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学アイの話(1)
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「淳ちゃんはもう綾城先輩と同じ事務所の研修生になっているんだっけ?」
「そう。春日芸能事務所。だから今回は全部お断りした。社長にはすごく褒めてもらえて『ご褒美にボーナス出しますね』って言われて、春日芸能事務所の人間として出演したわけでもないのにボーナス貰っちゃって……なんか気まずい」
「ええええ!? そんな、ボーナス!? う、羨ましすぎる!? えええ、いくら!? いくらもらえたの!?」
「研修生だし、学生だからあんまり高額じゃないよ。十万円」
「高額じゃん!?」
「そうだけど、これでもかなり値切ったんだよ。社長ってば最初七桁出そうとしてきたから、必死に断って断って……やっとこの金額にしてもらったんだよ。東雲学院所属として出てるんで、ってことで」
「七桁……も、もったいねえええ!」
天皚はそう言うが、あの金銭感覚ズレズレの社長はお小遣い感覚でとんでもない桁を提示してくる。
しかも今回のIGは事務所のタレントとして出演したわけではないのだから、報酬をもらうこと自体おかしい。
「だいたいその収入に対していくらの税金がかかるのか。事務所の方でやってくれるって言ってたけど……」
「生々しいな」
「大事なことだよ。ちゃんと納税しないとスキャンダルになりかねない」
「そ、それはそうかもだけどー」
「まあ、納税関係は二年生のアイドル学で教わるらしいけど」
「え? 習うの?」
「習うよ。先輩たちが言ってた」
スン……と天皚の顔がわかりやすくテンションの下がったものになった。
学業に関しては本当に自信がない天皚。
「そういえばもうすぐ『学アイ』だけど天皚のグループはどうするの? 一年生だけで作ったグループでしょ? リーダーは――」
「ああ、うん、隣のクラスの芽黒。……え? どうするのって?」
天皚は大手グループに加入申請をしたが、すべて面接と書類で落とされた。
魔王軍はゆるいと聞いていたけれど、天皚が加入申請しに行った時にちょうど朝科がパンツ一丁でシャワー室から現れて檜野が着替えを持ってきてそのまま廊下で着せていったらしい。
その様子は完全に主人と執事。
なんとなくそれを見て「関わったらまずい」と思った天皚はそっと帰ってきたと。
他にも中堅どころのグループに加入申請を出したが、中堅どころは新規加入を望んでいないところも多かったり、予算関係で早々に新入生を採用して締め切っていたりと上手くいかなかった。
そうなると、もう既存グループは諦め、一年生だけで新規グループを立ち上げるしかない。
同士を募り、天皚が参加したのはB組の芽黒アゲハが立ち上げた一年だけのグループ『SAMURAI』。
和風テイストの曲を中心にした、和風グループ。
ちなみに作詞作曲は魔王軍の雛森日織が有償で作ってくれており、振付も魔王軍の茅原一将が考えてレッスンも見てくれているらしい。有償で。
なのでデビュー曲でグループ発足祝い金を使い果たし、新曲を自分たちで作っているが上手くいかず、超絶苦労している。
手を貸したいと思ってダンスの振付なら手伝える、と伝えているがまず二曲目がなかなかできあがらない。
天皚のグループは、誰一人作詞作曲演奏ができる人間がいないからである。
全員で勉強中なのだが、素人に毛が生えた程度の人間が集まったところで簡単に曲作りができるはずもなく。
伝手もないので、正直『学アイ』に出るのは難しいのでは、と淳は心配していた。
「『学アイラブトーナメント』って、その名の通りトーナメントだよ? 一曲で勝ち上がるのは、無理だよ?」
「え、えーと……それは……」
「その学アイラブトーナメントって十月だっけ? どんな大会なんだ?」
話に入ってきたのは駿河屋祝。
彼は三年生、二年生が二人のグループに滑り込み加入した生徒。
先輩たちも最低限の活動でいっぱいいっぱいのため、『学アイ』への参加は考えているがわからないことだらけとのこと。
仕方ないなぁ、と淳、解説モードに入る。
「正式名称は学アイラブトーナメント、じゃなくて学生アイドルラブトーナメントなんだ。その名の通り学生セミプロアイドル限定のトーナメント。IGと違って規模はかなり小さいけどネットで放送されるし、優勝すると賭け金が全額賞金としてもらえる万年金欠の学生セミプロアイドルにとって一攫千金の超大チャンスイベント! 結構特殊なルールもあるけど、簡単に言うと敵に塩を送って漁夫の利を得るって感じ?」
「いや、全然わかんないんだけど」
「まあ、そうだよね。でもそうとしか言えないんだよなぁ」
トーナメントというだけあり、勝利グループが勝ち上がるのだが淳が言った通りただパフォーマンスをするだけの大会ではない。
あれは一度見た方がわかりやすいだろうと過去大会記録をワイチューブで検索して見せてやる。
巨大な双六の上を複数のグループが走っていたり、他の場面ではグループメンバーがランニングマシーンで走り続けている間他のメンバーがクイズに答えたりしていた。
動画を見る天皚と駿河屋の顔が「?」となって固まる。
「え? なに、これ?」
「なにって、学アイの動画だけど」
「そうじゃなくてなにやってんのこれ!? え!? パフォーマンスするとかじゃないの!?」
「もちろんするよ。するけど、学生セミプロアイドルって全国に二百グループくらいあるから、それを一日で~っていうのは無理だし、実績と実力があれば勝ち上がれるっていうのだと同じグループが毎年勝っちゃうでしょ? だから知力! 体力! 時の運! で勝ち上がり、パフォーマンスで賭け金――『学アイ通貨』を稼ぎ、そのお金で他のグループの勝負にベッド――つまり賭けだね。勝ったグループと、賭に勝ったグループに負けたグループと負けたグループに賭けていた賭け金が入ってその金額で勝ち上がることもできたりする、かなり特殊なトーナメントなんだよ。だから一曲だけだと賭け金があんまり手に入らないし学アイ通貨を稼げないとアイテムが買えなかったりして不利になったりもするんだよね。特に後半」
「え、え? ちょ、え?」
*****
知っていると面白いかもしれない裏設定
今のところ登場予定はないが出せたら出したい東雲学芸能科アイドルグループ『Color』。
なにを隠そうあ○スタの二次創作を書いていた頃のオリキャラである。
春夏秋冬がモチーフで、当初は夏山真紅を『Blossom』の一人にしようかと思っていましたがそれだと全員東雲学生になっちゃうので甘夏に変更しました。
“夏”のところにその名残りがあります。
なので他の東雲アイドルグループに比べてキャラ設定が全員しっかりと決まっているため、出せるようなら出したい。
ただ、今のところその必要性がないので出せるかどうかは謎。
どこかで絡ませたいけどもしかしたら他の作品になるかもしれない。
「そう。春日芸能事務所。だから今回は全部お断りした。社長にはすごく褒めてもらえて『ご褒美にボーナス出しますね』って言われて、春日芸能事務所の人間として出演したわけでもないのにボーナス貰っちゃって……なんか気まずい」
「ええええ!? そんな、ボーナス!? う、羨ましすぎる!? えええ、いくら!? いくらもらえたの!?」
「研修生だし、学生だからあんまり高額じゃないよ。十万円」
「高額じゃん!?」
「そうだけど、これでもかなり値切ったんだよ。社長ってば最初七桁出そうとしてきたから、必死に断って断って……やっとこの金額にしてもらったんだよ。東雲学院所属として出てるんで、ってことで」
「七桁……も、もったいねえええ!」
天皚はそう言うが、あの金銭感覚ズレズレの社長はお小遣い感覚でとんでもない桁を提示してくる。
しかも今回のIGは事務所のタレントとして出演したわけではないのだから、報酬をもらうこと自体おかしい。
「だいたいその収入に対していくらの税金がかかるのか。事務所の方でやってくれるって言ってたけど……」
「生々しいな」
「大事なことだよ。ちゃんと納税しないとスキャンダルになりかねない」
「そ、それはそうかもだけどー」
「まあ、納税関係は二年生のアイドル学で教わるらしいけど」
「え? 習うの?」
「習うよ。先輩たちが言ってた」
スン……と天皚の顔がわかりやすくテンションの下がったものになった。
学業に関しては本当に自信がない天皚。
「そういえばもうすぐ『学アイ』だけど天皚のグループはどうするの? 一年生だけで作ったグループでしょ? リーダーは――」
「ああ、うん、隣のクラスの芽黒。……え? どうするのって?」
天皚は大手グループに加入申請をしたが、すべて面接と書類で落とされた。
魔王軍はゆるいと聞いていたけれど、天皚が加入申請しに行った時にちょうど朝科がパンツ一丁でシャワー室から現れて檜野が着替えを持ってきてそのまま廊下で着せていったらしい。
その様子は完全に主人と執事。
なんとなくそれを見て「関わったらまずい」と思った天皚はそっと帰ってきたと。
他にも中堅どころのグループに加入申請を出したが、中堅どころは新規加入を望んでいないところも多かったり、予算関係で早々に新入生を採用して締め切っていたりと上手くいかなかった。
そうなると、もう既存グループは諦め、一年生だけで新規グループを立ち上げるしかない。
同士を募り、天皚が参加したのはB組の芽黒アゲハが立ち上げた一年だけのグループ『SAMURAI』。
和風テイストの曲を中心にした、和風グループ。
ちなみに作詞作曲は魔王軍の雛森日織が有償で作ってくれており、振付も魔王軍の茅原一将が考えてレッスンも見てくれているらしい。有償で。
なのでデビュー曲でグループ発足祝い金を使い果たし、新曲を自分たちで作っているが上手くいかず、超絶苦労している。
手を貸したいと思ってダンスの振付なら手伝える、と伝えているがまず二曲目がなかなかできあがらない。
天皚のグループは、誰一人作詞作曲演奏ができる人間がいないからである。
全員で勉強中なのだが、素人に毛が生えた程度の人間が集まったところで簡単に曲作りができるはずもなく。
伝手もないので、正直『学アイ』に出るのは難しいのでは、と淳は心配していた。
「『学アイラブトーナメント』って、その名の通りトーナメントだよ? 一曲で勝ち上がるのは、無理だよ?」
「え、えーと……それは……」
「その学アイラブトーナメントって十月だっけ? どんな大会なんだ?」
話に入ってきたのは駿河屋祝。
彼は三年生、二年生が二人のグループに滑り込み加入した生徒。
先輩たちも最低限の活動でいっぱいいっぱいのため、『学アイ』への参加は考えているがわからないことだらけとのこと。
仕方ないなぁ、と淳、解説モードに入る。
「正式名称は学アイラブトーナメント、じゃなくて学生アイドルラブトーナメントなんだ。その名の通り学生セミプロアイドル限定のトーナメント。IGと違って規模はかなり小さいけどネットで放送されるし、優勝すると賭け金が全額賞金としてもらえる万年金欠の学生セミプロアイドルにとって一攫千金の超大チャンスイベント! 結構特殊なルールもあるけど、簡単に言うと敵に塩を送って漁夫の利を得るって感じ?」
「いや、全然わかんないんだけど」
「まあ、そうだよね。でもそうとしか言えないんだよなぁ」
トーナメントというだけあり、勝利グループが勝ち上がるのだが淳が言った通りただパフォーマンスをするだけの大会ではない。
あれは一度見た方がわかりやすいだろうと過去大会記録をワイチューブで検索して見せてやる。
巨大な双六の上を複数のグループが走っていたり、他の場面ではグループメンバーがランニングマシーンで走り続けている間他のメンバーがクイズに答えたりしていた。
動画を見る天皚と駿河屋の顔が「?」となって固まる。
「え? なに、これ?」
「なにって、学アイの動画だけど」
「そうじゃなくてなにやってんのこれ!? え!? パフォーマンスするとかじゃないの!?」
「もちろんするよ。するけど、学生セミプロアイドルって全国に二百グループくらいあるから、それを一日で~っていうのは無理だし、実績と実力があれば勝ち上がれるっていうのだと同じグループが毎年勝っちゃうでしょ? だから知力! 体力! 時の運! で勝ち上がり、パフォーマンスで賭け金――『学アイ通貨』を稼ぎ、そのお金で他のグループの勝負にベッド――つまり賭けだね。勝ったグループと、賭に勝ったグループに負けたグループと負けたグループに賭けていた賭け金が入ってその金額で勝ち上がることもできたりする、かなり特殊なトーナメントなんだよ。だから一曲だけだと賭け金があんまり手に入らないし学アイ通貨を稼げないとアイテムが買えなかったりして不利になったりもするんだよね。特に後半」
「え、え? ちょ、え?」
*****
知っていると面白いかもしれない裏設定
今のところ登場予定はないが出せたら出したい東雲学芸能科アイドルグループ『Color』。
なにを隠そうあ○スタの二次創作を書いていた頃のオリキャラである。
春夏秋冬がモチーフで、当初は夏山真紅を『Blossom』の一人にしようかと思っていましたがそれだと全員東雲学生になっちゃうので甘夏に変更しました。
“夏”のところにその名残りがあります。
なので他の東雲アイドルグループに比べてキャラ設定が全員しっかりと決まっているため、出せるようなら出したい。
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