハンカチを差し出した。
「使いなさい」
「い、いえっ、畏れ多いっ」
ずびっと鼻を啜って、テオバルドが首を横に振り、おのれのポケットから灰色のハンカチを引っ張り出した。
ごしごしと顔を拭う侍従を見ながら、エミールは、自分も平民の出なのになと思った。
王族と結婚をしたからいまこの場に居るけれど、元を辿ればエミールはサーリーク王国の片田舎の出身だ。畏まられるような身分ではないのに、と思うがこれはもう仕方ないのだろう。
「いい式でしたね」
エミールがそう声を掛けると、テオバルドがひぇっと短く叫び、それからこくこくと頷いた。
リヒトを介してエミールとはよく顔を合わせているのに、なにをいまさら緊張するのだ、とエミールは首を傾げたが、ふと見ればクラウスがこちらを凝視しているではないか。
たしかにこれは怖い。
「すみません。配慮が足りませんでした」
なぜ自分が、と思いつつもエミールはテオバルドへ謝りつつ、さりげなく距離を取る。
テオバルドが「いえ」と首を振って、
「そうやって自覚していただけるだけでありがたいです」
と返事をした。
彼の視線の先には、無自覚代表のリヒトが居る。たしかにリヒトは、あれだけユリウスに大切にされているにも関わらず、その自覚に乏しい。
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