スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第93話 とある乙女達のダンジョン探索記 #4

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「第8階層は小型猫って言ってたよね」
「ピノ様、また捕獲よろしくね」
「あっ来た……って、うそ!?」
「……服、着てる」

「「「「かっ……カワイイっ!!」」」」

前方から歩いてきたケットシー。
何処となく野性味を感じる顔つきに、ゴールドの毛並みはまるで目の細かい絨毯のよう。その絨毯の上から羽織るのは、赤と緑からなるジャケットと半ズボン。
そんなケットシーが胸からぶら下げる名前は――
「ケットシニアンか……」

ケットシニアンは腰元からすらっと細剣レイピアを抜くと、滑らかな動作で半身となった身体の前へと突き出した。
生来無口な質なのか、ここまで声を出す気配は一切ない。そして――

その瞳が妖しく輝くと、ケットシニアンは僅かに腰を落とし、その次の瞬間乙女達に突撃を敢行!

目にも止まらぬ3連突き。
身体ごと突っ込んでくるその突きを躱すのは非常に難しい。不意を突かれた3人の乙女達が立ち尽くす中、ケットシニアンは棒立ちのピノに激突した。
「――ピノ様っ!?」

「こんな勢いよく飛び込んでくるなんてカワイイ子ね。でもこんなの持ってちゃ危ないでしょ? 転んで怪我とかしたらどうするの」

ケットシーの手から離れた細剣を左手で摘まみ、もう一方の手はケットシニアンの背中に優しく添える。
首を小さくかしげ目をパチクリするケットシニアンは、何が起きたのか理解できていないようだ。

そんなケットシニアンにピノの背後から迫る3人の乙女達。すでにロックオンは完了している。
妖しく目を輝かせた乙女達は手をわきわきさせながらケットシニアンに近付き、そして……
「――――――ンッ!?」



「……ふう」
満足げな表情を浮かべる4人、心なしか先程よりも肌艶がよくなったような……

「……それにしてもこの子、最後まで声を出さなかったわね」
「その子の性格? それとも種類の特性かな……?」
「ま、そのうち分かるだろうさ。まだまだ……沢山出てくるだろうからさ。沢山ね……くっくっくっ」

怪しく嗤う彼女達が立ち去ったその場に残されていたのは――
呆然とした顔つきでへたり込む、着衣が乱れに乱れまくったケットシニアンの姿であった。

次なる獲物はケットスコティ。
ちょっと大きめな顔の左右に主張する小さな垂れ耳がチャームポイントな三毛。
「……これはまた」
「いいじゃないっ!」
そんなケットスコティもまた、ケットシニアンと同じ運命を辿る事となった。
「いいじゃないっ!」

その後も続々と現れる亜種ケットシー達。
ケットアメショ、ケットマンチカン、ケットシアンブルー、ケットペルシャ、ケットベンガル、etcetc……

殺意の高さ、そして身体能力の高さ――その双方においてコボルトよりも危険度が高いと言われるケットシー。亜種と言っても見た目が違うくらいで危険度が低い訳ではない。だが――
彼ら彼女らに用意されていた運命は、一匹の例外もなく全てがモフ堕ちであった。

そして第9階層。
うきうきワクワクと突き進む乙女達の前に現れたのは――
「猛獣?」
「あの顔つきは完全に猛獣よね」
ネコ科の上位種というか猛獣の括りに入っている、ケットジャガーとケットヒョウだった。……やたらラフな格好の。

「あの服装……Tシャツに短パンって!」
「夏休みかっ」
――ちなみに麦わら帽子と虫取網は装備していない。

「「ぐるるるるるぅ」」
姿勢を低くし、牙を剥いて唸るケットジャガーとケットヒョウ。
その迫力に一瞬押されそうになったロベリーとミレア。だが――
「「先生、お願いします」」
そう、彼女らには心強い味方がいる。バーサクなフェアリーさんが!

ちなみに彼女達には強大な戦闘力を持つ乙女がもう一人――優れた魔法師であるマリアベルがいるのだが、後ろで涼しい顔をしている彼女は動くつもりが無いようだ。
どうやら彼女は今回、己の力の全てをモフりに使う心づもりらしい。
「あのサイズ感、こいつも期待出来そうだ。とっととやっちまいなピノ」

「うーん、2匹――いやこの大きさだと2頭? ……まあどっちでもいいけど」
ケットシー達に向かって歩きながらそんな事を考えていたピノだったが――
「2匹まとめて大人しくなってもらうには……これかな?」
と、冷気混じりの殺気を前方に向けて放った。


――死。
それは我が身に降りかかる終焉。
それは避ける事の許されぬ運命。
死死死死死死死死死死死死死死。

その瞬間、ケットジャガーとケットヒョウは死を幻視した。
いや、ほんの一瞬ではあったが実際に死んでいたのかもしれない。
その瞳からはとめどなく涙が溢れ落ち、足腰の感覚は消え失せその場にへたり込む。

そんなケットシー達の頭に手をやり、ピノは優しく微笑んだ。
「大人しくしようね。オトモダチニナリマショウ」

その言葉はケットシー達のヒビだらけの心にすっと入り込んだ。
もちろん言葉の意味は分からない。だが彼女に逆らってはいけないという意識だけは、その精神の奥深くに刻み込まれた。
――この御方は自分に生を与えた母とは逆、自分に死を与える絶対者であると。
――神であると!
そしてケットシーは命以外の全てを諦めた。

「ほおう、やっぱりこれくらい大きいと撫で甲斐があるねえ」
「抱きついた時のこの全身のモフ感、サイッコー!」
乙女達に揉みくちゃにされるケットジャガー。
だが相手は絶対者の仲間、逆らう事など許されない。
「ごっ、ごろごろにゃあお」

そしてその光景はとケットヒョウでも。
「ふん、中々愛想がいいじゃないか」
「どっちも可愛いですね、ししょー」
「にゃんぐるぅ」

彼女らはその大きなケットシー達を散々モフり倒した。
恐怖がそれ以外の感情に変わるまで。
だがやがて、別れの時が訪れる――
「さて、そろそろ次の子に会いに行こうかね」

そんな乙女達を直立不動で見送るケットジャガーとケットヒョウ。
その姿は飼い主を見送る飼い猫そのものだった。



次々に現れは乙女達に美味しくモフられてゆく大型猫種のケットシー達。殺意とともに現れ、心を折られ、精神を強制的に蕩けさせられて、そして最後には放置される。

ケットカラエル、ケットサーバル、ケットオセロット、ケットクーガー、ケットチーター……
次々と毒牙に掛けられる猛獣ケットシー達。だが――

ついにそんな彼ら彼女らを遥かに凌駕する最強の猫種が、乙女達の前にその姿を現した。
その名は――

ケットラ。



▽▽▽▽▽▽
もうちょっとだけ、つづくです。
でもホントは早く帰って欲しいです。(某ダンジョンの精霊談)
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