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学力底辺たちの修羅場(2)
しおりを挟む「っていうか、実績で免除もあり得るんだったら俺は免除されたっていいだろう! なんで俺まで……!」
「馬鹿者! その実績を叩き潰すレベルの成績なんだお前は! それを自覚するところから始めろ! いいか、麻野。お前はこれまでの実績では庇いきれない馬鹿なんだ! 底辺学力だ。このままいけばお前はテレビでおばかキャラとして笑いものにされるだろう! お前自身がその恥辱に耐えられるのならいいが、お前のその無駄に高いプライドはそれを許容できるのか? それはそれで個性として売り出すのならそれもいいだろう。だがおばかキャラなんて一人二人いれば十分! 特にうちの学院は私立! そこからこんなにゴロゴロおばかキャラを出すわけにはいかん! つーか、業界としてもそんな馬鹿をゴロゴロ輩出したら学院の名に傷がつく! 業界としてもお馬鹿ばかりそんなにたくさん必要ない! いいか? お前ら全員このままだと中途半端なんだよ! だったら多少学力を上げて大学に進学して社会の役に立て!! それもできないなら底辺のまま上を眺めて文句だけ言っているクソみたいな生涯を送れ! これはお前たちの人生の最後の分岐点だ!」
淳と千景、沈黙。
ぶっちゃけ「そこまで言っちゃうんだぁ……」という気持ち。
あまりにも清々しく言い放つので、思わず桃花鳥の方を見てしまった。
しかし、先程まで散々逆ギレしていた学力底辺ワースト二十五人を見ると、目を背けたり俯いたりとお通夜な空気。
言葉の刃がこれでもかというほどにブッ刺さっている。
いや、あれは間違いなく刺さるだろうけれど。
あまりにも大剣で深く深くぶっ刺している。
いや、一刀両断?
「お前……お前……い、言い過ぎだろうぉ……」
「なにも言い過ぎではない。事実だ。直視しろ。おばかキャラで売ってお前のやりたいことができるのならそのまま突き進んでもいいぞ。できるとは思えんがな。それともやりたいことをやるために身を切るか?」
完全に地面に膝と手をついてしおしおになる麻野。
宇月もきついが桃花鳥もかなりきつい。
だが、学力底辺を黙らせるには、このくらいの正論パンチ力が必要だったようだ。
「で、他にもごちゃごちゃ文句を言っていたが気がいたが……どうした? 急に静かになったな? 文句があるなら受けて立つぞ」
桃花鳥が麻野の後ろの底辺学力たちを向くと、なんと果敢にも立ち上がるものがいた。
Walhallaの折織理人。
この黒髪黒目というアイドルとしてはなかなかに地味で見るからに優等生風の見た目でまさか平均点数15点。
ギャップだなぁ、と微笑ましく眺めていたが、まさかあれほど圧倒的な正論力を見せつけた桃花鳥に挑むというのか。
その後ろには他のWalhallaメンバーがよろよろと折織の制服の裾を掴む。
消え入りそうな声で「や、やめろ、これ以上は俺たちにもダメージが」とか聞こえる。
まあ、一人を叩き潰すのに全員巻き込んで叩き潰す言い方をするのでそりゃあ余波が怖い。
「お言葉ですが」
だが、仲間の制止も聞かずに折織がついに口を開いた。
マジかこいつ。
挑むのか、あれほどの正論を叩きつけられたあとで。
「オレにはそのおばかキャラの才能があります!!」
「「「お前はなにを言い出してんのぉぉぉおーーーーーー!?」」」
胸を張って思いもよらんことを言い出したぞ。
Walhallaの他のメンバーが涙まで滲ませて叫ぶ。
「……とりあえず最後まで聞こうか」
「先輩も言ってくださった通り、オレは雅な文学的な名前です。見た目も、いかにも勉強ができるタイプと言えるでしょう。Walhallaで並べばどう見てもオレが頭脳担当に見えるようです。ですが、そんなオレが勉強できない。成績は底辺。おばかキャラというギャップ。それがオレの売りなのです。そんな俺に勉強をしろ、というのは俺の売りを潰すことではありませんか?」
逆転の発想。
ギャップ狙い、ということか。
それを聞いた桃花鳥の、それはもう嫌そうな表情。
なにを聞いていたんだ、この馬鹿は。と、言いたげ。
だが、桃花鳥もドルオタ。
苦々しくも折織の言いたいことはわかる。
つまりWalhallaの中での立ち位置的な話をされているのだ。
グループ内での立ち位置がそうなのだから、アホのままでいいと。
忌々しいが言っていることに筋が通っているのがヤバい。
「だから俺以外のWalhallaの三人はちゃんと勉強させるべきだと思います!」
「「「う、裏切り者ーーーー!!」」」
仲間を売ったぞこいつ。
「浅はかなり、折織理人。貴様の主張は理解した。なら、そのギャップを活かすべくしっかりと底辺学力ユニットとして働いてもらおう。今、この場は勉強するかしないかの話をしているわけではない。その底辺学力という恥を晒して不名誉な学力底辺ユニットから逃れられないという事実を受け入れるかそうでないかの話をしている場だ。貴様自分で馬鹿の自覚があるならコラボユニットに入ることに異論はないということだな?」
「あ………………」
馬鹿、どうあがいても馬鹿。
「あ、ええと……つまり勉強しなくていいってことですか、ね?」
「パフォーマンスを通して勉強はしてもらうということだな」
「嫌です!?」
「よし、ではコラボユニットのメンバーをランダムで選出していく。観念しろ」
死刑宣告がなされた瞬間である。
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