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Day 29:さよなら、「新しい出会い」を恐れていた私
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「こころ、紹介したい人がいるんだ!」
美咲から、そんな連絡が来たのは、数日前のことだった。一瞬、身構えた。「次行こ!」と言っていた彼女のことだ、きっと新しい出会いをセッティングしてくれたのだろう。
以前の私なら、丁重に断っていた。でも、今の私は、少しだけ違った。
『うん、いいよ』
新しい風が吹くのを、恐れる必要はない。
週末、指定されたお洒落なダイニングバーへ向かう。店内は温かい照明に包まれ、笑い声が響いている。美咲の隣には、人の良さそうな笑顔の男性が座っていた。彼女の会社の同僚だという。
「こころちゃん、はじめまして!」
彼は、屈託なく笑った。
食事の間、私たちは本当に他愛もない話をした。仕事のこと、趣味の映画のこと、最近見つけた美味しいラーメン屋のこと。
彼は、私の話を、面白そうに、そして真剣に聞いてくれた。
私がショートボブにした理由を、「すごく似合ってる。何かを乗り越えた人の、強さを感じる」と言ってくれた。
ネイルの色を見て、「夜空みたいで綺麗だね。自分で選んだの?」と褒めてくれた。
彼は、私を「誰かの元カノ」としてではなく、一人の「こころ」という人間として、見てくれている。
そこに、恋愛の駆け引きや、異性としての探り合いはなかった。
ただ、新しい人間と出会い、互いを知っていくことの、純粋な楽しさがあった。
美咲が、時々、心配そうに私の顔を覗き込んでいたけれど、彼女はすぐに気づいたようだった。私が、本当に楽しんでいることに。
帰り道、彼が駅まで送ってくれた。
「今日はありがとう。すごく楽しかったです」
私が言うと、彼は「僕も。よかったら、またご飯でも」と言って、連絡先を交換した。
そのやり取りは、驚くほど自然で、穏やかだった。
彼と恋に落ちるかどうかは、まだわからない。
正直、今はどちらでもよかった。
大切なのは、恋愛感情を抜きにして、一人の人間として新しい出会いを心から楽しめているという事実。
誰かをまた好きになることを、もう恐れない。
でも、誰かを好きになる前に、私は私自身でいる時間を、こんなにも心地よく感じられるようになった。
夜風が、心地よかった。
美咲から、そんな連絡が来たのは、数日前のことだった。一瞬、身構えた。「次行こ!」と言っていた彼女のことだ、きっと新しい出会いをセッティングしてくれたのだろう。
以前の私なら、丁重に断っていた。でも、今の私は、少しだけ違った。
『うん、いいよ』
新しい風が吹くのを、恐れる必要はない。
週末、指定されたお洒落なダイニングバーへ向かう。店内は温かい照明に包まれ、笑い声が響いている。美咲の隣には、人の良さそうな笑顔の男性が座っていた。彼女の会社の同僚だという。
「こころちゃん、はじめまして!」
彼は、屈託なく笑った。
食事の間、私たちは本当に他愛もない話をした。仕事のこと、趣味の映画のこと、最近見つけた美味しいラーメン屋のこと。
彼は、私の話を、面白そうに、そして真剣に聞いてくれた。
私がショートボブにした理由を、「すごく似合ってる。何かを乗り越えた人の、強さを感じる」と言ってくれた。
ネイルの色を見て、「夜空みたいで綺麗だね。自分で選んだの?」と褒めてくれた。
彼は、私を「誰かの元カノ」としてではなく、一人の「こころ」という人間として、見てくれている。
そこに、恋愛の駆け引きや、異性としての探り合いはなかった。
ただ、新しい人間と出会い、互いを知っていくことの、純粋な楽しさがあった。
美咲が、時々、心配そうに私の顔を覗き込んでいたけれど、彼女はすぐに気づいたようだった。私が、本当に楽しんでいることに。
帰り道、彼が駅まで送ってくれた。
「今日はありがとう。すごく楽しかったです」
私が言うと、彼は「僕も。よかったら、またご飯でも」と言って、連絡先を交換した。
そのやり取りは、驚くほど自然で、穏やかだった。
彼と恋に落ちるかどうかは、まだわからない。
正直、今はどちらでもよかった。
大切なのは、恋愛感情を抜きにして、一人の人間として新しい出会いを心から楽しめているという事実。
誰かをまた好きになることを、もう恐れない。
でも、誰かを好きになる前に、私は私自身でいる時間を、こんなにも心地よく感じられるようになった。
夜風が、心地よかった。
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2021/05/29 公開
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