スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第90話 セントラルダンジョン探索の後編 #2

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◇◇◇◇◇◇
ようこそ中級者の諸君

ここまで辿り着けたあなた達は、もう初心者を卒業して中級者の仲間入りを果たしたです。
でも中級者を舐めたらダメです。これからあなた達を、はてしなく遠い中級坂が待ち構えているです。
そんなあなた達に必要なのは心の強さと覚悟、だからこの階層ではあなたの心を試すですよ。
心、ポキポキしちゃうですよ?

セントラルダンジョン運営
◇◇◇◇◇◇

やっぱり初心者エリアは5階層分だったかぁ。
まあ確かにゴブリンソーサラーとか倒せたら、もう初心者は卒業かもね。

しっかし――
「中級坂、かぁ」
中級者ってそんなに大変なのかな……よく分からないや。

でもそんな僕とは違って、その看板に大きく頷いているネッガー。
「ああ、全くその通りかもしれん。武術や剣術の世界でも、初心者を卒業すれば皆中級者だ。だが、そこから果てしなく長い修業の先、上級者と呼ばれるようになるのはほんの一握りの者のみ。やはりこのダンジョンのぬし……」

ああ、そう言えばネッガーって前の看板でも何だか感心してたっけ。

「心を試すって何かしらね」
「物語の定番だと、自分の写し身と戦うとか?」
「全員、バラバラ。別の場所に転移?」
「ああ、それで仲間の偽物が現れて――ってやつ? あれ陰険な罠よね」

そんなみんなの話を聞きながらこの階層のマップを作成し、目の前に投影っ!
魔物まで表示すると流石にアーシュが嫌そうだったから、表示はこの階層の地図と宝箱の位置まで。とはいえその作業中にここの魔物達が見ちゃうのは仕方ないよね。それでその魔物っていうのが――

「コボルト、かしら?」
ノルトの決めたルートに沿って歩き出した僕達は、早速その魔物と遭遇エンカウントした。

「だと思うけど、図鑑とかで見たのとちょっと違うかな。どうやら亜種っぽいね」
「でもこのコボルト……」
「「「「「かわいい……」」」」」

小さな体、潤んだ瞳、そしてプルプルと震えて……
「ねえ、この子……倒さなきゃダメ?」
「向こうは、殺る気?」
体に似合わない大きな剣を構えて、ふらふらしながら僕達に襲いかかってくる。
潤んだ瞳でプルプル震えながら。

「くっ、やるしか……やるしかないのかっ!?」
「ダメよ! 見たでしょ、あの子の表情! あんな怯えたような目で……」
「じゃあどうするの?」
「ううっ……きっと何か事情が……誰かに無理やりやらされてるとか……」
「その『誰か』って間違いなくラルだよねっ!?」
「セントラルーーーーっ!!」

取り敢えず撲撲ボコボコ棒でそっと優しくコボルトを転がし、その隙に走って突破。
「ちなみにさっきの魔物、『コボルトチワワ』だそうよ」

セカン……それを聞いてどうしろと?

コボルトチワワがプルプルしながら追いかけてくる気配を感じながら――
「ここを右!」
僕達はノルトのナビでダンジョンを突き進む!

「っ! また!?」
そんな僕達の正面に現れたさっきとは別のコボルト。顔と胴体が長くって手足がすっごく短い。

「あれは『コボルトダックス』だって」
だから名前だけ聞いてもっ!

コボルトダックスは手が短すぎて武器が持てないみたい。あれでどうやって攻撃してくるんだろうって思ってたら――

「うわっ!?」

突然槍のようにピンと体を伸ばすと、そのまま一直線に飛んできた。長い鼻をその穂先のようにして。
そっと受け止めて抱き抱えてみたい気もするけど、きっとあれも攻撃なんだろうなあ……

「今のうちよっ!」
真っ直ぐ飛んできたコボルトダックスを軽く避け、そのまま一気に前へと走り出す。
コボルトダックスもまた簡単には諦めてくれないみたいで、追いかけてくる気配がさっきより増えてる。それを背に感じながら走り続けると、前方にまたまた新たなる刺客が!
「あれは『コボルトスピッツ』ね」

キャンキャン鳴く声がだんだん強くなり、空気が振動するようになってきて――
「まさかこの声が攻撃!? ヤバっ!」
急いで【結界】を張り、空間を遮断する。
「違う! あたし達じゃなくって【結界】はあのコボルトにっ!」
「そうかっ!」

音を通さない【結界】の中で静かに吠えるコボルトスピッツ。その脇をそのまま走り抜けた僕達は、もう魔物を倒そうなんて気は全て消え失せ、ただひたすらにダンジョンの廊下を走り続ける。

「次は『コボルトポメラニ』」
――モフモフ!?
「あれは『コボルトトイプー』よ」
――さらにモフモフ!?
「今度は『コボルトパグ』」
――顔がクシャって! 愛嬌っ!!
「『コボルトマメシー』ね」
――賢そうだねっ。
「『コボルトテリア』だわ」
――王子様の気品!?

次から次へと襲い掛かって?くるコボルト亜種達。
それらをとにかく躱し続けて走り続けて……
そしてようやく僕達の目に下層への階段が写る。やっと辿り着いた!
「飛び込めーーーっ!!」
「階段はゆっくり歩いて進まないと危険よぉーーーっ」



セカンの悲鳴みたいな注意の叫びを聞きながら、何とか足を踏み外すこと無く第8階層へと降り立った。
「はぁ……恐ろしい階層だったわ」
「まさか、あんな心の折り方があるなんてね」
「モフモフは、愛でるもの。戦うものじゃない」

あれ? でも……
「ラビットもモフモフで可愛いよね?」
「「「「あれは肉よ(だ)!!」」」」
「あっ、はい」
境目どこ……? まあ美味しいけどね、ラビット。

そんな緊張感の切れ掛けた僕達の前に、この階層の第一魔物が姿を現した。そいつは――
「『コボルトリトリバー』ね」
「って、まさかこの階層……」
「ああ、今度は大型犬種のようだな」
「くっ!? どこまで追い込む気よ!!」

僕達の試練はまだ終わらない……



コボルトピレニーズ、コボルトバーナード、 コボルトンハスキー……

次々と現れるコボルト達をけてけて躱して超えて、ただひたすらに僕達は走り続ける。走りながらマップを開き、それでも最短コースなんて調べる暇がないから、とにかく無我夢中で走り続け……あっそうだ!

「【界壁】っ! みんな、ちょっと止まって!」
「でっでもコボルトが来ちゃう!」
「後ろを壁で塞いだから追い付かれても大丈夫。それよりも一度落ち着いてマップを確認しようよ。このままだと、行き止まりで追い付かれるなんて可能性もあるよ?」

そんな僕の声にみんなも落ち着きを取り戻し、ようやく人心地がついた。よかった……

「はあ、はあ、はあ……ふうぅぅ……」
「あーーーもうっ! 久し降りにこんなに走ったわよ」
「これも鍛練だと思えば別に苦にはならないが、しかし……」
「うん。追い詰められて走るっていうのは、気持ち的にちょっとね」

そんな中、ワルツが一人胸を張る。
「むむ、気持ちの問題、解決策発見」
「えっ、どんな?」
そこだけでも解消したいっ!

「まず、走りながら、時々後ろを振り返る」
「ふんふん、それで?」
「そこで一言。『うふふふふ、こっちよジョン、いらっしゃい』」
「おおっ! まるで飼い犬と戯れるお嬢様!」
「その後囲まれて襲われる未来しか見えんがな」
「でも、モチベーションは……アがる」
「まあね……やらないけど」

そんな事を話しながら僕とノルトでルートを確認、現在地から最奥までの最短コースを導き出した。
「よし、階段までの道順はオッケーだよ」
「じゃあ行きましょうか」
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