森の中の憩いの場〜薬屋食堂へようこそ〜

斗成

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森の楽園

第37話 店の一周年

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 薬屋の扉を開けると、いつもの静けさとは打って変わって、賑やかな声が飛び込んできた。
「アルト! 開店一周年、おめでとう!」
 ラピスの声がひときわ大きく響く。店内は、森の住人たちで埋め尽くされていた。ゴブリン、エルフ、ドワーフ、獣人……さまざまな種族が、思い思いに飾り付けられた店内で楽しそうに談笑している。
 壁には、色とりどりの花や葉っぱで作られたガーランドが飾られ、天井からは、小さなランタンが優しく光を放っている。
 
 中央のテーブルには、所狭しと料理が並べられていた。獣の肉を香草で焼き上げたもの、色鮮やかな野菜を使ったサラダ、見たこともない果物を使ったデザート……どれもこれも、アルトが作ったものだ。

「皆さん、ありがとうございます」
 アルトは、少し照れながらも、感謝の言葉を述べた。
「まさか、こんなにもたくさんの方々に祝っていただけるとは思ってもいませんでした」
 ゴブリンの代表が、ニヤニヤしながら前に出てきた。
「何を言ってるんだ、アルト。お前の薬と料理は、俺たちにとってなくてはならないものだ。感謝しているのは、俺たちの方さ」
 エルフの女性も、優雅に微笑みながらアルトに話しかけた。
「ええ、アルトさんの作る薬は、本当に素晴らしいです。おかげで、長年苦しんでいた病もすっかり良くなりました」
 ドワーフの男は、大きなジョッキを掲げながら叫んだ。
「アルト! これからも美味い料理と薬を頼むぞ!」
 歓声が上がり、店内はさらに賑やかになった。
 アルトは、一人ひとりの顔を見ながら、改めて感謝の気持ちを噛み締めた。
 この森に来て、薬屋を開いて、本当に良かった。
 最初は、ただ静かに暮らしたいと思っていただけだった。
 しかし、いつの間にか、たくさんの人々と出会い、心を通わせ、かけがえのない仲間ができた。
 アルトは、感謝の気持ちを込めて、料理を振る舞うことにした。
 得意のハーブを使った料理や、森で採れた珍しい食材を使った料理……どれもこれも、アルトの愛情がたっぷり込められている。
「これは、私が育てたハーブを使ったハーブティーです。少しでも、皆さんの疲れを癒せれば嬉しいです」
 アルトがそう言うと、住人たちは一斉にハーブティーに手を伸ばした。
 一口飲むと、その香りと味に、誰もが顔をほころばせた。
「うまい! これは本当に癒されるな」
「アルトさんのハーブティーは、本当に最高です」
 料理を味わい、お酒を飲み、楽しい会話に花を咲かせ……宴は夜遅くまで続いた。
 アルトは、住人たちの笑顔を見ながら、心から幸せを感じていた。
 この森で、この仲間たちと、これからも穏やかな日々を過ごしていきたい。
 そう強く願った。
 宴も終盤に差し掛かった頃、ラピスがアルトの隣にやってきた。
「アルト、少しは休んだらどうだ? お前は働きすぎだ」
 ラピスは、心配そうな表情でアルトを見つめた。
「ありがとうございます、ラピスさん。でも、皆さんが喜んでくれる顔を見ていると、疲れも吹っ飛んでしまうんです」
 アルトは、微笑みながら答えた。
 ラピスは、呆れたように溜息をついた。
「全く、お前は本当に……。まあいい。今日は、おもいっきり楽しめ」
 ラピスは、そう言うと、アルトの肩を軽く叩いた。
 アルトは、再び住人たちの中に戻り、宴を楽しんだ。
 夜空には、満月が輝き、森全体を優しく照らしていた。
 アルトの薬屋は、これからも、森の住人たちの憩いの場として、あり続けるだろう。
 そして、アルトと仲間たちの物語は、まだ始まったばかりだ。
 新たな出会い、新たな発見、新たな冒険……。
 どんな物語が待っているのだろうか。
 アルトは、期待に胸を膨らませながら、静かに夜空を見上げていた。
 ふと、ラピスがアルトに話しかけた。
「アルト、そういえば、新しい薬の実験はどうなったんだ?」
 アルトは、少し困ったような表情を浮かべた。
「それが……。まだ、もう少し時間がかかりそうです」
 ラピスは、ニヤリと笑った。
「ふむ、また無茶をするつもりだな?」
 アルトは、観念したように肩をすくめた。
「まあ、ほどほどにしますよ」
 ラピスは、アルトの頭を軽く叩いた。
「全く、しょうがないやつだな。だが、まあ、それもまたお前らしい」
 二人は、顔を見合わせ、微笑み合った。
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