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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子
ふってわいた幸福
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カーテンの隙間から差し込んだ朝の陽射しに、少年はベッドからもぞりと起き上がった。寝起きで少しぼーっとしながら、ベッド脇に置いてある眼帯に手を伸ばす。昨夜は心身ともにへとへとだったが、これだけはと繕ったのだ。
元々使い込んでくたくたになっていた眼帯は、昨夜の一件を経たことによって一層酷い有様になっていた。頑張って繕ってもボロ切れよりはマシという程度にしかならなかったのは少し悲しいが、機能はするので良しとする。というよりも、夜市でかなりのお金を使ったせいで、新しい眼帯を買う余裕がないので、良しとするより他はないのだ。
はぁ、と溜息をついてから、少年は身支度を整えて開店に向けての準備を進めた。確か今日は三人ほど予約が入っていたはずだ。尤も、昨日の魔物騒動の直後に来るかどうかは判らないが。
そう思っていた彼だったが、意外にも顧客は皆、時間通りに店を訪れた。作業の合間に客から聞いた話によると、昨夜の事件は規模の割に解決までにかかった時間が驚くほど短かったらしい。なんでも、軍が辿り着いたときには相当数の魔物が炎熱魔法か何かで焼け死んでいたとか。状況的に魔物同士が仲間割れを起こしたのではないかと考えられているらしいが、所詮流れている噂に過ぎないそうなので、真偽のほどは定かではない。
襲ってきた魔物たちはどうやら別次元から渡って来た魔物らしいとか、急な襲来にも見事に対応したギルガルド王はやはり素晴らしいだとか、もっと色々と話された気がするのだが、少年には興味のない話だったので適当に返事をしながら聞き流してしまった。とにかく、やはり今日の話題は昨夜の魔物騒動一色であった。
(それにしても、皆こういう話好きなんだなぁ)
夕方、最後の予約客を見送ってひと息ついた少年は、自分用のお茶を淹れながらぼんやりと思った。
今日は予約客だけでなく、少年が毎月夜市に通っているのを知っている顧客などが好奇心からか事件当時の話を聞きに訪れたりもして、珍しく慌ただしい一日だった。
(そういえば、今日はあの人来てないな)
まあ、昨夜の意味不明な発言のことを思うと来ないに越したことはないのだが。
そんなことを考えながらソファに座ってのんびりお茶を飲んでいると、カランカラン、という音がして入り口の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
身に着いた条件反射でそう言って扉の方を見れば、大きな紙袋を腕に抱えたあの男がいた。
「こんにちは、キョウヤ」
にこにこと懐っこい笑顔で言った男に、少年の方も白熱電球の笑みで応える。
「こんにちは。今日はそろそろお店を締めようと思っていたのですが、何かご用でしょうか?」
「ああ、大したことではないのだが、少しだけ時間を貰えるか?」
「……どうぞ」
暗に帰れと言ったのだが、伝わらなかったのだろうか。いや、この男のことだ。気づかないふりをしている可能性の方が高い。
「それで、何のご用でしょう?」
「ああ、実は今日は一日その辺の市場を回っていたのだが、昨日のような貿易祭でなくともギルガルドには珍しい品物が多いのだな。色々と目移りしてしまって、気づいたらあれやこれやと買い込んでいたのだ。見ろ、大荷物だろう?」
「それは、楽しまれたようで何よりです」
確かに、体格が良い男が片腕一杯に抱えるほどの紙袋だ。何やら大量に物が詰まっていそうである。だが、だからと言って何故ここに来る。大人しく宿に帰れ。
「いやぁ、これだけ買ったは良いが、私では使いようがない物の多いこと多いこと。まあ見てくれ」
「え、あの、」
少年が何かを言う前に、男が勝手に紙袋から物を取り出して接客用の長机に置いていく。
(なんなんだこの人。自慢でもしにきたのかな……)
何にせよ大変迷惑な話である。一瞬だけ少年の作り笑顔が崩れ、咎めるような目が向けられたが、男に止める様子はなかった。
仕方なく男が店を広げる様子を眺めると、確かに無節操に色々な物が出てくる出てくる。綺麗な蒼玉で飾られた簪に、魔術用の鉱石の屑が詰まった小瓶、香辛料。薄紅の国の特産品である化粧道具まである。どんな買い方をしたらこうも統一性のない買い物ができるのだろうか。
「キョウヤの影響か、染料の類も結構買ってしまってな。だが私に刺青を彫ることはできぬし、使いどころがない」
言いながら、男が染料の詰まった瓶をいくつも机に並べる。なんでまたこんな重い物を、それも大量に買い込んでいるのだろう。馬鹿なのかも知れない。
内心で少し呆れながら男が染料の瓶を並べていくのを眺めていると、ふとその中にある色を見つけ、少年は目を見開いた。
あの、真珠色だ。少年が欲しくて欲しくて堪らなかった、あの色だ。
その瞬間、少年の目はそれに釘付けになった。食い入るように見つめてくる彼に、男が小さく笑う。
「これか? 美しいだろう。一角獣の角の粉末を混ぜ込んであるらしい」
そう言った男が瓶を手に取って揺らして見せた。が、少年は相変わらず染料のみを見ていて、どうやらその耳に男の言葉は届いていないようだった。
ふむ、と呟いた男は、持っていた瓶を少年の目の前にことりと置いてから、残りの品物を並べる作業に戻った。
暫くの間真珠色の染料に見惚れていた少年だったが、はっとして瞬きをする。またやってしまったと思いつつ男を見れば、男もこちらを見ていたのか、目が合った。そのまま、柔く微笑まれる。
「染料に関しては私が持っていても仕方がないし、重くて旅の邪魔にもなる。なので、もしお前が良ければ引き取っては貰えないか?」
「…………はい?」
「勿論金はいらん。私が後先考えずに購入して、それをお前に押し付けようとしているだけなのだから」
「え、いえ、でも、」
改めて机の上を見れば、一角獣の染料を除いても銀貨十枚はするだけの染料が揃っている。それだけでも少年にとっては大金だというのに、それにひと瓶の真珠の染料が加われば、いかほどのものだろうか。たったひと匙で金貨一枚の値打ちがある品だから、ひと瓶ということは、およそ金貨二十枚くらいだろうか。これは、少年が半年働いてようやっと稼げるか稼げないかくらいの額である。
「あ、あの、こんな高価なものを頂くわけには、」
「私には使いようがないのだから、貰ってくれると嬉しいのだが。む、それとも気に入らなかったか?」
「いや、そんなことはないですけれど、」
なにせ昨夜は、懐が酷く寂しくなった割に得た物はゼロというなんとも悲しい結果に終わったのだ。正直に言えば、くれると言うなら貰いたかった。男が持ってきた染料の中には、昨夜補充のために買ったけれど失くしてしまった色もある。それ以外の染料だって、あって困ることはない。だが、だからといって、そうですかありがとうございますと受け取る訳にはいかない程度には品物の金額が高すぎた。
「そんなことがないのなら受け取ってくれ。私が持っていても邪魔になるだけのものだ」
「でも、」
尚も渋る少年に、男はふむ、と言って少し思案するような顔を見せた後、良いことを思いついたと言って笑った。
「それでは、染料を渡す代わりに私と出掛けてはくれないか? 確か明後日は定休日だっただろう?」
「え、ええ、明後日は休みですけど、それでお礼になるとは思えないのですが……」
「何を言う。愛する相手と出掛けられるのだ。これ以上の礼はないだろうに」
「はぁ……」
まだ言ってるのかこの人。もしかすると昨夜の騒動の際に頭でも打ったのかもしれない。だがまあ、一緒に出掛けるだけでこれだけの染料が貰えるのなら儲けものではある。この男のことは相も変わらず苦手というか、ますます苦手になってきているが、それでもこの提案は魅力的だった。
「本当に、一緒に出掛けるだけで良いんですか?」
「ということは、デートの申し出には応えて貰えるのだろうか」
「ふふ、デートですか。冗談がお上手ですね。それは置いておくとして、ご一緒すれば貴方が満足するのであれば、お付き合いします。明後日ですね?」
「ははは、これは上手く躱されてしまったな。だが、これでお前の時間を一日貰えるのだ。良しとしよう」
言い方がいちいち気持ち悪くて鳥肌が立ってしまいそうだったが、どうにかそれをやり過ごす。こんなことでこの男と一日過ごせるのだろうか、と若干不安になってきた少年をよそに、男は机に広げていた荷物を紙袋に戻し始めた。
「そういえば、キョウヤはこの大陸に来て何年くらいになるのだ?」
「……さあ、どれくらいだったでしょうか」
「見たところ大分馴染んではいるようだが……。魔法は使えるか?」
「いえ、使えません。僕が居た国では、魔法はとても珍しいものだったので」
「ほう、では魔術か」
その言葉にも、少年は首を横に振った。
「魔術も錬金術も、使えません。あまりそういうことに興味がなくて、不勉強なんです」
「おお、そうだったか。まあお前には刺青師としての腕があるからな。問題はないのだろう」
その言葉に、ほんの少しだけ少年が笑う。刺青を褒められるのは素直に嬉しいのだ。自分が唯一胸を張れるものだから。
「しかしそうか、興味がないか。……確かにお前は、自分に密接に関わるもの以外への興味が薄いように見える。ということは、他の国についてもあまり知らぬのか?」
「そう、ですね。一応、隣国である赤と橙の国なら少しだけ知っていますけれど」
「ほう」
「あ、知っていると言っても、赤は鍛冶業、橙は鉱石産業が盛んだとか、赤と金の国は仲が良いとか、その程度の知識で……。お恥ずかしながら、各国の国王陛下の名前すら憶えていないです」
「さすがは技術者だな。やはり産業面には詳しいか」
詳しいも何も各国の得意産業くらいは多分常識で、寧ろ自国の王以外の王の名すら知らない自分は世間知らずである自覚が少年にはあるのだが、男は感心したようにそう言った。
「まあ、国王の名など知ったところで何の益もないし、政治にしても、知らないからと言って生きていけぬ訳ではないからな。不要な知識と言うこともできるだろう。場所によっては政治を知らぬが故に損をすることもあるだろうが、金の国は良く統治されている。そこまでの損失を被ることもそうあるまい」
「はぁ」
まるで金の国を評価するような物言いに、なんだか随分偉そうなことを言う人だな、と思った少年だったが、だからといって何がどうということもないので流しておく。
「ああ、済まない。時間を取らせてしまったな。私の用向きは終わったし、明後日のことを決めたら帰るとしよう。そうだな、店がいつも開く時間に迎えに来ても良いだろうか?」
「はい、お待ちしています」
「行く場所も私が決めてしまって良いか?」
「……あまり、遠くない場所でしたら」
「承知した」
染料以外の品を紙袋に戻し終えた男が、来た時のようにそれを片腕に抱える。
「ではな」
「はい。あ、あの、」
そのまま立ち去ろうとした背中に慌てて声を掛ければ、不思議そうな表情をした顔が振り返った。
「染料、ありがとうございます」
「きちんと見返りを貰うのだから礼などいらんというのに、キョウヤは礼儀正しい子なのだな。いや、喜んで貰えたのなら私も嬉しいよ」
言葉通り嬉しそうに笑った男は、ひらりと手を振ってから店を出て行った。
残された少年は、ほっと息をついてから、テーブルの上に残された染料たちを見る。その中でも一際目立つ真珠色が詰められた瓶を手に取り、うっとりとした表情を浮かべた。ああ、なんて綺麗なのだろう。しかし、あの男はどうやってこれを入手したのだろうか。とてもではないが、一般の市場に出回る品ではないと思うのだが。
(まあ良いや。手に入ったんだから)
明後日のことを考えるとちょっとだけ気分が沈んでしまいそうだったが、それでもこれを手に入れられた幸福で一杯の少年は、今夜は気持ち良く眠れそうだと思った。
宿に帰るのかと思われた男は、しかしそうはせず、刺青師の少年の店がある場所よりも更に首都の中心から離れた郊外に来ていた。その中でも人通りのない裏路地のような場所に入り込み、抱えていた紙袋を地面に下ろす。そして、少年に渡さなかった品物たちを次々と取り出して無造作に地面に並べていった。
(さて、この余分なものたちをどうしようか)
取り敢えず使いそうな人間に譲るか、と仕訳をしながら、別に所持していた布袋に詰め直しているところに、上空から綺麗な囀りが聞こえた。どうやら伝達用に使っている鳥が戻ってきたらしい。
「おお、丁度良かった」
ひらりと小さく手を振れば、陽が落ちて暗いというのに、鳥は迷うことなく男の元へと滑り降り、その肩に止まった。ぴぴ、と小さく鳴いた鳥の頭を撫でてやってから、男はその脚に括られている手紙を受け取って目を通した。
「ふむ。向こうはつつがない様子で何よりだ。この様子ならば返事の手紙もいらんだろう。取り敢えず、私の方もなんとかするとだけ伝えてくれ。ああそうだ、ついでにこれも持って帰っては貰えんか? 適当に分けて貰って構わんのだが、髪留めなどはレクシィに良さそうだし、魔術鉱石や化粧道具はグレイあたりに渡せば有効に使いそうだ」
そう言って差し出された荷物に、鳥が首を傾げる。自分の身体の二倍はある大きな布袋を前に、このままでは運べないと訴えているのだ。
「勿論、心得ているとも」
そう言った男が、鳥の目の前ですっと片手を振る。すると、手が滑った後からふわりと炎が生じ、穏やかな渦となって鳥の全身を包み込んだ。しかし、熱に晒された鳥から悲鳴が上がるようなことはなく、数瞬後、炎に呑まれた中から大きな翼が広がり、内側から渦を弾けさせた。
炎の渦が掻き消して現れたのは、先ほどの鳥の面影が残る、大きく美しい炎の鳥だった。
「その姿ならばこの荷物も運べるだろう。魔力と炎を多めに供給しておいたから、グランデルまで十分保つはずだ」
男の掌に頭を撫でられて嬉しそうに囀ったこの鳥は、その羽毛を炎で構成する、火炎鳥と呼ばれる幻獣である。幻獣に分類されている以上、一般の人間が目にすることは少なく、飼育された例もごく僅かしかない生き物なはずだが、男はどういう経緯かこの火炎鳥を伝達手段として使っているようだった。普段は小鳥のような姿でいる火炎鳥に、炎と魔力を与えることで本来の姿に近づけ、重い荷物を運んでもらおうという腹づもりらしい。
「それでは任せた。ああ、あまり目立たぬようにな。こっそり行くのだぞ」
ぽん、と背を撫でてやれば、火炎鳥は心得たというように頷いて、ふわりと上空へと滑っていった。さすがに陽が落ちたこの時間にあの姿は目立つが、そのために人気のない場所を選んだのだから、恐らく大丈夫だろう。それに、あの火炎鳥は火霊のようにやたらめったら騒ぎ立てて暴れ出すようなこともない。本人にできる最大限の努力を以て、ひっそりとグランデルに帰ってくれるはずだ。
(さて、私は明後日のデートの場所をしっかり吟味しなくては。これはもしかすると明日一日がかりかもしれんぞ)
何せ愛する子とのデートだ。それはもう万全を期して臨むべきである。
年若い店主の好みそうな場所を考えながら、明後日が待ちきれないといった様子で男は帰路につくのだった。
元々使い込んでくたくたになっていた眼帯は、昨夜の一件を経たことによって一層酷い有様になっていた。頑張って繕ってもボロ切れよりはマシという程度にしかならなかったのは少し悲しいが、機能はするので良しとする。というよりも、夜市でかなりのお金を使ったせいで、新しい眼帯を買う余裕がないので、良しとするより他はないのだ。
はぁ、と溜息をついてから、少年は身支度を整えて開店に向けての準備を進めた。確か今日は三人ほど予約が入っていたはずだ。尤も、昨日の魔物騒動の直後に来るかどうかは判らないが。
そう思っていた彼だったが、意外にも顧客は皆、時間通りに店を訪れた。作業の合間に客から聞いた話によると、昨夜の事件は規模の割に解決までにかかった時間が驚くほど短かったらしい。なんでも、軍が辿り着いたときには相当数の魔物が炎熱魔法か何かで焼け死んでいたとか。状況的に魔物同士が仲間割れを起こしたのではないかと考えられているらしいが、所詮流れている噂に過ぎないそうなので、真偽のほどは定かではない。
襲ってきた魔物たちはどうやら別次元から渡って来た魔物らしいとか、急な襲来にも見事に対応したギルガルド王はやはり素晴らしいだとか、もっと色々と話された気がするのだが、少年には興味のない話だったので適当に返事をしながら聞き流してしまった。とにかく、やはり今日の話題は昨夜の魔物騒動一色であった。
(それにしても、皆こういう話好きなんだなぁ)
夕方、最後の予約客を見送ってひと息ついた少年は、自分用のお茶を淹れながらぼんやりと思った。
今日は予約客だけでなく、少年が毎月夜市に通っているのを知っている顧客などが好奇心からか事件当時の話を聞きに訪れたりもして、珍しく慌ただしい一日だった。
(そういえば、今日はあの人来てないな)
まあ、昨夜の意味不明な発言のことを思うと来ないに越したことはないのだが。
そんなことを考えながらソファに座ってのんびりお茶を飲んでいると、カランカラン、という音がして入り口の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
身に着いた条件反射でそう言って扉の方を見れば、大きな紙袋を腕に抱えたあの男がいた。
「こんにちは、キョウヤ」
にこにこと懐っこい笑顔で言った男に、少年の方も白熱電球の笑みで応える。
「こんにちは。今日はそろそろお店を締めようと思っていたのですが、何かご用でしょうか?」
「ああ、大したことではないのだが、少しだけ時間を貰えるか?」
「……どうぞ」
暗に帰れと言ったのだが、伝わらなかったのだろうか。いや、この男のことだ。気づかないふりをしている可能性の方が高い。
「それで、何のご用でしょう?」
「ああ、実は今日は一日その辺の市場を回っていたのだが、昨日のような貿易祭でなくともギルガルドには珍しい品物が多いのだな。色々と目移りしてしまって、気づいたらあれやこれやと買い込んでいたのだ。見ろ、大荷物だろう?」
「それは、楽しまれたようで何よりです」
確かに、体格が良い男が片腕一杯に抱えるほどの紙袋だ。何やら大量に物が詰まっていそうである。だが、だからと言って何故ここに来る。大人しく宿に帰れ。
「いやぁ、これだけ買ったは良いが、私では使いようがない物の多いこと多いこと。まあ見てくれ」
「え、あの、」
少年が何かを言う前に、男が勝手に紙袋から物を取り出して接客用の長机に置いていく。
(なんなんだこの人。自慢でもしにきたのかな……)
何にせよ大変迷惑な話である。一瞬だけ少年の作り笑顔が崩れ、咎めるような目が向けられたが、男に止める様子はなかった。
仕方なく男が店を広げる様子を眺めると、確かに無節操に色々な物が出てくる出てくる。綺麗な蒼玉で飾られた簪に、魔術用の鉱石の屑が詰まった小瓶、香辛料。薄紅の国の特産品である化粧道具まである。どんな買い方をしたらこうも統一性のない買い物ができるのだろうか。
「キョウヤの影響か、染料の類も結構買ってしまってな。だが私に刺青を彫ることはできぬし、使いどころがない」
言いながら、男が染料の詰まった瓶をいくつも机に並べる。なんでまたこんな重い物を、それも大量に買い込んでいるのだろう。馬鹿なのかも知れない。
内心で少し呆れながら男が染料の瓶を並べていくのを眺めていると、ふとその中にある色を見つけ、少年は目を見開いた。
あの、真珠色だ。少年が欲しくて欲しくて堪らなかった、あの色だ。
その瞬間、少年の目はそれに釘付けになった。食い入るように見つめてくる彼に、男が小さく笑う。
「これか? 美しいだろう。一角獣の角の粉末を混ぜ込んであるらしい」
そう言った男が瓶を手に取って揺らして見せた。が、少年は相変わらず染料のみを見ていて、どうやらその耳に男の言葉は届いていないようだった。
ふむ、と呟いた男は、持っていた瓶を少年の目の前にことりと置いてから、残りの品物を並べる作業に戻った。
暫くの間真珠色の染料に見惚れていた少年だったが、はっとして瞬きをする。またやってしまったと思いつつ男を見れば、男もこちらを見ていたのか、目が合った。そのまま、柔く微笑まれる。
「染料に関しては私が持っていても仕方がないし、重くて旅の邪魔にもなる。なので、もしお前が良ければ引き取っては貰えないか?」
「…………はい?」
「勿論金はいらん。私が後先考えずに購入して、それをお前に押し付けようとしているだけなのだから」
「え、いえ、でも、」
改めて机の上を見れば、一角獣の染料を除いても銀貨十枚はするだけの染料が揃っている。それだけでも少年にとっては大金だというのに、それにひと瓶の真珠の染料が加われば、いかほどのものだろうか。たったひと匙で金貨一枚の値打ちがある品だから、ひと瓶ということは、およそ金貨二十枚くらいだろうか。これは、少年が半年働いてようやっと稼げるか稼げないかくらいの額である。
「あ、あの、こんな高価なものを頂くわけには、」
「私には使いようがないのだから、貰ってくれると嬉しいのだが。む、それとも気に入らなかったか?」
「いや、そんなことはないですけれど、」
なにせ昨夜は、懐が酷く寂しくなった割に得た物はゼロというなんとも悲しい結果に終わったのだ。正直に言えば、くれると言うなら貰いたかった。男が持ってきた染料の中には、昨夜補充のために買ったけれど失くしてしまった色もある。それ以外の染料だって、あって困ることはない。だが、だからといって、そうですかありがとうございますと受け取る訳にはいかない程度には品物の金額が高すぎた。
「そんなことがないのなら受け取ってくれ。私が持っていても邪魔になるだけのものだ」
「でも、」
尚も渋る少年に、男はふむ、と言って少し思案するような顔を見せた後、良いことを思いついたと言って笑った。
「それでは、染料を渡す代わりに私と出掛けてはくれないか? 確か明後日は定休日だっただろう?」
「え、ええ、明後日は休みですけど、それでお礼になるとは思えないのですが……」
「何を言う。愛する相手と出掛けられるのだ。これ以上の礼はないだろうに」
「はぁ……」
まだ言ってるのかこの人。もしかすると昨夜の騒動の際に頭でも打ったのかもしれない。だがまあ、一緒に出掛けるだけでこれだけの染料が貰えるのなら儲けものではある。この男のことは相も変わらず苦手というか、ますます苦手になってきているが、それでもこの提案は魅力的だった。
「本当に、一緒に出掛けるだけで良いんですか?」
「ということは、デートの申し出には応えて貰えるのだろうか」
「ふふ、デートですか。冗談がお上手ですね。それは置いておくとして、ご一緒すれば貴方が満足するのであれば、お付き合いします。明後日ですね?」
「ははは、これは上手く躱されてしまったな。だが、これでお前の時間を一日貰えるのだ。良しとしよう」
言い方がいちいち気持ち悪くて鳥肌が立ってしまいそうだったが、どうにかそれをやり過ごす。こんなことでこの男と一日過ごせるのだろうか、と若干不安になってきた少年をよそに、男は机に広げていた荷物を紙袋に戻し始めた。
「そういえば、キョウヤはこの大陸に来て何年くらいになるのだ?」
「……さあ、どれくらいだったでしょうか」
「見たところ大分馴染んではいるようだが……。魔法は使えるか?」
「いえ、使えません。僕が居た国では、魔法はとても珍しいものだったので」
「ほう、では魔術か」
その言葉にも、少年は首を横に振った。
「魔術も錬金術も、使えません。あまりそういうことに興味がなくて、不勉強なんです」
「おお、そうだったか。まあお前には刺青師としての腕があるからな。問題はないのだろう」
その言葉に、ほんの少しだけ少年が笑う。刺青を褒められるのは素直に嬉しいのだ。自分が唯一胸を張れるものだから。
「しかしそうか、興味がないか。……確かにお前は、自分に密接に関わるもの以外への興味が薄いように見える。ということは、他の国についてもあまり知らぬのか?」
「そう、ですね。一応、隣国である赤と橙の国なら少しだけ知っていますけれど」
「ほう」
「あ、知っていると言っても、赤は鍛冶業、橙は鉱石産業が盛んだとか、赤と金の国は仲が良いとか、その程度の知識で……。お恥ずかしながら、各国の国王陛下の名前すら憶えていないです」
「さすがは技術者だな。やはり産業面には詳しいか」
詳しいも何も各国の得意産業くらいは多分常識で、寧ろ自国の王以外の王の名すら知らない自分は世間知らずである自覚が少年にはあるのだが、男は感心したようにそう言った。
「まあ、国王の名など知ったところで何の益もないし、政治にしても、知らないからと言って生きていけぬ訳ではないからな。不要な知識と言うこともできるだろう。場所によっては政治を知らぬが故に損をすることもあるだろうが、金の国は良く統治されている。そこまでの損失を被ることもそうあるまい」
「はぁ」
まるで金の国を評価するような物言いに、なんだか随分偉そうなことを言う人だな、と思った少年だったが、だからといって何がどうということもないので流しておく。
「ああ、済まない。時間を取らせてしまったな。私の用向きは終わったし、明後日のことを決めたら帰るとしよう。そうだな、店がいつも開く時間に迎えに来ても良いだろうか?」
「はい、お待ちしています」
「行く場所も私が決めてしまって良いか?」
「……あまり、遠くない場所でしたら」
「承知した」
染料以外の品を紙袋に戻し終えた男が、来た時のようにそれを片腕に抱える。
「ではな」
「はい。あ、あの、」
そのまま立ち去ろうとした背中に慌てて声を掛ければ、不思議そうな表情をした顔が振り返った。
「染料、ありがとうございます」
「きちんと見返りを貰うのだから礼などいらんというのに、キョウヤは礼儀正しい子なのだな。いや、喜んで貰えたのなら私も嬉しいよ」
言葉通り嬉しそうに笑った男は、ひらりと手を振ってから店を出て行った。
残された少年は、ほっと息をついてから、テーブルの上に残された染料たちを見る。その中でも一際目立つ真珠色が詰められた瓶を手に取り、うっとりとした表情を浮かべた。ああ、なんて綺麗なのだろう。しかし、あの男はどうやってこれを入手したのだろうか。とてもではないが、一般の市場に出回る品ではないと思うのだが。
(まあ良いや。手に入ったんだから)
明後日のことを考えるとちょっとだけ気分が沈んでしまいそうだったが、それでもこれを手に入れられた幸福で一杯の少年は、今夜は気持ち良く眠れそうだと思った。
宿に帰るのかと思われた男は、しかしそうはせず、刺青師の少年の店がある場所よりも更に首都の中心から離れた郊外に来ていた。その中でも人通りのない裏路地のような場所に入り込み、抱えていた紙袋を地面に下ろす。そして、少年に渡さなかった品物たちを次々と取り出して無造作に地面に並べていった。
(さて、この余分なものたちをどうしようか)
取り敢えず使いそうな人間に譲るか、と仕訳をしながら、別に所持していた布袋に詰め直しているところに、上空から綺麗な囀りが聞こえた。どうやら伝達用に使っている鳥が戻ってきたらしい。
「おお、丁度良かった」
ひらりと小さく手を振れば、陽が落ちて暗いというのに、鳥は迷うことなく男の元へと滑り降り、その肩に止まった。ぴぴ、と小さく鳴いた鳥の頭を撫でてやってから、男はその脚に括られている手紙を受け取って目を通した。
「ふむ。向こうはつつがない様子で何よりだ。この様子ならば返事の手紙もいらんだろう。取り敢えず、私の方もなんとかするとだけ伝えてくれ。ああそうだ、ついでにこれも持って帰っては貰えんか? 適当に分けて貰って構わんのだが、髪留めなどはレクシィに良さそうだし、魔術鉱石や化粧道具はグレイあたりに渡せば有効に使いそうだ」
そう言って差し出された荷物に、鳥が首を傾げる。自分の身体の二倍はある大きな布袋を前に、このままでは運べないと訴えているのだ。
「勿論、心得ているとも」
そう言った男が、鳥の目の前ですっと片手を振る。すると、手が滑った後からふわりと炎が生じ、穏やかな渦となって鳥の全身を包み込んだ。しかし、熱に晒された鳥から悲鳴が上がるようなことはなく、数瞬後、炎に呑まれた中から大きな翼が広がり、内側から渦を弾けさせた。
炎の渦が掻き消して現れたのは、先ほどの鳥の面影が残る、大きく美しい炎の鳥だった。
「その姿ならばこの荷物も運べるだろう。魔力と炎を多めに供給しておいたから、グランデルまで十分保つはずだ」
男の掌に頭を撫でられて嬉しそうに囀ったこの鳥は、その羽毛を炎で構成する、火炎鳥と呼ばれる幻獣である。幻獣に分類されている以上、一般の人間が目にすることは少なく、飼育された例もごく僅かしかない生き物なはずだが、男はどういう経緯かこの火炎鳥を伝達手段として使っているようだった。普段は小鳥のような姿でいる火炎鳥に、炎と魔力を与えることで本来の姿に近づけ、重い荷物を運んでもらおうという腹づもりらしい。
「それでは任せた。ああ、あまり目立たぬようにな。こっそり行くのだぞ」
ぽん、と背を撫でてやれば、火炎鳥は心得たというように頷いて、ふわりと上空へと滑っていった。さすがに陽が落ちたこの時間にあの姿は目立つが、そのために人気のない場所を選んだのだから、恐らく大丈夫だろう。それに、あの火炎鳥は火霊のようにやたらめったら騒ぎ立てて暴れ出すようなこともない。本人にできる最大限の努力を以て、ひっそりとグランデルに帰ってくれるはずだ。
(さて、私は明後日のデートの場所をしっかり吟味しなくては。これはもしかすると明日一日がかりかもしれんぞ)
何せ愛する子とのデートだ。それはもう万全を期して臨むべきである。
年若い店主の好みそうな場所を考えながら、明後日が待ちきれないといった様子で男は帰路につくのだった。
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敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。
その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。
それは忠誠か、それとも――
そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。
「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」
最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。
極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。
これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。
偏食の吸血鬼は人狼の血を好む
琥狗ハヤテ
BL
人類が未曽有の大災害により絶滅に瀕したとき救済の手を差し伸べたのは、不老不死として人間の文明の影で生きていた吸血鬼の一族だった。その現筆頭である吸血鬼の真祖・レオニス。彼は生き残った人類と協力し、長い時間をかけて文明の再建を果たした。
そして新たな世界を築き上げた頃、レオニスにはひとつ大きな悩みが生まれていた。
【吸血鬼であるのに、人の血にアレルギー反応を引き起こすということ】
そんな彼の前に、とても「美味しそうな」男が現れて―――…?!
【孤独でニヒルな(絶滅一歩手前)の人狼×紳士でちょっと天然(?)な吸血鬼】
◆閲覧ありがとうございます。小説投稿は初めてですがのんびりと完結まで書いてゆけたらと思います。「pixiv」にも同時連載中。
◆ダブル主人公・人狼と吸血鬼の一人称視点で交互に物語が進んでゆきます。
◆年齢制限の話数には(R)がつきます。ご注意ください。
◆未来、部分的に挿絵や漫画で描けたらなと考えています☺
フードコートの天使
美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。
あれから5年。
大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。
そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。
それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。
・・・・・・・・・・・・
大濠純、食品会社勤務。
5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。
ずっと忘れない人。アキラさん。
左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。
まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。
・・・・・・・・・・・・
両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
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