『さよなら、彼に依存していた私―30日間の失恋回復ストーリー』

月下花音

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Day 25:さよなら、「自分を後回し」にしていた私

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 この25日間、私は戦ってきた。悲しみと、孤独と、過去の自分と。窓の外では、穏やかな朝の光が街を照らしている。

 そして今日、私は、その戦士に休息を与えることに決めた。

 他人からの優しさを待つのではない。私自身が、私に、最大限の優しさを注ぐ日。

 朝一番で予約していた、ネイルサロンへ向かった。これまで、ネイルなんてしたことがなかった。彼が、ナチュラルな爪が好きだと言っていたから。

 でも、今日は違う。私のための、私だけの色を選ぶ。

 カラーチャートを眺め、私が選んだのは、夜空のような、深いネイビーブルーだった。昨夜見た、あの夜景の色。

 ネイリストが、丁寧に私の爪を磨き、色を乗せていく。筆が爪の上を滑るたび、私の指先が、小さなアート作品に生まれ変わっていく。

 完成した爪を見て、思わずため息が出た。きらきらと輝く、小さな星空。パソコンのキーボードを打つ自分の指先を見るたびに、心がときめいた。

 午後は、少し奮発して、ホテルのスパへ。

 アロマオイルの香りに包まれながら、セラピストの滑らかな手つきで、全身の凝り固まった筋肉がほぐされていく。

 ああ、私、こんなに疲れていたんだ。

 心だけでなく、身体も、ずっと緊張し続けていたのだ。

 セラピストの温かい手に触れられていると、まるで、壊れかけた器を、優しく修復してもらっているような気持ちになった。心と身体は、繋がっている。身体を労ることは、心を慈しむことなのだと、初めて実感した。

 スパから出ると、肌は潤い、身体は羽のように軽くなっていた。

 帰り道、デパ地下に寄り、普段は絶対に買わないような、高級なチーズと、一人用の小さなシャンパンを買った。

 誰の記念日でもない。ただ、今日一日、私が私を大切にできたことを、祝うために。

 家に帰り、シャワーを浴びて、肌触りの良いルームウェアに着替える。

 テーブルの上には、白いバラと、チーズと、泡の立つグラス。

 窓の外は、静かな夜。

 シャンパンのコルクを抜き、グラスに注ぐ。黄金色の泡が、しゅわしゅわと弾けた。

 グラスを高く掲げ、一人、静かに乾杯する。

「私、お疲れ様」

 その夜は、誰よりも優しい恋人になったつもりで、自分自身をもてなした。

 他人ではなく、自分のために時間とお金を使い、自分を喜ばせる。

 その行為が、こんなにも心を豊かにしてくれるなんて、知らなかった。

 自己肯定感は、誰かから与えられるものではない。自分自身で、育てていくものなのだ。

 ネイビーブルーの爪先を眺めながら、私はその事実に、静かに酔いしれていた。
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