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最終章 伝説の最果てで蝶が舞う
戦線 -黒の王-
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征伐軍の本隊とは離れた場所に待機して暫しの間戦況を見ていた薄紅の王は、黄の王が壁の無力化に成功したことを確認し、隣にいる黒の王へと視線を向けた。
「良かったわねぇ。厄介なのはクラリオ王がなんとか片づけてくれたみたいだわぁ」
「うん。でも、本当は俺がどうにかしなきゃいけなかったんだろうから、悪いことしたかな」
そう言って首を傾げた黒の王だったが、薄紅の王がそれを否定する。
「クラリオ王も馬鹿ではないわ。妾たちが置かれている状況くらい、なんとなく察しがついているでしょうねぇ。だから、貴方は貴方のできる範囲のことをしてくれれば良いのよ。…………隠密と暗殺を担うヴェールゴール王国の国王と言えば、その真骨頂は己の存在を隠し切った上で行われる一方的な殺戮、なのだけれど……」
言葉を切った薄紅の王に、黒の王が頷く。
「うん。悪いけど今回は全部正面からいくよ。隠れてコソコソするよりもそっちの方がやりやすいんだ」
「らしくないことを言われると調子が狂うって言ったはずだわぁ」
言葉と共に閃いた薄紅の王の扇が、黒の王の後頭部をぺちんと叩く。
「いて」
叩かれた場所をさする黒の王を見てため息をついてから、戦場を見やった薄紅の王は扇子で口元を隠した。
「精一杯の補佐はしてあげる。だから安心して敵陣に突っ込みなさいな。心配しなくても、死んだら骨か肉の欠片くらいは拾ってあげないこともないわ」
「ええ……あんたも一応王様なんだから、死ぬ前にちょっとは助けようとしてよ」
「あらん、妾は確かにシェンジェアン王国の国王だけれど、貴方はシェンジェアンの民ではないでしょう?」
何を言っているんだという彼女の表情に、黒の王が小さなため息をつく。
「第一、妾は戦うのが苦手なの。という訳で、貴方が戦場に向かい次第、幻惑魔法で身を隠させて貰うわぁ。だから、ピンチになっても妾を頼りにはしないでちょうだい。貴方じゃどうせ妾を見つけられないから」
「……まあ、頑張るよ……」
そう言った黒の王が、自分の騎獣に括りつけていた剣を腰に備える。暗器や短剣を主な武器とする黒の王にしては珍しく、少々大ぶりな得物だ。
「珍しいわねぇ。そんな武器では動きにくいのではなくて?」
「いや、今回はこれで良いんだ。暗器とか短剣は、急所を一撃で仕留められなきゃ使いにくいだけだから」
武器に関しては大して詳しくない薄紅の王は、黒の王の言葉に生返事を返しただけだった。訊いたのは彼女だが、興味はなかったのだろう。
「じゃあ行くね」
言った黒の王は、薄紅の王の返事を待たずに騎獣を駆って戦場へと向かった。敵陣のぎりぎりまで騎獣で駆けていき、直前で騎獣から降りるつもりのようである。
その後ろ姿を見送った薄紅の王もまた、自身が座っている騎獣に指示を出して戦場を目指す。だが、すぐさま彼女の姿は騎獣ごと霧に隠れるかのように見えなくなった。先ほどの宣言通り、身を隠す幻惑魔法を使ったのだ。
ちらりと後ろを振り返った黒の王は、薄紅の王の姿が見えなくなったことを確認してから、更に騎獣を加速させた。そして、敵の前線に突入する直前で、騎獣から飛び降りる。
宙で反転して上空へと退避した騎獣を尻目に大地に着地した彼は、着地の衝撃を感じさせない軽やかさで地を蹴り、腰の長剣を引き抜いた。
「取り敢えず、二十五万っていうのは魔物の数で良いのかな」
呟いた黒の王が、手近にいた大型の魔物に向かって跳躍する。そのまま重力と勢いに任せて剣を振り下ろせば、魔物の頭頂から胸にかけてが大きく裂け、鮮血が飛び散った。それを避けることなく頭から浴びた黒の王が、少しだけ驚いた顔をして長剣を見る。
「……この力で振って折れないとは思わなかった。さすがは赤の王がわざわざくれた剣だな」
感心したようにそう零してから、黒の王は周りを見渡してまた少しだけ驚いた表情を浮かべた。
これだけ派手な攻撃で魔物を倒したというのに、敵兵の誰もが黒の王に向かってこないのだ。
頭をかち割られた死んだ魔物を見て警戒を強めた様子はあるものの、近くにいる敵は黒の王など目に入らないとでもいうように、周囲に視線を巡らせ続けている。
(……へぇ、これは本当に、まさに脱帽ものだ)
そう、薄紅の王の魔法による効果である。彼女はその類まれなる幻惑魔法によって、黒の王の存在を覆い隠してみせたのだ。
ここまで派手なことをやらかしても耐えられるほどの魔法であるとは思っていなかったのか、黒の王は素直に感心した。
「でも、すごいのは良いけど、すごすぎてちょっと面白味がないな」
そんなことを言いつつ小さくため息をついた黒の王が、剣を振って付着していた血を飛ばす。製鉄技術に優れた赤の国の剣は、血や刃こぼれに滅法強いのだ。この戦場分くらいは切れ味を落とさずに済むだろう。
心なしかつまらなさそうな顔のまま、黒の王は再び戦場を駆け始める。力加減をしなくても武器が壊れないのならば、今の彼が他に気を配ることはなかった。ただひたすらに、目につく魔物を片端から斬り捨てていくだけだ。
その動きは、黄の王のような消耗を最小限に抑えた効率的なものではない。寧ろ、思うがまま好き勝手に振舞う野獣にも似た動きだ。まるで、体力が無尽蔵にでもあるかのような振る舞いである。
このままの調子でいけば、黄の王と約束した二十五万の兵を削る件は、不可能な話ではないだろう。
いっそ欠伸交じりにすらなってきた戦いの中で、しかし黒の王は一瞬だけ目を見開き、唐突にその脚を止めた。全身に返り血を浴び、禍々しいまでの様相になった黒の王が、遠くに存在する一点を無言で見つめる。
彼の視線の先にいたのは、一匹の魔物だ。
人間に似た大柄な身体をしているが、その頭は鳥に似た奇妙な姿で、背中には巨大な二対の羽が生えている。ぱっと見は数多いる魔物の内の一頭でしかないのだが、黒の王はその姿を見て盛大に顔を顰めた。
(また面倒なのを連れて来たなぁ)
胸の内でそう悪態をついてから、有翼の魔物から目を離さないように留意しつつ他の魔物を狩っていく。幸いなことに、件の魔物との距離はそう近くないため、今すぐあれとどうこうなることはないだろう。問題は、このままあれを無視して倒した数だけを稼ぐか、先んじてあれを処理してしまうかだ。
数を稼ぐことだけを考えるのならば、勿論あれは無視した方が良いだろう。しかし、倒すべき人数を指定してきた黄の王の意図が、兵に回る負担を可能な限り軽減させろというものだというのは、馬鹿でも判る。
二十五万の雑魚ならば、征伐軍の兵一人一人が頑張ればなんとかならないこともない。が、あの魔物はどうだろうか。
片手間に他の魔物を屠りつつ思考した黒の王は、そこで本日一番のため息を吐き出した。
「……どうせやるなら、こういう状態じゃない方が楽しめたんだけどな」
自分に言い聞かせるようにそう言った黒の王が、剣を構えて猛然と走り出す。すれ違いざまに適当な魔物たちを一刀のもとに斬り伏せつつ、異質な魔物への接近を試みた彼だったが、魔物が間近に見えて来たところで唐突に目を見開き、前進しようとする脚を無理矢理に止めて後方へと跳び退った。その直後、王がいた場所の地面が大きく抉れる。
敵の持つ扇のようなものから、風の刃が放たれたのだ。
少しでも後退が遅れていたら、抉れていたのは地面ではなく王だったことだろう。
すぐさま敵との距離を測りつつ、黒の王が真っ先に行ったのは、現状の把握だった。あれは、明らかに黒の王を狙った攻撃である。ならば考えられる可能性は二つ。幻惑魔法が解けたか、敵の索敵能力が幻惑魔法を越えたかだ。
検証のためにすぐさま手近な魔物を複数斬り伏せてみた黒の王だったが、相変わらず抵抗の様子は見えず、他の魔物たちから攻撃される気配もない。どうやら、幻惑魔法が解けたわけでもなければ、効力が弱まったわけでもなさそうだ。
(……やっぱり感知してくるか)
有翼の魔物を見やった王が、内心で呟く。
薄紅の王の幻惑魔法は非常に強力だ。通常ならば、現在黒の王に掛けられている魔法だけで、この次元に存在するほとんどの敵を惑わすことができるのだろう。そして、これまでのこの世界においては、それだけで十分だったはずだ。
だが、今回はその“これまで”が一切通用しない。
(本当なら、魔物を含むエトランジェは例外なく、この次元に来た時点で元の次元における特殊能力の全てを失う。……と言っても、経験上、元々の身体能力の高さなんかは奪われずに済むと見て間違いないか。まあ何にせよ、いわゆる魔法のような類の能力が使用できなくなるのが、この世界の理なんだろうな。加えてエトランジェはこの世界の生き物ではないから、この次元の精霊魔法を扱うこともできない、と)
つくづく、随分と優遇された次元のようだ、と黒の王は思った。
しかし、ウロの手が加わった魔導がその理を壊した。魔導によって召喚された魔物はそのすべてが、元の次元における能力を保持したままである。そしてそんな魔物の中でも、黒の王の前に立ちはだかるあの敵は、この次元には存在しない類の感知能力を持っている敵なのだ。
恐らく、薄紅の女王が状況を知れば、あの敵の能力を踏まえた上で幻惑魔法を掛け直してくれるだろう。そして、その魔法であれば黒の王の存在が悟られることもなくなるのかもしれない。だが、それに伴う彼女への負担が決して軽いものではないことくらい、黒の王は判っていた。
そも、薄紅の王が近くにいるのならば、こちらの存在が気取られたことを認めた時点で、何がしかの処置を施してくるはずだ。それが一切ないあたり、既に彼女の魔力が限界なのか、彼女は彼女でのっぴきならない状況にあるか、のどちらかだろう。よって、薄紅の王を頼りにするのは悪手であると言わざるを得ない。
剣の柄を握り直した黒の王が、敵を睨む。
先程の一撃で、向こうの索敵範囲のあたりはついた。精度が著しく高い分、決して広い範囲を感知できるものではない。だが、こちらが一歩で埋められる距離でもない。
さてどうしたものか、と王は内心で呟く。
王自身はあの魔物と戦ったことがないが、実はその能力や強さについてはよく知っている。かつての彼であれば、戦いを楽しむ余裕くらいは持てた相手だ。だが、今の彼ではそうはいかない。
(剣術も得意ではないしなぁ……)
とは言え、だから逃げるという選択肢は皆無だ。斬り込む以上どうしても敵の索敵範囲内に入らざるを得ないのであれば、それを踏まえて動けば良いだけである。
無表情に近い黒の王の顔に、うっすらとではあるが凶悪な笑みが浮かんだ。そして彼は、脚に力を込めて大地を蹴る。
大きく跳躍するように前進すること六歩。その六歩目が地についた瞬間を狙って襲ってきた風の刃を、握った剣で素早く弾く。魔法耐性に優れたこの剣は、異次元の攻撃にも耐えうる強度のようだ。
同時に左へと回り込んだ上で更に接敵を試みた王に、しかし敵の魔物は的確に迎撃を繰り出してくる。
今のところ敵の攻撃自体は至って単調だ。手に持っている扇のような何かから高圧の風の刃を弾き飛ばしているだけ、と言えるだろう。だが、それがなかなかに厄介だと黒の王は思った。
明らかに風速を越えた速度で襲い来るそれは、恐らく風とは別の力が加わっている。
(神通力だな。連中の得意分野だ)
風にその力を乗せることで驚異的な加速力を付加し、更には追尾効果まで追加されているようだ。
そう判断したは良いが、今の黒の王にとって高速の飛び道具は相性があまり良くない。身体能力に任せて無理矢理叩き落としてはいるが、それも続けばこちらの体力が削がれるだけだ。
(…………それなら)
おもむろに剣を下ろした王が、剣を握っていない方の手で拳を作って振り上げる。そのまま彼は、その拳を大地に向かって振り下ろした。
瞬間、凄まじい轟音を立てて大地が割れ、魔物のいる方へと向かって地面のひびが突き進んでいく。
周囲の兵や魔物を巻き込んで崩れていく大地に、件の魔物もさすがに動揺したのだろうか。魔物は生み出された地割れが己の足元へと到達する前に、二対の翼を広げて上空へと回避行動を取った。
その瞬間を、王は見逃さなかった。
地を割った直後、あらかじめ背後へと回っていた王は、およそ人とは思えない跳躍力を以て上空へと跳び、的確に魔物の背に向かって剣を振り下ろしたのだ。
その一撃で決まるかと思われるほどに見事な太刀筋であったがしかし、敵が自らに向けられた殺気を察知する方が、僅かに早かった。
翼をはばたかせることで咄嗟の回避を試みる敵を認めた王が、僅かに剣の軌道を変える。結果、背中から深くまでを切り裂くはずだった剣の狙いは背から外れ、しかしその代わりに、魔物の二枚の左翼を見事に斬り落とした。
浮力の元を半分失った魔物が、呻き声と共にバランスを崩す。それでも上半身を反転させた魔物は、王に向かって扇を振るった。
間近から放たれた風の刃に、剣を振り下ろした直後の王は、回避も防御も間に合わない。空中で刃の直撃を受けた細身の身体が、衝撃で弾き飛ばされた。
身体中の至る所を切り裂かれながら吹っ飛んだ王が、それでも宙で体勢を立て直してなんとか着地する。同時に怪我の具合を把握した王が、忌々しそうに舌打ちを漏らした。
あの至近距離で攻撃を食らったのだ。決して軽い怪我ではない。身軽さを重視して努めて軽装でいたのが裏目に出たな、と内心で吐き捨てた王が、再び剣を構える。
自身への被害は出たが、それでも敵の翼の半分を奪えたのは僥倖だ。あの魔物の飛翔能力は翼ありきのものである。故に、ああして必要部位が欠損すれば、もう飛ぶことはできないだろう。
宙における移動手段を持たないこの黒の王にとって最も忌避すべきは、空中戦に持ち込まれることだった。
再び剣を構えた黒の王の元へ、風の刃が襲い掛かる。それを剣で弾いた王は、自分の動きが僅かに鈍ったことに気づいて顔を顰めた。利き腕に負った傷が少し深いようだ。
(さて、さっきみたいに相手の気を乱すことができれば、神通力の類はがくっと精度が落ちるはずだが……)
索敵範囲から一度離脱しつつ、王が思考を巡らせる。
先程の地割れは、不意をつくことができたからこそ通用した手段だ。二度目はないだろう。
(こういうときこそ薄紅の王がいれば、って感じなんだけどな)
残念ながら、やはり彼女が姿を見せる気配もなければ、サポートをしてくれる様子もない。
(…………悔しいが、このままじゃあ勝てないな。それに、これ以上こいつに時間を割くわけにもいかない)
ひとつ息を吐いた王が、決断して懐から小さな魔術器を取り出した。
これは、薄紅の王とある約束をした際に渡されたものだ。どうしてもという事態になったら使えと、そう言われている。
黒の王は、魔術器のスイッチを押してから、それを空高くへと放り投げた。魔術器が高々と宙を舞った数瞬後、思わず目を細めるほどの閃光が弾ける。
そう、これは緊急連絡用の魔術器だ。これだけの光量ならば、ある程度の距離までならば、確実に合図を送ることができる。
同時に敵の注目を集めてしまうのが難点ではあるが、どうせ二十五万を始末しなければいけないのであれば、いっそ一箇所にまとめた方が効率的だ、と王は割り切っていた。
合図をして、きっかり六十拍。王にはそれを感じることができないが、薄紅の王は確実に彼女のすべきことを成し遂げただろう。それを少しだけ申し訳なく思った黒の王だったが、今は悔やんでいる場合ではない。
大きく呼吸をしてから身体の力を抜き、抑え込んでいたそれを解放させる。じわりじわりと身体中に力が巡り始めるのを感じつつ自分の身体を見た黒の王は、何の変化も見られない己の外見に、ぱちりと瞬きをしてから安堵した。
「……行くか」
呟いた王が、握っていた剣を腰の鞘に収める。その状態で柄をしっかりと握った彼は、直後、魔物へ向かって走り出した。その一歩一歩は先ほどまでとは比べ物にならないほど速く、そして重い。彼の足が地を蹴るたびに、大地を踏み抜いていっているのだ。
だが、それでも風の刃の速度には及ばない。すべてを回避することは不可能だとすぐに判断した王だったが、元より避ける気はなかった。というよりも、避ける必要がない。
今の彼であれば、この程度の攻撃は素手で捌けるのだ。
飛んできた刃のすべてを素手の片手で弾き飛ばした王が、猛然と魔物へ向かう。
相対する魔物の方は、先程までとは全く違う相手の動きに焦りが表面化していた。そして魔物が心を乱すほど神通力の精度も下がり、それは黒の王への追い風となる。
一直線に近づいてくる王に、一歩後退した魔物が扇を振り上げた。途端、魔物を中心とした大きな風の渦が生まれる。この技も、黒の王は知っていた。
この種族が得意とする、攻防一体の絶対防御壁だ。渦巻く風は敵からの攻撃を防ぎ、同時に触れた者を千々に切り裂く。一度発動すれば迂闊に近づけない技だが、しかし黒の王は僅かもひるまなかった。
駆ける速度を緩めることなく、細身の身体がそのまま渦へと突入する。無限の刃は彼を切り裂こうと迸り、凄まじい風圧はその身体を吹き飛ばさんとするが、地を蹴る彼の膂力はそれをも上回った。
そして渦を抜けた先、中心地であるそこに佇む魔物に向かって、これまで以上の力を込めた渾身の一撃が繰り出される。
大地を砕く勢いで踏み出された一歩に乗せられた、神速の抜刀術。
抜刀の衝撃で鞘をも砕いた刃が、横一文字に魔物の胴を一刀両断にする。あまりにも美しくお手本のようなそれに、魔物は自らに起こった事態を把握することなく、いや、己が死んだということすら把握する間もなく、絶命した。
分断された上半身がどさりと地に落ち、下半身が遅れて倒れる。それと同時に、魔物を屠った剣にぴしりとひびが入り、直後砕け散った。
「……やっぱ見よう見まねは良くないな。武器に負担掛け過ぎたか」
ぼろぼろと崩れた柄の残骸を払いつつ、黒の王が呟く。次いで彼は、死体となった魔物を見やって肩を竦めた。
「悪いね。あんたの位じゃ、俺の肌に傷はつけられなかったみたいだ」
「良かったわねぇ。厄介なのはクラリオ王がなんとか片づけてくれたみたいだわぁ」
「うん。でも、本当は俺がどうにかしなきゃいけなかったんだろうから、悪いことしたかな」
そう言って首を傾げた黒の王だったが、薄紅の王がそれを否定する。
「クラリオ王も馬鹿ではないわ。妾たちが置かれている状況くらい、なんとなく察しがついているでしょうねぇ。だから、貴方は貴方のできる範囲のことをしてくれれば良いのよ。…………隠密と暗殺を担うヴェールゴール王国の国王と言えば、その真骨頂は己の存在を隠し切った上で行われる一方的な殺戮、なのだけれど……」
言葉を切った薄紅の王に、黒の王が頷く。
「うん。悪いけど今回は全部正面からいくよ。隠れてコソコソするよりもそっちの方がやりやすいんだ」
「らしくないことを言われると調子が狂うって言ったはずだわぁ」
言葉と共に閃いた薄紅の王の扇が、黒の王の後頭部をぺちんと叩く。
「いて」
叩かれた場所をさする黒の王を見てため息をついてから、戦場を見やった薄紅の王は扇子で口元を隠した。
「精一杯の補佐はしてあげる。だから安心して敵陣に突っ込みなさいな。心配しなくても、死んだら骨か肉の欠片くらいは拾ってあげないこともないわ」
「ええ……あんたも一応王様なんだから、死ぬ前にちょっとは助けようとしてよ」
「あらん、妾は確かにシェンジェアン王国の国王だけれど、貴方はシェンジェアンの民ではないでしょう?」
何を言っているんだという彼女の表情に、黒の王が小さなため息をつく。
「第一、妾は戦うのが苦手なの。という訳で、貴方が戦場に向かい次第、幻惑魔法で身を隠させて貰うわぁ。だから、ピンチになっても妾を頼りにはしないでちょうだい。貴方じゃどうせ妾を見つけられないから」
「……まあ、頑張るよ……」
そう言った黒の王が、自分の騎獣に括りつけていた剣を腰に備える。暗器や短剣を主な武器とする黒の王にしては珍しく、少々大ぶりな得物だ。
「珍しいわねぇ。そんな武器では動きにくいのではなくて?」
「いや、今回はこれで良いんだ。暗器とか短剣は、急所を一撃で仕留められなきゃ使いにくいだけだから」
武器に関しては大して詳しくない薄紅の王は、黒の王の言葉に生返事を返しただけだった。訊いたのは彼女だが、興味はなかったのだろう。
「じゃあ行くね」
言った黒の王は、薄紅の王の返事を待たずに騎獣を駆って戦場へと向かった。敵陣のぎりぎりまで騎獣で駆けていき、直前で騎獣から降りるつもりのようである。
その後ろ姿を見送った薄紅の王もまた、自身が座っている騎獣に指示を出して戦場を目指す。だが、すぐさま彼女の姿は騎獣ごと霧に隠れるかのように見えなくなった。先ほどの宣言通り、身を隠す幻惑魔法を使ったのだ。
ちらりと後ろを振り返った黒の王は、薄紅の王の姿が見えなくなったことを確認してから、更に騎獣を加速させた。そして、敵の前線に突入する直前で、騎獣から飛び降りる。
宙で反転して上空へと退避した騎獣を尻目に大地に着地した彼は、着地の衝撃を感じさせない軽やかさで地を蹴り、腰の長剣を引き抜いた。
「取り敢えず、二十五万っていうのは魔物の数で良いのかな」
呟いた黒の王が、手近にいた大型の魔物に向かって跳躍する。そのまま重力と勢いに任せて剣を振り下ろせば、魔物の頭頂から胸にかけてが大きく裂け、鮮血が飛び散った。それを避けることなく頭から浴びた黒の王が、少しだけ驚いた顔をして長剣を見る。
「……この力で振って折れないとは思わなかった。さすがは赤の王がわざわざくれた剣だな」
感心したようにそう零してから、黒の王は周りを見渡してまた少しだけ驚いた表情を浮かべた。
これだけ派手な攻撃で魔物を倒したというのに、敵兵の誰もが黒の王に向かってこないのだ。
頭をかち割られた死んだ魔物を見て警戒を強めた様子はあるものの、近くにいる敵は黒の王など目に入らないとでもいうように、周囲に視線を巡らせ続けている。
(……へぇ、これは本当に、まさに脱帽ものだ)
そう、薄紅の王の魔法による効果である。彼女はその類まれなる幻惑魔法によって、黒の王の存在を覆い隠してみせたのだ。
ここまで派手なことをやらかしても耐えられるほどの魔法であるとは思っていなかったのか、黒の王は素直に感心した。
「でも、すごいのは良いけど、すごすぎてちょっと面白味がないな」
そんなことを言いつつ小さくため息をついた黒の王が、剣を振って付着していた血を飛ばす。製鉄技術に優れた赤の国の剣は、血や刃こぼれに滅法強いのだ。この戦場分くらいは切れ味を落とさずに済むだろう。
心なしかつまらなさそうな顔のまま、黒の王は再び戦場を駆け始める。力加減をしなくても武器が壊れないのならば、今の彼が他に気を配ることはなかった。ただひたすらに、目につく魔物を片端から斬り捨てていくだけだ。
その動きは、黄の王のような消耗を最小限に抑えた効率的なものではない。寧ろ、思うがまま好き勝手に振舞う野獣にも似た動きだ。まるで、体力が無尽蔵にでもあるかのような振る舞いである。
このままの調子でいけば、黄の王と約束した二十五万の兵を削る件は、不可能な話ではないだろう。
いっそ欠伸交じりにすらなってきた戦いの中で、しかし黒の王は一瞬だけ目を見開き、唐突にその脚を止めた。全身に返り血を浴び、禍々しいまでの様相になった黒の王が、遠くに存在する一点を無言で見つめる。
彼の視線の先にいたのは、一匹の魔物だ。
人間に似た大柄な身体をしているが、その頭は鳥に似た奇妙な姿で、背中には巨大な二対の羽が生えている。ぱっと見は数多いる魔物の内の一頭でしかないのだが、黒の王はその姿を見て盛大に顔を顰めた。
(また面倒なのを連れて来たなぁ)
胸の内でそう悪態をついてから、有翼の魔物から目を離さないように留意しつつ他の魔物を狩っていく。幸いなことに、件の魔物との距離はそう近くないため、今すぐあれとどうこうなることはないだろう。問題は、このままあれを無視して倒した数だけを稼ぐか、先んじてあれを処理してしまうかだ。
数を稼ぐことだけを考えるのならば、勿論あれは無視した方が良いだろう。しかし、倒すべき人数を指定してきた黄の王の意図が、兵に回る負担を可能な限り軽減させろというものだというのは、馬鹿でも判る。
二十五万の雑魚ならば、征伐軍の兵一人一人が頑張ればなんとかならないこともない。が、あの魔物はどうだろうか。
片手間に他の魔物を屠りつつ思考した黒の王は、そこで本日一番のため息を吐き出した。
「……どうせやるなら、こういう状態じゃない方が楽しめたんだけどな」
自分に言い聞かせるようにそう言った黒の王が、剣を構えて猛然と走り出す。すれ違いざまに適当な魔物たちを一刀のもとに斬り伏せつつ、異質な魔物への接近を試みた彼だったが、魔物が間近に見えて来たところで唐突に目を見開き、前進しようとする脚を無理矢理に止めて後方へと跳び退った。その直後、王がいた場所の地面が大きく抉れる。
敵の持つ扇のようなものから、風の刃が放たれたのだ。
少しでも後退が遅れていたら、抉れていたのは地面ではなく王だったことだろう。
すぐさま敵との距離を測りつつ、黒の王が真っ先に行ったのは、現状の把握だった。あれは、明らかに黒の王を狙った攻撃である。ならば考えられる可能性は二つ。幻惑魔法が解けたか、敵の索敵能力が幻惑魔法を越えたかだ。
検証のためにすぐさま手近な魔物を複数斬り伏せてみた黒の王だったが、相変わらず抵抗の様子は見えず、他の魔物たちから攻撃される気配もない。どうやら、幻惑魔法が解けたわけでもなければ、効力が弱まったわけでもなさそうだ。
(……やっぱり感知してくるか)
有翼の魔物を見やった王が、内心で呟く。
薄紅の王の幻惑魔法は非常に強力だ。通常ならば、現在黒の王に掛けられている魔法だけで、この次元に存在するほとんどの敵を惑わすことができるのだろう。そして、これまでのこの世界においては、それだけで十分だったはずだ。
だが、今回はその“これまで”が一切通用しない。
(本当なら、魔物を含むエトランジェは例外なく、この次元に来た時点で元の次元における特殊能力の全てを失う。……と言っても、経験上、元々の身体能力の高さなんかは奪われずに済むと見て間違いないか。まあ何にせよ、いわゆる魔法のような類の能力が使用できなくなるのが、この世界の理なんだろうな。加えてエトランジェはこの世界の生き物ではないから、この次元の精霊魔法を扱うこともできない、と)
つくづく、随分と優遇された次元のようだ、と黒の王は思った。
しかし、ウロの手が加わった魔導がその理を壊した。魔導によって召喚された魔物はそのすべてが、元の次元における能力を保持したままである。そしてそんな魔物の中でも、黒の王の前に立ちはだかるあの敵は、この次元には存在しない類の感知能力を持っている敵なのだ。
恐らく、薄紅の女王が状況を知れば、あの敵の能力を踏まえた上で幻惑魔法を掛け直してくれるだろう。そして、その魔法であれば黒の王の存在が悟られることもなくなるのかもしれない。だが、それに伴う彼女への負担が決して軽いものではないことくらい、黒の王は判っていた。
そも、薄紅の王が近くにいるのならば、こちらの存在が気取られたことを認めた時点で、何がしかの処置を施してくるはずだ。それが一切ないあたり、既に彼女の魔力が限界なのか、彼女は彼女でのっぴきならない状況にあるか、のどちらかだろう。よって、薄紅の王を頼りにするのは悪手であると言わざるを得ない。
剣の柄を握り直した黒の王が、敵を睨む。
先程の一撃で、向こうの索敵範囲のあたりはついた。精度が著しく高い分、決して広い範囲を感知できるものではない。だが、こちらが一歩で埋められる距離でもない。
さてどうしたものか、と王は内心で呟く。
王自身はあの魔物と戦ったことがないが、実はその能力や強さについてはよく知っている。かつての彼であれば、戦いを楽しむ余裕くらいは持てた相手だ。だが、今の彼ではそうはいかない。
(剣術も得意ではないしなぁ……)
とは言え、だから逃げるという選択肢は皆無だ。斬り込む以上どうしても敵の索敵範囲内に入らざるを得ないのであれば、それを踏まえて動けば良いだけである。
無表情に近い黒の王の顔に、うっすらとではあるが凶悪な笑みが浮かんだ。そして彼は、脚に力を込めて大地を蹴る。
大きく跳躍するように前進すること六歩。その六歩目が地についた瞬間を狙って襲ってきた風の刃を、握った剣で素早く弾く。魔法耐性に優れたこの剣は、異次元の攻撃にも耐えうる強度のようだ。
同時に左へと回り込んだ上で更に接敵を試みた王に、しかし敵の魔物は的確に迎撃を繰り出してくる。
今のところ敵の攻撃自体は至って単調だ。手に持っている扇のような何かから高圧の風の刃を弾き飛ばしているだけ、と言えるだろう。だが、それがなかなかに厄介だと黒の王は思った。
明らかに風速を越えた速度で襲い来るそれは、恐らく風とは別の力が加わっている。
(神通力だな。連中の得意分野だ)
風にその力を乗せることで驚異的な加速力を付加し、更には追尾効果まで追加されているようだ。
そう判断したは良いが、今の黒の王にとって高速の飛び道具は相性があまり良くない。身体能力に任せて無理矢理叩き落としてはいるが、それも続けばこちらの体力が削がれるだけだ。
(…………それなら)
おもむろに剣を下ろした王が、剣を握っていない方の手で拳を作って振り上げる。そのまま彼は、その拳を大地に向かって振り下ろした。
瞬間、凄まじい轟音を立てて大地が割れ、魔物のいる方へと向かって地面のひびが突き進んでいく。
周囲の兵や魔物を巻き込んで崩れていく大地に、件の魔物もさすがに動揺したのだろうか。魔物は生み出された地割れが己の足元へと到達する前に、二対の翼を広げて上空へと回避行動を取った。
その瞬間を、王は見逃さなかった。
地を割った直後、あらかじめ背後へと回っていた王は、およそ人とは思えない跳躍力を以て上空へと跳び、的確に魔物の背に向かって剣を振り下ろしたのだ。
その一撃で決まるかと思われるほどに見事な太刀筋であったがしかし、敵が自らに向けられた殺気を察知する方が、僅かに早かった。
翼をはばたかせることで咄嗟の回避を試みる敵を認めた王が、僅かに剣の軌道を変える。結果、背中から深くまでを切り裂くはずだった剣の狙いは背から外れ、しかしその代わりに、魔物の二枚の左翼を見事に斬り落とした。
浮力の元を半分失った魔物が、呻き声と共にバランスを崩す。それでも上半身を反転させた魔物は、王に向かって扇を振るった。
間近から放たれた風の刃に、剣を振り下ろした直後の王は、回避も防御も間に合わない。空中で刃の直撃を受けた細身の身体が、衝撃で弾き飛ばされた。
身体中の至る所を切り裂かれながら吹っ飛んだ王が、それでも宙で体勢を立て直してなんとか着地する。同時に怪我の具合を把握した王が、忌々しそうに舌打ちを漏らした。
あの至近距離で攻撃を食らったのだ。決して軽い怪我ではない。身軽さを重視して努めて軽装でいたのが裏目に出たな、と内心で吐き捨てた王が、再び剣を構える。
自身への被害は出たが、それでも敵の翼の半分を奪えたのは僥倖だ。あの魔物の飛翔能力は翼ありきのものである。故に、ああして必要部位が欠損すれば、もう飛ぶことはできないだろう。
宙における移動手段を持たないこの黒の王にとって最も忌避すべきは、空中戦に持ち込まれることだった。
再び剣を構えた黒の王の元へ、風の刃が襲い掛かる。それを剣で弾いた王は、自分の動きが僅かに鈍ったことに気づいて顔を顰めた。利き腕に負った傷が少し深いようだ。
(さて、さっきみたいに相手の気を乱すことができれば、神通力の類はがくっと精度が落ちるはずだが……)
索敵範囲から一度離脱しつつ、王が思考を巡らせる。
先程の地割れは、不意をつくことができたからこそ通用した手段だ。二度目はないだろう。
(こういうときこそ薄紅の王がいれば、って感じなんだけどな)
残念ながら、やはり彼女が姿を見せる気配もなければ、サポートをしてくれる様子もない。
(…………悔しいが、このままじゃあ勝てないな。それに、これ以上こいつに時間を割くわけにもいかない)
ひとつ息を吐いた王が、決断して懐から小さな魔術器を取り出した。
これは、薄紅の王とある約束をした際に渡されたものだ。どうしてもという事態になったら使えと、そう言われている。
黒の王は、魔術器のスイッチを押してから、それを空高くへと放り投げた。魔術器が高々と宙を舞った数瞬後、思わず目を細めるほどの閃光が弾ける。
そう、これは緊急連絡用の魔術器だ。これだけの光量ならば、ある程度の距離までならば、確実に合図を送ることができる。
同時に敵の注目を集めてしまうのが難点ではあるが、どうせ二十五万を始末しなければいけないのであれば、いっそ一箇所にまとめた方が効率的だ、と王は割り切っていた。
合図をして、きっかり六十拍。王にはそれを感じることができないが、薄紅の王は確実に彼女のすべきことを成し遂げただろう。それを少しだけ申し訳なく思った黒の王だったが、今は悔やんでいる場合ではない。
大きく呼吸をしてから身体の力を抜き、抑え込んでいたそれを解放させる。じわりじわりと身体中に力が巡り始めるのを感じつつ自分の身体を見た黒の王は、何の変化も見られない己の外見に、ぱちりと瞬きをしてから安堵した。
「……行くか」
呟いた王が、握っていた剣を腰の鞘に収める。その状態で柄をしっかりと握った彼は、直後、魔物へ向かって走り出した。その一歩一歩は先ほどまでとは比べ物にならないほど速く、そして重い。彼の足が地を蹴るたびに、大地を踏み抜いていっているのだ。
だが、それでも風の刃の速度には及ばない。すべてを回避することは不可能だとすぐに判断した王だったが、元より避ける気はなかった。というよりも、避ける必要がない。
今の彼であれば、この程度の攻撃は素手で捌けるのだ。
飛んできた刃のすべてを素手の片手で弾き飛ばした王が、猛然と魔物へ向かう。
相対する魔物の方は、先程までとは全く違う相手の動きに焦りが表面化していた。そして魔物が心を乱すほど神通力の精度も下がり、それは黒の王への追い風となる。
一直線に近づいてくる王に、一歩後退した魔物が扇を振り上げた。途端、魔物を中心とした大きな風の渦が生まれる。この技も、黒の王は知っていた。
この種族が得意とする、攻防一体の絶対防御壁だ。渦巻く風は敵からの攻撃を防ぎ、同時に触れた者を千々に切り裂く。一度発動すれば迂闊に近づけない技だが、しかし黒の王は僅かもひるまなかった。
駆ける速度を緩めることなく、細身の身体がそのまま渦へと突入する。無限の刃は彼を切り裂こうと迸り、凄まじい風圧はその身体を吹き飛ばさんとするが、地を蹴る彼の膂力はそれをも上回った。
そして渦を抜けた先、中心地であるそこに佇む魔物に向かって、これまで以上の力を込めた渾身の一撃が繰り出される。
大地を砕く勢いで踏み出された一歩に乗せられた、神速の抜刀術。
抜刀の衝撃で鞘をも砕いた刃が、横一文字に魔物の胴を一刀両断にする。あまりにも美しくお手本のようなそれに、魔物は自らに起こった事態を把握することなく、いや、己が死んだということすら把握する間もなく、絶命した。
分断された上半身がどさりと地に落ち、下半身が遅れて倒れる。それと同時に、魔物を屠った剣にぴしりとひびが入り、直後砕け散った。
「……やっぱ見よう見まねは良くないな。武器に負担掛け過ぎたか」
ぼろぼろと崩れた柄の残骸を払いつつ、黒の王が呟く。次いで彼は、死体となった魔物を見やって肩を竦めた。
「悪いね。あんたの位じゃ、俺の肌に傷はつけられなかったみたいだ」
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