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ゲーム内ナンパ注意(2)
しおりを挟む「ねえ、そこの君たち。もしかしてアイドル見にきたの?」
ルカに口を塞がれていてよかった、とシーナが思ってしまったのは仕方ない。
もし口を塞がれていたら「げっ」と声を漏らしてしまったと思う。
男が三人、ニコニコしながら話しかけてきた。
そこはかとなく花崗と綾城、魁星に似せているキャラクリ。
その三人に、後藤に似せたキャラクリの男が近づいて、合計四人になる。
「俺たちもアイドル見にきたんだけどさ、よかったら一緒にご飯食べながらライブ観戦しない?」
と、花崗似のアバターの人に言われ、四人は顔を見合わせる。
こいつら、シーナたちがネカマという考えには至らないものなのか?
声の設定も高くしているとはいえ、だ。
いや、こいつらが例の“騙り”とは限らない。
もう少し泳がせて詳しく話を聞くことにしよう。
「こほん……え、っと~、私たちに言ってます?」
「もち~。四人ともキャラクリ超かわいいね~。俺、アヤ」
「俺はヒマリ」
「俺はコタロー」
「俺はカイセイっていうんだ」
なんとか聞き返すシーナ。
まあ、全員の頭の上にネームは出ているんだけれど。
思わずもう一度顔を見合わせてしまう。
(((バカでは?)))
(まあまあ)
シーナとヒナとルカの真顔にバアルがニコニコしながら宥めるように肩を撫でてくる。
優しい。
「星光騎士団の卒業生や、今の第一部隊のアイドルと同じ名前なんですね」
すかさずバアルが柔らかな笑顔で話題を振ってやると、水を得た魚とばかりに「へへ、バレた?」と言い出す。
これ、本人の前で言っちゃうあたりバアルの正体を知ったら悶絶ものだろうなー、と思う三人。
「バアルさん」
「あ、シアさん」
「「「!?」」」
後ろから合流してきた美少女。
キャラクター名『シア』。
その姿はともかく、名前にギョッと目を見開くシーナたち。
忘れもしない、その名前とバアルの知り合いということで一人しか思い浮かばない。
(((え、えええええーーーー!? 婚約者さーーーん!?)))
さすがに星光騎士団メンバーなら知らないのは一年だけだろう、綾城珀の“元彼女さん”で、現在は“婚約者さん”。
彼女は現在海外に留学しておられ、綾城とは遠距離恋愛中。
SBO内でデートしている、とはさっき聞いたばかりだが、まさかいらっしゃるとは思わないだろう。
「え、え!? いらっしゃるとは聞いてへんかったんやけど……!?」
「会える時間が限られているので、お誘いしたんだよ」
「面白そうなのでご一緒してもいいですか?」
「「「も、もちろんです」」」
シーナたちの反応に、ポカーンとなるナンパ男四人。
腰を低くしてぺこぺこしてしまうシーナたちに、シアが「そんな、お気を使わなくて大丈夫ですよ」とおっしゃるが綾城の婚約者様は綾城の命の恩人であると有名。
あと、シンプルに年上。
「ちなみにこちらの人たちは?」
「ライブを一緒に観ましょうか、とお誘いを今されていたところなのです」
「え? ……あー、もしかして……?」
「そうなんですよね」
「あ……。なるほど~~~」
と、二人にしかわからない会話をしてから、目を合わせて不可思議な空気の笑いを浮かべ合う。
もしかして、綾城からちゃんとナンパ男たちについての説明も入っているのだろうか?
「ライブ、私も観てみたかったんですけど、ご一緒してもいいですか?」
「「「「もちろんー!」」」」
シアが聞くと、四バカは嬉しそうに声を揃える。
綾城と同じ金髪金顔設定の男、アヤはおそらく綾城珀役なのだろう。
その人、綾城珀本人なんですよ。
その人、綾城珀の婚約者ご本人なんですよ。
と、心の中で思うシーナとルカとヒナ。
笑いを堪えるのに必死。
「シーナちゃんっていうんだー。年いくつー?」
「ヒナちゃん、超かわいいね! リアルも可愛いんじゃなあい?」
「ルカちゃんスタイルいいなー。もしかしてリアルのスタイルインストールした感じ?」
「バアルちゃんって名前が独特だよね。なんかのゲームキャラだっけ? シアちゃんも珍しい名前だけど、二人ともゲームよくやってる感じ?」
アヤがバアルとシアを担当することになったらしく、シーナにはカイセイ、ルカにはコタロー、ヒナにはヒマリがそれぞれ横につく。
ヒナ、まさか自分を騙る輩が横に来ると思わずプルプル震えて笑顔が崩れかけている。
いや、大変気持ちはわかるけれども。
カイセイがしつこく「ね! シーナちゃん年いくつ? 教えてよー」と聞いてくるのでシーナも少し鬱陶しくなり、素直に教えてやることにした。
「年は十六歳です」
「まじ!? リアルJK!?」
「じぇー……? JKってなんですか?」
「えっ……」
意味はわかるが、わざとそう聞く。
固まるカイセイ。
「じょ、女子高生って意味だよ!」
コタローが助け舟とばかりに教えてくれるので、シーナは「え、へーーー?」とまだわからないが納得したふりをする。
それを見てヒナが「今時まだそれ使う人いるんやねー」と笑った。
最近聞かないが、女の年齢を一つの価値として見ている層には今も使われる言葉だと思う。
「あ、あはは? 今の子ってJK使わないんだ?」
「私は聞いたことなくて」
「わし、大学生やけどJKとか死語やね!」
「そ、そーなんだぁー」
ヒナが満面の笑顔で言い放つ。
ショックを受けたようなナンパ男たち。
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