『さよなら、彼に依存していた私―30日間の失恋回復ストーリー』

月下花音

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Day 15:さよなら、「変われない」と思っていた私

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 毎日書き続けたノート。

 Day11の夜、決意を綴ったあのノート。あれから一度も開いていなかったそれを、私は再び机の上に出した。窓の外は穏やかな午後の光に満ちている。

 別に、感傷に浸りたかったわけではない。ただ、自分の足跡を、客観的に確認してみたくなったのだ。

 万年筆ではなく、普通のボールペンを手に取る。あの夜の儀式は、もう終わったのだから。

 ◇

 ゆっくりと、1ページ目から読み返していく。

 そこには、インクの滲みと共に、この15日間の私のすべてが記録されていた。

 最初の数ページは、読むのが辛かった。

『世界から音が消えた』『コーヒーが苦い』『彼の痕跡が部屋中に散らばっている』

 そこにあるのは、混乱と絶望、そして自己憐憫に満ちた、壊れかけの女の独白だった。

 一行一行が、まるでガラスの破片のように鋭く、今の私の心をチクチクと刺す。

 よく、こんな状態から生きてこられたな、と他人事のように感心してしまった。

 ◇

 ページをめくるにつれて、文体や言葉選びが、ほんの少しずつ変化していくのがわかった。

『泣かない朝を数える』『見慣れた部屋との訣別』

 絶望の中に、微かな抵抗の意志が見え隠れし始める。

 誰かに助けを求めるのではなく、自分の力で何かを変えようとする、小さな、しかし確かなエネルギー。

 そして、最後のページ。Day13の記録。

『新しい香りは、未来の私の匂い』

 そこまで読んで、私はノートを閉じた。

 不思議な感覚だった。まるで、知らない誰かの日記を読んでいるような。

 このノートを書いたのは、紛れもなく私自身だ。でも、最初のページにいた私と、最後のページにいる私は、もはや別人だった。

 ◇

 たった15日間。地球の自転が15回繰り返されただけ。

 それだけの時間で、人間はこんなにも変われるものなのか。

 このノートは、私の苦しみの記録だと思っていた。でも、違った。

 これは、私の再生の記録だ。

 一人の女性が、愛を失い、自己を失い、そして再び自分を見つけ出すまでの、ドキュメンタリー。

 私はノートの最後の余白に、今日の気持ちを書き加えた。

『15日で、ここまで変われた。残りの15日で、私はどこまで行けるだろう』

 それは、未来への問いかけであり、自分への挑戦状でもあった。

 ◇

 ノートを本棚にしまう。もう、これを開くことはないだろう。

 過去は、もう振り返らなくていい。

 私は、ここから始まる新しい物語の、最初の1ページ目を生きているのだから。

 窓の外を見ると、午後の光が部屋を照らしていた。

 15日前とは、明らかに違う光。

 いや、光は変わっていない。変わったのは、私の目だ。

 深呼吸をする。

「あと15日。大丈夫。私は、私を取り戻せる。」

 その言葉が、初めて本当のように聞こえた。

 新しいノートを胸に抱きしめる。

 後半戦が、始まる。
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