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9 騎士生活で得てきたものたち
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私の相棒ププと、マクシムに預けたユニ、そして、コリアンヌのケット・シーを女性騎士団の訓練に参加させ、3人対3魔物? で、戦闘訓練をしていた。
陛下からは、次の新入団員が決まる半年後まで猶予をもらっているから、こうして訓練をしたり、第2師団のテオドールに頼んで王族の警護に混ぜてもらったりをしながら、日々を過ごしている。
みんな騎士試験に合格するだけあって腕が良い。うんうん。良きかな良きかな。来年まで男を作らず、いや、3人にはいつまでもここにいてもらいたい。そんな話をしてみたら――
「団長だけカッコいい彼氏がいてずるいですー」
と、今も少しだけぶりっ子が残るアリスに言われた。コリアンヌとミレーヌに助けを求めたら――
「恋も仕事も順風満帆な団長が羨ましいですよ」
「見せつけ過ぎは部下の集中力を削ぎますので、控えめにお願いします」
と、あっさり流された。いや、貴女達には本気で残って欲しくて言ってるんだけど、上手く伝わらないもんだ。
マクシムも、騎士団の任務中なのに『もうばれたんだから構わないだろ?』と、2人でいるときの様に接して来る。公爵様がこんな所でこんなことをしていていいのかな? と心配になるが、そんな私達の交際は至極順調だ。
任務が終われば街へ出掛けたり、公爵邸でご飯をご馳走になったり、私の家で2人で手料理を作って食べたり……。
時間よ過ぎないで~! なんて、可愛らしい気持ちになる。公爵邸の皆さんにも、相変わらず大変良くしていただいている。
でも、人間は欲深い生き物だって、身をもって感じることが多くなった。マクシムへの愛情が日増しに強く、2人でいることが当たり前で、穏やかなものになればなるほど、ずっとこうして2人で生きて行きたいと思ってしまう。
やっぱり最終的に歯止めをかけるのは、公爵と平民という身分。そうやって苦しくなると、マクシムに包み込まれるように優しく甘やかされ、より好きになるという泥沼の蟻地獄だ。
もう、抜け出せる気がしない。どうしたらいいんだろう……。
**********
そんなある日、急に『団長・師団長会議』が召集された。緊急事態ということか? 何が起きたの!?
団長が上座の椅子に掛け、会議が始まる。会議室に、一気に緊張が走った。
「国境の山脈地帯から魔物の群れが押し寄せて来た。数は100。最悪200までは増える可能性がある。最低限の人員を残し、王都に駐屯している騎士で討伐に向かう」
「仲間同士の争いに負けた、ドラゴンにでも住処を追われて来たのかもな」
「そのまま進行してくると、訓練で使っている森に入って来るわね」
普段は新人訓練でも遠征する森だ。王都からも近い。一刻を争う事態だ。
「2時間後には王都を出る。第3も討伐に専念させたい。ポーションはあるだけ持て」
「なあテレーズ」
「どうしたの、ミカエル?」
「お前ら仲良いように見えるけど、テレーズはなんか悩みでもあるのか? その男が原因じゃないのか?」
「失礼だな。俺とテレーズの交際は、お前らのつけ入る隙などないほど盤石で、相思相愛だ! 散れ散れっ!」
ミカエルは鋭いな。伊達に腐れ縁で、長く付き合って来たわけではないよね。その相思相愛のせいで悩んでいるなんて、誰にも言えないから苦しいんだよね……。
「テレーズは分かりやすいんだよー」
「そこが単純馬鹿っぽくてぇ、かわいいんですよねぇ」
「失敬な! エミールとダミアンが狡猾なだけよ! ねえ、何か言ってやってよ、ブリス」
私の後釜、第4師団の新師団長ブリスに話を振る。
「テレーズ団長は、魔物と同じで全身で感情を表現しますからね。観察していると面白いですよね」
「それは私も同意する。目が離せない」
「ブリスにテオドール。まさか邪な目でテレーズを見ているのではないだろうな?」
「コラお前ら! ちゃんと自分等の団を率いろ!!」
ほら、団長に怒られちゃったじゃない。蜘蛛の子を散らすように、師団長4人がそれぞれの隊列に戻って行った。
**********
「来たぞー! 900メートル先に200匹程度の魔物の群れを発見!」
斥候を担っていた第5の騎士が、群れを発見したようだ。
「第1は左右、第3は前方、第5は後方から群れを囲むように移動! 完了し次第攻撃を開始しろ! 第2は負傷者の救護、第4は魔物の特性に合わせて自由にやっちまえ! テイム出来るなら1匹でも多く引き入れろ!」
「貴女たちは第2を支援して! マクシム! ユニと一緒に第4に加勢するわよ!」
『ヒヒン』と、『了解』という返事が同時に聞こえ、私たちも魔物の群れに向かって駆け出した――
「よろしくププ!」
「はーい」
小型の魔物が多いが、予想以上に数は多い。本当に200か? それ以上倒して来た気がする。周囲を見渡しても、余力が残っている者はいないだろう。少しずつ負傷者が増えて来ている。
「新手の魔物の群れが向かって来るぞ! さらに100は来る!」
騎士たちの顔色が、疲労から絶望の色に変わる。ここで退却しても、王都にまで魔物が流れ込むだけだ……。
「これはちょっとマズイね。僕の体力だって無尽蔵じゃない」
「ブヒヒン」
「テレーズ! 団の周囲を別の魔物たちに囲まれ始めているぞ!! ん? 何か小さいのがこっちに来るな?」
その時、1匹のインプがパタパタと私のところにやって来た。インプが騎士たちを囲んだ魔物を指さす。
「あ!! あなたナタンに捕まっていたインプじゃない! ああ。そうか! 敵じゃないのね? あの子たちは、ここの森にずっと住んでいた子たちなのね!」
ユニもインプも、『そうだそうだ』と言うように首をブンブン上下に振っている。
「ププ、みんなに伝えて。今、周りを囲んでいるのは味方の魔物よ! あの子たちは助けに来てくれたのよ! 私たちは向こうから来ている魔物の相手をすれば良いの!!」
「はーい。『みんな聞いてーー。今周りにいるのは、テレーズの仲間だってーー。あっちから来る奴らだけ、相手すれば良いんだってーー!』」
「良くやったテレーズ! 皆の士気が上がったぞ! 流石、俺の惚れ込んだ女だ!」
いやー。連れて帰るのが大変だっただけなんだけどねー。そりゃあ、毎年毎年、訓練でこの森に来ていれば、連れて帰らなかった子がこんなに増えてても不思議ではないわね。
魔物が魔物を抑え込む間に、怪我を負った者たちが治療されて行く。気力も体力も果てそうになっていた騎士たちに、光明が差し込んだ。
これなら行けるわ!!
**********
「みんなーありがとうー!! また半年後には訓練で必ず来るから、元気でねー!!」
みんな傷だらけの泥まみれ。顔や手の概念に当てはまらない子もいるから分からないけれど、みんなが笑って手を振ってくれている気がする。
「魔物に囲まれてた時には、もうだめかと思ったよー」
「今回はテレーズの懐かれ体質に救われたな」
「テレーズ団長のテイムは、本当、別格ですよ」
「私はテレーズを誇りに思う」
「やだやだ。そんなに褒めても、あんたたち4人のした事は、帳消しにしないんだからね」
後ろからグイッと腕を引かれる。
「もう帳消しにしてやっても良くないか? 俺たちはあいつらがいたから、今2人で一緒にいれるんだろ?」
「テレーズの腰に手をまわす男が現れるなんてぇ。直視したくありませんねぇ」
「マっ、マクシム! こんなところで何すんのよ!」
「コラ! お前ら! いい加減に自分等の団に戻れ! 王都に入るまで気を緩めるんじゃない!」
ほら、また団長に怒られちゃったじゃないの。学習能力がないんだから。
「だが、テレーズのお陰で、王都が魔物に襲われずに済んだ。良くやったぞ」
久し振りに団長が、頭をポンポンして褒めてくれると、ちょっと前傾姿勢で期待して待っていたら、団長の手が空で止まった。
「射殺さんばかりの目で見ないでいただけますかな? アインホルン公爵?」
「オレノ団長。部下の連れに、手を出さないでもらいたい」
「おや? そう言っていられるのも今のうちですぞ?」
「???」
もう、マクシムってば、団長にまで嫉妬しないで欲しいわ。でも、程々なら、愛情を感じるっていうかさー。なかなか良いもんなのよね。やだ、惚けている場合じゃないのにー。
「テレーズ……。お前、変わったな……」
「???」
「オレノ団長……。今見たものを、直ちに記憶から抹消しなさい」
「狭量な男は最初のうちは良いですが、次第にウザがられますよ?」
よく分からんが、何はともあれ、みんなが無事に帰還出来て良かったよ。
陛下からは、次の新入団員が決まる半年後まで猶予をもらっているから、こうして訓練をしたり、第2師団のテオドールに頼んで王族の警護に混ぜてもらったりをしながら、日々を過ごしている。
みんな騎士試験に合格するだけあって腕が良い。うんうん。良きかな良きかな。来年まで男を作らず、いや、3人にはいつまでもここにいてもらいたい。そんな話をしてみたら――
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と、あっさり流された。いや、貴女達には本気で残って欲しくて言ってるんだけど、上手く伝わらないもんだ。
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でも、人間は欲深い生き物だって、身をもって感じることが多くなった。マクシムへの愛情が日増しに強く、2人でいることが当たり前で、穏やかなものになればなるほど、ずっとこうして2人で生きて行きたいと思ってしまう。
やっぱり最終的に歯止めをかけるのは、公爵と平民という身分。そうやって苦しくなると、マクシムに包み込まれるように優しく甘やかされ、より好きになるという泥沼の蟻地獄だ。
もう、抜け出せる気がしない。どうしたらいいんだろう……。
**********
そんなある日、急に『団長・師団長会議』が召集された。緊急事態ということか? 何が起きたの!?
団長が上座の椅子に掛け、会議が始まる。会議室に、一気に緊張が走った。
「国境の山脈地帯から魔物の群れが押し寄せて来た。数は100。最悪200までは増える可能性がある。最低限の人員を残し、王都に駐屯している騎士で討伐に向かう」
「仲間同士の争いに負けた、ドラゴンにでも住処を追われて来たのかもな」
「そのまま進行してくると、訓練で使っている森に入って来るわね」
普段は新人訓練でも遠征する森だ。王都からも近い。一刻を争う事態だ。
「2時間後には王都を出る。第3も討伐に専念させたい。ポーションはあるだけ持て」
「なあテレーズ」
「どうしたの、ミカエル?」
「お前ら仲良いように見えるけど、テレーズはなんか悩みでもあるのか? その男が原因じゃないのか?」
「失礼だな。俺とテレーズの交際は、お前らのつけ入る隙などないほど盤石で、相思相愛だ! 散れ散れっ!」
ミカエルは鋭いな。伊達に腐れ縁で、長く付き合って来たわけではないよね。その相思相愛のせいで悩んでいるなんて、誰にも言えないから苦しいんだよね……。
「テレーズは分かりやすいんだよー」
「そこが単純馬鹿っぽくてぇ、かわいいんですよねぇ」
「失敬な! エミールとダミアンが狡猾なだけよ! ねえ、何か言ってやってよ、ブリス」
私の後釜、第4師団の新師団長ブリスに話を振る。
「テレーズ団長は、魔物と同じで全身で感情を表現しますからね。観察していると面白いですよね」
「それは私も同意する。目が離せない」
「ブリスにテオドール。まさか邪な目でテレーズを見ているのではないだろうな?」
「コラお前ら! ちゃんと自分等の団を率いろ!!」
ほら、団長に怒られちゃったじゃない。蜘蛛の子を散らすように、師団長4人がそれぞれの隊列に戻って行った。
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「来たぞー! 900メートル先に200匹程度の魔物の群れを発見!」
斥候を担っていた第5の騎士が、群れを発見したようだ。
「第1は左右、第3は前方、第5は後方から群れを囲むように移動! 完了し次第攻撃を開始しろ! 第2は負傷者の救護、第4は魔物の特性に合わせて自由にやっちまえ! テイム出来るなら1匹でも多く引き入れろ!」
「貴女たちは第2を支援して! マクシム! ユニと一緒に第4に加勢するわよ!」
『ヒヒン』と、『了解』という返事が同時に聞こえ、私たちも魔物の群れに向かって駆け出した――
「よろしくププ!」
「はーい」
小型の魔物が多いが、予想以上に数は多い。本当に200か? それ以上倒して来た気がする。周囲を見渡しても、余力が残っている者はいないだろう。少しずつ負傷者が増えて来ている。
「新手の魔物の群れが向かって来るぞ! さらに100は来る!」
騎士たちの顔色が、疲労から絶望の色に変わる。ここで退却しても、王都にまで魔物が流れ込むだけだ……。
「これはちょっとマズイね。僕の体力だって無尽蔵じゃない」
「ブヒヒン」
「テレーズ! 団の周囲を別の魔物たちに囲まれ始めているぞ!! ん? 何か小さいのがこっちに来るな?」
その時、1匹のインプがパタパタと私のところにやって来た。インプが騎士たちを囲んだ魔物を指さす。
「あ!! あなたナタンに捕まっていたインプじゃない! ああ。そうか! 敵じゃないのね? あの子たちは、ここの森にずっと住んでいた子たちなのね!」
ユニもインプも、『そうだそうだ』と言うように首をブンブン上下に振っている。
「ププ、みんなに伝えて。今、周りを囲んでいるのは味方の魔物よ! あの子たちは助けに来てくれたのよ! 私たちは向こうから来ている魔物の相手をすれば良いの!!」
「はーい。『みんな聞いてーー。今周りにいるのは、テレーズの仲間だってーー。あっちから来る奴らだけ、相手すれば良いんだってーー!』」
「良くやったテレーズ! 皆の士気が上がったぞ! 流石、俺の惚れ込んだ女だ!」
いやー。連れて帰るのが大変だっただけなんだけどねー。そりゃあ、毎年毎年、訓練でこの森に来ていれば、連れて帰らなかった子がこんなに増えてても不思議ではないわね。
魔物が魔物を抑え込む間に、怪我を負った者たちが治療されて行く。気力も体力も果てそうになっていた騎士たちに、光明が差し込んだ。
これなら行けるわ!!
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「みんなーありがとうー!! また半年後には訓練で必ず来るから、元気でねー!!」
みんな傷だらけの泥まみれ。顔や手の概念に当てはまらない子もいるから分からないけれど、みんなが笑って手を振ってくれている気がする。
「魔物に囲まれてた時には、もうだめかと思ったよー」
「今回はテレーズの懐かれ体質に救われたな」
「テレーズ団長のテイムは、本当、別格ですよ」
「私はテレーズを誇りに思う」
「やだやだ。そんなに褒めても、あんたたち4人のした事は、帳消しにしないんだからね」
後ろからグイッと腕を引かれる。
「もう帳消しにしてやっても良くないか? 俺たちはあいつらがいたから、今2人で一緒にいれるんだろ?」
「テレーズの腰に手をまわす男が現れるなんてぇ。直視したくありませんねぇ」
「マっ、マクシム! こんなところで何すんのよ!」
「コラ! お前ら! いい加減に自分等の団に戻れ! 王都に入るまで気を緩めるんじゃない!」
ほら、また団長に怒られちゃったじゃないの。学習能力がないんだから。
「だが、テレーズのお陰で、王都が魔物に襲われずに済んだ。良くやったぞ」
久し振りに団長が、頭をポンポンして褒めてくれると、ちょっと前傾姿勢で期待して待っていたら、団長の手が空で止まった。
「射殺さんばかりの目で見ないでいただけますかな? アインホルン公爵?」
「オレノ団長。部下の連れに、手を出さないでもらいたい」
「おや? そう言っていられるのも今のうちですぞ?」
「???」
もう、マクシムってば、団長にまで嫉妬しないで欲しいわ。でも、程々なら、愛情を感じるっていうかさー。なかなか良いもんなのよね。やだ、惚けている場合じゃないのにー。
「テレーズ……。お前、変わったな……」
「???」
「オレノ団長……。今見たものを、直ちに記憶から抹消しなさい」
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