アロマおたくは銀鷹卿の羽根の中。~召喚されたらいきなり血みどろになったけど、知識を生かして楽しく暮らします!

古森真朝

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プロローグ

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 「――おお、聖女様!! 良くぞ我らの召喚に応えて下さった!!」
 (……はい??)
 響き渡った知らない声と、その内容に驚いて目を開ける。涙で滲んだ理咲りさの視界に入ってきたのは、まったく見知らぬ場所だった。
 先程までいた、日中でも薄暗い非常階段とは打って変わって、光に溢れた場所。ヨーロッパの歴史深い国にある教会のような、巨大なステンドグラスの薔薇窓。差し込む陽光が虹色に染まっている。
 その美しい明かりの元、祭壇らしきものの手前に大勢の人々が並んでいた。中央にいる、すらりとした長身で金髪碧眼、ファンタジー作品に出てくる王侯貴族のような服装の青年が、再度にこやかに声を張り上げる。
 「我が名はクリスティアン、現国王の実弟にして王太子を拝命するもの。国を代表してお頼みいたします。どうか我れら民草をお救い下さい、麗しき聖女よ!!」
 「わ、私が聖女……!?」
 理咲に――では、ない。もっと手前に立っている、ふわっと巻いた髪と華やかな美貌が印象的な女性に向かって。あれは間違いなく知った顔だ。……今ここで会いたくはなかったけども。
 いや、それはこの際どうでもいい。今はとにかく、一刻も早く解決せねばならない問題がある。
 「……あのう、すみません」
 盛り上がる前方に向かって、出来る限り声を張る。幸い、すぐに気づいたらしき一同がこちらに視線を向けて――真っ青になった。
 それはまあ、そうだろう。七色に輝く光の中、床にへたり込んでいる血まみれの女がいたら。
 「なんでもいいので、大きめの布をもらえませんか……止血に使えそうなのを……」
 「ひいっ!?」
 「「「ぎゃあああああああ!?!」」」
 歴史的瞬間をぶち壊しにする流血沙汰に、その場が大騒ぎになった。




 (いやいやいや、叫びたいのはこっちなんですけど!)
 手当てどころか、パニックになって右往左往する一同に、未だ血みどろの理咲はため息を吐きたくなった。というか、もう吐いたかもしれない。何せ痛いわやかましいわで、ろくに周囲の情報が入ってこないのだ。
 ただ何かしらの儀式でもしたのか、妙に甘ったるい煙が漂っているのはわかる。おそらくは白檀で、フランキンセンスとかミルラも混ざっている気がした。とりあえず気を紛らわせるために、分かる範囲で現状を分析してみる。
 (……ええっと、さっきまで大学にいたよね? わたし)
 そう、次の講義を受けるために、外にある非常階段を上っていた。昼休み終了直前は混みあうから、エレベーターを避けて。――そしたら、気が付いたらここにいて、受け身も取れず倒れ込んで側頭部を打っていたのだ。その結果がこのありさまである。
 (ええ~、まじで? ホントに異世界転移なの?? マンガとか小説だけの話じゃなかったんだなぁ)
 のん気にそんなことを思っている間にも、血が髪を伝ってきて目に入る。傷の痛みとは比べ物にならないが、それでもやっぱり地味に沁みるので、瞬きして外に出そうと試してみた。お、良い感じに涙が出てきたかも……と、
 「――ご婦人、お気を確かに! こちらをお使い下さい」
 「、へっ? あ、どうも」
 突如降って湧いた声と共に、傷に背後から柔らかい布が押し当てられる。わーふわふわさらさら、と感動しているうちに、うずくまった体勢からひょいっ、と抱き上げられた。しかも背中と膝の裏を支える、いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
 誰がやってくれているのか、と顔を上げて、ようやく目が利かないのに気付いた。痛みと衝撃のせいだろう、いつの間にか視界が霞んでいる。身を固くしたのが伝わったらしく、先程よりもいっそう柔らかい口調で話しかけられる。
 「このまま医務室にお連れします。腕のいい医官がおりますゆえ、貴女を髪一筋ほども損ねは致しますまい。どうぞご安心を」
 「は、はぁい……」
 何気にすごいことを言われた気がする。ついでにこの、多分お兄さんだけど、声がめちゃくちゃ良い。低くてよく通って、こんなふうに話しかけられるととても落ち着く。それからほんのりとだが、大変好ましい香りがした。自分がケガをしているせいで、ちょっと分かりづらいけれど、
 (――あぁ、ラベンダーだ。こういう優しい人に、よく似合いそう)
 おそらくかなり急ぎ足で、でも出来るだけ揺らさないように、慎重に歩いてくれているのがわかる。そんな心地よい微振動を感じつつ、ひとまず命の危機は脱したと思われる理咲は、うとうとしながら運ばれていった。

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