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二 学園編
専門外なんですけど......
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冬の休みが終われば新学年、の前にマクシミリアン殿下方三年生の卒業式がある。
殿下は卒業されると同時に王太子殿下と共に国政を担われることになる。
俺としてはミシェルの仕上がりが少々気になるところだが、こればかりは周りが何を言っても仕方がない。本人の自覚を待つより無いのだ。
もともとミシェルはみちるだった時から頭は悪くない。ネジの二三本ぶっ飛んでいるところはあるが、回転はいいし、要領の掴み方もわかってる。俺と違って。
現在の王妃さまとも王太子妃さまとも上手くやっているようだ。これで前世で結婚しなかった理由がわからない。
やはりー忙し過ぎたーというのが本当のところかもしれない。
つらつらとそんなことを考えている折に、マクシミリアン殿下から呼び出しがあった。
まぁ今さらなことは言わないだろうから、ミシェルが何かやらかしたかーまあそれも大いに心配なんだけど、少々不安を抱えながら王宮に出向いた。
「リューディス・アマーティア、参りました」
殿下の王子宮のサロンに通されると、殿下とラフィエルさま、ダグラスさまがおいでになった。以前はこのメンバーの中にハーミットさまもいらしたことを考えると、寂しいやら申し訳ないやらの気持ちになる。
「よく来たね、リューディス。まずは座りなさい」
殿下が勧めてくださった椅子にそっと腰を降ろす。何気に皆の視線が痛い。
お茶が運ばれ、侍従がひとしきり給仕を終えて出ていったところで、ラフィエルさまが口を開いた。
「リューディス、率直に言おう。私たちはとても困っている。理由は......わかるね」
俺は先輩方の視線に縮まりながら、素直に答えた。
「ハーミットさまの事ですよね.....」
「そうだ」
ダグラスさまが厳しい口調で言う。
「罪咎はリンデン公爵にあったのは明白だし、君の父上が純然たる被害者であることは事実だ。しかし......」
「ハーミットには、マクシミリアン殿下の側近としての役目があったのですよ。ー彼の抜けた穴は大きい」
ラフィエルさまの仰るとおりだ。
「今から選定し直すにも、該当するような貴族子弟が見当たらないのだ。......政治的な欲が強いものが多くてな」
マクシミリアン殿下が重い息を吐いた。気持ちはわかる。リンデン公爵家にとって代わろうという有力貴族は多い。是非にもこの機会を逃すまいと躍起になるのは明々白々だ。
「申し訳ございません.....」
俺は俯き、ともかくも詫びねばいけないと思った。
「責任を取ってくれるね、リューディス?」
「責任って......」
なんか最近、こんなことばっかり言われてる気がする。みんな俺のせいじゃないとは思うけど、そんなことは言えない。
「率直に言えば、我々は殿下の側近に相応しい人材を必要としている」
「相応しい人物って.......」
俺は頭の中で必死に考えを巡らせた。思い浮かぶのは......
「ユージーン・カーレントは?」
口にした途端に、殿下に首を振られた。
「彼は駄目だ。辺境伯を継がねばならない」
そうだ。側近となれば、ずっと王都で殿下の側に仕えなければならない。
「では、ルツカ・フォーランドは?」
うん、彼は頭いいもの。
しかし、これはダグラスさまが首を振った。
「お母君から断りがきた」
はい?
「フォーランド侯爵家の跡取りだし、父親が破天荒過ぎて、いつ陛下の不興を買うかわからないので、辞退したいとのことだ」
.......まあ、アル叔父上の素行を考えるとわからなくはない。
俺は必死に考えた。
「では、モーリス・ラツィオはいかがでしょうか?」
彼は博識だし、元は平民とは言え、ラツィオ伯爵家の養子に入って貴族になったし......。
「あの図書館長が養子にするほど見込んだ青年を手放すと思うかい?」
確かに......復元魔術の奥義まで授けた愛弟子ですもんね。
「......という訳だから、リューディス・アマーティア、相応な人材を探し出すまで、君が殿下の側に仕えたまえ」
えーーーーーっ!
「いえ、僕などでは......」
俺、ザ・学者さまのハーミットさまと違って頭悪いんですけど?歩く百科事典の代わりなんて、とてもじゃないけど務まりません。無理、無理、無理ぃ~。
「君には、私たちの知らない世界の知識があるだろう。それを活かせばいい」
いや、そうは仰いますが......。
「それに君は兄君、王太子殿下や妃殿下とも懇意だ。君の兄上は王太子殿下の側近でもある」
そう、そこなんだよね。
専横とか言われてアマーティア家が目の敵にされるのは困る。
「むしろ、他の貴族の反感を買うのでは......」
「ならば、一刻も早く人材を探し出して来なさい」
ひえ......ラフィエルさまの視線が怖い。
「殿下が妥協して後宮に入れるのを断念されたのです。その恩義に応えなさい」
後宮って.......殿下、マジでそんなことを考えてたんですか?
「何なら、今から王子妃教育を受けて妃になってもいいぞ?ミシェルもリューディスならいいと言ってるしな」
殿下、悪い顔で微笑まないで。そんなのダメ!絶対!
「わ、わかりました。必ずや探して参りますっ!」
立ち上がり、深々と頭を下げる。
ー殿下もラフィエルさまたちも本気だー
マジで探さないと、アマーティア家が反感を買う。
いや、それ以上に、俺は王宮詰めは回避したい。俺の冒険者の夢が断たれてしまう。非常にマズイ。
「頑張りなさい」
そんなぁ......ラフィエルさまたちも探してくださいよ.....。
ふふっ......と形の良い唇が不穏な笑みを浮かべる。心、読みましたね。
「冒険者なんかよりも王宮の闇の探索のほうが楽しいかもしれませんよ」
絶対、イヤですっ!
殿下は卒業されると同時に王太子殿下と共に国政を担われることになる。
俺としてはミシェルの仕上がりが少々気になるところだが、こればかりは周りが何を言っても仕方がない。本人の自覚を待つより無いのだ。
もともとミシェルはみちるだった時から頭は悪くない。ネジの二三本ぶっ飛んでいるところはあるが、回転はいいし、要領の掴み方もわかってる。俺と違って。
現在の王妃さまとも王太子妃さまとも上手くやっているようだ。これで前世で結婚しなかった理由がわからない。
やはりー忙し過ぎたーというのが本当のところかもしれない。
つらつらとそんなことを考えている折に、マクシミリアン殿下から呼び出しがあった。
まぁ今さらなことは言わないだろうから、ミシェルが何かやらかしたかーまあそれも大いに心配なんだけど、少々不安を抱えながら王宮に出向いた。
「リューディス・アマーティア、参りました」
殿下の王子宮のサロンに通されると、殿下とラフィエルさま、ダグラスさまがおいでになった。以前はこのメンバーの中にハーミットさまもいらしたことを考えると、寂しいやら申し訳ないやらの気持ちになる。
「よく来たね、リューディス。まずは座りなさい」
殿下が勧めてくださった椅子にそっと腰を降ろす。何気に皆の視線が痛い。
お茶が運ばれ、侍従がひとしきり給仕を終えて出ていったところで、ラフィエルさまが口を開いた。
「リューディス、率直に言おう。私たちはとても困っている。理由は......わかるね」
俺は先輩方の視線に縮まりながら、素直に答えた。
「ハーミットさまの事ですよね.....」
「そうだ」
ダグラスさまが厳しい口調で言う。
「罪咎はリンデン公爵にあったのは明白だし、君の父上が純然たる被害者であることは事実だ。しかし......」
「ハーミットには、マクシミリアン殿下の側近としての役目があったのですよ。ー彼の抜けた穴は大きい」
ラフィエルさまの仰るとおりだ。
「今から選定し直すにも、該当するような貴族子弟が見当たらないのだ。......政治的な欲が強いものが多くてな」
マクシミリアン殿下が重い息を吐いた。気持ちはわかる。リンデン公爵家にとって代わろうという有力貴族は多い。是非にもこの機会を逃すまいと躍起になるのは明々白々だ。
「申し訳ございません.....」
俺は俯き、ともかくも詫びねばいけないと思った。
「責任を取ってくれるね、リューディス?」
「責任って......」
なんか最近、こんなことばっかり言われてる気がする。みんな俺のせいじゃないとは思うけど、そんなことは言えない。
「率直に言えば、我々は殿下の側近に相応しい人材を必要としている」
「相応しい人物って.......」
俺は頭の中で必死に考えを巡らせた。思い浮かぶのは......
「ユージーン・カーレントは?」
口にした途端に、殿下に首を振られた。
「彼は駄目だ。辺境伯を継がねばならない」
そうだ。側近となれば、ずっと王都で殿下の側に仕えなければならない。
「では、ルツカ・フォーランドは?」
うん、彼は頭いいもの。
しかし、これはダグラスさまが首を振った。
「お母君から断りがきた」
はい?
「フォーランド侯爵家の跡取りだし、父親が破天荒過ぎて、いつ陛下の不興を買うかわからないので、辞退したいとのことだ」
.......まあ、アル叔父上の素行を考えるとわからなくはない。
俺は必死に考えた。
「では、モーリス・ラツィオはいかがでしょうか?」
彼は博識だし、元は平民とは言え、ラツィオ伯爵家の養子に入って貴族になったし......。
「あの図書館長が養子にするほど見込んだ青年を手放すと思うかい?」
確かに......復元魔術の奥義まで授けた愛弟子ですもんね。
「......という訳だから、リューディス・アマーティア、相応な人材を探し出すまで、君が殿下の側に仕えたまえ」
えーーーーーっ!
「いえ、僕などでは......」
俺、ザ・学者さまのハーミットさまと違って頭悪いんですけど?歩く百科事典の代わりなんて、とてもじゃないけど務まりません。無理、無理、無理ぃ~。
「君には、私たちの知らない世界の知識があるだろう。それを活かせばいい」
いや、そうは仰いますが......。
「それに君は兄君、王太子殿下や妃殿下とも懇意だ。君の兄上は王太子殿下の側近でもある」
そう、そこなんだよね。
専横とか言われてアマーティア家が目の敵にされるのは困る。
「むしろ、他の貴族の反感を買うのでは......」
「ならば、一刻も早く人材を探し出して来なさい」
ひえ......ラフィエルさまの視線が怖い。
「殿下が妥協して後宮に入れるのを断念されたのです。その恩義に応えなさい」
後宮って.......殿下、マジでそんなことを考えてたんですか?
「何なら、今から王子妃教育を受けて妃になってもいいぞ?ミシェルもリューディスならいいと言ってるしな」
殿下、悪い顔で微笑まないで。そんなのダメ!絶対!
「わ、わかりました。必ずや探して参りますっ!」
立ち上がり、深々と頭を下げる。
ー殿下もラフィエルさまたちも本気だー
マジで探さないと、アマーティア家が反感を買う。
いや、それ以上に、俺は王宮詰めは回避したい。俺の冒険者の夢が断たれてしまう。非常にマズイ。
「頑張りなさい」
そんなぁ......ラフィエルさまたちも探してくださいよ.....。
ふふっ......と形の良い唇が不穏な笑みを浮かべる。心、読みましたね。
「冒険者なんかよりも王宮の闇の探索のほうが楽しいかもしれませんよ」
絶対、イヤですっ!
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