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二章 冒険者『Cランクブロンズ』編
新しい仮面
しおりを挟む翌朝、寝坊したロイドを二人で叩き起こして食事。
一番に向かったのはゴリッドの家。
するとデジャブ……ゴリッドの家から、怒鳴り合う声が聞こえてきた。
「待てコラタック! サラマンダーが出たばかりだと言っているだろう!」
「うるせぇ! エアメタルを見つけるまで鉱山に通うって言ってるだろう!」
思わず顔を見合わせる。
そういえばあの少年の問題がまったく手つかずだった。
しかし町の資金に関してはすでに別な目処が立っている。
「説明した方がいいかもしれないわね」
「ついでに口止めもしておこうぜ」
「そうですね」
というわけでやはり飛び出してきた少年、タックを抱き留める。
驚いた様子のタックをにこぉ、と笑顔で囲み込み、彼がなにか言う前にゴリッドの家へと連れ戻す。
「なんだよ! お前ら!」
「おお、お前たちか!」
「おはようございます。実は昨日、町長にはお話し済みなんですが……」
「?」
タック少年には少し難しいかな、と思いつつ、温泉の話をしてやる。
運用の仕方。運用するためのデメリット。
そしてそのデメリットをなんとかするために、この地方の騎士団長を招く事。
ゴリッドはずいぶんと驚いていた。
タック少年は、よく分からなさそうな顔をしていたけれど。
「えっと、つまり……偉い人に話をつけてくれるって事か?」
「そうです。だからそれまで待っていてください。一週間後には町のあり方はかなり変わると思いますよ」
「……でも、エアメタル……」
「えーと、そのエアメタルというのはレア鉱石ですよね?」
「そうだぜ! えっと、布みたいなんだ」
「へー」
ドヤ顔で語られるが、オリバーもそのくらいは知っている。
実は北より南の鉱山が主な採掘地であり、メタル……鉱石でありながらとても柔らかく加工するとさらに布と遜色ない通気性、柔軟性を誇る希少鉱石の一種。
エアメタルで作られた鎧はミスリル級の防御力、魔力防御力を持つ。
全騎士団団長はこのエアメタルの騎士服を着用しており、なんと色も染められる。
一人分の全身を覆う分量は、金貨に換算すると五十枚も超えるとか。
(まあ、金貨は一般にあまり出回ってないけど)
貴族は硬貨をたくさん持っているのがステータス。
たとえるならば、腕時計コレクションのようなものだろうか。
「…………。タックくん、もっと重要な仕事を任せたいんだけど、やるつもりはない?」
「? 重要な仕事……?」
「金銭感覚のゆるい町長のサポートだよ」
「!」
「町長、なんでも安請け合いするんでしょう? 遠慮深いというか……。温泉も困ってる人にはタダで使わせたりしそうじゃない?」
「うん!」
同意が力強い。
「エアメタルも、新しく採掘されても相場を調べたりもしないといけないよね? それには『鑑定』や『分析』の魔法があるといいんだけど、もしかしてこの町、その魔法を使える人がいないんじゃない?」
「う、うん」
「それもまずい。やらなきゃいけない事、覚えなきゃいけない事はたくさんある。タックくんは町のために出来る事を探してるんでしょう? 実は町長さんのいい人ぶりを見ていて、その辺りがとても心配だったんだ」
「うん!」
……町長、子どもにそこを心配されている。
「……その魔法はどうしたら覚えられるんだ?」
「『鑑定』だけなら生活魔法だから『ミレオスの町』のギルドでお金を払えば覚えられますよ。でも、それには大量の知識も必要になります」
「え? 魔法って覚えたらなんでも分かるようになるんじゃないのか?」
「知識量や熟練度によって『鑑定』や『分析』の魔法は精度が変わるのよ。そうね、たとえば……オリバーは魔物の知識がとても多くて、私が見るより詳細に魔物の事が分かるの。弱点とか、戦い方のアドバイスまでね」
ちなみに『探索』もまた熟練度によって範囲が変わる。
範囲だけでなく、近くにいる生き物が魔物か普通の獣か、なども判断出来るようになるらしい。
オリバーの『探索』はまだ数メートル程度しか分からないが、熟練度が上がれば十メートル、数十メートルまでの範囲を調べられるようになるだろう。
(あ、『探索』と『鑑定』をかけ合わせたらどうなるだろう?)
フィールドに出たら試そうとにこにこする。
『探索』と『分析』が上手くいったので、色々な魔法の組み合わせを試してみようと思った。
きっとかなり幅が広がるはずだ。
「……『ミレオスの町』……」
「俺たちこれから『ミレオスの町』に用事があって行くつもりだが……一緒に来るか?」
「他の町じゃダメなのか?」
オリバーたちは顔を見合わせる。
もしや、とゴリッドを見れば頷かれたので、この子は例の『ミレオスの町』からの口減らしでこの町に来た子なのだろう。
確かにそれでは『ミレオスの町』には行きたくないはずだ。
「そうだなぁ、それならまずは本でも読んで勉強した方がいいんじゃないか?」
「そうね、知識を増やしておけば『鑑定』を覚えたあとすっごく楽しいと思うわよ! なんでも分かるようになるかんじで」
「勉強……」
「勉強が嫌なら図鑑を見るといいかもしれません。もしくは、ゴリッドさんの仕事を手伝って鉱石の価値を覚えておくとか」
「……」
タックがちらりとゴリッドを見る。
しかし仕事中のゴリッドは真剣そのもの。
こん、こん、と槌で仮面を叩いて調整している。
「分かった。ゴリッドのおっさんに聞いてみる」
「うん、それがいいと思いますよ」
「…………。なあなあ、おれがゴリッドのおっさんのとこで町長を助けられるようになったら、姉ちゃんおれの嫁さんになってくれる?」
「ん???」
姉ちゃん。嫁さん。
その単語に固まるオリバー。
噴き出すロイドとサリーザ。
キラキラとした子どもの無垢な瞳に、喉が引きつった。
「……すみません、すでに結婚する人は決めておりまして」
「えー!」
「おし! 出来たぞ」
「ありがとうございます!」
助け舟の如きタイミング。
バッ、とゴリッドの方へ寄る。
「しかし、サラマンダーの『吐火炎』で歪む安い鉄だ。冒険者を続けるんなら、環境に左右されない素材で作り直した方がいいだろう。そうだな、プラチナやワイバーンの鱗とかが……オススメでいうならリッチの骨とかな!」
「プラチナやワイバーンの鱗よりリッチの骨、ですか?」
「厄呪魔具にするなら、アンデッド系かゾンビ系の魔物から採れる素材が一番相性がいいんだよ!」
「むう……」
なるほど。
リッチといえば高位の聖職者や魔法使いがアンデッド化した魔物。
魔法以外では倒せないため、ランクはB。
積極的に襲ってはこないが、執念深いためカラーはオレンジだ。
オリバーがソロで倒すには厳しい相手と言える。
「手に入ったらおれのところへ持ってきな。どのみち成長に合わせて作り直さなきゃならんだろう、お前さんの場合は」
「うう……」
「まあ、着けて具合を見せろ」
「……は、はい」
装飾の変わった鉄の仮面。
重さは少し軽減しているし、視界も以前より見えやすい。
ぴったりフィットするので、違和感もないように思う。
「え、すごい」
「厄呪魔具は害意が強ければ強いのですほど効果が強まる。人間が多い場所に行けば自ずと効果アップというわけだ」
「なるほど!」
「じゃあ申請しに『ミレオスの町』へ行くとするか」
「そうですね、行ってきます」
立ち上がり……ふと、タック少年を見下ろす。
なぜかとてもがっかりした顔をされた。
「おまえ、男だったのか……」
「…………」
仮面の効果は抜群のようである。
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