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第1章 黒領主の婚約者
19 黒領主の婚約者
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宮廷舞踏会に参加した翌日、クローディアとエリカはロシスター侯爵家のタウンハウスに向かっていた。
道中の馬車では、迎えに来たユージーンとエリカが口論をはじめ、クローディアはエリカが勝ち気な女騎士であることを痛烈に感じていた……。
「何故、クローディアが舞踏会に参加することを教えなかった?」
「いつまで家令をしているおつもりだったのですか? それに、私が忠誠を誓った主は、あくまでもオリバー様ですから。ユージーン様の命令で動くわけではありません」
キッパリ物言うエリカにちょっぴり憧れるとともに、ユージーンとエリカは冗談ではなく犬猿の仲だと知る。
「そして、結果が全てです。私の働きがあったからこそ、お二人は今こうして一緒に馬車に乗っているのですよ?」
「この休暇で実家に状況を報告して、クローディアに想いを伝える予定だったんだ。エリカがどうこうせずとも、俺とクローディアは上手くいっていた」
侯爵邸のサロンに通されてからも二人の口論は続いていたが、オリバーや兄たちがサロンに到着すると、エリカが口を開くのをピタリと止め、背筋を伸ばして待機の姿勢をとった。
「チッ」
何処からか舌打ちが聞こえたが、エリカの変わり身は早く、どこ吹く風という様相だ。
二人の様子に『相変わらずだな』とだけ言い、オリバーはクローディアと和やかに積もる話に花を咲かせる。
昨日の夜は警護にあたっていたため、今日はゆっくり休めるようだ。
「社交シーズンが終わったら、私と長男のウォルトは領地に戻るよ。次男のブルーノはイスティリア王国の騎士団勤めだから、ずっとここにいる。どちらの家でも良いから、いつでも遊びにおいで。昨日言ったとおり、私はもうクローディアを娘と思っているからね」
「はい! 領地もユージーンが来てくれたので安定しましたし、これからは小父様やお兄様たちに会いに来ます」
「お兄様って呼ばれた……。――そうだ」
長兄のウォルトが何かを閃いたらしく、眼鏡の奥に光ったものを拭い提案する。騎士というよりも文官のような雰囲気の持ち主で、全体的に線が細く知的な印象だ。
「クローディアにいつでも気兼ねなく遊びに来てもらえるよう、ハイド伯爵領に本物の家令を置かねばなりませんね」
「本物の家令ですか……。そうですよね」
ユージーンがロシスター侯爵家の人間と知った以上、伯爵家の家令として働かせる訳にはいかない。
婚約者になれるのは嬉しいが、今までのように四六時中一緒に居られなくなるのだろうか……。
そう考えたクローディアの表情が曇る。しかし、ユージーンはこの後彼女と一緒に、家令としてハイド伯爵領に帰るつもりだ。
「勝手に話を進めないで下さい。婚約者になっても、俺がずっとクローディアの隣で家令代わりをします」
「ほう? ならば冬季以外、ゆっくり二人で旅行もできないね? ユージーンは置いて、クローディアだけ遊びに来ればいいよ」
「……確かにそれはそうですね」
それは嫌だ。クローディアはこれまで懸命に領地の立て直しにだけ専念してきた。
だが、これからは信頼できる人間に任せ、二人の時間を過ごすのも悪くはない。
ウォルトはなかなか良い提案をしてくれたと、ユージーンはその案を受け入れた。
「父上、兄上、メレディスは如何でしょう? 騎士団きっての頭脳派ですし、誰かさんと同じく忠義に厚い。クローディアを守る者が増えますし、かつ、領地経営も任せることができるでしょう」
次兄のブルーノはオリバーに似ており、堂々たる体躯の騎士で、王国騎士団の団長になると目されている。
メレディスという男を推薦したブルーノに、チラリと視線を送られたエリカは得意気だ。
エリカは単純ドストレートな完全武闘派でも、実は女性らしい面もあり、一番近くで甲斐甲斐しくクローディアのお世話ができるメイドの仕事が好きなのだ。
「私はメイド兼護衛騎士としてそのままハイド領に戻ってよろしいと言うことですね。これからは騎士としてメイドとして、クローディア様に忠義を尽くします」
「引き続きクローディアを任せたぞ、エリカ! なんなら私も引退してウォルトに領地を任せ、ハイド伯爵領に行こうかな?」
「「父上(オリバー様)! 絶対に来ないでください!!」」
ユージーンとエリカに来るなと言われ、オリバーはしゅんとし小さくなる。
「さて、弟思いの私は早速、メレディスをハイド伯爵領に送る手続きをいたしましょう」
「さすが兄上。仕事が早い。私もメレディスとエリカの次を担える人財を育成しませんとな。ユージーンは優しい二人の兄を持って幸せ者だ」
「自分らでよく言う……。俺に社交を押しつけようとしていたくせに……」
ユージーンはその物腰の柔らかさと容姿を買われ、王都滞在中はロシスター家の社交を任されていた。
しかし、昨晩本性を表してしまったので、今後美しい見た目に騙される者はだいぶ減るだろう。それにも関わらず、クローディアへの想いを優先してくれたのだ。
そして、ハイド領に大切な三男を婿入りさせ、家臣まで派遣しようとするロシスター家の懐の深さにクローディアの胸が熱くなる。
(私はこの方々の家族になるのね……。独りぼっちになったと思っていたのに……)
亡き親友の分もと甘やかそうとするオリバーに、唯一ユージーンの腹黒さに対抗できそうなウォルト。逞しくて頼もしいブルーノに、すでにクローディアを生涯の主と心に決めたエリカ。
何よりも、初めて恋をした人にずっと愛されていたことを知り、その人と婚約する――
(私に家族ができるんだわ……)
賑やかな一同に囲まれ、家族が増えることへの現実味が帯びた途端、クローディアの瞳にじわりとこみ上げてくるものがあった。
(お父様。私は今、とても幸せです)
オリバーたちに見守られながら、ハイド伯爵クローディアとロシスター侯爵家の三男ユージーンが婚約届けにサインをした。
少し震える手でサインを終えたクローディアが顔を上げると、隣に座っていたユージーンがその手を包み、いつも向け続けていた甘く優しい微笑みで彼女を見つめる。
穏やかな昼下がり――ロシスター侯爵邸のサロンに燦々と太陽の光が射し込む。黄金の髪と瞳を煌めかせた天使の様な侯爵家の三男は、子どもの頃に誓った想いをあらたにし、今一度心に刻む。
『クローディアは、将来の夢とかあるの?』
『夢……? う~んとね、沢山の家族に囲まれて暮らすこと……』
(大丈夫。必ずきっと、その夢は叶え続けるよ)
今、手の内にある温もりと、潤む瞳の可憐な婚約者の幸福そうな笑顔と夢を守り続けてゆこうと――
道中の馬車では、迎えに来たユージーンとエリカが口論をはじめ、クローディアはエリカが勝ち気な女騎士であることを痛烈に感じていた……。
「何故、クローディアが舞踏会に参加することを教えなかった?」
「いつまで家令をしているおつもりだったのですか? それに、私が忠誠を誓った主は、あくまでもオリバー様ですから。ユージーン様の命令で動くわけではありません」
キッパリ物言うエリカにちょっぴり憧れるとともに、ユージーンとエリカは冗談ではなく犬猿の仲だと知る。
「そして、結果が全てです。私の働きがあったからこそ、お二人は今こうして一緒に馬車に乗っているのですよ?」
「この休暇で実家に状況を報告して、クローディアに想いを伝える予定だったんだ。エリカがどうこうせずとも、俺とクローディアは上手くいっていた」
侯爵邸のサロンに通されてからも二人の口論は続いていたが、オリバーや兄たちがサロンに到着すると、エリカが口を開くのをピタリと止め、背筋を伸ばして待機の姿勢をとった。
「チッ」
何処からか舌打ちが聞こえたが、エリカの変わり身は早く、どこ吹く風という様相だ。
二人の様子に『相変わらずだな』とだけ言い、オリバーはクローディアと和やかに積もる話に花を咲かせる。
昨日の夜は警護にあたっていたため、今日はゆっくり休めるようだ。
「社交シーズンが終わったら、私と長男のウォルトは領地に戻るよ。次男のブルーノはイスティリア王国の騎士団勤めだから、ずっとここにいる。どちらの家でも良いから、いつでも遊びにおいで。昨日言ったとおり、私はもうクローディアを娘と思っているからね」
「はい! 領地もユージーンが来てくれたので安定しましたし、これからは小父様やお兄様たちに会いに来ます」
「お兄様って呼ばれた……。――そうだ」
長兄のウォルトが何かを閃いたらしく、眼鏡の奥に光ったものを拭い提案する。騎士というよりも文官のような雰囲気の持ち主で、全体的に線が細く知的な印象だ。
「クローディアにいつでも気兼ねなく遊びに来てもらえるよう、ハイド伯爵領に本物の家令を置かねばなりませんね」
「本物の家令ですか……。そうですよね」
ユージーンがロシスター侯爵家の人間と知った以上、伯爵家の家令として働かせる訳にはいかない。
婚約者になれるのは嬉しいが、今までのように四六時中一緒に居られなくなるのだろうか……。
そう考えたクローディアの表情が曇る。しかし、ユージーンはこの後彼女と一緒に、家令としてハイド伯爵領に帰るつもりだ。
「勝手に話を進めないで下さい。婚約者になっても、俺がずっとクローディアの隣で家令代わりをします」
「ほう? ならば冬季以外、ゆっくり二人で旅行もできないね? ユージーンは置いて、クローディアだけ遊びに来ればいいよ」
「……確かにそれはそうですね」
それは嫌だ。クローディアはこれまで懸命に領地の立て直しにだけ専念してきた。
だが、これからは信頼できる人間に任せ、二人の時間を過ごすのも悪くはない。
ウォルトはなかなか良い提案をしてくれたと、ユージーンはその案を受け入れた。
「父上、兄上、メレディスは如何でしょう? 騎士団きっての頭脳派ですし、誰かさんと同じく忠義に厚い。クローディアを守る者が増えますし、かつ、領地経営も任せることができるでしょう」
次兄のブルーノはオリバーに似ており、堂々たる体躯の騎士で、王国騎士団の団長になると目されている。
メレディスという男を推薦したブルーノに、チラリと視線を送られたエリカは得意気だ。
エリカは単純ドストレートな完全武闘派でも、実は女性らしい面もあり、一番近くで甲斐甲斐しくクローディアのお世話ができるメイドの仕事が好きなのだ。
「私はメイド兼護衛騎士としてそのままハイド領に戻ってよろしいと言うことですね。これからは騎士としてメイドとして、クローディア様に忠義を尽くします」
「引き続きクローディアを任せたぞ、エリカ! なんなら私も引退してウォルトに領地を任せ、ハイド伯爵領に行こうかな?」
「「父上(オリバー様)! 絶対に来ないでください!!」」
ユージーンとエリカに来るなと言われ、オリバーはしゅんとし小さくなる。
「さて、弟思いの私は早速、メレディスをハイド伯爵領に送る手続きをいたしましょう」
「さすが兄上。仕事が早い。私もメレディスとエリカの次を担える人財を育成しませんとな。ユージーンは優しい二人の兄を持って幸せ者だ」
「自分らでよく言う……。俺に社交を押しつけようとしていたくせに……」
ユージーンはその物腰の柔らかさと容姿を買われ、王都滞在中はロシスター家の社交を任されていた。
しかし、昨晩本性を表してしまったので、今後美しい見た目に騙される者はだいぶ減るだろう。それにも関わらず、クローディアへの想いを優先してくれたのだ。
そして、ハイド領に大切な三男を婿入りさせ、家臣まで派遣しようとするロシスター家の懐の深さにクローディアの胸が熱くなる。
(私はこの方々の家族になるのね……。独りぼっちになったと思っていたのに……)
亡き親友の分もと甘やかそうとするオリバーに、唯一ユージーンの腹黒さに対抗できそうなウォルト。逞しくて頼もしいブルーノに、すでにクローディアを生涯の主と心に決めたエリカ。
何よりも、初めて恋をした人にずっと愛されていたことを知り、その人と婚約する――
(私に家族ができるんだわ……)
賑やかな一同に囲まれ、家族が増えることへの現実味が帯びた途端、クローディアの瞳にじわりとこみ上げてくるものがあった。
(お父様。私は今、とても幸せです)
オリバーたちに見守られながら、ハイド伯爵クローディアとロシスター侯爵家の三男ユージーンが婚約届けにサインをした。
少し震える手でサインを終えたクローディアが顔を上げると、隣に座っていたユージーンがその手を包み、いつも向け続けていた甘く優しい微笑みで彼女を見つめる。
穏やかな昼下がり――ロシスター侯爵邸のサロンに燦々と太陽の光が射し込む。黄金の髪と瞳を煌めかせた天使の様な侯爵家の三男は、子どもの頃に誓った想いをあらたにし、今一度心に刻む。
『クローディアは、将来の夢とかあるの?』
『夢……? う~んとね、沢山の家族に囲まれて暮らすこと……』
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