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第93話 とある乙女達のダンジョン探索記 #3
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「あれ? 今揺れなかった?」
ふと足の裏に伝わる小さな振動に気付き、ロベリーが声を上げた。
「出来たばかりのダンジョンだし、何処かで拡張工事でもやってるんじゃない? 精霊さんも大変だ」
「ね、そんな事より早く下の階に行こうよ」
そう、出てくるコボルト達をすべて(モフり)倒し、彼女達はすでにこの第6階層を踏破していた。
そんな彼女達の歩いてきた途に転々と残されているのは、床に横たわり全身をピクピクさせているコボルト達、そして肩寄せ合ってプルプルしているコボルト達……
「次は大型犬種か、楽しみー」
「どんな種類のが出てくるのかなっ、わくわく」
「カルアの話には出てこなかったけどさ、あの名札ってあれ、亜種の名前だろう? 気が利くねえ」
第7層への階段を降りながらそんな会話を交わす乙女達。
やがて階段を降りきると、次なる出会いが――
「ウゥゥゥゥゥゥ」
そこにいたのは低い唸り声を上げるコボルトドーベルマン。
「あれ? この子はあまり可愛く、ない?」
「そう? シュッとしててかっこいいじゃない」
「分かってないね。大事なのは触り心地だよ……ピノ」
「はーーい」
大型犬種だけあって、成人男性程の身長があるコボルトドーベルマン。そのモフモフの内に秘めた凶悪な筋肉は決して飾りではない。
そんなコボルトドーベルマンは、トコトコと自分に近づいてくる小柄なニンゲンに対し、やれやれとばかりに鼻を鳴らした。
その次の瞬間――
――待て、今何が起きた?
何故ジブンは両手と両膝を地に付けているのだ?
何故そのニンゲンは、ジブンの首を後ろから片手で掴んでいるのだ!?
「ほおーら、怖くないよー」
ジブンの顔を間近から覗き込むニンゲン。
歯を剥き出しにしたその表情は、自分を威嚇しているのだろうか?
抵抗しようにも身体が動かない。
拘束されている訳ではない。
なのにジブンの意思に身体が反応してくれないのだ。
――まるで身体が「このニンゲンに逆らってはいけない」と思っているかのように。
身体よ動け!
この場を離れろ! 後ずされ!
動け動け動け、動けっ!!
よし、筋肉が反応した! 意思が伝わった!
だが……
どれだけ身体が起こそうと全身の筋肉を隆起させても、身体は起き上がらない。何故!?
その時になってコボルトドーベルマンは、ジブンの頭が、ジブンの身体が、首の後ろを掴んでいるニンゲンの手から上に上がらない事に気付く。
その手には力を感じない。
強く掴まれているようにも押さえ込まれているようにも感じない。
なのに……
どれだけ頭を上げようと力を入れても、その手はピクリとも動いてくれない。何故!?
そのニンゲンはジブンの首を掴んだままジブンの前に回り込み――
じっとジブンの目を覗き込み――
それからもう一方の手をジブンの頭に置き――
そして、ジブンに何かを話し掛けてきた。
「ふふふ、はぁい、いい子ですねー」
その声を耳にしたとき、ついにコボルトドーベルマンは悟る。ジブンが出会ったコレは、絶対に逆らってはいけない存在なのだと。
言われるがままに頭を垂れ、命を乞うしかないのだ――と。
天啓の如く自ら為すべき行為を悟ったコボルトドーベルマンは、その場へ仰向けに転がると、目の前の絶対者にその腹を晒すのであった。
或いはそれは、このダンジョンを司る精霊とリンクしたが故の心境だったのかもしれない。
何故なら彼女もまた、ピノ達が立ち去るのを身を潜めて待つしかないと諦めたのだから。
「なーんだ、案外大人しいじゃない」
「実はピノ様、テイミングとかの才能があったりしてね」
「ああ、頭に手を置いて話し掛けるだけで魔物が服従のポーズを示すんだからねえ……懐いたのか、それともヤバさを感じ取ったのか」
「ししょー、この子の顔を見ればどちらか分かりますよー」
ミレアの指差す先はコボルトドーベルマンの顔。そこには怯えとそして精一杯の媚びの表情が張り付いていた。
「……まあ見なかった事にしといてやろうかね」
それがピノとコボルトドーベルマン双方の為である――そう含めたマリアベルの言葉に微笑を浮かべて同意するロベリーとミレア。大事なのはそこじゃないし。
「さあ、モフってみようか」
こうして4人掛かりで全身隈無くモフられまくったコボルトドーベルマン。その精神はあっという間に全身からの刺激に侵食され尽くし、やがてメルトダウンを迎えるのであった。
「あーあ、もうこの階層も終わりかあ……」
その心持ちは夏の終わりか祭りの後か。下層への階段の前で一人の乙女がポツリと呟いた。
小型犬種に続いてこの階層の大型犬種も全滅。
為す術もなく翻弄された小型犬種コボルトに対し、力あるが故に悉くその精神をピノに折られた大型犬種コボルト達。
もし再びピノに出会うことがあれば、全員その場で速やかに腹を晒すだろう。
嗚呼、上下関係……
「ふふふ、次はにゃんこよ!」
そう、モフはまだ終わらない。祭りはまだ始まったばかりだ。侘しさなど一瞬で吹き飛び、彼女らはまだ見ぬ未来に突き進む!
「ケットシー! ケットシー! ケットシー!」
「あれ? でもケットシーってさ、魔物っていうより妖精とか精霊とかじゃないの?」
「んーー、広義では魔物って事じゃない? ダンジョンコアで作り出せるみたいだし」
「細かい事はいいんだよ! さあ行くよ!」
そして天災達は前人未踏の第8階層へ降り立つ!
ふと足の裏に伝わる小さな振動に気付き、ロベリーが声を上げた。
「出来たばかりのダンジョンだし、何処かで拡張工事でもやってるんじゃない? 精霊さんも大変だ」
「ね、そんな事より早く下の階に行こうよ」
そう、出てくるコボルト達をすべて(モフり)倒し、彼女達はすでにこの第6階層を踏破していた。
そんな彼女達の歩いてきた途に転々と残されているのは、床に横たわり全身をピクピクさせているコボルト達、そして肩寄せ合ってプルプルしているコボルト達……
「次は大型犬種か、楽しみー」
「どんな種類のが出てくるのかなっ、わくわく」
「カルアの話には出てこなかったけどさ、あの名札ってあれ、亜種の名前だろう? 気が利くねえ」
第7層への階段を降りながらそんな会話を交わす乙女達。
やがて階段を降りきると、次なる出会いが――
「ウゥゥゥゥゥゥ」
そこにいたのは低い唸り声を上げるコボルトドーベルマン。
「あれ? この子はあまり可愛く、ない?」
「そう? シュッとしててかっこいいじゃない」
「分かってないね。大事なのは触り心地だよ……ピノ」
「はーーい」
大型犬種だけあって、成人男性程の身長があるコボルトドーベルマン。そのモフモフの内に秘めた凶悪な筋肉は決して飾りではない。
そんなコボルトドーベルマンは、トコトコと自分に近づいてくる小柄なニンゲンに対し、やれやれとばかりに鼻を鳴らした。
その次の瞬間――
――待て、今何が起きた?
何故ジブンは両手と両膝を地に付けているのだ?
何故そのニンゲンは、ジブンの首を後ろから片手で掴んでいるのだ!?
「ほおーら、怖くないよー」
ジブンの顔を間近から覗き込むニンゲン。
歯を剥き出しにしたその表情は、自分を威嚇しているのだろうか?
抵抗しようにも身体が動かない。
拘束されている訳ではない。
なのにジブンの意思に身体が反応してくれないのだ。
――まるで身体が「このニンゲンに逆らってはいけない」と思っているかのように。
身体よ動け!
この場を離れろ! 後ずされ!
動け動け動け、動けっ!!
よし、筋肉が反応した! 意思が伝わった!
だが……
どれだけ身体が起こそうと全身の筋肉を隆起させても、身体は起き上がらない。何故!?
その時になってコボルトドーベルマンは、ジブンの頭が、ジブンの身体が、首の後ろを掴んでいるニンゲンの手から上に上がらない事に気付く。
その手には力を感じない。
強く掴まれているようにも押さえ込まれているようにも感じない。
なのに……
どれだけ頭を上げようと力を入れても、その手はピクリとも動いてくれない。何故!?
そのニンゲンはジブンの首を掴んだままジブンの前に回り込み――
じっとジブンの目を覗き込み――
それからもう一方の手をジブンの頭に置き――
そして、ジブンに何かを話し掛けてきた。
「ふふふ、はぁい、いい子ですねー」
その声を耳にしたとき、ついにコボルトドーベルマンは悟る。ジブンが出会ったコレは、絶対に逆らってはいけない存在なのだと。
言われるがままに頭を垂れ、命を乞うしかないのだ――と。
天啓の如く自ら為すべき行為を悟ったコボルトドーベルマンは、その場へ仰向けに転がると、目の前の絶対者にその腹を晒すのであった。
或いはそれは、このダンジョンを司る精霊とリンクしたが故の心境だったのかもしれない。
何故なら彼女もまた、ピノ達が立ち去るのを身を潜めて待つしかないと諦めたのだから。
「なーんだ、案外大人しいじゃない」
「実はピノ様、テイミングとかの才能があったりしてね」
「ああ、頭に手を置いて話し掛けるだけで魔物が服従のポーズを示すんだからねえ……懐いたのか、それともヤバさを感じ取ったのか」
「ししょー、この子の顔を見ればどちらか分かりますよー」
ミレアの指差す先はコボルトドーベルマンの顔。そこには怯えとそして精一杯の媚びの表情が張り付いていた。
「……まあ見なかった事にしといてやろうかね」
それがピノとコボルトドーベルマン双方の為である――そう含めたマリアベルの言葉に微笑を浮かべて同意するロベリーとミレア。大事なのはそこじゃないし。
「さあ、モフってみようか」
こうして4人掛かりで全身隈無くモフられまくったコボルトドーベルマン。その精神はあっという間に全身からの刺激に侵食され尽くし、やがてメルトダウンを迎えるのであった。
「あーあ、もうこの階層も終わりかあ……」
その心持ちは夏の終わりか祭りの後か。下層への階段の前で一人の乙女がポツリと呟いた。
小型犬種に続いてこの階層の大型犬種も全滅。
為す術もなく翻弄された小型犬種コボルトに対し、力あるが故に悉くその精神をピノに折られた大型犬種コボルト達。
もし再びピノに出会うことがあれば、全員その場で速やかに腹を晒すだろう。
嗚呼、上下関係……
「ふふふ、次はにゃんこよ!」
そう、モフはまだ終わらない。祭りはまだ始まったばかりだ。侘しさなど一瞬で吹き飛び、彼女らはまだ見ぬ未来に突き進む!
「ケットシー! ケットシー! ケットシー!」
「あれ? でもケットシーってさ、魔物っていうより妖精とか精霊とかじゃないの?」
「んーー、広義では魔物って事じゃない? ダンジョンコアで作り出せるみたいだし」
「細かい事はいいんだよ! さあ行くよ!」
そして天災達は前人未踏の第8階層へ降り立つ!
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