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Day 17:さよなら、「誰かのため」にしか花を飾れなかった私
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ヨガの帰り道、駅前の小さな花屋の前で、ふと足が止まった。
色とりどりの花が、夕暮れの光の中で鮮やかに咲き誇っている。オレンジ色の光が、花びらを透かして輝いている。
これまでは、花なんて誰かに贈られるもので、自分で買うものだとは思っていなかった。
優也も、記念日には決まって赤いバラをくれた。その記憶が、ちくりと胸を刺す。
でも、今の私は、誰かから与えられる幸せを待っているだけじゃない。
私は、私自身を幸せにすることができる。
◇
店の中に入り、花の香りを深く吸い込む。
瑞々しい、生命力に満ちた匂い。
どの花にしようか。赤いバラは、もういらない。ピンクのガーベラは、少し可愛らしすぎる。
私の目に留まったのは、ショーケースの隅に置かれていた、数本の白いバラだった。
純粋で、気高くて、凛としている。
甘すぎず、しかし圧倒的な存在感がある。
それは、私が「なりたい私」のイメージそのものだった。
「これを、3本ください」
自分のために花を買う。その行為が、ひどく新鮮で、少しだけ誇らしかった。
◇
家に帰り、ガラスの花瓶に水を入れ、丁寧にバラを生ける。
模様替えをした部屋の、日当たりの良いテーブルの上が、彼女たちの新しい居場所だ。
たった3本の花があるだけで、部屋の空気が変わった。
殺風景だった空間に、命が吹き込まれたように、ぱっと華やぐ。
その夜、仕事の合間にふと顔を上げると、白いバラが目に入る。
ランプの光を浴びて、その花びらは象牙のように滑らかに輝いていた。
その姿を見ているだけで、ささくれ立っていた心が、すーっと凪いでいくのがわかった。
◇
翌朝、目が覚めて一番に目に入ったのも、その白いバラだった。
朝の光の中で、彼女たちは昨夜とはまた違う、清らかな表情を見せている。
毎日、少しずつ蕾が開き、表情を変えていく。
その小さな変化が、私の日常に彩りを与えてくれた。
その小さな変化が、私の日常に彩りを与えてくれた。
水を替え、茎を切り、大切に世話をする。誰かのためじゃない。私自身のために。
植物を育てるという行為は、自分自身を慈しむ行為に似ているのかもしれない。
枯れてしまったモンステラの葉を、私はようやく切り取ることができた。
そして、新しい栄養剤を土に与える。
失われたものを嘆くのではなく、今ここにある命を、大切に育んでいこう。
テーブルの上の白いバラが、そう教えてくれている気がした。
◇
夜、ベッドに横になる前、もう一度バラを見る。
暗闇の中で、白い花びらがぼんやりと浮かび上がっている。
「ありがとう」
小さく呟いた。
花に対してなのか、自分に対してなのか、わからなかった。
でも、その言葉が、部屋に優しく響いた。
色とりどりの花が、夕暮れの光の中で鮮やかに咲き誇っている。オレンジ色の光が、花びらを透かして輝いている。
これまでは、花なんて誰かに贈られるもので、自分で買うものだとは思っていなかった。
優也も、記念日には決まって赤いバラをくれた。その記憶が、ちくりと胸を刺す。
でも、今の私は、誰かから与えられる幸せを待っているだけじゃない。
私は、私自身を幸せにすることができる。
◇
店の中に入り、花の香りを深く吸い込む。
瑞々しい、生命力に満ちた匂い。
どの花にしようか。赤いバラは、もういらない。ピンクのガーベラは、少し可愛らしすぎる。
私の目に留まったのは、ショーケースの隅に置かれていた、数本の白いバラだった。
純粋で、気高くて、凛としている。
甘すぎず、しかし圧倒的な存在感がある。
それは、私が「なりたい私」のイメージそのものだった。
「これを、3本ください」
自分のために花を買う。その行為が、ひどく新鮮で、少しだけ誇らしかった。
◇
家に帰り、ガラスの花瓶に水を入れ、丁寧にバラを生ける。
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たった3本の花があるだけで、部屋の空気が変わった。
殺風景だった空間に、命が吹き込まれたように、ぱっと華やぐ。
その夜、仕事の合間にふと顔を上げると、白いバラが目に入る。
ランプの光を浴びて、その花びらは象牙のように滑らかに輝いていた。
その姿を見ているだけで、ささくれ立っていた心が、すーっと凪いでいくのがわかった。
◇
翌朝、目が覚めて一番に目に入ったのも、その白いバラだった。
朝の光の中で、彼女たちは昨夜とはまた違う、清らかな表情を見せている。
毎日、少しずつ蕾が開き、表情を変えていく。
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その小さな変化が、私の日常に彩りを与えてくれた。
水を替え、茎を切り、大切に世話をする。誰かのためじゃない。私自身のために。
植物を育てるという行為は、自分自身を慈しむ行為に似ているのかもしれない。
枯れてしまったモンステラの葉を、私はようやく切り取ることができた。
そして、新しい栄養剤を土に与える。
失われたものを嘆くのではなく、今ここにある命を、大切に育んでいこう。
テーブルの上の白いバラが、そう教えてくれている気がした。
◇
夜、ベッドに横になる前、もう一度バラを見る。
暗闇の中で、白い花びらがぼんやりと浮かび上がっている。
「ありがとう」
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花に対してなのか、自分に対してなのか、わからなかった。
でも、その言葉が、部屋に優しく響いた。
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2021/05/29 公開
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