スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第52話 回復魔法の訓練がはじまりました #4

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校長室にて。
二日連続で指導員と担当教師が駆け込んでくるという異常事態に、ラーバルは顔を顰めた。そしてその報告内容もまた二日連続でカルアによるもので……
「――そうですか、彼がそのような通信具を……」
「はい、しかもカルア君の自作だそうです」

思わず天を仰ぐラーバル。これはもう間違いなくいつものアレだ。間違いない。
そう王立学校現校長は結論を――そして覚悟を決めた。
「常に身につけられるブレスレット型、にも関わらず相手の映像が表示出来る機能が付いて通信距離も長い――と」
「その通りです。もしこれが軍事転用された場合……」

バリーの言葉に重々しく頷くと、ラーバルはひとつ息をき、決定的な――そして最近何度も口にしたその言葉を再び口にする事となった。
「軍事的脅威レベル――で間違いないでしょうね」
「ああ、やはり……」
「全く、何て物を作ってるんだカルア君は! しかもピノ君と日常会話に使ってるとか。まさかお気軽に作って、そこら中に配ってたりしないだろうね!?」

半ばキレ気味なラーバルに、こちらは脱力気味のバリーが声を掛ける。
「これはあくまで私の想像ですが」
「――何です?」
「カルア君ならやりかねないかと」
「――っ同感だよ!」



暫く教室で待っていると、やがて疲れた表情のバリー先生が戻ってきた。
そして――
「皆さんお待たせしました。さて、そろそろ時間ですね。今日の授業はここまでとしましょう。ああ、カルア君はこのまま校長室に向かって下さい。校長先生がお呼びです」

ああ、やっぱり……
今日は僕のほうから行く事になるのかぁ。

「ねえカルア、あたしも後で訊きたい事あるんだけど……?」
「うん、何となくそうじゃないかなーって感じてた」
「待ってるから。逃げるんじゃないわよ?」



コンコンコン
扉をノックして――でもピノさんみたいにいきなり開けたりはしないよ?
「入っていいですよカルア君」
「失礼しまーす」


校長先生に勧められてソファーに座ると、向かいに座った校長先生がスッと目を細めた。
「さてカルア君、今日来て貰ったのは君の通信具について聞かせて貰いたい事があるからです」

――だと思ったよ。だってバリー先生は通信具の話の直後に飛び出して行ったから。

「ええっと……どのような事をでしょう?」
「そうですね、どのような機能があるかとか、作った経緯とか、今まで誰に渡したか……その辺りについてです」

という事だったので、その辺りをひと通り校長先生に説明した。特に隠さなきゃいけないような機能は付けてないし、ベルベルさんも隠さなきゃダメとは言ってなかったし。

「ははは、じゃあそのブレスレットは『映像付き通信』と……スキルである【ボックス】が付与されてる訳ですか。そして全く同じものをピノ君が持っていると。そして実はそのブレスレットはペンダントと対になっていて、ペンダント側の機能は【結界】【ボックス】【転移】であり、そしてペンダントは体から離れるとブレスレットに収納される――という事で間違いないですね?」

「そうです。ピノさんへのプレゼントとして作ったから、他には持ってる人はいません。でも、どの機能も普通に魔道具になっているものばかりで、そんなに珍しくはないですよ?」

『通信具』に『魔法の鞄』に『コアの映像監視』に『結界具』。【転移】だってモリスさんが足代わりに普段使いしているし。ほら、やっぱりどれも普通の便利機能だ。

「ええ、確かにひとつひとつの機能を考えればその通りです。ただ、身に着けられるほど小さく、それ程の重量級の機能が複数収められている魔道具、というのは他に類を見ませんがね。まして【転移】の魔道具ともなれば、相当希少な部類と言えるでしょう」

言われてみれば中々の便利グッズかも。

「じゃあもし売ったら結構な値段になっちゃったりして。あははは」
「絶対に!! 売ったら駄目です!!! これ以上増やすのもやめて下さいっっ!!!!」

うわビックリしたー。急にそんな悲鳴みたいな声で……

「あのねカルア君、そのペンダントとブレスレットですが、もし軍隊が使ったら何が起きると思います?」
「ええっと……通信とか便利になります?」
「そうですね。そして敵陣の様子などを司令部に見せるでしょう。司令部はその情報を元に戦況に応じた作戦をリアルタイムで立てて、【転移】によって本部から大量の物資を一瞬で搬送して、それからそこに大軍を簡単に派遣できますね」

あ……ヤバ……

「その顔、どうやら理解してくれたようですね。という訳だからカルア君、そのペンダントと同等の機能を持った魔道具は決してこれ以上世に出さないようにして下さい。映像なし通信のブレスレットまでなら、ギリギリ大丈夫だとは思いますけれどね」
「はい……」

「ところで、この魔道具の存在は、応用魔法研究所のミレアさんはご存知なんですか?」
「はい、知ってます。ピノさんに渡して説明するところを、モリスさんのせいで他のみんなに全部聞かれてたから……」
「ふーむ……まあマリアベルさんが一緒だったのなら大丈夫か。――分かりました、では私からは以上です。本当にくれぐれも注意して下さい。いいですね? くれぐれも、ですよ?」



教室に戻って最初に目に入っちゃったのは仁王立ちでこちらを見つめるアーシュの姿。とその周りにはパーティメンバーも。ホームルームはもう終わってたみたいで、他にはもう誰もいない。
「帰ってきたわね。じゃあ聞かせてもらおうじゃない。さっきの通信って、あれピノ様とよね?」
「うん、そうだけど?」
「あんた、ピノ様の弟って言ってたわよね?」
「うん、言ったね」
「さっきの会話、姉弟のものにしてはずいぶんと不自然に聞こえたんだけど?」
「ええっと……そっ、そうだったかなあ……」
「説明してくれる? してくれるわよね、もちろん」

怖い笑顔でニッコリ笑ったアーシュ。そんなアーシュに隠し通せる訳もなく、これまでの事を根掘り葉掘り訊かれ、そして――

僕の話を聞き終えたアーシュはひとつ大きな溜息を吐いた。
「つまり話をまとめると、あんたが命からがらダンジョンから帰って、それから毎日ピノ様の作った料理を食べて、面倒を見てもらっているうちに『お姉さん』になってもらって、それでこの学校にも入学する事になって、しかも今だに時々ご飯を作ってもらってる、――そういう事でいいのね?」

うっそ、話せない部分を省いたらこんな情けない感じになっちゃうの!?

「これは確かに『お姉さん』と『弟』ね、血が繋がってないってだけで。分かった、じゃあ今日のところはこれで納得しといてあげる。さあ、それじゃあみんな、戦闘訓練に行くわよ!」



そして戦闘訓練も終わり家への帰り道、アーシュはひとり呟いた。
「でも、ただ優しいってだけであそこまで面倒見れるもの? もしかしてピノ様ってカルアの事……」



▽▽▽▽▽▽
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