森の中の憩いの場〜薬屋食堂へようこそ〜

森の新生活

第6話 薬を求めて

　アルトは、エルフの女性の治療に必要な薬草を求めて、森の奥へと足を踏み入れた。

「確か、この辺りに『月光草』が生えていたはずだ。魔力の流れを正常に戻す効果がある。」

　記憶を頼りに、鬱蒼とした森の中を進んでいく。木漏れ日が差し込む場所では、様々な薬草や花が咲き乱れ、まるで楽園のようだった。

「ふむ、これは『精霊花』か。疲労回復に効果があるな。少し採取しておこう。」

　道中、見つけた薬草をいくつか採取しながら、さらに奥へと進んだ。森の奥深くは、昼間でも薄暗く、静寂に包まれていた。

「確か、この先に小さな泉があったはずだ。月光草は、その近くに生えていることが多い。」

　しばらく歩くと、視界が開け、小さな泉が見えてきた。泉の周りには、白い花びらが特徴的な月光草が、幻想的に咲き誇っていた。

「やはり、ここにあったか。」

　アルトは、月光草を丁寧に採取し始めた。月光草は、採取する時間帯によって効能が変わるため、満月の光を浴びたばかりの、最も効能が高いものを選んで摘み取った。

「よし、月光草は十分に手に入った。あとは…」

　その時、アルトの目に、今まで見たことのない薬草が飛び込んできた。それは、深紅色の花びらを持つ、妖艶な雰囲気の薬草だった。

「これは…何だろう？こんな薬草、見たことがない。」

　アルトは、興味津々でその薬草に近づき、じっくりと観察した。

「花びらの形、葉の付き方…　まるで、燃え盛る炎のようだ。」

　アルトは、その薬草の効能を調べるため、少しだけ採取することにした。

「もしかしたら、新しい薬を開発できるかもしれない。」

　薬草の採取を終えたアルトは、小屋に戻ることにした。

　小屋に戻ると、エルフの女性は、不安そうな表情でアルトを待っていた。

「時間がかかりましたね。何かありましたか？」

「少し珍しい薬草を見つけたので、調べていました。薬の調合は、すぐにとりかかれます。」

　アルトは、そう言うと、早速、月光草を使って薬の調合を始めた。

　月光草を丁寧にすり潰し、泉の水と混ぜ合わせ、魔法の力で成分を抽出する。

「よし、これで、魔力の流れを正常に戻す薬は完成だ。」

　アルトは、調合した薬をエルフの女性に飲ませた。

「少し苦いですが、我慢してください。」

　エルフの女性は、アルトの言葉に従い、薬を飲み干した。

「ありがとうございます。なんだか、体が温まってきたような気がします。」

　アルトは、エルフの女性の様子を観察しながら、深紅色の薬草の研究に取り掛かった。

「さて、この薬草は、一体どんな効能があるのだろうか…」

　薬草に関する書物を読み漁り、深紅色の薬草について調べ始めた。しかし、どの書物にも、その薬草に関する記述は見当たらなかった。

「やはり、未知の薬草か…これは、面白い。」

　アルトは、興奮を抑えきれず、薬草の成分を分析し始めた。薬草を細かく刻み、様々な溶媒に浸し、成分を抽出していく。

　数時間後、薬草の成分分析を終え、その効能をある程度把握することができた。

「なるほど…この薬草は、体内の細胞を活性化させる効果があるのか。しかも、その効果は、非常に強力みたいだ。」

　アルトは、深紅色の薬草の効能に驚愕した。しかし、同時に、その強力な効果には、 危険性 も伴うことを感じた。

「この薬草を、そのまま使うのは危険だ。何らかの方法で、効果を緩和する必要がある。」

　深紅色の薬草を安全に使えるように、さらなる研究を進めることにした。

「新薬を開発するには、まだ時間がかかりそうだな…」

　アルトは、研究に没頭しながら、そう呟いた。