『さよなら、彼に依存していた私―30日間の失恋回復ストーリー』

月下花音

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Day 24:さよなら、「小さな世界」に閉じこもっていた私

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 街で優也の背中を見送った夜、私は無性に、高い場所へ行きたくなった。空を見上げると、星が瞬いている。

 自分のいるこの世界を、この街を、客観的に、そして俯瞰的に見たくなったのだ。

 タクシーに乗り込み、都庁の展望台へと向かった。観光客に混じってエレベーターに乗り込み、耳がツンとする感覚を味わいながら、地上202メートルの世界へ。

 展望室の窓の前に立った瞬間、目の前に広がる光景に、息を呑んだ。

 光の海。

 どこまでも続く、宝石を散りばめたような、東京の夜景。車のヘッドライトが赤い川となり、ビルの窓明かりが星のように瞬いている。

 あの光の一つ一つに、人々の暮らしがある。喜びも、悲しみも、出会いも、別れも、すべてを飲み込んで、この街は静かに輝いている。

 私の失恋なんて。

 この広大な光景の前では、ほんの一瞬の出来事に過ぎない。

 優也との2年間も、この光の海の中の、小さな瞬きの一つ。

 そう思うと、不思議と心が軽くなった。悲しみが消えたわけではない。でも、その大きさが、相対的に小さくなった。

 私の世界を支配していた重さが、ゆっくりと溶けていく。

 窓ガラスに額をつけ、冷たい感触を味わいながら、深く、深く、呼吸をした。

 ヨガで学んだ、呼吸法。吸って、そして、長く吐く。

 吐く息で、心の中に残っていた最後の澱が、夜景の闇に溶けて消えていくようだった。

 心が、自由になっていく。

 彼への執着、過去への後悔、未来への不安。そういったものが、私の心の輪郭を曖昧にさせていた。でも今、その輪郭が、くっきりと、はっきりと、浮かび上がってくる。

 私は、私だ。

 誰かの彼女でも、誰かのための存在でもない。

 この広大な世界に、たった一人で立ち、自分の足で生きている、こころという人間なのだ。

 その当たり前の事実が、こんなにも尊く、力強いものだなんて。

 しばらく、言葉もなく、ただ光の海を眺めていた。

 周りの喧騒も、もう耳に入らない。

 私の内なる静寂と、眼下に広がる街の静寂が、完全にシンクロしていた。

 もう、大丈夫。

 私は、この街で、生きていける。

 一人でも、強く、美しく。この夜景のように。

 その静かな確信が、冷たいガラスを通して、私の魂に直接流れ込んできた。
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