スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第37話 止まっていたのが動き始めました #3

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――うーごーけー
――うーごーけー
よし、目に魔力が集まった!
「……ええっとカルアくん、それって何をやってるの?」
何って、見ての通り……
「目に魔力を集めたんです」

あれ?
ミレアさんが後ずさりして……ベルベルさんに縋りついて……?

「ししょー、か、解説を……私に解説をお願いします!」
「ちょ! あんた無茶言うんじゃないよ! あたしだって見たこと無いよこんなの! 体の中を全く魔力が循環してないってのに、何だって目の魔力だけが高まってるんだい!?」

あ……分かっちゃったかも。
これって、もしかしてあれじゃない? 普通と違うやり方してるってパターン。
だったら訊いちゃった方が早いかな。
「あのー、これってちょっとやりかた間違ってたり?」

でもミレアさんもベルベルさんも答えてくれる感じじゃなさそう。
「し、ししょー出番です! 私には手に負えません」
「あんた、諦めんの早すぎだよ! ほら、もっと頑張れるって! 魔法師長だろう!」
「それ言うならししょーだって前魔法師長じゃないですかー! っていうか私、魔法操作の教え方とか想像もつかないからって見せて貰いに来たんですよ? 最初から戦力外ですっ!!」
「チッ、こんな時に限ってまともな事を言って! ああもう仕方がない! カルア! 一旦その気色悪いのを止めな! 魔力操作を基礎から叩き込むよ!!」

気色悪い……
気色悪いって……

「いいかいカルア、説明するからよく聞きな。魔力ってのは本来ね、いつも体の中をぐるぐる回ってるもんなんだよ。血液とおんなじでね。動物は血液だけ、魔物は魔力だけ、人間だけがその両方とも持ってるんだ。そして魔力も血液と同じように常に体の中を循環してる。で、この循環の流れの一部にわざと淀みを作ってそこに魔力を集める――それが『魔力を集中する』って事なんだよ」

え? じゃあ今まで僕がやってたのって――ナニ?

「今のあんたは全身魔力の淀みみたいなもんだ。つまり……何て説明したらいいんだろうね、むぅ……そうだね、どろどろの粘土みたいなもんだって言ったら分かるかい? あんたの体とまったく同じ形をした魔力の塊が体の中にあるんだ。循環せずにただ溜まってる。あたしも仕事柄魔力については色々と経験してきたつもりだけどさ、それでもこんなの見た事が無いよ」

循環しないでただ体の中に溜まってるって、何だか体に悪そうな……それって大丈夫なのかな……?

「この前は魔力量だけ視ようとしてたから気付かなかったよ。循環してる魔力っていうのは体の中を満遍なく動いているから、やっぱり魔力が身体と重なって視えるんだ。こんなのわざわざ循環の状況を視ようとでもしない限り、誰も気づかないだろうね」

「えっと、循環してないと体に良くないとか……?」

「所詮は魔力だから別に健康への影響とかは無いだろうさ。だけど魔法を使うのにいい状態だとは思えないね。だからカルア、まずは無理矢理にでも魔力を循環させるよ。取り敢えず一度無理矢理にでも流れを作ってみて、後は自然と循環してくれるようになってくれるといいんだけどね」

「はい、よろしくお願いします」

「さて、じゃあその方法だが……ミレア、ちょっと二人掛かりでカルアの魔力を掻き回してみようかね」
「ああ、アレですね。――じゃあ私は右手で」
「分かった。じゃああたしは左手だね。カルア、両手を左右に広げな」
「は、はいっ」

言われた通りに両手を左右に広げると、その右手をミレアさん、左手をベルベルさんがそれぞれ掴み――
「じゃあまずはあたしから行くよ、そーらっ!!」
「ああっと来た来た!! じゃあ一旦受け止めてと――はいししょー、お返ししまーすっ!!」

ちょっ!? 体の中を交互に揺さぶられる感じ!
なんだコレっ!?

「むっ、少し反応があったか? どうだいミレア?」
「多分これ来てますね。暫く繰り返しますか?」
「ああ、じゃあとりあえず今から連続10回、行ってみようか!!」
「はいっ」

ああ……何となく分かった気がする。
僕の中で左右に揺さぶられてるコレ……多分魔力だ。
『うーごーけー』ってやって『もそっ』と動いたような感じのアレ、アレを何百倍にも激しくしたようなこの感じ。
きっとアレも魔力は動いていたんだと思う。だけど動く量と言うか規模と言うか――感触がもう全然違う。つまり今までのアレって魔力はほとんど動いてなかったって事!?

「よし、じゃあ次は流れを作るよ。あんたは右手だから上へ、あたしは左手だから下だね、じゃあ回すよ!」
「はい、ししょー!」
「せーのっ」
「「それっ!!」」

揺さぶられてた魔力が……今度は身体の中で渦を巻いて……!?
「うわわわわあぁぁーーーーっ!!」

「どうだいカルア、自分の中で魔力が回ってるのが分かるかい?」
「は、はっ、はいっ! 何だかもの凄く回ってます! うわっ! 何だこれ!? 体がすっごく熱くなって――」
「しばらく我慢しな。その流れに体が馴染んだら収まるだろうさ。今のあんたは魔力操作のひとつである【強制循環】状態だ。魔力による【身体強化】の一歩前の段階だよ」

「しっしっ【身体強化】っででですっかっ!?」
「無理に喋ろうとするんじゃないよ! 舌噛むよ!」

はっはっはいーっ……

「黙って聞いてな。体の隅々まで魔力を行き渡らせて活性化させる。そして血液で体を動かしながら、魔物と同じように魔力でも体を動かそうとする。これが両方の特性を備えた人間だけに出来る【身体強化】ってやつさ。『力』『速さ』『頑丈さ』の全てが向上するが、その代わり体力の消耗が早くなる。ほら、あんたの大好きなカバチョッチョも魔物の殲滅に使った事があっただろう?」

『諦めるのはまだ早いぜ。今からひとつ面白いもんを見せてやる。こいつぁ流派によっちゃあ奥義なんて呼ばれてるやつだ。いいか、体の中に渦を作れ。その渦を速く、大きく、力強くガンガン回せ。どうだ? 見えるか? 分かるか? 今の俺が! この俺がっ! スーパーカバッチョだあああぁぁぁっ!!!! 』


あ、あ、あれかああぁぁぁーーーっ!!


「よーし、一旦ここで止めて様子を見るかね。ミレア、同時に止めるよ――3、2、1、今だっ」
「はいっ」
「よし、どうだミレア? 循環は始まったかい!?」
「はい――魔力はそのまま回ってます。今の所止まる様子はありません」
「よし、成功だね。いいかいカルア、今のこの状態を覚えるんだ。この流れを自分で意識して調整出来るように頭と体に刻み込みな! 分かったかい!?」

「はいっ! ――スーパーカルアだああぁぁーーーっ!」
「やかましいっ! 調子に乗るんじゃないよっ!!」
「はい、スーパーすみません」

そんな事言ったって……言いたくなっちゃうのはしょうがないと思うんだ。
だって……スーパー、だよ!?

――とその時、ミレアさんが愕然とした表情を浮かべた。

「ししょー大変ですっ、これ全然本の参考になりませんっ!!」
「諦めな! だってカルアだよ!?」
「ああっ、そうでしたっ!!」



▽▽▽▽▽▽
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