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最終章 伝説の最果てで蝶が舞う
戦線 -赤の王-
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帝都を覆う外壁の外。その北東部では、他の国王たちとは一線を画す戦いが繰り広げられていた。
「ライガ! 俺のことは気にしなくて良い! もっと速度を上げろ!」
己が乗る騎獣に向かいそう叫んだのは、赤の王、レクシリア・グラ・ロンターだ。
彼の騎獣である雷の系統に属する希少種、ライデンは、騎獣としては最速を誇る黄の王の騎獣に並ぶ機動力を持つ獣である。だが、基本的にはその背に人間を乗せている場合、その真価は発揮されない。人間はライデン種と違い、過度な速度に対する耐性がないからだ。
そのことを理解しているライデンは、主人たる赤の王の命令に躊躇いの素振りを見せた。だが、赤の王は尚も言葉を重ねる。
「俺の身体の心配してる余裕はねぇだろ!」
そう叫ぶ王の顔には焦燥がはっきりと刻まれており、ライデンは僅かな躊躇の後、空気を蹴る脚に力を込めた。
獣の全身からばちっと光が弾け、その速度がぐんと跳ね上がる。同時に王が自身を保護する魔法の強度を上げたが、ライデンの速度には対応しきれないのか、その衣服や肌に細かな裂傷が刻まれていった。
そんな一人と一頭を掠めるようにして、無数の水弾が襲いかかる。それらを全て紙一重で躱せているのは、偏にライデンの能力の高さによるものだろう。
元々野生個体として生きていたこのライデンだからこそ、なんとかギリギリのところで持ち堪えられているが、この状態が長く続けば追い詰められるのは王の側であることは明白だ。
少しでも騎獣のサポートを、と王が火霊魔法を水弾にぶつけてはみるものの、これまで同様跡形もなく掻き消されてしまい、敵の攻撃の威力を弱めることさえできない。
盛大に舌打ちをした王が、水弾の出所、敵の方へと視線をやる。
そこにいるのは、先日赤の国を襲った巨大な水系統の魔物によく似た生物だ。確かに脅威と言えば脅威だが、一度は倒した敵である。
もっとも、今の王は宰相だったあのときとは違い、火属性の魔法適性が上がった分、他の属性の魔法適性が下がっているし、そもそもあのときのようなグレイのサポートがない。地霊の極限魔法を撃てない赤の王では、この敵に勝つことは難しいだろう。だが、あのときと同じ敵ならば、橙の王と合流するまで逃げおおせることは十分可能だ。
と、そう思っていた。思い込んでいた。
その見込みのまま戦闘に入った王は、すぐに己の考えを覆す羽目になる。
(確かに見た目は丸っきりあのときの敵と同じだが、能力が違いすぎる……!)
そう、あまりにも敵が強すぎるのだ。極限魔法クラスとは言わずともかなりの高威力を誇る火霊魔法を放っても、敵の攻撃を僅かも弱めることができず、それどころか、今の赤の王が撃てる最高威力の地霊魔法を以てしても、水弾の威力を殺すことすらできない。
(考えたくねぇが、手応えから推察するに、地霊の極限魔法じゃこの前の魔物を倒すので一杯一杯だ。……となると、こいつ、橙の王の極限魔法ですら倒せる保証がないんじゃねぇのか……?)
回避行動に徹することしかできないまま、そんな考えが王の脳裏をよぎる。
(いや、ひとまずこの考えは置いておこう。それよりも、なんとか橙の王と合流することが先決だ)
そう切り替えた王が、敵の攻撃を回避しつつ南に向かうよう、ライデンに指示を出す。
だが、指示をした王自身も、それが実現不可能に近い指示だと理解はしていた。
敵の攻撃に、まるで隙がないのだ。それこそ、ライデン種本来の速度を発揮してもなお危なげなほどに、個々の攻撃の到達速度が速く、手数が多い。その上、まるで規則性などないかのような攻撃は、しかし腹が立つほど的確に王の退路を絶つように、全方位から襲い来るのだ。
そして、少しでも隙を作ろうと王が何かしらの魔法を発動したところで、それらは全て大した効果を発揮しない。
冗談抜きで、欠片も打開策が浮かばない状況だ。今のままでは、ライデンの体力が尽きたときが王の命が尽きるときだ、と言っても過言ではない。
(何か! 何かねぇのか!)
高速で移り変わる景色のなか、極限まで視野を広げ、王が敵の外観や所作を観察する。
そのとき、ふと、敵の姿が揺らいだ気がした。
(……あ?)
僅かに眉を顰めた王が、一瞬考え込むような素振りを見せたあと、敵の攻撃を縫うようにして火霊魔法を放った。
繰り出した魔法自体は、可もなく不可もない中級程度のものである。だが、調整が難しい単属性魔法を操り、細かな軌道を保って敵に到達させたのは、王の手腕の成せる業だ。
果たして、見事敵にぶつかったその魔法は、そのまま敵の身体をすり抜けた。
「あぁ!?」
思わず声を上げた王が、これまで以上に目を凝らして敵を見る。
(……敵の攻撃すら打ち消せねぇ以上、本体への攻撃は無駄だと踏んでたが……)
暫しの思考の後、王が再び火の攻撃魔法を放った。またもや器用に水弾の合間を縫って奔った火が、敵の身体へとぶつかる。そして先程同様に、これといった手応えもなく攻撃がすり抜ける刹那、王の目は確かにそれを捉えた。
(なんだありゃあ)
王の攻撃が敵の身体をすり抜ける瞬間、まるでノイズがかかったかのように、攻撃した箇所の像がブレたのだ。
「……ライガ、お前はそのまま回避を続けてくれ。俺はあれの正体を探ってみる」
そう言った王が、立て続けに炎を生み出し、敵の身体のいたるところに向けて放つ。個々を操り確実に敵に到達させれば、ほとんどの炎が魔物の揺らぎと共にすり抜けていくなか、ひとつだけ物体を伴うであろう何かにぶつかって弾けたのが確認できた。
(位置は……喉元の辺りか!)
そこに何があるのかは判らないが、少なくとも攻撃がすり抜けない以上、追撃を入れる価値はある。
そう判断した王が、高威力の魔法の詠唱を開始した。
「唸れ 奔れ 咆哮せよ そは怒りを彩る光 そは道を拓く一陣 燃え盛る祈りは野生となり その意思を以て空を翔ける! ――“猛り喰らう業炎の牙”!」
魔法の完成と共に、獣の姿を象った炎が生まれ、まるで生き物のように宙を駆けて魔物へと向かう。迫り来る水弾を掻い潜って走る獣は、ついに魔物へと肉薄し、その喉元へと食らいついた。
瞬間、魔物の長く巨大な体躯が大きくブレたかと思うと、水弾による波状攻撃が止み、まるで蜃気楼が掻き消えるかのように、そこにあった像が解けた。そして、ちょうど炎の獣が食らいついた喉元から、何かが姿を現す。
「……なんだ、ありゃあ」
見知った魔物の像が消え、新たに現れたのは、成人男性よりも少しばかり大きな青い球体だった。一見すると硬質なそれは、しかしよく見ると、表面が水のように波打っている。
およそ生き物のようには見えないが、状況的にこの球体がなんらかの力で巨大な魔物の姿を偽り、王を攻撃していたと考えて良いだろう。
(……生き物、っつーよりは、装置か何かか?)
訝しげな顔をした王が球体を見つめる中、突然球体の表面が大きく波打ち、ぎゅるりと渦のようにうねったかと思うと、そこに巨大な目玉がひとつ出現した。
「っ!?」
驚きの表情を浮かべた王を、黒々とした眼がぎょろりと見つめる。
『――擬態が強制解除されました。これよりフェイズ2に移行します』
「あ?」
何の話だ、と訊き返した王だったが、球体はそれに答えを返すことなく、王をじっと見つめ続ける。
『――スキャン完了。個体識別:基幹次元リエンコルム/人類/微特殊個体/レクシリア・グラ・ロンター。――エラー、エラー。想定されていた超特異点個体ロステアール・クレウ・グランダではありません。対応レベルを落としますか?』
「……おい、どういう意味だ」
そう問うも、やはり答えは返ってこない。代わりに、何に語りかけているのかも不明な無機質な声が再び響く。
『――了解しました。それでは対応レベルを維持したまま、レクシリア・グラ・ロンターの排除を実行します』
その言葉に王が反応するよりも早く、球体の表面がとぷんと波打った。そして次の瞬間、目にも止まらぬ速さで球体から水の鞭のようなものがしなり、寸分狂わず王に向かう。
まさに神速の攻撃は、的確に王の心臓を狙った一撃だった。いかに王と言えど、咄嗟に反応しきれる速度ではない。
だが、雷の獣は違った。
主人の危機を正確に把握したライデンが、己にできる最速で回避を図る。だが、ライデンを以てしても、敵の攻撃の速度に勝ることは難しかった。
しなる水が、鋭利な刃となって王に向かう。ライデンによって僅かずらされた軌道は、しかし完全な回避を許すことはなく、王の左腕に襲いかかった。
「っ!」
声を上げなかったのは、王としてのプライドだろうか。
左腕を襲った激痛に顔を歪めた王は、己の腕を見て更に顔を顰めた。
先程の攻撃で、肩から下が見事に斬り落とされたのだ。
「火霊!」
王になったことで水霊魔法の適性を失った赤の王は、以前のように回復魔法を使うことができない。故に彼は、止血のために傷口を焼き切る方法を取った。
歯を食い縛って肉が焼かれる痛みに耐えた王が、残された右手で騎獣の首を優しく叩く。
「よく避けてくれた、ライガ。お前のお陰で命拾いした」
労いの言葉に、しかしライデンは悲しそうな鳴き声を上げた。主人が重症を負ったことに、責任を感じているのだろう。
「そう落ち込むなよ。幸い俺は両利きだからな。腕一本持ってかれたところで、大して困りゃしねぇ。……それより問題は、あの敵をどうするかだ」
王が睨み据えた先で、球体の目玉がぐるんと回転する。
『――敵の行動が予測を下回りました。微特殊個体レクシリア・グラ・ロンターの推定能力値を下方修正します。超特異点個体ロステアール・クレウ・グランダ専用対応レベルの変更を検討してください』
「……さっきから好き放題言ってくれるじゃねぇか」
自分に向けられている言葉でないことは判っているが、その内容は王に関わるものだ。そして、淡々とした敵の指摘が正しいことは、王自身が一番理解している。
『――了解しました。対応レベルを維持し続けます』
隠す気もない発言から察するに、この敵は、先代の赤の王ロステアールと戦うために用意された相手だ。ならば、今の赤の王であるレクシリアが敵う相手ではない。
誰よりもその事実を知っているレクシリアは、それ故にこの時点で覚悟を決めた。
ここには居ない誰かとの交信をしていた敵の目が、またぐるりと回ってレクシリアを見る。そして視線をそのままに、球体はその表面をふるりと震わせた。
『微特殊個体レクシリア・グラ・ロンターに、質問があります。なお、これは私個人の純粋な疑問であり興味なので、回答の義務はありません』
すっかり攻撃を止めた球体が、レクシリアに語りかける。だが、敵の明らかな隙を前にして、レクシリアは手を打つことができなかった。何をしたところでこの相手には通用しないと、理解してしまったからだ。それこそ、敵に一矢報いることはおろか、敵の攻撃を防ぐことも命からがら逃げることも不可能だと、悟ってしまったのだ。
『超特異点個体ロステアール・クレウ・グランダと比較すると、貴方はあまりにも脆弱です。そんな身で、何故王を継ごうという考えに至ったのでしょうか。何故、自身がその器であると考えるのでしょうか』
それは、レクシリアが最も忌避し、心から恐れてすらいた問いだった。
己が彼に及ばないことなど、レクシリア自身が一番よく判っている。彼はこの上なく優れた王であり、王として在るために生まれたかのような存在だ。だから、自分を含む誰にも、彼の代わりになることなどできはしない。
だからこそ、レクシリアは王位の簒奪を宣言したのだ。これは本来あるべき姿ではなく、一時の偽りなのだと。国を統べる名を戴くのは、自分ではなく彼なのだと。
自覚はしている。覚悟もしていた。だが、
(……事実として突き付けられると、さすがに堪えるものがあるな)
レクシリアはロステアール・クレウ・グランダを心から敬愛している。それこそ幼少の頃から、ずっと彼のことを尊敬し、彼の助けになりたい一心で己を磨いてきた。ずっと彼の背中を追って生きてきた。
それ故に、嫌でも理解してしまうのだ。彼と自分はあまりにも違う。血反吐を吐くような努力をどれだけ重ねようと、レクシリアが彼に及ぶことはない。それほどまでに、彼は高みに居る存在だった。
(判ってるさ。俺じゃあいつの代わりにはならない。俺なんかが、あいつを差し置いて王になれる筈がない)
そうだ。レクシリアは知っている。王になるには、自分があまりにも無力であることを。
「……自分を王の器だと思ったことなんて、生まれてこのかた一度もねぇよ」
『では、何故王を継いだのですか?』
球体の問いに、レクシリアは一度瞬きをしたあと、その顔に薄く笑みを浮かべた。
「違う。俺は王位を継いでなんかいない。そうするのが最善だと判断し、ただ王の座を簒奪しただけだ」
そうだ。ただそれだけなのだ。
「だから、俺は真の意味での王じゃない」
レクシリアの口から、自然と言葉が落ちていく。
そう。レクシリアは王ではない。何故なら、
「……俺の王は、あいつだけだ」
それは心からの言葉で、故にレクシリアは個としての覚悟を決めた。レクシリアの役目は、彼の王が目覚めるまでの間を繋ぐことである。ならば、ここで彼がすべき選択は決まりきっていた。
『回答を得ましたが、理解は不可能でした。質問を終了します』
「ああ、結構だ。別に理解して貰いたいとは思ってねぇからな」
『それではこれより、処理を再開します』
その言葉を合図に、球体の表面がとぷんと揺れる。
レクシリアには、次に来るだろう攻撃を避けられる保証がない。だが、彼はそれを気にしてはいなかった。
レクシリアの扱える魔法で、この敵に通用するものはない。いや、きっとそれは先代赤の王であっても同じだ。ただ、先代ならばそれでもこの状況を打破できたはずで、レクシリアにはそれができない。
「悪いな、ライガ。あと少しだけ、敵の攻撃を避けるのに集中してくれ。ああ、腕やら脚やらがもげるのは構わねぇから、死なないようにだけ頼む」
そう言ったレクシリアが、波打つ球体を睨み据え、大きく息を吐き出した。そして、彼はその音を唇に乗せる。
「――水の流れに逆らう存在」
瞬間、レクシリアの体内の血液が、まるで沸騰するかのようにざわついた。だが、そこに予感していたような魔力の流れはなく、ただひたすらにレクシリアの全身を熱が駆け巡る。
「赤より赤き紅蓮の覇者よ 全てを滅ぼす破壊の御手よ」
球体が繰り出す水の流れが、懸命に駆けるライデンを捉え、レクシリアを襲う。だが、残された右腕の一部が削がれ、左耳が落ち、片足の先が切り取られても、レクシリアは詠唱を止めようとはしなかった。そしてそれは、極限魔法に似た、しかしそれよりもずっと重くのしかかるような音色で紡がれていく。
果たしてこの魔法を以てすれば、目の前の敵を打ち砕くことができるのか。それはレクシリアにも判らない。しかし、これが彼にできる精一杯だ。もう彼には、間違いなく最強の魔法であるこの一撃を放つしか、手段がないのだ。
持てるものを投げ出す覚悟は決めた。残したものを切り捨てることへの迷いも捨てた。ならばこの魔法の完成は、レクシリアが望んだ未来そのものである。
だが、
「――“森羅万象打ち砕く大地”!」
レクシリアのその覚悟は、怒号じみた叫びによって呆気なく打ち砕かれた。
「ライガ! 俺のことは気にしなくて良い! もっと速度を上げろ!」
己が乗る騎獣に向かいそう叫んだのは、赤の王、レクシリア・グラ・ロンターだ。
彼の騎獣である雷の系統に属する希少種、ライデンは、騎獣としては最速を誇る黄の王の騎獣に並ぶ機動力を持つ獣である。だが、基本的にはその背に人間を乗せている場合、その真価は発揮されない。人間はライデン種と違い、過度な速度に対する耐性がないからだ。
そのことを理解しているライデンは、主人たる赤の王の命令に躊躇いの素振りを見せた。だが、赤の王は尚も言葉を重ねる。
「俺の身体の心配してる余裕はねぇだろ!」
そう叫ぶ王の顔には焦燥がはっきりと刻まれており、ライデンは僅かな躊躇の後、空気を蹴る脚に力を込めた。
獣の全身からばちっと光が弾け、その速度がぐんと跳ね上がる。同時に王が自身を保護する魔法の強度を上げたが、ライデンの速度には対応しきれないのか、その衣服や肌に細かな裂傷が刻まれていった。
そんな一人と一頭を掠めるようにして、無数の水弾が襲いかかる。それらを全て紙一重で躱せているのは、偏にライデンの能力の高さによるものだろう。
元々野生個体として生きていたこのライデンだからこそ、なんとかギリギリのところで持ち堪えられているが、この状態が長く続けば追い詰められるのは王の側であることは明白だ。
少しでも騎獣のサポートを、と王が火霊魔法を水弾にぶつけてはみるものの、これまで同様跡形もなく掻き消されてしまい、敵の攻撃の威力を弱めることさえできない。
盛大に舌打ちをした王が、水弾の出所、敵の方へと視線をやる。
そこにいるのは、先日赤の国を襲った巨大な水系統の魔物によく似た生物だ。確かに脅威と言えば脅威だが、一度は倒した敵である。
もっとも、今の王は宰相だったあのときとは違い、火属性の魔法適性が上がった分、他の属性の魔法適性が下がっているし、そもそもあのときのようなグレイのサポートがない。地霊の極限魔法を撃てない赤の王では、この敵に勝つことは難しいだろう。だが、あのときと同じ敵ならば、橙の王と合流するまで逃げおおせることは十分可能だ。
と、そう思っていた。思い込んでいた。
その見込みのまま戦闘に入った王は、すぐに己の考えを覆す羽目になる。
(確かに見た目は丸っきりあのときの敵と同じだが、能力が違いすぎる……!)
そう、あまりにも敵が強すぎるのだ。極限魔法クラスとは言わずともかなりの高威力を誇る火霊魔法を放っても、敵の攻撃を僅かも弱めることができず、それどころか、今の赤の王が撃てる最高威力の地霊魔法を以てしても、水弾の威力を殺すことすらできない。
(考えたくねぇが、手応えから推察するに、地霊の極限魔法じゃこの前の魔物を倒すので一杯一杯だ。……となると、こいつ、橙の王の極限魔法ですら倒せる保証がないんじゃねぇのか……?)
回避行動に徹することしかできないまま、そんな考えが王の脳裏をよぎる。
(いや、ひとまずこの考えは置いておこう。それよりも、なんとか橙の王と合流することが先決だ)
そう切り替えた王が、敵の攻撃を回避しつつ南に向かうよう、ライデンに指示を出す。
だが、指示をした王自身も、それが実現不可能に近い指示だと理解はしていた。
敵の攻撃に、まるで隙がないのだ。それこそ、ライデン種本来の速度を発揮してもなお危なげなほどに、個々の攻撃の到達速度が速く、手数が多い。その上、まるで規則性などないかのような攻撃は、しかし腹が立つほど的確に王の退路を絶つように、全方位から襲い来るのだ。
そして、少しでも隙を作ろうと王が何かしらの魔法を発動したところで、それらは全て大した効果を発揮しない。
冗談抜きで、欠片も打開策が浮かばない状況だ。今のままでは、ライデンの体力が尽きたときが王の命が尽きるときだ、と言っても過言ではない。
(何か! 何かねぇのか!)
高速で移り変わる景色のなか、極限まで視野を広げ、王が敵の外観や所作を観察する。
そのとき、ふと、敵の姿が揺らいだ気がした。
(……あ?)
僅かに眉を顰めた王が、一瞬考え込むような素振りを見せたあと、敵の攻撃を縫うようにして火霊魔法を放った。
繰り出した魔法自体は、可もなく不可もない中級程度のものである。だが、調整が難しい単属性魔法を操り、細かな軌道を保って敵に到達させたのは、王の手腕の成せる業だ。
果たして、見事敵にぶつかったその魔法は、そのまま敵の身体をすり抜けた。
「あぁ!?」
思わず声を上げた王が、これまで以上に目を凝らして敵を見る。
(……敵の攻撃すら打ち消せねぇ以上、本体への攻撃は無駄だと踏んでたが……)
暫しの思考の後、王が再び火の攻撃魔法を放った。またもや器用に水弾の合間を縫って奔った火が、敵の身体へとぶつかる。そして先程同様に、これといった手応えもなく攻撃がすり抜ける刹那、王の目は確かにそれを捉えた。
(なんだありゃあ)
王の攻撃が敵の身体をすり抜ける瞬間、まるでノイズがかかったかのように、攻撃した箇所の像がブレたのだ。
「……ライガ、お前はそのまま回避を続けてくれ。俺はあれの正体を探ってみる」
そう言った王が、立て続けに炎を生み出し、敵の身体のいたるところに向けて放つ。個々を操り確実に敵に到達させれば、ほとんどの炎が魔物の揺らぎと共にすり抜けていくなか、ひとつだけ物体を伴うであろう何かにぶつかって弾けたのが確認できた。
(位置は……喉元の辺りか!)
そこに何があるのかは判らないが、少なくとも攻撃がすり抜けない以上、追撃を入れる価値はある。
そう判断した王が、高威力の魔法の詠唱を開始した。
「唸れ 奔れ 咆哮せよ そは怒りを彩る光 そは道を拓く一陣 燃え盛る祈りは野生となり その意思を以て空を翔ける! ――“猛り喰らう業炎の牙”!」
魔法の完成と共に、獣の姿を象った炎が生まれ、まるで生き物のように宙を駆けて魔物へと向かう。迫り来る水弾を掻い潜って走る獣は、ついに魔物へと肉薄し、その喉元へと食らいついた。
瞬間、魔物の長く巨大な体躯が大きくブレたかと思うと、水弾による波状攻撃が止み、まるで蜃気楼が掻き消えるかのように、そこにあった像が解けた。そして、ちょうど炎の獣が食らいついた喉元から、何かが姿を現す。
「……なんだ、ありゃあ」
見知った魔物の像が消え、新たに現れたのは、成人男性よりも少しばかり大きな青い球体だった。一見すると硬質なそれは、しかしよく見ると、表面が水のように波打っている。
およそ生き物のようには見えないが、状況的にこの球体がなんらかの力で巨大な魔物の姿を偽り、王を攻撃していたと考えて良いだろう。
(……生き物、っつーよりは、装置か何かか?)
訝しげな顔をした王が球体を見つめる中、突然球体の表面が大きく波打ち、ぎゅるりと渦のようにうねったかと思うと、そこに巨大な目玉がひとつ出現した。
「っ!?」
驚きの表情を浮かべた王を、黒々とした眼がぎょろりと見つめる。
『――擬態が強制解除されました。これよりフェイズ2に移行します』
「あ?」
何の話だ、と訊き返した王だったが、球体はそれに答えを返すことなく、王をじっと見つめ続ける。
『――スキャン完了。個体識別:基幹次元リエンコルム/人類/微特殊個体/レクシリア・グラ・ロンター。――エラー、エラー。想定されていた超特異点個体ロステアール・クレウ・グランダではありません。対応レベルを落としますか?』
「……おい、どういう意味だ」
そう問うも、やはり答えは返ってこない。代わりに、何に語りかけているのかも不明な無機質な声が再び響く。
『――了解しました。それでは対応レベルを維持したまま、レクシリア・グラ・ロンターの排除を実行します』
その言葉に王が反応するよりも早く、球体の表面がとぷんと波打った。そして次の瞬間、目にも止まらぬ速さで球体から水の鞭のようなものがしなり、寸分狂わず王に向かう。
まさに神速の攻撃は、的確に王の心臓を狙った一撃だった。いかに王と言えど、咄嗟に反応しきれる速度ではない。
だが、雷の獣は違った。
主人の危機を正確に把握したライデンが、己にできる最速で回避を図る。だが、ライデンを以てしても、敵の攻撃の速度に勝ることは難しかった。
しなる水が、鋭利な刃となって王に向かう。ライデンによって僅かずらされた軌道は、しかし完全な回避を許すことはなく、王の左腕に襲いかかった。
「っ!」
声を上げなかったのは、王としてのプライドだろうか。
左腕を襲った激痛に顔を歪めた王は、己の腕を見て更に顔を顰めた。
先程の攻撃で、肩から下が見事に斬り落とされたのだ。
「火霊!」
王になったことで水霊魔法の適性を失った赤の王は、以前のように回復魔法を使うことができない。故に彼は、止血のために傷口を焼き切る方法を取った。
歯を食い縛って肉が焼かれる痛みに耐えた王が、残された右手で騎獣の首を優しく叩く。
「よく避けてくれた、ライガ。お前のお陰で命拾いした」
労いの言葉に、しかしライデンは悲しそうな鳴き声を上げた。主人が重症を負ったことに、責任を感じているのだろう。
「そう落ち込むなよ。幸い俺は両利きだからな。腕一本持ってかれたところで、大して困りゃしねぇ。……それより問題は、あの敵をどうするかだ」
王が睨み据えた先で、球体の目玉がぐるんと回転する。
『――敵の行動が予測を下回りました。微特殊個体レクシリア・グラ・ロンターの推定能力値を下方修正します。超特異点個体ロステアール・クレウ・グランダ専用対応レベルの変更を検討してください』
「……さっきから好き放題言ってくれるじゃねぇか」
自分に向けられている言葉でないことは判っているが、その内容は王に関わるものだ。そして、淡々とした敵の指摘が正しいことは、王自身が一番理解している。
『――了解しました。対応レベルを維持し続けます』
隠す気もない発言から察するに、この敵は、先代の赤の王ロステアールと戦うために用意された相手だ。ならば、今の赤の王であるレクシリアが敵う相手ではない。
誰よりもその事実を知っているレクシリアは、それ故にこの時点で覚悟を決めた。
ここには居ない誰かとの交信をしていた敵の目が、またぐるりと回ってレクシリアを見る。そして視線をそのままに、球体はその表面をふるりと震わせた。
『微特殊個体レクシリア・グラ・ロンターに、質問があります。なお、これは私個人の純粋な疑問であり興味なので、回答の義務はありません』
すっかり攻撃を止めた球体が、レクシリアに語りかける。だが、敵の明らかな隙を前にして、レクシリアは手を打つことができなかった。何をしたところでこの相手には通用しないと、理解してしまったからだ。それこそ、敵に一矢報いることはおろか、敵の攻撃を防ぐことも命からがら逃げることも不可能だと、悟ってしまったのだ。
『超特異点個体ロステアール・クレウ・グランダと比較すると、貴方はあまりにも脆弱です。そんな身で、何故王を継ごうという考えに至ったのでしょうか。何故、自身がその器であると考えるのでしょうか』
それは、レクシリアが最も忌避し、心から恐れてすらいた問いだった。
己が彼に及ばないことなど、レクシリア自身が一番よく判っている。彼はこの上なく優れた王であり、王として在るために生まれたかのような存在だ。だから、自分を含む誰にも、彼の代わりになることなどできはしない。
だからこそ、レクシリアは王位の簒奪を宣言したのだ。これは本来あるべき姿ではなく、一時の偽りなのだと。国を統べる名を戴くのは、自分ではなく彼なのだと。
自覚はしている。覚悟もしていた。だが、
(……事実として突き付けられると、さすがに堪えるものがあるな)
レクシリアはロステアール・クレウ・グランダを心から敬愛している。それこそ幼少の頃から、ずっと彼のことを尊敬し、彼の助けになりたい一心で己を磨いてきた。ずっと彼の背中を追って生きてきた。
それ故に、嫌でも理解してしまうのだ。彼と自分はあまりにも違う。血反吐を吐くような努力をどれだけ重ねようと、レクシリアが彼に及ぶことはない。それほどまでに、彼は高みに居る存在だった。
(判ってるさ。俺じゃあいつの代わりにはならない。俺なんかが、あいつを差し置いて王になれる筈がない)
そうだ。レクシリアは知っている。王になるには、自分があまりにも無力であることを。
「……自分を王の器だと思ったことなんて、生まれてこのかた一度もねぇよ」
『では、何故王を継いだのですか?』
球体の問いに、レクシリアは一度瞬きをしたあと、その顔に薄く笑みを浮かべた。
「違う。俺は王位を継いでなんかいない。そうするのが最善だと判断し、ただ王の座を簒奪しただけだ」
そうだ。ただそれだけなのだ。
「だから、俺は真の意味での王じゃない」
レクシリアの口から、自然と言葉が落ちていく。
そう。レクシリアは王ではない。何故なら、
「……俺の王は、あいつだけだ」
それは心からの言葉で、故にレクシリアは個としての覚悟を決めた。レクシリアの役目は、彼の王が目覚めるまでの間を繋ぐことである。ならば、ここで彼がすべき選択は決まりきっていた。
『回答を得ましたが、理解は不可能でした。質問を終了します』
「ああ、結構だ。別に理解して貰いたいとは思ってねぇからな」
『それではこれより、処理を再開します』
その言葉を合図に、球体の表面がとぷんと揺れる。
レクシリアには、次に来るだろう攻撃を避けられる保証がない。だが、彼はそれを気にしてはいなかった。
レクシリアの扱える魔法で、この敵に通用するものはない。いや、きっとそれは先代赤の王であっても同じだ。ただ、先代ならばそれでもこの状況を打破できたはずで、レクシリアにはそれができない。
「悪いな、ライガ。あと少しだけ、敵の攻撃を避けるのに集中してくれ。ああ、腕やら脚やらがもげるのは構わねぇから、死なないようにだけ頼む」
そう言ったレクシリアが、波打つ球体を睨み据え、大きく息を吐き出した。そして、彼はその音を唇に乗せる。
「――水の流れに逆らう存在」
瞬間、レクシリアの体内の血液が、まるで沸騰するかのようにざわついた。だが、そこに予感していたような魔力の流れはなく、ただひたすらにレクシリアの全身を熱が駆け巡る。
「赤より赤き紅蓮の覇者よ 全てを滅ぼす破壊の御手よ」
球体が繰り出す水の流れが、懸命に駆けるライデンを捉え、レクシリアを襲う。だが、残された右腕の一部が削がれ、左耳が落ち、片足の先が切り取られても、レクシリアは詠唱を止めようとはしなかった。そしてそれは、極限魔法に似た、しかしそれよりもずっと重くのしかかるような音色で紡がれていく。
果たしてこの魔法を以てすれば、目の前の敵を打ち砕くことができるのか。それはレクシリアにも判らない。しかし、これが彼にできる精一杯だ。もう彼には、間違いなく最強の魔法であるこの一撃を放つしか、手段がないのだ。
持てるものを投げ出す覚悟は決めた。残したものを切り捨てることへの迷いも捨てた。ならばこの魔法の完成は、レクシリアが望んだ未来そのものである。
だが、
「――“森羅万象打ち砕く大地”!」
レクシリアのその覚悟は、怒号じみた叫びによって呆気なく打ち砕かれた。
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