どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。

しげむろ ゆうき

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 ソニアside.

 キリオス伯爵家に付けていた密偵から不穏な動きがあると報告があり、急いだが間に合わなかった。ソニアの目の前で悪夢の様な光景が見えたから。
 ハンナが乗っていた馬車と衝突したであろう馬車が二台共、道から外れて三メートル程の高さから落ち積み重なる様に横になっていたのだ。
 ソニアは急いでハンナを救助しようと、一緒に来ていた部下達に指示を出す。そして血だらけのハンナと御者を救出すると急いで病院に連れていった。

「ハンナお嬢様は出血が多いのと頭をかなり強く打っていますので、予断を許さない状況です」
「そうですか……」

 ソニアは頭に包帯を巻きベッドに横になっているハンナを申し訳なさそうに見つめる。

「ごめんなさい。きっと、私の所為で奴らが強硬手段にでたのよね……」

 ソニアがそう呟くと、病室に入ってきたソニアの兄であるレフティア公爵が首を振った。

「違うぞ。全て悪いのは奴らだ。それにいつかは奴らはこういう事は考えていたのだろう。だからお前が気にする必要はない」
「お兄様……」
「なに、証拠も必ず見つけてやるから、それまではお前はハンナの側にいてやれ」
「ありがとう。ただ、このままだとハンナが危険だわ。きっと奴らは何かしてくるわよ」
「そんな事はさせんよ。だから、こういうのはどうだ? ハンナは顔に酷い傷を負い更に寝たきり状態だからもうキリオス伯爵家を継げない可能性があると奴らに教えるんだ。そうすれば奴らは浮かれて、わざわざ病院にまで来ないだろう。もし、奴らが来てもうちの戦闘ができる侍女の顔を包帯で巻いて寝かせて面会させておけばいい」
「わかったわ。じゃあ、お兄様が証拠を見つけるまでは変な事をしないよう奴らに少しだけ援助をしとくわね」
「そうしてくれ。ただ、例の契約はしっかり書かせておけよ。では、私は早速動くとするよ」

 レフティア公爵はそう言うとハンナに優しく微笑んでから部屋を出ていった。

「……ハンナ、必ずあなたが受けた痛みは必ず奴らに味あわせるからね」

 ソニアはそう呟くとハンナを愛おしげに見つめるのだった。



 あれから二ヵ月程経ったが、ハンナの意識は戻らなかった。

「先生、ハンナは大丈夫なのでしょうか?」
「頭を打った事と血を流し過ぎた事が原因でしょうからなんとも……。ただ、体の方はすっかり良くなってますから後は本人次第ですよ」
「そうですか……」

 ソニアは力無く病室を出て行く。それからしばらく病院の外でボーッとしていると、見覚えのある馬車が病院の前に横付けされるのが見えた。

 あれは確かレジエット侯爵家の馬車……

 そう理解した瞬間、ソニアの表情は強張った。何故なら、ハンナが入院してから一度もキリオス伯爵家とハンナの婚約者は見舞いに来なかったのだ。

 あの小娘の婚約者が何をしに来たのかしら……。まさか、小娘を送り届けにきた?

 ソニアはそんな事を考えながら馬車を見ていると、中から花束を持ったルーカスのみが降りてきたのである。
 しかも、ソニアを見つけると丁寧に挨拶をしてきた。

「こんにちは。あなたはレフティア公爵家令嬢のソニア様でよろしいですか?」
「レジエット侯爵令息、私はもう平民のソニアよ。それで何をしに来たのかしら?」
「単刀直入に言います。ハンナ嬢の安全を確認に来まし た」
「安全?まるで誰かにハンナが狙われているような言いぐさね」
「……あなたは知っているはずですよ。あの馬車の事故はキリオス伯爵家が仕掛けた事をね」

 ルーカスははっきりとキリオス伯爵家という言葉を出してきた。ソニアは驚いてしまう。

「驚いたわね……。そんなはっきり言ってしまって良いのかしら? あなたはあの小娘の婚約者でしょう?」
「それなら、近いうちに向こうから婚約解消してくるはずなので大丈夫ですよ。何せフィナ嬢は姉のものは何でも奪うことを生き甲斐としてるみたいですからね」
「……そう。それであなたは良いのかしら?」
「ええ、元々、私とフィナ嬢の婚約話は父がキリオス伯爵家の親戚と繋がりたいがために作ったものですから何の感情もありません。それで、私はハンナ嬢の見舞いはできるのでしょうか?」
「……良いわ」

 ソニアはそう答えるとルーカスを案内する。
 しかし、病室に入るとすぐにルーカスが咎める様に言ってきた。

「……私はハンナ嬢の見舞いに来たのですがね」
「あなたの事は信用できないもの」
「……そうですか。では信用されるよう努力します」

 ルーカスは頭を下げると花束を置いて去っていった。黙って見ていたソニアは、ルーカスが去った後、花束をゆっくり掴むと口元を緩ませる。
 しかし、すぐにその花束を掴むとゴミ箱に投げ入れるのだった。
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