どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。

しげむろ ゆうき

文字の大きさ
2 / 11

2

しおりを挟む
 翌日、ハンナが学園へ向かうとすぐにエリオットが笑顔で迎えてくれた。

「おはよう」

 そして、ハンナをエスコートしながら席へと案内も。
 ただし、席に座り次第、ハンナが「エリオット様、昨日は妹が申し訳ありませんでした……」そう言って昨日の件を謝ると笑顔から困った表情に変わり、更には首を横に振ってきたが。
 エリオットなりの考えを言ってきてながら。
 「ああ、大丈夫だよ。それより、君と結婚するまで僕はあの家にはなるべく近づかない方が良いかも知れないね」と、フィナ以外にとっては良い案を。
 何しろ、タウンハウスにエリオットが来るとフィナがまた言い寄り、場合によっては自分達だけじゃなく、フィナ達の婚約まで破談になるかもしれないので。
 フィナの婚約者ルーカスは学院でトップレベルに頭が良く、人間的にも高い人ので。
 つまりはいつかはバレてしまうだろうと。
 いや、もしかしたら——と、ハンナは思っていると二人の前に当のルーカスが銀髪を靡かせながらやってくる。
 困り顔で「やあ、エリオットにハンナ嬢。すまないがフィナ嬢を見なかったかな?」と。

「申し訳ありません。朝、別々に来たものですから……」

 ハンナがそう答えるなり小さく息を吐き、気持ちを切り替えるように笑顔で「そうか。では、フィナ嬢にそろそろ私が作った商会の方に顔を出して欲しいと言伝を頼みたいんだけど良いかな?」と。
 今度はハンナが驚いてしまうことを言ってきて。

「ルーカス様、商会を作ると言っていましたが、もうご自分の商会を作られたのですか?」

 何しろ、学生のうちに自分の商会を作るなんて相当の腕前がないとできないはずなので。

「ああ、私は侯爵家と言っても四男だから卒業と同時にさっさと家を出ないといけないからね。だから、学生のうちに勉強して商会を作ったんだよ。フィナ嬢は君達に言ってなかったのかな?」

 たとえ、そういう理由だったとしても——と、ルーカスが相当に努力をしたことにハンナは尊敬の念を抱く。それと間違いなくキリオス伯爵家の誰もが知らないことに申し訳なさを感じも。

「……はい」

 帰ったら急いでフィナの両親に伝えておいてあげなければならないと。
 何しろトラブルが大きくなればハンナ達の婚約にも影響が出てくるので。

 最悪は両方とも婚約解消に……

 そう考えながらハンナはエリオットだけのことでなく実はフィナはまだ色々問題を抱えているのでは? そう疑心暗鬼にもなってしまっていたが。
 それはこちらの態度を見たルーカスも。

「ふうっ。そうか、とりあえずはわかったよ。それじゃあ、二人とも邪魔して悪かったね。では、私は戻るよ」

 そう言うなり少しだけ考えるような表情を見せ、自分の教室へと戻っていったので。確実にフィナとの将来のことを考えながら——と、二人の関係を心配しているとエリオットも心配そうな表情を向けてくる。

「ちょっとまずいんじゃないかな」
「エリオット様もそう思いますか……」
「うん、だから今日は早めに帰ってキリオス伯爵に言いに行った方が良いと思う。僕も一緒に行ってあげるから」

 そう言って頷いてきて。
 ハンナにとって心強い言葉を。

「ありがとうございます」

 何しろ、エドモンドがハンナの説明だけで状況を理解できるか不安だったから。それは話を聞く聞かない以前の問題で。
 もちろん義母のドナも。
 だから、ハンナは本当にエリオットが婚約者で良かったと心底安堵したのだ。放課後、キリオス伯爵家のタウンハウスに到着した際、隣にエリオットの存在を感じれば感じるほど。
 これならエドモンドも多少、耳に入れるだろうから。貴族のプライドが優って雑な態度は取れないだろうし。
 そう考えながら執務室に向かう。
 キリオス伯爵家の将来のこともあるし、少しは強く言っておかなければと思いながら。
 ただし、執務室の前に着いた直後、中から亡き母の妹でハンナの叔母でもあるソニアと執事のゼバスが一緒に出てきたので驚いてしまったが。
 何しろソニアは滅多にこのタウンハウスに来ないので。
 もちろん、エドモンドとドナ、それとフィナが嫌いなので——と、ハンナは挨拶もそこそこに質問する。

「ソニア叔母様、ごきげんよう。あの、どうされたのですか?」
「あなたの父親が私の商会にもっと資金援助してくれって言ってきたのよ。だから、半年後にハンナが学院を卒業すると同時に爵位を貴女に譲るならしてあげるって言ったの」
「……そうなるとお父様は断ったのではないですか?」
「もう、うちの商会しか経営難なキリオス伯爵家には資金援助をしないんだから頷かせたわよ」

 そして、ソニアの答えにハンナは思わず目を見開いてしまいも。

「えっ……」

 まさか、エドモンドが頷くとは思わなかったから。
 仕事は誰よりもできないのに、貴族のプライドだけは誰よりも高いので。
 それこそ、世界で一番と言ってもいいくらいに。
 すると、ハンナの気持ちがわかっているのかソニアが口角を上げながら説明してくる。

「あの無能に理解はさせたから大丈夫よ。契約書も次回までに用意して書かせるから。だから、貴女は安心して後を継いで頑張れば良いの。もちろんあの三人には領地の離れの小さな屋敷に住ませて本邸には近づかせないから邪魔もさせないわ」
「でも、あの三人が耐えられますかね?」
「今回は、親戚の上位貴族や私の兄であるレフティア公爵が睨みを利かせてるから耐えるしかないわよ」

 ソニアがそう言うと執事のゼバスが嬉しそうに頷く。

「これで、再びキリオス伯爵家に平穏が戻ってきますね」
「ゼバス……。あなた方には本当に辛い思いをさせたわね」
「いいえ、私達よりむしろハンナお嬢様が辛い目にあっていましたので……」

 そう言うなり申し訳なさそうな表情にも。
 エリオットが勢いよくハンナに向き直り「大丈夫です。これからはどんな事があっても僕が必ず彼女を守ってみせますから」と、宣言してくると笑顔に変わったが。
 それは、ハンナも。
 「エリオット様……」と、呟き、二人でキリオス伯爵家を経営していく事を夢見ながら。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

(完)婚約解消からの愛は永遠に

青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。 両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・ 5話プラスおまけで完結予定。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……

しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」 そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。 魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。 「アリス様、冗談は止してください」 震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。 「冗談ではありません、エリック様ぁ」 甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。 彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。 「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」 この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。 聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。 魔法を使えないレナンとは大違いだ。 それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが…… 「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」 そう言うレナンの顔色はかなり悪い。 この状況をまともに受け止めたくないようだ。 そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。 彼女の気持ちまでも守るかのように。 ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。 同名キャラで様々な話を書いています。 話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。 お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。 中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^) カクヨムさんでも掲載中。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている

潮海璃月
恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

ここだけの話だけど・・・と愚痴ったら、婚約者候補から外れた件

ひとみん
恋愛
国境防衛の最前線でもあるオブライト辺境伯家の令嬢ルミエール。 何故か王太子の妃候補に選ばれてしまう。「選ばれるはずないから、王都観光でもしておいで」という母の言葉に従って王宮へ。 田舎育ちの彼女には、やっぱり普通の貴族令嬢とはあわなかった。香水臭い部屋。マウントの取り合いに忙しい令嬢達。ちやほやされてご満悦の王太子。 庭園に逃げこみ、仕事をしていた庭師のおじさんをつかまえ辺境伯領仕込みの口の悪さで愚痴り始めるルミエール。 「ここだけの話だからね!」と。 不敬をものともしない、言いたい放題のルミエールに顔色を失くす庭師。 その後、不敬罪に問われる事無く、何故か妃選定がおこなわれる前にルミエールは除外。 その真相は? ルミエールは口が悪いです。言いたい放題。 頭空っぽ推奨!ご都合主義万歳です!

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

処理中です...