【完結】かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜

倉橋 玲

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第3章 虚ろの淵より来たるもの

終局 2

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 落ち着きを取り戻した様子の少年を一瞥してから、黄の王はあーっと間延びした声を出し、ぱんっと手を打った。
「辛気臭ぇ話しててもしゃーねーわな! 取り敢えず、赤と黄にとんでもねぇ強襲があった割に、結果的に死者は一名だけってのは大健闘ってことでいーだろ! 俺頑張った! 偉い!」
 おちゃらけた調子で言った黄の王に、しかし少年は思わず彼を見つめた。
「……一名……?」
 さきほど、赤の国で死者は出なかったと彼は言った。ならば、その一名は黄の国の民だということになる。
 耳聡く聞き返した少年を赤の王がちらりと見たが、彼は何も言わず、黄の王へと視線を戻した。そんな赤の王の目の動きをしっかりと見ていたらしい黄の王が、僅かに指を震わせる。だが、普段と変わらぬどこかふざけた表情を浮かべたまま、黄の王は肩を竦めてみせた。
「ああ、一名。ま、あれをうちの被害とみなすか帝国の被害とみなすかは知らねーけど」
「あ、あの、どういう……」
 民を失った王にしては、あまりにも淡白な反応だ。
 困惑する少年に対し、黄の王は面倒臭そうに溜息を吐いたあと、ひらひらと手を振った。
「アメリアが帝国の間者だったんだよ。だから殺した。そんでもって、一応うちの国民だったから被害一名。ま、実質被害ゼロってことだ。何よりだな」
 何でもないことのように言われた言葉に、少年が目を見開いて息を呑む。
「っ……、な、なん、で……」
 掠れた言葉に、しかし黄の王は鬱陶しそうにまた溜息を吐いた。
「なんでもクソもねーよ。元々帝国が、うちの王宮内に潜入させるために用意した女だったって話だ。そんでもって、正体現して俺に剣を向けて来たから、反逆罪としてその場で処刑した。これ以上に判りやすい説明はねーぞ。納得したな?」
 もう話すことはないと言わんばかりの声に、しかし少年は問い返さずにはいられなかった。
「で、でも、あの、だって……、」
 少年の声が震える。瞳の潤みが一層増し、理解できない現実を拒むように唇が音を紡ぐ。
「ア、メリアさん、は、リィンスタット王陛下の、ことを、」
 本当に、心の底から愛していたのに。
 彼女と会って間もない少年がそう確信できるほどに、深く彼を愛していたのに。それをこんな、反逆者というひとことで片づけるような扱いをするだなんて。
 きっと彼女には何か事情があったはずだ。絶対にそうに決まっている。だってあの声は、きっと愛する人相手にしか出すことができない音だ。愛情のなんたるかを知らない少年に、それを教えてくれるほどに深いものだったのだ。そんな、尊いとすら思えるような彼女の感情が、否定されて良い訳がない。
 そう思った少年は、しかし続く言葉を発することができなかった。だが、潤み切った彼の瞳は、言葉よりもずっと雄弁に思いを語ったのだろう。
 つい、と目を逸らした黄の王が、次いで赤の王を見て笑った。
「あんたすげーな。俺にゃ無理だわ」
 その言葉を受け、赤の王もまた静かに笑みを浮かべる。
「貴殿も知っているだろう? 私はそういったものには鈍い」
 赤の王の言葉に、黄の王がまた小さく笑った。
「それで、クラリオ王。彼女のことはどう処理するつもりだ?」
 処理、という単語に少年が過剰に反応して赤の王を見上げたが、彼は黄の王を見つめたまま視線を動かさない。
「あー、熟考したんだけど、反逆者として処理するのが一番合理的だな。間者であったことまで明かして、俺はそれを知っていた上で泳がせてた、って筋書きが良い。実際嘘はついてねーし。勿論反逆者ってのを伏せる手も考えたが、そうすると嫁一人守れなかった国王ってことになっちまう。そりゃあちょっと国民ウケが良くねぇよなぁ」
「ふむ。他国のことに口を出す気はないが、私も同意見だ。今は無暗に国民の不安を煽るような真似は避けるべきだろうな」
 そう言った赤の王に、黄の王が頷きを返す。
「そーいうこった。つーわけで、これで正真正銘この話は終わり。悪ぃけど、俺はそろそろ休ませて貰うわ。なんせ夜明け前からここまでずっと働き詰めだったんで、もう限界なのよ。いい加減寝てーの」
「ああ、それはそうだろうな。お陰で現状は把握できたし、私の方からも今すぐ話したいことはない。それでは、私たちも部屋に戻るとしよう。引き続きキョウヤの部屋を一緒に使って構わないのだろう?」
「おー。これ以上男に貸す部屋はねーからな。二人で詰まっといてくれや」
 そう言った黄の王が立ち上がり、部屋を出て行こうとする。だが、彼の身体が扉を潜る前に、赤の王がその名を呼んだ。
「クラリオ王」
 呼ばれた黄の王が、背を向けたまま立ち止まる。その背に向かい、赤の王は言葉を投げた。
「この王宮には何度か訪れているからな。勝手知ったるなんとやらだ。故に、私とキョウヤのことは気にしなくて良い」
 普段と変わらぬ、落ち着いた低い声だ。少なくとも少年にはそう聞こえた。
 そんな赤の王の言葉に、黄の王が顔だけで振り返る。そして彼は、赤の王を見て笑ってみせた。
「俺やっぱ、あんたのそういうとこ嫌いだわ」
 そう言い残して出て行った黄の王に、少年が思わず赤の王の裾を弱く握る。それに気づいた王は、裾に触れる手を取ってそっと握った。
「あ、の……」
 小さな声が、ぽつりと零れる。その先を言うべきかと迷いを見せた少年だったが、王はただ、黙って次の言葉を待っているようだった。
「……僕、もしかして、リィンスタット王陛下に、酷いことを言ってしまった、の、かな……」
 別に、確証があった訳ではない。ただの漠然とした不安だ。アメリアが黄の王を愛していたように、黄の王もまた、心の底からアメリアを愛していたように思えたから。
 黄の王に対して吐いた言葉を悔やむように俯いた少年の頭を、王が撫でる。
「酷いこと、ではないさ。お前の言葉も行動も、真っ当な人間の反応だ。そしてクラリオ王には、それを受け止める義務がある。それにもしお前が間違っていたなら、私が止めた。私が止めなかったのだから、そういうことだ」
 その言葉で、少年は悟る。やはり、自分はあの王を酷く傷つけたのだ。
 ならば、たとえ少年の反応が当然のものだったとしても、それはやはり間違いなのではないか。そう思い、それを口にした少年だったが、赤の王は首を横に振った。
「私たちは王だ。人という個である前に、王であらねばならない。だが、人の上に立つ者である以上、人でなくなって良い訳でもない。そして私たちが人であるためには、人として断罪される必要もあるのだ。だから私は止めなかった。クラリオ王が、お前の真っ当な疑問と悲しみと訴えで歩みを止めるような男ならば、王である資格はない。正当な断罪で折れるようなか弱い王は、必要ない」
 なんて酷いことを言うのだろう。王は人だ。選ばれた人間が王という地位を与えられるのだから、人でしかない。それなのに、王という、人ではない化け物のような何かであることが求められ、それでいて化け物になり切ることも許されないだなんて。
 ならば、王が持つ人としての感情はどこへ行くと言うのだ。どうしようもない悲嘆も、慟哭も、何一つ許されないと言うのか。
「……お、妃さま、とか、なら、」
 少年の言わんとしていることを察したのだろう王は、しかしやはり首を横に振った。
「妃は国民だ。子も、宰相も、騎士団長も、全て国民だ。王には国民を守る義務がある。守るべき存在に凭れ掛かることはできない」
「そんな……」
 悲壮な顔をした少年の頭を、王が優しく撫で続ける。聞き分けのない子供を諫めているようでいて、悪夢に跳び起きた子を宥めるようでもある、不思議な手つきだ。
「有事の際、優劣のない国民の命に価値をつけ、優先順位を定めるのが国王だからな。そんな勝手を許してくれる相手に、どうして頼ることができようか。王の重荷を少し負担してくれなど、口が裂けても言える筈がない。重荷の全てを担うからこその王だ。それ故に許されている権力なのだ。……私の言っていることは判るな?」
 王の優しい声が鼓膜を震わせる。きっと彼の言葉は正しいのだろう。少年だって、言われている理屈は判る。判るけれど、
「…………でも、じゃあ、王様は誰にも、頼れないの……?」
 王の責務は、ちっぽけな人間がたった一人で背負うにはあまりにも重すぎる。
 きっと、赤の王と関わることがなければ一生知ることがなかった事実だ。国王は皆、己の重責を国民に伝えようなどとは考えていないのだろう。だから、近しい家族や臣下ならば察することができるのかもしれないが、多くの民はこのことを知らないのではないだろうか。少年だって、こうして知ることがなければ考えもしなかった。
 きっと円卓の王国は、王を生贄にして守られてきたのだ。
 辿り着いてしまった真実に、少年が悲壮な表情を浮かべる。しかし赤の王は、そんな彼に向かって優しく微笑んだ。
「そう悲しい顔をするものではないぞ、キョウヤ。王というのは、お前が考えているほど嫌なことばかりではない。民が幸せそうに暮らしている姿を見るのはきっと嬉しく、民から寄せられる信頼はきっと心地よいのだ。自らの行いで国を良い方向へと導けたときの幸福は、きっと何にも代えがたいものだろう。……それに、お前は何か勘違いをしているようだが、別に国王は独りぼっちという訳でもないのだぞ?」
「…………ひとりじゃ、ない……?」
 家族も家臣も頼れないのに、と思った少年に、王が笑いかける。
「忘れたか? 王獣がいるではないか」





 王宮の最上階。その隅の方にある屋根裏部屋のような小部屋に、クラリオはいた。
 使われることがほとんどないこの小部屋は、ほんのたまに侍女が清掃をしにやってくることを除けば、クラリオ以外に入る者のいない場所だ。クラリオ自身滅多に使うことがないので、清掃も週に一度あるかどうかといった程度である。王宮の清掃だと考えると些か問題がある頻度だが、それで良いと言ったのはクラリオ自身だ。
 部屋の中に置かれているのは、床を覆う絨毯と、大量のクッションと、薄い上掛け。それから、小さなランプだけだった。大きな窓があるから、昼は随分明るい部屋なのだが、ちょうど今のような夜には、少し暗すぎるくらいだ。
 薄暗い部屋の中で、クッションの山に倒れ込むようにして転がったクラリオは、上掛けに包まって目を閉じた。
 最後にここに来たのは、三年ほど前だっただろうか。意外と昔のようにも思えるし、つい最近のようにも思える。
 自分で刺した腿の傷がじくりと痛んだ気がして、クラリオは僅かに眉根を寄せた。あの傷は、家臣による回復魔法で完治した筈だ。それでもなお痛むのは、きっと心の問題なのだろう。
 重く息を吐いたクラリオが、手近なクッションを引き寄せて抱き締め、背を丸めた。
 静かな部屋だ。聞こえる音といったら、クラリオ自身の呼吸と、身じろぐ際に鳴る衣擦れの音だけ。
 時折、彼を心配するように風の乙女たちが髪を揺らして来たが、今のクラリオはそれに応えようとは思わなかった。
 自分の行いに後悔はない。間違っているとも思わない。あれ以上のことができる人間など、絶対に存在しない。だから、クラリオの選択はこの上なく正しいものであった。それはきっと、神だって否定できない。
 だから、これ以上考えるのは無駄だ。ただの時間の浪費でしかない。赤の王のことを考えれば状況は未だに芳しくなく、クラリオにはまだまだすべきことが残っている。早く、飲みこまなければ。上辺だけではなく、きちんと飲みこまなければ。
 クラリオの唇が引き結ばれ、耐えるように噛み締められた歯がぎしりと音を立てた。
 だがそのとき、ふと吹いた風に、クラリオが瞼を開ける。そして風が吹いてくる方へと顔を向けたクラリオは、色々な感情がないまぜになったような顔で、くしゃりと笑った。
「なんだ、お前かよ」
 風霊によって静かに開けられた窓の外には、雷の毛並みを持つ王獣が佇んでいた。
 静かに部屋に入って来た獣が、そのままゆっくりとクラリオの傍へと向かって来る。クラリオは、ただ寝転がったままそれを眺めていた。
 王獣に指示された風霊が窓を閉めてから、ふわりと溶けるようにして消える。きっと、王獣に出て行けと言われたのだろう。かわいい風の乙女に酷いことしやがる、とクラリオは思った。
 クッションに埋もれるクラリオの前まで来た王獣は、じっと彼を見つめたあと、おもむろにその襟首を咥えてクラリオを持ち上げた。
「おいぃ!?」
 突然のことに間抜けな声を上げたクラリオを無視してその場に伏せた王獣は、咥えたままの彼の身体を器用に振り回し、自分の身体の側面にぶつけるようにして離した。
 見事に顔面から王獣の毛並みに突っ込み、固い毛先が鼻に刺さったらしいクラリオが、ぬおおおお、と悶絶するような声を出したが、王獣は我関せずといった様子だ。
「何すんだてめー!」
 大きな声を出したクラリオを、今度は王獣が喚んだ小さな雷が襲う。殺傷力を持たせたものではないが、それでもそこそこ痛覚を刺激するそれに、クラリオは再び悲鳴を上げた。
「いってぇ!」
 叫んだクラリオの目に痛みによる反射的な涙が滲み、そのままぽとりと目端から零れた。そしてそれを皮切りに、まるで堰を切ったかのように、後から後から雫が溢れ出す。
 ぽたぽたと落ちてくるそれに少しの間だけ呆けたような顔をしていたクラリオは、ぺたりと自分の頬に触れてから、濡れた指先を見つめた。その間にも、溢れる雫は止まることを忘れたように落ち続ける。
「…………あー……」
 小さな声が、彼の唇から洩れた。
 王獣は顔を前に向けたまま、振り返らない。そんな獣の顔を斜め後ろから見たクラリオは、次いで顔を戻して、固い毛並みに額を押し当てた。馬鹿みたいに落ちる涙が王獣の毛を濡らしたが、知ったことではない。
「………………ちょっと、堪えた」
 声が震えてしまったのがどうしようもなく情けなかったが、今更だ。
「ちょっと、じゃない。すげぇ、堪えたな」
 ぽつり、ぽつり、と。涙に続いて、言葉までもが溢れて来る。
「何が、って言われると、困るんだけどさ。つーか、多分、全部。魔法、きつかったし、苦しかったし。脚もいてーしさ。なんでここまでしなきゃなんねーんだよ、って。挙句、愛した女殺してさ。死体の処理どうしようとか、普通考えねーって。頭、おかしいんだよ。もう、絶対、壊れてんの」
 王獣に触れているクラリオの手が、雷の毛並みを強く掴んだ。
「助けたかった、んだ。信じては、貰えなかったけど、でも、信じて、欲しかった。選んで、あげたかった。全部、選びたかった。全部」
 引き攣るような息の音が、言葉の合間に喉を震わせる。
「でも、俺は、王だ」
 絶望に嘆く悲鳴のような声が、クラリオの喉から絞り出された。
 そうだ。クラリオは王だ。王は決して英雄にはなれない。全てを賭けて全てを選ぶことは、絶対に許されない。王が賭すことを許されるのは、己のみだ。ただのひとつも取りこぼさないために、全てを失うかもしれない賭けには出られない。それができるのは、一切の責任を負わない英雄だけだ。その博打に勝てた者だけが英雄なのだ。ならば、クラリオは何がどうあろうと英雄にはなれない。王であるクラリオは、十のための一を、百のための十を、捨てることしかできない。そしてその一が、十が、今回はたまたま自分の愛する人だった。それだけだ。
「……もう、」
 それは、飲みこまれるべき言葉なのだろう。けれど、ここには王獣しかいない。唯一国王と対等である獣しか、いない。
「……っ、もう、……王なんて、嫌だ……!」
 震える慟哭が、王獣の耳を叩く。
「っ、なんで俺なんだ!? なんで俺が! 俺ばっかり! 俺じゃなくても良いだろ!? いくらでもいるじゃねぇか! なんで、なんで全部、俺が背負わなくちゃいけねぇんだ! 他人の命の価値を決める責任も! 他人を捨てることの責任も! 全部俺のせいなのかよ!? そんなの今すぐやめてぇよ! 今すぐ逃げてぇよ! 全部ぶん投げて大切な人だけ守りてぇよ! なのになんで、俺が我慢して、なんで……!」
 クラリオの身体が、獣に縋るようにしてずるずると頽れた。だが、それでも王獣は動かない。振り向くことさえしない。
「…………おれ、そんなに、つよくない、のに……」
 小さく落ちた言葉に、王獣は何も言わない。何も言わず、何もせず、ただ、そこにいる。対等な唯一の存在として。国王が人でいるための、最後の楔として。
 クラリオ・アラン・リィンセンがリィンスタット王国の国王に戻るまで、ただ、ずっと、傍にいる。
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