森の中の憩いの場〜薬屋食堂へようこそ〜

斗成

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森の新生活

第8話 初めての料理

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 小屋の拡張から数日後。
 アルトは、完成したばかりの食堂スペースを見渡していた。木製のテーブルと椅子が並び、壁には薬草の絵が飾られている。窓からは、森の木漏れ日が差し込み、心地よい空間が広がっていた。

「さて、今日は初めて、ここで料理を振る舞ってみるか…」

 アルトはそう呟くと、エプロンを身につけ、調理台に向かった。薬師としての知識は勿論のこと、料理の腕もかなりのものだった。何故なら薬を作る過程で培った技術を応用すれば、自ずと料理の腕も上がったからだ。

 今日のメニューは、森で採れた新鮮な食材を使った特製シチューだ。魔物の肉、薬草園で育てた野菜、そして隠し味には、珍しいキノコを使うことにした。

「まずは、肉を丁寧に煮込んで…」

 アルトは、手際よく魔物の肉を切り分け、鍋に入れた。水と香味野菜を加え、弱火でじっくりと煮込む。肉の旨味がスープに溶け出し、食欲をそそる香りが漂ってきた。

「野菜は、彩り豊かに…」

 次に、アルトは薬草園で育てた野菜を刻み始めた。赤、黄、緑…色とりどりの野菜が、シチューに華やかさを添える。

「最後に、隠し味のキノコを…」

 アルトは、森の中で見つけた珍しいキノコを取り出した。このキノコは、独特の風味があり、シチューに深みを与える。

 全ての材料を鍋に入れ、じっくりと煮込むこと数時間。ついに、特製シチューが完成した。

「さて、味見…」

 アルトは、スプーンでシチューを一口すすると、目を閉じた。

「…完璧だ。」

 自信作の出来に、満足そうに頷いた。

 その頃、小屋の外では、森の住人たちが集まり始めていた。獣人、妖精、ドワーフ…様々な種族が、アルトの料理を心待ちにしていた。

「今日は、アルトさんの料理が食べられるんだって!」「どんな料理かな?すごく楽しみ!」

 期待に胸を膨らませた住人たちは、小屋の中を覗き込んだ。

「どうぞ、皆さん。今日は、特別なシチューを用意しました。」

 アルトは、笑顔で住人たちを迎え入れた。

「わー!美味しそう!」

 住人たちは、シチューの香りに包まれ、歓声を上げた。

 アルトは、手際よくシチューをよそい、住人たちに配った。

「熱いから、気をつけてくださいね。」

 住人たちは、熱々のシチューを一口すすると、目を輝かせた。

「…美味しい!」「こんなシチュー、初めて食べた!」

 住人たちは、口々に感想を述べ、シチューを味わった。

 獣人の子供は、夢中でシチューをかき込み、妖精は、上品にスプーンを運び、ドワーフは、豪快にシチューを飲み干した。

 皆、アルトの料理に大満足だった。

「アルトさん、本当にありがとう。こんな美味しい料理を食べられて、本当に幸せです。」

 エルフの女性が、アルトに感謝の言葉を述べた。

「喜んでもらえて、嬉しいです。また、いつでも来てください。」

 アルトは、笑顔で答えた。

 初めての料理の振る舞いは、大成功に終わった。アルトの小屋は、薬屋としてだけでなく、食堂としても、森の住人たちの憩いの場となり始めた。
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