15 / 43
猫歴15年
平行世界7日目その3にゃ~
しおりを挟むわしの驚異を質問していた記者は、わしとさっちゃんの口喧嘩を見て、何故か納得。
「いい加減、子供みたいなケンカはやめよ」
玉藻が言う通り、記者にはわしがお子ちゃまに見えたから、どうでもよくなったみたいだ。
しかし、次の女性記者はさっちゃんのペット発言が尾を引いており、変なことを言い出した。
「シラタマ王の元の姿は写真に映っていますが、この場で見せてもらえないでしょうか?」
「いや、写真があるからいらないにゃろ?」
「いえ。確認のためには必要です。本当はタヌキなのかもしれませんし」
「どう見ても猫にゃ~」
女性記者が安い挑発をするので乗るわけがないと言いたいところだが、タヌキ発言は許せない。なので、目立つ場所で変身魔法を解き、テーブルの上に飛び乗って「にゃ~ん」と鳴いてやった。
すると女性記者だけでなく、記者席にいる全ての女性が壇上に押し寄せた。
「近付くにゃ! 触るにゃ! チュールもいらないにゃ! シャーーーッ!!」
そしてオモチャにされそうになったので、猫じゃらしを爪で斬り裂いて逃げた。王様が猫じゃらしで遊ぶわけがあるまい。
猫騒動で一時混乱を招いてしまったので、また10分の休憩を入れてからのリスタート。
「先ほど頭の中でシラタマ王の声がしたのですが、アレも魔法でしょうか?」
「うんにゃ。念話という魔法で、言葉が通じない部族や獣とだって喋れるんにゃ。でも、一定以上、脳が発達している生物じゃないと上手く伝わらないけどにゃ」
「なるほど……もしかしてですけど、街中でシラタマ王たちが黙り込んでいるシーンがありましたが、それは念話で喋っていたのでしょうか?」
「お~。正解にゃ~。聞かれたくない会話は、全て念話でしていたにゃ~」
「ちなみに内容は……」
「聞かれたくないんだから、言うわけないにゃ~。あ、にゃにかを害しようとしてはいないとだけは言っておかないとにゃ。わしは平和を愛する猫だからにゃ~」
聞かれたくない内容とは、わしが転生者とバレそうな会話。実は靖国神社ではほとんど念話で話をしていたので、宮司からは静かな集団だと思われていたのだ。
記者はわしの平和発言に渋々だが納得して座ったので、次の記者が立ち上がる。
「平和を愛しているとおっしゃいましたが、先の暴走車の件は、些か行きすぎていたのではないでしょうか?」
「うんにゃ。やりすぎたにゃ。ごめんにゃさい。次の人……」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!」
わしが謝罪すると思っていなかった記者は、慌てて止めた。
「にゃに~? 謝ったにゃろ~??」
「申し訳ありません。謝罪を要求したわけではなく、どうしてあのようなことをしたか、また、車がどうして真っ二つになったか、怪我人をどうやって手当てしたかを聞きたかったのです」
「それならそう言ってにゃ~。でも、質問多くにゃい?」
質問は多いが、他の記者が「どうぞどうぞ」と言っているので仕方なく答える。まずは神剣【猫撫での剣】の効果を見せて、口があんぐりしているところに、魔法の治療法を口頭で説明。
あとは老人の処置。偉そうだしまったく反省の姿勢がなかったので「ムカついたからやっちゃった。てへぺろ」と言ったら、めっちゃため息が出てた。
「てのは冗談で、ちょっとでも反省してもらおうと思って脅しただけにゃ~」
「……本当ですか??」
「本当にゃ~」
これまでのわしの行動があまりにも王様らしくないので記者は疑い出したが、質問には答えたので次を催促。
それからも様々な質問が来て頑張って答え続けていたら、もう制限時間なので、最後の質問となった。
「皆様がこの地にやって来てちょうど一週間の滞在となりましたが、お三方の感じた日本の感想をお聞かせください」
やっと終わりかとわしから答えようとしたら、さっちゃんにマイクを奪い取られた。オオトリは避けたかったみたいだ。
「この世界に来て私が感じたことは、技術力の高さです。私たちの世界にはない物であふれていることもそうですが、町は綺麗で活気にあふれていることにも驚かされました。私が女王に即位した際には、この東京を目標にして国を発展させていこうと思います。今日は、こんな無知な私たちにお付き合いいただき、ありがとうございました」
さっちゃんがペコリと頭を下げると、ドーム内が拍手で包まれる。その中を、玉藻とマイクの取り合いをしていたら、わしは負けてしまった。玉藻も最後は恥ずかしいみたいだ。
「妾も技術力の高さには驚かされた。しかし、日本の感想はもう少し待ってほしい。この東京だけでは感想を言うには、情報が足りないからな。もうしばし日本を歩き、故郷と比べたいと思う。帰りには、きっと良い話ができるはずじゃ。では、オオトリのシラタマに代わろうかのう」
玉藻は先送りにした上に、期待を持たせてマイクを渡して来たので、わしの狭い額に汗がジワッと出た。
「え~。言いたいことは全て言われてしまったんで、短めにするにゃ。わしたちの話は楽しかったかにゃ~~~?」
掴みは大外し。わしの脇からドバッと汗が噴き出してしまったので、バレないうちにさっさと締めようよう。
「わしたちは凄く楽しいにゃ。マスコミのみにゃ様や日本に住む人は聞き足りないだろうけど、この日本には、もっと楽しい物があるはずにゃ。全てを見ることは無理でも、最後まで楽しみ尽くしたいと思いにゃす。それでは、地球に住むみにゃ様、わしたちを温かく見守ってくださいにゃ~」
わしが頭を下げるとさっちゃんと玉藻もペコリとと下げて、東京ドーム内は再び拍手の音で包まれる。わしたちは、その中をオープンカーに揺られて会場をあとにするのであった。
会場から出たら、リムジンに乗り換えてさっさと撤退。運転手にぶっ飛ばしてもらってホテルのエレベーターに乗ったら、わしと玉藻とさっちゃんは同時にため息を吐いた。
「疲れたにゃ~」
「本当に……フラッシュ凄かったね~」
「まさかここまで人気だとはな」
わしたちは今日の仕事を労いながら廊下を歩き、スウィートルームのリビングに入ったら、またため息。
「くつろぎすぎにゃ~」
わしたちが疲れて帰って来たのに、リータたちは各々ソファーや絨毯に寝転びながら好きな遊びに夢中になっていたからだ。
「にゃあにゃあ~?」
しかも、声を出しても全然見てくれないので、わしはポータブルゲームをしているリータとメイバイの間に飛び込んだ。
「あ、シラタマさん帰ってたのですか?」
「いまいいところだから邪魔しないでニャー」
「わしも相手してくれにゃ~。ゴロゴロ~」
わしが甘えた声を出してスリスリすることによって、リータとメイバイはようやくゲームをセーブしてからわしを撫で回す。でも、いつもより気合いが入ってないな。チラチラゲーム機見て集中してないし……
とりあえず2人に撫でられて寝落ちしないうちに今日して来たことを聞いたら、わしは投げ捨てられた。なので、全員集合の号令。ゲームとかを全て片付けると脅したら、なんとか集まってくれた。
「わし、今日は自由行動と言ったにゃろ? お金も渡したし、コンシェルジュさんにも観光を頼んだにゃ。にゃのにみんにゃ何してたにゃ??」
「自由行動でしたので、映画見てゲームして、アニメ見てゲームして……」
「ホテルから一歩も出てないにゃ!?」
リータたち、まさかの引きこもり状態。室内でいくらでも遊べるので、わしたちの会見も見てなかった……
「いえ、タブレットで流してましたよ」
「『ながら』は見たうちに入らないにゃ~~~」
さらにながらゲームなんて高等技術を身に付けていたので、リータたちの今後が気になるわしであったとさ。
「あたしとエミリは外へ出てたわよ」
ディナーになってもわしが「にゃ~にゃ~」愚痴っていたら、ベティがうるさいからか割り込んで来た。
「にゃんでリータたちも連れ出さないんにゃ~」
「だって自由行動なんだも~ん。それにあたしについて来ても面白くないと思ったし」
ベティが言うには、エミリと一緒に藤原家のお墓に行っていたそうだ。見た目はどうしたのかと聞いたら、変身魔法で日本人に化けたとのこと。
耳を短くして髪の毛を黒くすれば余裕で町に溶け込めたらしいが、電車の乗り方がわからなくて諦めたらしい。みんなスマホやカードを「ピッ」てやってるからついていけなかったんだって。
タクシーならあまり変わっていなかったから、一万円を掲げて拾ったらしいけど、バブル期の乗り方なんてするなよ。
タクシーに乗りさえすれば、あとはお墓までノンストップで連れて行ってくれるので、無事、墓参りはできたとのこと。しかし月命日だったらしく、大勢の人が集まって来たから焦ったそうだ。
「にゃ! ベティに救われた子供たちじゃにゃい? にゃあにゃあ??」
「違うわよ。息子のほうよ」
「にゃんだ~。ベティって人気なかったんにゃ~」
「あたしに感謝する人もいました~。照れ隠しで嘘つきました~」
「それは嘘つき通したほうがかっこよくにゃい?」
わしのニヤケ面が気に食わなかったからベティは嘘をついたようだけど、それよりも息子が亡くなっていたことが悲しかったみたいだ。それを言われたら、わしも何も言えない。お口チャックで続きを聞くのであった。
「へ~。子供食堂の利用者って体で、また行って来たんにゃ~」
「バレないかとヒヤヒヤしたわ~」
墓参りだけで終わったと思っていたら、ベティたちは子供食堂で月命日のパーティーに参加して、息子の思い出話を盗み聞きしていたんだって。
「ママ、何度も泣きそうになってたよね~?」
「もう! エミリまでからかわないでよ~」
自分が死んでから息子が立派に引き継ぎ、死ぬ間際まで恵まれない子供たちに美味しいごはんを食べさせ、その子供たちに見送られた美談なんて、わしも聞きたくなかった。
「にゃ~。立派にゃ息子さんにゃ~。さすがベティの息子にゃ~」
だって涙腺崩壊するんだもん。
「あたしより泣かないでくれる? あたしが泣けないじゃない」
「にゃ~。わしも会いたかったにゃ~」
「もう会ってたから! その時シラタマ君は抜けてるとか馬鹿にしてたじゃん!!」
「にゃ~~~」
ベティに言われて会っていたことを思い出したが、あの時の自殺を失敗して照れ笑いしていたオッサンが立派になったと知ったほうが涙が止まらない。
こうしてわしがベティの涙を奪い続けたので、笑顔で思い出を噛み締めるしかできないベティであった……
0
あなたにおすすめの小説
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる