スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第37話 止まっていたのが動き始めました #2

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今日はベルベルさんの魔法講座の初日。
この間は結局ミレアさんの襲来で時間が足りなくなっちゃって、閉門に間に合うように必要な事だけ急いで決めて解散になった。帰り掛けにモリスさんが「今日は珍しくカルア君以外で想定外があったねえ」って言ってたけど……もしかしてモリスさんのセンサーって僕以外は対象外なの?

という事でベルベルさんのお店にやって来たんだけど――
「カルアくんいらっしゃーい。ししょー、弟弟子君の到着ですよー」
――何故いるの、この人?
「何故って……カルアくんが魔力操作するところを見にきたの。ほら、早く私の本を改訂してあげないと、これから魔法を始める人が困っちゃうからね。という訳でカルアくんの魔力操作のお勉強、参考にさせてね」

実はミレアさんって結構真面目な人だったみたいだ。
この間の第一印象がアレだったから、ちょっと意外な感じだけど――でもそうか、王宮魔法師長なんて責任ある仕事をしてる人だからそれも当然かも。

「まあそんな訳だ。まあこの子もこれで案外忙しい立場だからね。ここに来るのはカルアに興味がある最初のうちだけだろうさ。ちょっと色々と見せてやっとくれ」
「また師匠ってばそんな言い方して。――まあでも忙しいのは確かだけど。君が見つけた透明な魔石の研究が今の私の課題でね、他の国との競争にもなってるから上からの催促も激しいってわけ」

ああ、そういえばモリスさんも早い者勝ちで各国が必死に開発してるって言ってたっけ……

「モリスさんもそんな事言ってたけど、あの魔石ってどんな研究をするんですか?」
「むー、モリス先輩め、またそんな他人事みたいに。ホンットあの人ってば昔から――って思い出したらまた……」
そのまま『むむむむむ』って顔してたミレアさんだけど、少ししたら落ち着いたみたい。

「――モリス先輩のせいで待たせちゃってごめんね。それでどんな研究かって話だったわよね? そうね、やる事は色々あるけど……、他のメンバーがやってるのが実用化についてで、今私が取り組んでるのは効率化――つまり魔力の充填とか魔法の付与に必要な魔力を減らしたり、使用時の出力を上げたり出来ないかっていう研究ね。まあそもそも魔法そのものを付与出来るってだけでとんでもない話なんだけど、出来たらもっと効率を上げられないかなって――」

ああ、あれか……

「前にモリスさんが言ってた『魔物の魔力がちょっと残っちゃうから完全にスティールした魔石よりもちょっと効率が落ちる』っていう――」
「っ!? ナニソレ詳しく!!」
あれ? その話って――あっそうか。ベルベルさんからの説明って、そのあたりについてはあまり触れてなかったっけ。

「えっとですね……今のスティールの魔道具って、スティールスキルの挙動が再現しきれなくって、魔物の魔力が少し残っちゃうみたいなんです。――スキルで取り出した魔石は完全に透明なんですけど。それで、その残った魔力でちょっと色が黒くなって効率も悪くなるそうなんです」

ミレアさん、何か凄く考え込んでる……
「ねえカルアくん、その透明な魔石って、今持ってる? 出来たら見せて欲しいんだけど」

魔石……この間モリスさんと採りに行ったのはもう使っちゃたし、あとはギルマスに預けてるのと、残りは――
「家の倉庫に置いてあるので今ここには――あっそうか、【ゲート】の収納で取り出せばいいんだ! 暫く普通の収納しか使ってなかったからすっかり忘れてたよ……ちょっと待ってて下さいね」
「――ゲートの収納?」

首を傾げるミレアさんを横目に、左手の上に小さなゲートを展開。最初収納と勘違いして使っていたこのゲート、もちろん接続先は前と同じでうちの地下倉庫だ。
そこに手を入れて、えーっと、魔石魔石……あ、あった。

「はいこれ、どうぞ」
「…………」

――あれ、ミレアさん?

「うん、ありがとう――って、目の前でいきなりこんな事されると心臓に悪いんだけど!? この一瞬でみんなの苦労が理解出来た気がする。ね、ししょー?」
「ああ、まったくだよ。何気ない感じで伝説のスキルを使ってくるとか……カルア、あんた本当によく考えてから行動するんだよ?」
「はい、すみません……」
「ったく、どれだけ分かっているのやら……」

僕がベルベルさんに注意されてる間にミレアさんはもう気持ちを切り替えてみたい。
受け取った魔石を角度を変えたり光に透かしたりして観察してる。
「ほほー、これがカルア君の魔石かー。確かにこっちの方が透き通ってる。……で、ちょっと魔力を通してみると――ウソ何これ!? これであっちよりも『ちょっとだけ効率が良い』って!? 何言ってるのよ、全然別物じゃない!! でもこれ凄い――これが本来の性能なのか。じゃあ後はこの違いをどう埋めていくかを……。よーし、そうと決まればさっそくこれを持ち帰って――」
「ミレアっ!! その魔石は持ち出し禁止だ!! いいかい、絶対に持って帰っちゃ駄目だよ!」

ベルベルさんの突然の大声にミレアさんは目を丸くしてる。
「ええっと……、ししょー?」
「考えてみな! 万が一あんたの研究室でその魔石が他の誰かの目に触れたら、一体どうなる?」
「あ……」
「ったく、研究の事になると他のことがぽーんと頭から抜けちまうのはあんたの悪い癖だよ。あんたの行動にだって、カルアやあたし達全員の安全が掛かってるんだ。これからは今までみたいな訳にはいかないからね。ちゃんとおし!」
「う……ごめんなさい、ししょー」

僕の隣で今度はミレアさんがシュンとなった。
そんな僕達を見てベルベルさんが深い溜息を吐く。
「はぁぁぁ……、こいつら、絶対に混ぜたらヤバい奴だよ。――ったくこの先もこんなのが続いたら、あたしの身が持ちやしないよ……」



「ミレア、カルアの魔石の研究はここでやんな。研究室でやるのは普通の透明な魔石についてだけだ。その代わり、ここでやるんだったらモリスやオートカの奴も呼んで構わないよ」
「ホントですかししょー!? じゃあオートカ先輩も呼んでここでやります! むしろ研究室をここに移動して――あ、でもモリス先輩は要らないです。もし来たら積極的に追い返します」

「その辺は好きにおし。ただ大々的にやるのは駄目だからね。それと怪しまれないようにあたしを効率化案件の協力者にって申請しときな。それだけでもいいカモフラージュになるだろうさ」
「分かりました。戻ったら早速申請しますね」
「じゃあこの話はここでおしまいだ。さあ、カルアへの授業を始めるよ」
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