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フルボッコ確定『決闘』(1)
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開場すぐの星光騎士団ライブ後、物販で柳の誕生日おめでとうケーキの販売が開始した。
誕生日ケーキが販売されるとだいたい地獄のようなことになるのだが、想定していたよりも客が多かったせいなのと苳茉葵の家族が来ていたせいで舞台袖に下がった星光騎士団メンバーもそろそろ完全予約制にした方がいいか、それともレシピだけ提供して商店街のカフェかケーキ屋さんで常設メニューにしてもらうか、と話し合いが始まっているところ。
誕生日月のメンバーお手製ケーキ販売は神野栄治が提案して始まったことで、星光騎士団の『ファンサが手厚い』の部分は主にこの手作り販売に起因する。
しかし、お客の質ももとより数に限りがあり、それに対する需要の急増で無理になってきていた。
あと、鏡音と柳の料理センスが終わっているのも。
「個人的にうちの近所の片森洋菓子店にレシピ提供して常設メニューにしてもらえたらって思うんですよね。泉さん、東雲の普通科卒業生ですし」
「「「誰」」」
「近所のケーキ屋さんのお兄さんです。小さい頃から仲良くしてもらっています」
「くっ……ジュンジュン、学校外にもそういう仲良しがいるのは知ってたけれど……まさか近所にまで……」
「なにが……?」
苦々しい表情の魁星。
マジで意味がわからなかったが、そういえば魁星は『淳を独占したい』みたいな気持ちがあるらしい。
それが初めて親しくなった友人故のものなのか、親にほとんど愛情も興味も与えられずに生活してきた人生の渇望からくるものなのかはわからないが。
それはそれとして、現在進行形で物販からなんだか悲鳴が聞こえてきている。
ステージ上で星光騎士団のあとの出番の魔王軍南軍が困惑しながらも、お客さんの関心をトークで引きつけていた。
「まあ、苳茉くんの家族でしょうね」
「あの家族なんで出禁になってないのぉ?」
「出禁になってないっていうか、なってても勝手に入ってくるって言ってましたよ。苳茉くんが」
「マジ蛮族じゃん」
案の定、スタッフに通報された警備員により騒ぎながら出口に連れていかれている。
柳のことがあってから、警備会社の意識もだいぶ変化したらしく質も向上していた。
それでも騒ぐのだから、生粋のDQNというのは本当に常識が歪んでいるんだろうな、と思う。
「化け物には化け物を、と思っていましたが……淳、今日は智子さんのストーカーさんは来場されていなかったんですか?」
「苳茉くんの家族にららちゃんをぶつけるつもりだったの!? いやいや、ららちゃんも仕事とかあるんじゃない!?」
「そうですか。鏡音のストーカーも兼ねていると聞いていたので復帰ライブには来るとおもっていたのですが」
「あ……周も結構ぶっ飛んだこと考えるようになったねぇ……!?」
にっこり微笑み返すが、この子いつの間にこんなにメンタル図々しくなったんだろうか。
いや、なんぼ強くなっていただいていいんだけれど。
「まあでもわざわざトラブルになるとわかってて販売を続けるもんじゃないしねぇ。やっぱり七月のドカてん誕生日以降は予約制にしよっかぁ。『イースト・ホーム』の登録者限定にしておけば『イースト・ホーム』の登録者数稼ぎに貢献したってことにもなるしねぇ……」
「さすが宇月先輩。すぐに星光騎士団ファンページから予約フォームの製作依頼をします。今発注すれば鏡音の誕生日月に間に合うでしょう」
「うんうん、よろしくねぇ。ナギー」
「「………………」」
後藤と思わずアイコンタクトしてしまった。
まずい、周が本当に最近宇月の似なくていいところが似てしまった。
その上しごでき人間なので宇月のアレなところを増長もさせてしまう。
宇月が見たことないぐらい悪い顔になっている。
というか、最近宇月の悪い顔率が高すぎないか?
あまりに悪いことをしている社長とその秘書みたいなんだが。
「あれぇ?」
そして、その悪い顔のまま宇月が人たちのいる場所よりも背後に目を向けて笑みを深めた。
淳たちも振り返ると、そこに現れたのはWalhalla。
表情の硬いリーダー石神真新。
飄々と興味もなさそうな折織理人。
目をキラキラさせている高倉ハヤト。
石神と同じく少し緊張気味に見えるのが陸奥更白刃。
「身の程をちょっとは理解できたかなぁ、Walhallaのジャリども~。今からお前らステージの上でフルボッコのボッコボッコになるんだけれど、お腹になにか入れたらあとでセンブリ茶を飲む時大変だからなにも食べない方がいいよお?」
「え、ははは……大丈夫ですよ! ま、負けませんから!」
言い返す元気はあるのか、しかし石神の声は震えている。
この子たち、プロデビューして間もないのに学生セミプロ相手にこんなに怯えて大丈夫なんだろうか?
確かに東雲学院芸能科の三大大手グループはセミプロの括りにするには市場規模からみても無視できない人気を誇る。
メンバーが“学生”故に三年で入れ替わってしまうのに、その名前と伝統でIGに五年連続出場。
(まあ、わかってて喧嘩売ったんだろうし……)
誕生日ケーキが販売されるとだいたい地獄のようなことになるのだが、想定していたよりも客が多かったせいなのと苳茉葵の家族が来ていたせいで舞台袖に下がった星光騎士団メンバーもそろそろ完全予約制にした方がいいか、それともレシピだけ提供して商店街のカフェかケーキ屋さんで常設メニューにしてもらうか、と話し合いが始まっているところ。
誕生日月のメンバーお手製ケーキ販売は神野栄治が提案して始まったことで、星光騎士団の『ファンサが手厚い』の部分は主にこの手作り販売に起因する。
しかし、お客の質ももとより数に限りがあり、それに対する需要の急増で無理になってきていた。
あと、鏡音と柳の料理センスが終わっているのも。
「個人的にうちの近所の片森洋菓子店にレシピ提供して常設メニューにしてもらえたらって思うんですよね。泉さん、東雲の普通科卒業生ですし」
「「「誰」」」
「近所のケーキ屋さんのお兄さんです。小さい頃から仲良くしてもらっています」
「くっ……ジュンジュン、学校外にもそういう仲良しがいるのは知ってたけれど……まさか近所にまで……」
「なにが……?」
苦々しい表情の魁星。
マジで意味がわからなかったが、そういえば魁星は『淳を独占したい』みたいな気持ちがあるらしい。
それが初めて親しくなった友人故のものなのか、親にほとんど愛情も興味も与えられずに生活してきた人生の渇望からくるものなのかはわからないが。
それはそれとして、現在進行形で物販からなんだか悲鳴が聞こえてきている。
ステージ上で星光騎士団のあとの出番の魔王軍南軍が困惑しながらも、お客さんの関心をトークで引きつけていた。
「まあ、苳茉くんの家族でしょうね」
「あの家族なんで出禁になってないのぉ?」
「出禁になってないっていうか、なってても勝手に入ってくるって言ってましたよ。苳茉くんが」
「マジ蛮族じゃん」
案の定、スタッフに通報された警備員により騒ぎながら出口に連れていかれている。
柳のことがあってから、警備会社の意識もだいぶ変化したらしく質も向上していた。
それでも騒ぐのだから、生粋のDQNというのは本当に常識が歪んでいるんだろうな、と思う。
「化け物には化け物を、と思っていましたが……淳、今日は智子さんのストーカーさんは来場されていなかったんですか?」
「苳茉くんの家族にららちゃんをぶつけるつもりだったの!? いやいや、ららちゃんも仕事とかあるんじゃない!?」
「そうですか。鏡音のストーカーも兼ねていると聞いていたので復帰ライブには来るとおもっていたのですが」
「あ……周も結構ぶっ飛んだこと考えるようになったねぇ……!?」
にっこり微笑み返すが、この子いつの間にこんなにメンタル図々しくなったんだろうか。
いや、なんぼ強くなっていただいていいんだけれど。
「まあでもわざわざトラブルになるとわかってて販売を続けるもんじゃないしねぇ。やっぱり七月のドカてん誕生日以降は予約制にしよっかぁ。『イースト・ホーム』の登録者限定にしておけば『イースト・ホーム』の登録者数稼ぎに貢献したってことにもなるしねぇ……」
「さすが宇月先輩。すぐに星光騎士団ファンページから予約フォームの製作依頼をします。今発注すれば鏡音の誕生日月に間に合うでしょう」
「うんうん、よろしくねぇ。ナギー」
「「………………」」
後藤と思わずアイコンタクトしてしまった。
まずい、周が本当に最近宇月の似なくていいところが似てしまった。
その上しごでき人間なので宇月のアレなところを増長もさせてしまう。
宇月が見たことないぐらい悪い顔になっている。
というか、最近宇月の悪い顔率が高すぎないか?
あまりに悪いことをしている社長とその秘書みたいなんだが。
「あれぇ?」
そして、その悪い顔のまま宇月が人たちのいる場所よりも背後に目を向けて笑みを深めた。
淳たちも振り返ると、そこに現れたのはWalhalla。
表情の硬いリーダー石神真新。
飄々と興味もなさそうな折織理人。
目をキラキラさせている高倉ハヤト。
石神と同じく少し緊張気味に見えるのが陸奥更白刃。
「身の程をちょっとは理解できたかなぁ、Walhallaのジャリども~。今からお前らステージの上でフルボッコのボッコボッコになるんだけれど、お腹になにか入れたらあとでセンブリ茶を飲む時大変だからなにも食べない方がいいよお?」
「え、ははは……大丈夫ですよ! ま、負けませんから!」
言い返す元気はあるのか、しかし石神の声は震えている。
この子たち、プロデビューして間もないのに学生セミプロ相手にこんなに怯えて大丈夫なんだろうか?
確かに東雲学院芸能科の三大大手グループはセミプロの括りにするには市場規模からみても無視できない人気を誇る。
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