『さよなら、彼に依存していた私―30日間の失恋回復ストーリー』

月下花音

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Day 17:さよなら、「誰かのため」にしか花を飾れなかった私

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 ヨガの帰り道、駅前の小さな花屋の前で、ふと足が止まった。

 色とりどりの花が、夕暮れの光の中で鮮やかに咲き誇っている。オレンジ色の光が、花びらを透かして輝いている。

 これまでは、花なんて誰かに贈られるもので、自分で買うものだとは思っていなかった。

 優也も、記念日には決まって赤いバラをくれた。その記憶が、ちくりと胸を刺す。

 でも、今の私は、誰かから与えられる幸せを待っているだけじゃない。

 私は、私自身を幸せにすることができる。

 ◇

 店の中に入り、花の香りを深く吸い込む。

 瑞々しい、生命力に満ちた匂い。

 どの花にしようか。赤いバラは、もういらない。ピンクのガーベラは、少し可愛らしすぎる。

 私の目に留まったのは、ショーケースの隅に置かれていた、数本の白いバラだった。

 純粋で、気高くて、凛としている。

 甘すぎず、しかし圧倒的な存在感がある。

 それは、私が「なりたい私」のイメージそのものだった。

「これを、3本ください」

 自分のために花を買う。その行為が、ひどく新鮮で、少しだけ誇らしかった。

 ◇

 家に帰り、ガラスの花瓶に水を入れ、丁寧にバラを生ける。

 模様替えをした部屋の、日当たりの良いテーブルの上が、彼女たちの新しい居場所だ。

 たった3本の花があるだけで、部屋の空気が変わった。

 殺風景だった空間に、命が吹き込まれたように、ぱっと華やぐ。

 その夜、仕事の合間にふと顔を上げると、白いバラが目に入る。

 ランプの光を浴びて、その花びらは象牙のように滑らかに輝いていた。

 その姿を見ているだけで、ささくれ立っていた心が、すーっと凪いでいくのがわかった。

 ◇

 翌朝、目が覚めて一番に目に入ったのも、その白いバラだった。

 朝の光の中で、彼女たちは昨夜とはまた違う、清らかな表情を見せている。

 毎日、少しずつ蕾が開き、表情を変えていく。

 その小さな変化が、私の日常に彩りを与えてくれた。

 その小さな変化が、私の日常に彩りを与えてくれた。

 水を替え、茎を切り、大切に世話をする。誰かのためじゃない。私自身のために。

 植物を育てるという行為は、自分自身を慈しむ行為に似ているのかもしれない。

 枯れてしまったモンステラの葉を、私はようやく切り取ることができた。

 そして、新しい栄養剤を土に与える。

 失われたものを嘆くのではなく、今ここにある命を、大切に育んでいこう。

 テーブルの上の白いバラが、そう教えてくれている気がした。

 ◇

 夜、ベッドに横になる前、もう一度バラを見る。

 暗闇の中で、白い花びらがぼんやりと浮かび上がっている。

「ありがとう」

 小さく呟いた。

 花に対してなのか、自分に対してなのか、わからなかった。

 でも、その言葉が、部屋に優しく響いた。
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