5 / 10
5 誕生! 女性騎士団
しおりを挟む
女性騎士団が創設? 団長が私? 副団長がマクシム? おいコラ! 私は何も聞いてないぞ!!
取りあえず、事情を知っているはずのマクシムを探す。あぁ。きっと今、私は、鬼の様な形相になっているのね。ますます婚期が遠のいていくわ……。
「マークーシームー!!」
「テレーズ師団長。女性騎士団の創設と、団長へのご就任、おめでとうございます」
何が『おめでとうございます』ニコっ。だよ!! でも、麗しいモノを見て、怒りが半減したかも。そんな自分が、単細胞で嫌だわー。
「いつも、後から説明するのね? どういうことなの!」
「女性騎士団ですから、団長に相応しいのはテレーズ団長しかおりません。しかし、副団長は、今は人材がいないだけで、いずれは女性騎士に任せたいのです。私はその間の繋ぎですよ。これからも部下として、よろしくお願いします」
再び綺麗な顔で、ニコっ。とされ、さらに怒りが半減したから、ほぼほぼ平常心だわ。
今年の入団者35名のうち女性は3名だが、彼女たち全員が、女性騎士団に配属されるのを快諾したらしい。どうせマクシムの顔を見たからだよね?
形としては女性騎士団が出来たんだろうけど、先の見通しがたちませんよ。みんな、いつもの如く、辞めちゃうんじゃないの? 責任重過ぎるなー。
**********
正式な配属先の発表を見たテレーズ以外の師団長4人は、団長のオレノに抗議をしに行った。
事前に団長・師団長会議で協議をし、内々に決めていたことを反故にされたのは初めてだった。
団長執務室の扉を蹴り開け、全員が血走った眼で団長オレノに詰め寄った。
「団長! これは一体どういうことですか!」
「ご説明下さい。団長」
「僕達の意見を無視したの?」
「こういうのは、よろしくないですねぇ」
サレイト王国騎士団のトップである団長オレノは、やれやれと肩をすくめながら、4人の師団長に説明をしはじめた。
「テレーズは、今まで通り同じ騎士団の敷地にいるし、魔物討伐の遠征にも参加させる。しかも、ダメな男達から距離が出来、お前たちからすれば、かえって都合が良いだろう?」
そう団長オレノに言われ、容易くそれなら良いかと納得した4人は、この人事も悪くはないなと考えた。
『テレーズを陰日向になって守る会』の活動は続いている。
**********
新人の全体訓練が終った。今日からは、女性騎士団の団長として、任務と訓練にあたるのか。
不安でしかないわ。これで団員に逃げられたら、責任取らされて、クビになったりしないかな? 10年以上、騎士団に身を捧げて来たのにさ。騎士生活のカウントダウンが始まったのかも……。
あら、嫌だ。マイナス思考になっていたわ。団長たる者、常にみんなの標となるのよ! ひ弱な心、さようなら。
「おはようございます。テレーズ団長」
「お、おはよう。マクシム副団長」
はうっ! 完全に変装を止め、騎士の正装に身を包んだマクシムが、朝日以上に眩しすぎる。私は標。邪な心、さようなら。
さて、女性騎士団の活動初日と行きますか。
「3人は顔見知りだと思うけど、まずは、自己紹介をしましょうか。女性騎士団が創設されていなかったら、どの師団に配属希望を出していたのかも教えてちょうだい」
右から順番にお願いと、最初にあのぶりっ子ちゃんを指名した。
「はいっ。私はアリス・バシェです。第3師団を希望していました。よろしくお願いします!」
魔法が得意なのかな? 1か月前よりしっかりしたわね。よし、あの時のことは綺麗サッパリ水に流そう。
「コリンヌ・アダンと申します。テレーズ団長の、第4師団希望でした。よろしくお願いします」
少し恥ずかしがり屋さんかな? でも、第4希望なんてレアな子がいたのね。ケット・シーの子だったかな?
「ミレーヌ・ドゥ・ベルレアン。第1師団を希望しておりました。よろしくお願いいたします」
貴族のお嬢様が入団していたんだ。クールビューティーって感じ。
第4の訓練って、魔物のテイムと評価がメインだから、新人と過ごした時間が他より少なくて不安だったけど、みんな良い子っぽくて安心したわ。
何より、希望に満ちた目をしている。この娘たちが、今日を無事に迎えられて良かったわ。
「私は、マクシミリアン・フォン・アインホルン。副団長です。みなさんには期待していますよ」
頬をほんのりピンクに染める乙女たち。マクシムは、自分の顔の使いどころを知っているんだ。この腹黒め!
「テレーズ・リヴィエです。女性騎士団の初代団長職を賜ったわ。みんなよろしくね。今日はこのまま、騎士叙任式に向かってもらうわ。その後は他の団員と同様に、家に帰ってそれぞれお祝いをしてね。本格的な訓練は明日からよ。さあ、聖堂に向かいましょう」
厳かな空気の中、若い騎士達が陛下から剣を与えられ後、私も形だけだが、団長に昇任したので叙勲された。
どんどん逃げ道を塞がれていく。陛下からの『娘のためによろしくな』の眼圧が半端なくて、気が遠くなりそうだった。
長時間の儀式を終え、生まれたての女性騎士の帰りを見届けると、マクシムに声を掛けられた。
「テレーズ団長、今日はみんな帰るだけですから、よろしければこの後、昼食を食べながら今後の活動について打ち合わせしませんか?」
「そうね。そうしましょうか」
「それではこのまま、街に繰り出しましょう」
「いいわよ。でも、公爵様が平民のような真似をしてもいいの?」
「民の中で、ずっと外遊していた私の顔を知る者はいませんよ。大丈夫ですから行きましょう」
**********
具だくさんのカスレと、肉汁滴るステーキ・フリットを食べながら、マクシムと話をする。
マクシムは、外国でどんな生活をして、何を学んで来たのか怪しんでしまう程、食べ方や仕草が庶民と変わらない。
容姿が整い過ぎて浮いているだけで、王族が完全に街にとけ込んでいる。きっと外国で、羽目を外して遊んできたに違いない!
「予想以上に良い騎士たちで良かったわ。このまま騎士団にいてくれれば、けして男騎士団に劣ることはない娘たちだと思ったわ」
「そうですね。入団試験を突破しただけありますね。それに、当初から3人とも能力は優れていましたよ」
「訓練が楽しみだわ。みんな資質も能力も違うから、専門的な訓練をする時は、各師団にお願いするね」
「分かりました」
ああ、なんだか期待で胸が膨らむわね。団長として、精一杯努めて行かないと。
あ、そういえば、話に夢中になって忘れていたけれど、気になっていたことがあったんだ。
「ところでマクシム。本来、あなたを敬うべきは私なんだから、団の外でまで敬語はやめてほしいわ」
「よろしいのですか? お気づきかもしれませんが、私は放埓王子でしたから、堅苦しいのは苦手なのです。任務時間外は、遠慮なく自由に振舞わせていただきますよ?」
「ふふ。放埓って。庶民の私に遠慮なんてしないでちょうだい。こっちだってしていないんだから」
マクシムは『なら遠慮なく』と言って、素で話すようになった。気兼ねなく話をすると、下らない訓練計画までポンポン出始めたが、今後の方針は概ねまとまった。
「じゃ、テレーズ団長の就任祝いに乾杯するか! お祝いだから、もちろん俺の奢りで!」
「まだ15時だけど、たまにはいいわね! よし! 奢って貰おうじゃあないの!」
「でねぇー。その時の討伐遠征でぇ、私がオチューに捕まってんのにぃ――ヒック――ダミアンは助けもしないでぇ、ずっとニヤニヤして見てるだけなのよぉ。いくら懐かれているだけでぇ、食べられないって知ってたとしてもぉ――ヒック――酷過ぎない? 肝心のププは討伐に夢中でぇ、気づいてくれないしぃ」
「それは陰湿だな」
「後から来たミカエルもぉ、お腹を抱えて笑っているだけだしぃ、――ヒック――エミールは『早く仲間にしてあげなよー』って言うしぃ。オチューの食事なんて準備できないわよぉ! ――ヒック――」
「確かに腐った肉を毎日準備したくはないな」
「テオドールがぁー、気づいて助けてくれるまでぇー、大変だったのよぉー。――ヒック――……。マクシム……。ありがとねぇ。団長大変そうだけどぉ頑張るわぁ――」
**********
――チュンチュンチュンチュン――
あれ? ここはどこでしょうかね?
白を基調とした室内に、小花を散りばめた可愛らしい調度品で統一された、だだっ広い部屋を見回す。人の気配はない。
そーっとベッドから抜け出し、足音をひそめ、扉の隙間から外の様子をうかがう。バチリと部屋の向かいに控えていたメイドさんと目があった。
「お目覚めですね、テレーズ様。お召し物はこちらにございます」
!? そう言われ、夜着に着替えさせられていたことに気がついた。ああぁぁ。31歳にもなって、他人に着替えさせてもらうとは……。何たる不覚……。
「着替えられましたらお声掛け下さい。セルジュが参ります」
セルジュさんと言われ、昨日の記憶が一気によみがえって来た。
ここは公爵邸ですよね。やっちまった! 30超えると、途端にお酒が弱くなるのよ! でも気持ちは若いままだから、限界突破しやすいのよ……。
遠征の話をしていた記憶はあるんだけど、それ以外がごっそりと抜け落ちている! 待て! 身体に異変は? なさそうだな……。朝チュンは健全な方だよね……?
ヘロヘロしながら着替え終え、青い顔のまま部屋の外に声を掛けると、すぐにセルジュさんが来てくれた。
「おはようございます、テレーズ様。マクシム様がお待ちです。食堂にご案内します」
と、優しく丁寧に言われ、少しだけ気が楽になった。さっきのメイドさんもだけど、ここのお屋敷のみなさんはとても優しい。
あまりの気まずさに、身もだえそうになる私をおもんばかってか、「体調はいかがですか?」「身支度の準備をお手伝いしますか?」「のどは渇いていらっしゃいませんか?」と、大変気遣ってくれた。
広すぎて迷子になりそうな屋敷の廊下を、セルジュさんに連れられ、罪人のような気持ちで歩く。
ああ。マクシムに合わせる顔がないよ。すごく気まずいな……。
取りあえず、事情を知っているはずのマクシムを探す。あぁ。きっと今、私は、鬼の様な形相になっているのね。ますます婚期が遠のいていくわ……。
「マークーシームー!!」
「テレーズ師団長。女性騎士団の創設と、団長へのご就任、おめでとうございます」
何が『おめでとうございます』ニコっ。だよ!! でも、麗しいモノを見て、怒りが半減したかも。そんな自分が、単細胞で嫌だわー。
「いつも、後から説明するのね? どういうことなの!」
「女性騎士団ですから、団長に相応しいのはテレーズ団長しかおりません。しかし、副団長は、今は人材がいないだけで、いずれは女性騎士に任せたいのです。私はその間の繋ぎですよ。これからも部下として、よろしくお願いします」
再び綺麗な顔で、ニコっ。とされ、さらに怒りが半減したから、ほぼほぼ平常心だわ。
今年の入団者35名のうち女性は3名だが、彼女たち全員が、女性騎士団に配属されるのを快諾したらしい。どうせマクシムの顔を見たからだよね?
形としては女性騎士団が出来たんだろうけど、先の見通しがたちませんよ。みんな、いつもの如く、辞めちゃうんじゃないの? 責任重過ぎるなー。
**********
正式な配属先の発表を見たテレーズ以外の師団長4人は、団長のオレノに抗議をしに行った。
事前に団長・師団長会議で協議をし、内々に決めていたことを反故にされたのは初めてだった。
団長執務室の扉を蹴り開け、全員が血走った眼で団長オレノに詰め寄った。
「団長! これは一体どういうことですか!」
「ご説明下さい。団長」
「僕達の意見を無視したの?」
「こういうのは、よろしくないですねぇ」
サレイト王国騎士団のトップである団長オレノは、やれやれと肩をすくめながら、4人の師団長に説明をしはじめた。
「テレーズは、今まで通り同じ騎士団の敷地にいるし、魔物討伐の遠征にも参加させる。しかも、ダメな男達から距離が出来、お前たちからすれば、かえって都合が良いだろう?」
そう団長オレノに言われ、容易くそれなら良いかと納得した4人は、この人事も悪くはないなと考えた。
『テレーズを陰日向になって守る会』の活動は続いている。
**********
新人の全体訓練が終った。今日からは、女性騎士団の団長として、任務と訓練にあたるのか。
不安でしかないわ。これで団員に逃げられたら、責任取らされて、クビになったりしないかな? 10年以上、騎士団に身を捧げて来たのにさ。騎士生活のカウントダウンが始まったのかも……。
あら、嫌だ。マイナス思考になっていたわ。団長たる者、常にみんなの標となるのよ! ひ弱な心、さようなら。
「おはようございます。テレーズ団長」
「お、おはよう。マクシム副団長」
はうっ! 完全に変装を止め、騎士の正装に身を包んだマクシムが、朝日以上に眩しすぎる。私は標。邪な心、さようなら。
さて、女性騎士団の活動初日と行きますか。
「3人は顔見知りだと思うけど、まずは、自己紹介をしましょうか。女性騎士団が創設されていなかったら、どの師団に配属希望を出していたのかも教えてちょうだい」
右から順番にお願いと、最初にあのぶりっ子ちゃんを指名した。
「はいっ。私はアリス・バシェです。第3師団を希望していました。よろしくお願いします!」
魔法が得意なのかな? 1か月前よりしっかりしたわね。よし、あの時のことは綺麗サッパリ水に流そう。
「コリンヌ・アダンと申します。テレーズ団長の、第4師団希望でした。よろしくお願いします」
少し恥ずかしがり屋さんかな? でも、第4希望なんてレアな子がいたのね。ケット・シーの子だったかな?
「ミレーヌ・ドゥ・ベルレアン。第1師団を希望しておりました。よろしくお願いいたします」
貴族のお嬢様が入団していたんだ。クールビューティーって感じ。
第4の訓練って、魔物のテイムと評価がメインだから、新人と過ごした時間が他より少なくて不安だったけど、みんな良い子っぽくて安心したわ。
何より、希望に満ちた目をしている。この娘たちが、今日を無事に迎えられて良かったわ。
「私は、マクシミリアン・フォン・アインホルン。副団長です。みなさんには期待していますよ」
頬をほんのりピンクに染める乙女たち。マクシムは、自分の顔の使いどころを知っているんだ。この腹黒め!
「テレーズ・リヴィエです。女性騎士団の初代団長職を賜ったわ。みんなよろしくね。今日はこのまま、騎士叙任式に向かってもらうわ。その後は他の団員と同様に、家に帰ってそれぞれお祝いをしてね。本格的な訓練は明日からよ。さあ、聖堂に向かいましょう」
厳かな空気の中、若い騎士達が陛下から剣を与えられ後、私も形だけだが、団長に昇任したので叙勲された。
どんどん逃げ道を塞がれていく。陛下からの『娘のためによろしくな』の眼圧が半端なくて、気が遠くなりそうだった。
長時間の儀式を終え、生まれたての女性騎士の帰りを見届けると、マクシムに声を掛けられた。
「テレーズ団長、今日はみんな帰るだけですから、よろしければこの後、昼食を食べながら今後の活動について打ち合わせしませんか?」
「そうね。そうしましょうか」
「それではこのまま、街に繰り出しましょう」
「いいわよ。でも、公爵様が平民のような真似をしてもいいの?」
「民の中で、ずっと外遊していた私の顔を知る者はいませんよ。大丈夫ですから行きましょう」
**********
具だくさんのカスレと、肉汁滴るステーキ・フリットを食べながら、マクシムと話をする。
マクシムは、外国でどんな生活をして、何を学んで来たのか怪しんでしまう程、食べ方や仕草が庶民と変わらない。
容姿が整い過ぎて浮いているだけで、王族が完全に街にとけ込んでいる。きっと外国で、羽目を外して遊んできたに違いない!
「予想以上に良い騎士たちで良かったわ。このまま騎士団にいてくれれば、けして男騎士団に劣ることはない娘たちだと思ったわ」
「そうですね。入団試験を突破しただけありますね。それに、当初から3人とも能力は優れていましたよ」
「訓練が楽しみだわ。みんな資質も能力も違うから、専門的な訓練をする時は、各師団にお願いするね」
「分かりました」
ああ、なんだか期待で胸が膨らむわね。団長として、精一杯努めて行かないと。
あ、そういえば、話に夢中になって忘れていたけれど、気になっていたことがあったんだ。
「ところでマクシム。本来、あなたを敬うべきは私なんだから、団の外でまで敬語はやめてほしいわ」
「よろしいのですか? お気づきかもしれませんが、私は放埓王子でしたから、堅苦しいのは苦手なのです。任務時間外は、遠慮なく自由に振舞わせていただきますよ?」
「ふふ。放埓って。庶民の私に遠慮なんてしないでちょうだい。こっちだってしていないんだから」
マクシムは『なら遠慮なく』と言って、素で話すようになった。気兼ねなく話をすると、下らない訓練計画までポンポン出始めたが、今後の方針は概ねまとまった。
「じゃ、テレーズ団長の就任祝いに乾杯するか! お祝いだから、もちろん俺の奢りで!」
「まだ15時だけど、たまにはいいわね! よし! 奢って貰おうじゃあないの!」
「でねぇー。その時の討伐遠征でぇ、私がオチューに捕まってんのにぃ――ヒック――ダミアンは助けもしないでぇ、ずっとニヤニヤして見てるだけなのよぉ。いくら懐かれているだけでぇ、食べられないって知ってたとしてもぉ――ヒック――酷過ぎない? 肝心のププは討伐に夢中でぇ、気づいてくれないしぃ」
「それは陰湿だな」
「後から来たミカエルもぉ、お腹を抱えて笑っているだけだしぃ、――ヒック――エミールは『早く仲間にしてあげなよー』って言うしぃ。オチューの食事なんて準備できないわよぉ! ――ヒック――」
「確かに腐った肉を毎日準備したくはないな」
「テオドールがぁー、気づいて助けてくれるまでぇー、大変だったのよぉー。――ヒック――……。マクシム……。ありがとねぇ。団長大変そうだけどぉ頑張るわぁ――」
**********
――チュンチュンチュンチュン――
あれ? ここはどこでしょうかね?
白を基調とした室内に、小花を散りばめた可愛らしい調度品で統一された、だだっ広い部屋を見回す。人の気配はない。
そーっとベッドから抜け出し、足音をひそめ、扉の隙間から外の様子をうかがう。バチリと部屋の向かいに控えていたメイドさんと目があった。
「お目覚めですね、テレーズ様。お召し物はこちらにございます」
!? そう言われ、夜着に着替えさせられていたことに気がついた。ああぁぁ。31歳にもなって、他人に着替えさせてもらうとは……。何たる不覚……。
「着替えられましたらお声掛け下さい。セルジュが参ります」
セルジュさんと言われ、昨日の記憶が一気によみがえって来た。
ここは公爵邸ですよね。やっちまった! 30超えると、途端にお酒が弱くなるのよ! でも気持ちは若いままだから、限界突破しやすいのよ……。
遠征の話をしていた記憶はあるんだけど、それ以外がごっそりと抜け落ちている! 待て! 身体に異変は? なさそうだな……。朝チュンは健全な方だよね……?
ヘロヘロしながら着替え終え、青い顔のまま部屋の外に声を掛けると、すぐにセルジュさんが来てくれた。
「おはようございます、テレーズ様。マクシム様がお待ちです。食堂にご案内します」
と、優しく丁寧に言われ、少しだけ気が楽になった。さっきのメイドさんもだけど、ここのお屋敷のみなさんはとても優しい。
あまりの気まずさに、身もだえそうになる私をおもんばかってか、「体調はいかがですか?」「身支度の準備をお手伝いしますか?」「のどは渇いていらっしゃいませんか?」と、大変気遣ってくれた。
広すぎて迷子になりそうな屋敷の廊下を、セルジュさんに連れられ、罪人のような気持ちで歩く。
ああ。マクシムに合わせる顔がないよ。すごく気まずいな……。
225
あなたにおすすめの小説
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです
石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。
聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。
やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。
女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。
素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる