スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第91話 セントラルダンジョン報告会です #1

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セントラルダンジョンの『入口の間』を抜けて外へ出た僕達は、まだ扉が付いていない穴の前で思い思いに伸びをする。
「ううーーーん」

お子様専用フロアはまるで外みたいだったけど、それでもダンジョンを出た瞬間って何となく伸びをしたくなるんだよね。

伸びして上を向いた視線の先には、木々の向こうに西の空へ傾き掛かった太陽が見える。夕方って言うにはまだ少し早い感じかな。

「おっと、カルア君じゃないっすか」
あれっ、この声聞き覚えが……?
横手から掛かった声にそちらを向くと、入る前よりもかなり大きくなった岩に両手を添えた男の人がこちらを見ていた。

その人は岩から手を離すと――
「お久し振りっす。室長の言ってた通りお友達とこのダンジョンに来てたんですねえ」
そうにこやかに近付いてきた。

「スラシュさん?」
「そっす、スラシュっすよ。覚えていてくれて嬉しいっす」
それは覚えてますよ、だってモリスさんとの掛け合いが印象深かったから。それに調査班として来てるって今朝モリスさんから聞いたし。確かスラシュさんとあと――
「あら、スラシュばっかりずるいわ。私もいるわよカルア君」
反対側から掛かったこの声の主も。
「こんにちは、ジェニさん」
「ふふふ、よかった。私の事もちゃんと覚えていてくれたのね」

「あれ、他の皆さんは?」
二人の他には誰もいないみたいだけど、モリスさんはこの間のメンバーで来てるって言ってたよね?

「ああ、今日は自分達とエドの3人で来てるっす。エドは今ダンジョンの中に入ってるっすよ」
「えっ、エドさん一人でダンジョンの中にですか?」

だって発見されたばかりのダンジョンだよ?
安全第一だからって複数人で入るんじゃないの?

「そうっす。最初3人で入ったんすけど、最初の階層には魔物が出ないって分かったっすからね。それに年齢制限があるみたいっすから、ダンジョンを刺激しないようにってのもあるっす」
ああ、運営ラルからの注意書きか。

「今はダンジョンの中と外とで連携してデータを取ってたとこっす。これで大体ダンジョンの外壁の強度とかが掴めたっすから、あとはエドが持ち帰ってくるダンジョンの規模感の情報とこのデータを持ち帰れば任務完了っす」

なるほど……

「今回は扉と転送装置を設置するための調査っすから、こんなもんっすよ。これで早くて明日、遅くとも数日中には扉と転送装置が設置されるっす。一般公開をいつにするかはこれから決めるみたいっすけど。……それでカルア君達は今帰りっすか?」
「はい、これからギルドに――あ、でもモリスさん出掛けてるんだっけ? もう戻ってきてるのかな」
「室長の事は自分にはさっぱり……。おっと引き留めて悪かったっす。帰りの道中もお気をつけてっす」

って事でジェニさんにも別れの挨拶をと思ったら――
「あっそうだ、ねえカルア君ちょっといいかな?」
そのジェニさんの方から僕に話し掛けてきた。
何だろう?

「えっとね、ちょっと私あなたに個人的なお願いがあって……」

その上目遣いっぽい感じが……何だか……

「あのね……今度でいいから、カルア君の……見せてくれないかな? 室長には上手くはぐらかされちゃったけど、あなたのって……凄いんでしょう? 私、あの時からずっと気になっちゃってて……すっごく興味があるの。だから……ね、お願い、ちょっとでいいから……見せて……欲しいの」

……えええええええええ!?

「ちょっ! ジェニさん! 子供相手に何言ってるっすか!」
「ええっ、だって興味あるじゃない! スラシュだって気になるでしょ? カルア君の魔法」
「まっ!? ……魔法、すか」

……だっ、だよね! 魔法だよ魔法、うんっ!

「私とスラシュしか反応しなかったフィラストダンジョンのトラップが反応したんだもの、魔力量だって相当のものでしょ? それに室長から直接指導を受けて、そのうえ学校でも活躍してるって……。時空間魔法師だったら将来私達の後輩になるかもしれないんだし、そんなの興味あるに決まってるじゃない!」

……ふはぁ、まだ少しドキドキしてる。

「――ったく、ビックリさせないで欲しいっすよ。さっきのジェニさんの言葉と雰囲気、まるっきり若い子を誘惑する悪いお姉さんそのものだったっすよ?」
「ええっ、そんな事……ある……はず……あれ? でもそう言われると……ええと……あ…………」

ジェニさん……さっきの自分の言動を振り返って気付いちゃったみたい。
真っ赤になって俯いちゃった……

ええっと……この空気、どうしよう……?

「ぅぅ……恥ずかしい……私ったらもう……」
「あの、ジェニさん?」
「どうしよう、カルア君の顔見れないよ……すっごく気まずいんだけど」

僕の声が耳に届いていないみたいで、独り言が止まらない。

「ジェニさん? ジェニさーん」
「ぅぅぅ…………はっ!?」

よかった、やっとこっちに気付いてくれた。

「ええっと、ごめんねカルア君、さっきのは違うの。私、そんなつもりじゃ全然なくって――」
「大丈夫です。分かってますから大丈夫です」

だから取り敢えず落ち着いて下さい。

「……それで、魔法を見せる話ですけど」
「……うん」
「ええと、モリスさんの許可が出たらって事でいいですか? 多分モリスさんが一緒の時にって事になるとは思いますけど」

そんな僕の答えにやっと落ち着きを取り戻したみたいで、ジェニさんは少し考え、そしていつものお姉さんらしい微笑みを浮かべた。
「そっか……うん、そうよね。じゃあ室長にお願いしてみるから、許可が出たらその時はお願いね」

それから僕達は今度こそ二人に別れを告げ、王都に向かって歩き出した。
「……誤解で残念だったわね、ふんっ」
ちょっと不機嫌なアーシュを宥めながら……
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