転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶

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二 学園編

それぞれの道

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 学園の中等部も残り少なくなった。俺たち中等部の生徒は卒業した後、みんながみんな高等部へ進むわけではない。
   
 裕福な商人の子どもたちは、大概中等部を卒業すると、家業の手伝いに戻る。学園は一般教養を身につけ、商売の人脈づくりをする場なのだ。地方に領地を持つ者にとっても商会との繋がりは大事だからwin-winだ。彼らの中には卒業と同時にキャラバンに参加したり、貿易船で海を渡る者もいる。

「ある意味、羨ましいよな」

 ユージーンが彼方を見るような眼差しで言う。海は彼には永遠の憧れなのだ。



 夏の休みに入ってすぐ、辺境領に帰る前に、兄上が港町の視察に連れていってくれた時は、とんでもなく大はしゃぎだった。
 お土産の海の幸をしこたまマジックボックスに詰め込んで、意気揚々と帰っていった。
 ミシェルは母親へのお土産に珊瑚や真珠の髪飾りやアクセサリーを買っていた。シルヴァは海の国だった。母親は泣いて喜んでいた、と手紙がきた。

 俺たちが送った海の幸も元気を取り戻した母親が、楽しそうに料理をしていた、と言っていた。



 俺にとっても海は懐かしい場所だ。
 前世の俺の育った場所は内陸だったけど、夏休みになると海辺の親戚の家に泊まりに行った。兄貴とふたり、切符を握りしめて、電車に乗って遠くの町に行くのは、いつもドキドキした。海に近づくと少し開けた窓から潮の匂いがして、テンションが上がった。
 俺が中学に入る頃には兄貴が車の免許を取って、俺と妹を海水浴に連れていってくれた。ちょっとボロい中古車だったけど、でもすごく楽しかった。浜辺で食べるイカ焼きや焼きそばが大好きだった、

 隊に入って、団に配属された時はめちゃくちゃ嬉しかった。駐屯地は昔からの軍港のすぐ傍で、いつも潮の匂いがしていた。海の怖さもその時に初めて思い知った。
 悠介は島の出身で、泳ぎがすごく上手かった。小さい頃から潜って魚を取ったりしていた、と言っていた。
 一度、休暇で家に招かれた時には、風の強さに驚いた。
『俺の先祖は海賊なんですよ』
と悪辣さの欠片も無い顔で笑っていた。






「そう言えば、ハンスは騎士学校に行くって言ってたな」

「うん」

 ハンス・ヒューズ男爵子息は、一年の学園祭の猫事件からガラッと変わった。
 何気にデカイ図体で俺たちの後を付いて回るようになっていた。
俺たちの朝練にもいつの間にか、ツレの子爵令息たちと参加するようになって、奴らが挫折した後もずっと食いついてきてる。
 なかなか根性がある。


 ただね.....

 おかげで上級生もドン引きの一団になっちまった。まぁ校内の苛めは無くなったけどさ。『影の風紀委員』とか言われてさ。
 表の風紀委員には、授業中居眠りしてて、しょっちゅう注意されてたけどな。だって、つまんねえんだもん、座学って。

 ハンスはヒューズ男爵家の長男なんだけど、厳格な父親にポンコツ扱いされて育ったんだって。
 しかもハンスの母親は早くに無くなって、父親は平民の愛人のところに入り浸りって、そりゃグレるわ。

「俺には出来のいい弟がいて、親父も弟に家を継がせたがってな」

 しかも弟さん、亡くなったお母さんと良く似てるし、小さい頃はハンスが世話焼いてたんだって。意外。

「あいつは俺のこと慕ってくれてたから、あいつを憎む気にもなれなくて」

 苦悩するね、青少年。それで平民苛めはあかんだろ。
 問題起こして退学になれば、廃嫡されるだろうと思って......」

「自虐かよ。......良くないぜ」

 ユージーンが呆れたように言う。俺も同感。

「でも、俺、目標を見つけたんです。騎士になって、大事な人を守れるようになりたい」

 うん、前向きでいいね。
 良かった、良かった。

 と、すくっ......と立ち上がるハンスくん。
 俺の手を取って立たせ、いきなり足元にひざまづく。

「リューディス・アマーティア。我が女王。立派な騎士となって生涯、あなたを守ります」

 はあぁ~?

 一気にザワつく教室内。

 ミシェルは固まるし、ユージーンの顔が赤鬼みたいになってる。

「リューディスには俺がいる!」

 いや、お前もそれちょっと違う。
 だいたい、なんだその女王ってのは?
 俺は男だぞ。

「クロードさんに後任の予約、取り付けました。精進して、クロードさんに負けない護衛騎士になります!」

 おい、いつの間にそんな約束取り付けたんだ?

 教室の外に目をやると、クロードの奴ってば、思いっきり知らんぷり。後で締め上げてやるからな。

 まあ、護衛騎士と聞いてユージーンは静まったけど。
 ミシェルが頭を抱えてた。

「攻略対象が......」

って、いや、だからそれ何?





 モーリスは何故か王立図書館にスカウトされた。

「いや~そろそろ後継が欲しいと思ってたんだよね」

とラツィオ先生。モーリスの復元魔法目当てなのが見え見えですが。

「いや、それだけじゃないよ。彼は算術も得意だし。文書整理にも長けてる」

 そこかよ!相変わらずだな、先生。

「復元魔法は僕も使えるんだよ。図書館員には必須の魔法なんだ」

 ソレハシリマセンデシタ。

 どうりで職員少ない筈だよね、王立図書館。復元魔法使える人なんて滅多にいないもん。

 王立図書館は博物館も兼ねてるから、喉から手が出るほど欲しい貴重な人材なんだって。

 まあモーリス的に言っても、

「好きなだけ勉強出来るし、手当てもいいんだ」

ってことで、あっさり雇用契約締結。

 ちなみに、ザ・学者さまのハーミットさまは図書館希望したけど、復元魔法が使えないので、アウト。

 ある意味、高位貴族を悔しがらせるモーリスくん。
 プロフェッショナルは強いよな。


 他にも騎士学校や魔術学校に進む者もいて、結局、高等部に進むのは俺たち三人を含めた二十人足らず。

 やっぱりちょっと寂しくなった。
 
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