拝啓、大好きなチーレムラノベの負けヒロイン様、ハイスペックに転生した俺が幸せにするので結婚してください!〜ただし主人公、お前は殴る〜

古森きり

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二章 冒険者『Cランクブロンズ』編

調査と報告と

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「温泉?」
「はい。地熱温泉ですね」
「「ちねつおんせん?」」

『アルゲの町』に戻り、町長宅を訪れ調査結果を報告する。
 思った通りそこからのようだ。
 オリバー自身も前世でそこまで詳しく学んだわけではないので、その辺りは省いて説明するしかないだろう。

「はい、まあ、その、『ウローズ山脈』の北の一番大きな山、『ウローズ山』は火山なんですよね?」
「えぇ、そうです。『ウローズ山脈』に連なるこの鉱山は大昔、とんでもない大地震が来た際に『ウローズ山』が大噴火して、大地が隆起して生まれたものだといわれていますね」

 と、町長が頷く。
 同じように海まで大陸を横断するように出来上がったのが、この『ウローズ山脈』。
 一度地面が大きく裂け、再びぶつかり合って隆起した山。
 当時から一番大きく、そこに存在していた火山『ウローズ山』が大噴火して、山脈は凝固した。
 話だけでも途方もない。
 どこまで本当かは分からないが、大災害があったのは間違いないのだろう。
 そして、その恩恵とも言うべきが地熱。
 地熱に熱された地下水の溜まり場……あの場所だ。
 あそこを掘れば地下水が出る。
 土の成分に硫黄が混ざっているからだろう、硫黄の香りが強かった。
 それを思えばあの場所は地熱温泉と硫黄温泉として利用が出来るはず。
 それらの使い方については、前世の幼い頃に旅行で連れて行ってもらった知識を提案のように話してみるしない。

「はあ、土の上に渇いた草を編んだものを敷いて、その上に寝る、ですか?」
「疲労回復と血行改善でこりや怪我、冷え性などにもいいと本で読みました」
「冷え性にも!?」
「はい」

 サリーザが食いついた。
 よし、と内心ガッツポーズを作る。

「しかし、あの岩場を掘るのか?」
「あの辺りはダメですが、その近くに岩の少ないところがあったので魔法で作業して溜池のような場所を作れば……そうですね、地熱で温められた水はお風呂のように入る事が出来ると思います」
「お風呂!?」
「はい」

 またもサリーザが食いついた。
 そうだろうそうだろう、風呂といえば庶民には縁がない。
 せいぜい湯で濡らしたタオルで体を拭くくらいだ。
 そのタオルも、オリバーの前世と比べれば布のようなもの。
 もちろん貴族が使う布は羊毛などで織られていて比較的ふっかふっかだが。
 なので、湯に浸かる……というのは貴族の贅沢。
 オリバーでも風呂は三日に一度、湯船に浸かれるくらい。
 それが温泉……毎日体にいいお湯に、浸かれるのだとしたら──!

「これは産業として十分成り立つと思いますよ。問題は貴族の利権に巻き込まれかねないという点でしょうね」
「む……そんなにいいもんなのか……」
「間違いなく貴族は欲しがります。町ごと買収しかねません」
「「そ、そんなに!?」」
「そんなにですかぁ!?」

 そんなになのだ。
 確実に儲けようとする。断言出来る。

「だから……公帝家に連絡をしましょう」
「「「こここここ公帝家ぇ!?」」」
「はい。伝手はあります」
「……そ、それってまさか……」
「そのまさかです」

 さすがロイド、察しがいい。
 サリーザも「まさか」という顔だが、『ミレオスの町』の好き放題ぶりが真実ならば正してもらわねばならないだろう。
『イラード侯爵家』は『公帝派』と言われている。
 しかし『イラード地方』を担当する、公帝国第四騎士団、団長……その名をマルティーナ・クロッシュ。

「伯母です」
((やっぱり……))
「おば……? は?」

 オリバーの母、アルフィーには姉が二人いる。
 そのうち長女ビクトリアはクロッシュ侯爵家を継ぐべく、女主人として祖父を支えていた。
 結婚もしており、子どもも三人いるのだが……この子どもたち……オリバーの従兄弟にあたるその子らは全員女の子。
 しかも全員嫁ぎ先が決まっている。
 本人たちは嫁入り希望で家に残る気がゼロ。
 なのでオリバーか、フェルトを養子に……という話が出ているのだがそれは置いておく。
 要はクロッシュ家の次女……オリバーの伯母に当たる人物。
 マルティーナ・クロッシュ。
 彼女こそ、この国の第四騎士団の団長なのだ。
 クローレンスの一つ上の先輩らしく、クローレンスを妹のように(物理的に)可愛がり、しかし彼女の事情も知っているので第二騎士団の団長に推薦するなどクローレンスにとっては頭が絶対に上がらない『お姉様』。

「『ミレオスの町』のギルドに行く用事があるので、その時ついでに呼びましょう。伯母上なら温泉をとても喜んでくれると思いますよ!」
「そ、そうだろうな……」
「『紅のクローレンス』の次は『エドルズの青薔薇』? なんか頭が追いつかなくなりそう」
「マルティーナ伯母様にお会いするのは三年ぶりになるので、楽しみです」
「え、えぇと、あのう」
「大丈夫、お任せください。話はこちらでまとめておきますので!」
「は、はあ……」

 町長は間違いなく、事のヤバさを理解していなかった。
 いや……。

((まあ、頭が追いつかないよな/わよね……))


***


「おお、来たな。加工は終わっているぜ」
「さすが、仕事が早いな!」

 町長の家から出てゴリッドの自宅兼鍛冶場へと行くと、『厄石』の加工が終わっていた。
 五つに砕かれ、小さな丸い玉となっている。
 さらに触れても問題ないように『聖霊石』の粉でコーティングしてあるのだそうだ。

「厄呪魔具にする時にその粉は落とすんだけどな。で、仮面でいいのか? つーか坊主、仮面はどうした?」
「あ、その……鉱山でサラマンダーに出会しまして……」
「は!? サラマンダーがいたのか!?」
「おいおい知らなかったのかよ。かなりの大物だったぜ? Aランククラスの強さだったわ。俺たちじゃなきゃマジヤバかったっつーの」
「お、おおぉ……」

 ちなみに素材は、と鍛冶屋らしい質問が続いたが、残念ながら素材は採れなかった。
 それはそれは……それはとても残念そうだったが、環境で強化したサラマンダー相手にたった三人で勝つためにはアレしか方法がなかったのだ。仕方ない。

「なるほど、それで壊れたのか」
「つーか歪んで使えなくなったっていうか、な」
「歪んだぐらいなら直してやるぜ?」
「本当ですか? じゃあ、これをベースにして作ってもらったり……」
「ああ、じゃあそうするか。どちらにしてもサイズは合っていなかったんだろう?」
「はい」

 顔のラインを測り、それに沿って作るというので椅子に座らせられ、ゴリッドがオリバーの顔上半分にベシッと布を、その上に粘土を貼りつける。
 ぐっぐっ、と押されてしっかり固定。
 バッチリ型を取られたあと、解放される。
 ちょっと問答無用すぎて驚いたが、布のおかげでベタつきなどはない。

「ふむ、明日には完成させておこう」
「え? 厄呪魔具だよな?」
「ああ、問題ねぇ。おれぁドワーフだぞ」
「お、おお……」
「今夜はこの町に泊まってくんだろう?」

 顔を見合わせる三人。
 言われてみれば空はもうとうに色づいてきている。
 朝から怒涛の展開続き。
 なんも濃ゆい一日だった。

「そうだな。今夜はここに泊まって、明日オリバーの仮面を受け取ってから『ミレオスの町』へ厄呪魔具の申請やら諸々、しに行くか」
「そうね」
「はい……思えば昼食も食べてないのでお腹が空きました」
「「そ、そういえば……」」

 ロイドたちも今思い出したのか、ぐぅ、と腹の音が鳴る。
 ゴリッドは盛大に笑い飛ばして『アルゲの町』唯一の宿を教えてくれた。
 サラマンダーとの戦闘もあり、くたくたに疲れ果てていたが、空腹は耐えられない。
 その夜はしっかりと食事と睡眠をとり、翌日に備える事にした。
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