25 / 37
第2章 黒領主の旦那様
25 クライヴとレイラ その2
しおりを挟む
「おめでとうございます! とても元気な女の子ですよ!」
常日頃から騎士団で鍛えていた私のお産は軽く済んだらしい。これで軽いなんて信じられないが、ハイド伯爵家のベテラン使用人のお姉様方が口々に言うのだから本当なのだろう。
クローディアと名付けられたわが娘を、できる限り自分の手で育てた。乳母もつけず、どうしてもクローディアの側を離れる時はニナに頼んで、私は娘のぬくもりを独り占めにしていた。
私と同じ黒髪黒目。まだハッキリとしないから断言できないけれど、目元は私に似て大きい方かも。スラリと通った鼻筋と口もとは、クライヴに似て形が良い。
「親バカだけれど、将来きっと美人になるわね」
「違いないよ。おれたちの可愛い娘だ」
満たされた三ヶ月だった。愛する人と愛する人との子と過ごした、私の人生で一番輝いていた時間。幸福の絶頂。私がいなくなっても、クライヴがクローディアを、クローディアがクライヴを支え、助け合い仲睦まじく生きて行けるよう願った。
それは、私の勝手な望みだったのよね――
そして……、無情にも時は流れ、別れの時が訪れた……。
「レイラ様。公国より、公直属の飛竜が到着いたしました」
「そんなにせっつかなくても、逃げたりしないわよ」
おくるみにくるまれた愛しい我が子を、愛した男に託した。ぬくもりが離れ、冷たくなった腕が空を彷徨う。
「クライヴ……。クローディアをお願いします」
「大丈夫だよ。レイラの使命を果たしておいで。私をクローディアの父にしてくれてありがとう」
ごめんなさい。こんな母でごめんなさい、クローディア。私は貴女を周りにお願いすることしかできないわね。大きくなった貴女に謝ることさえも許されないわね。
「ずっとハイドで、クローディアと一緒に君を待っている」
いいの? それでもいつか、私の役目を果たした日には、二人に会いに来てもいいかしら?
――名のれなくても、罵られてもいいの。いつか訪れるかもしれないその日だけを生きる糧にさせて?
これ以上考えると泣いてしまう。クライヴとクローディアの別れを泣き顔で終わらせたくない……。
それから心を塞いだ。私には泣く資格さえないのだから。
それ以降を思い出そうとしてもよく思い出せなかった……。クライヴの表情も、クローディアが笑っていたのか泣いていたのか眠っていたのかさえも……。
「レイラ様……。グズッ――」
「ニナが泣いても何も解決せん。うるさいから黙れ」
「コンラッド様。貴方様も目が真っ赤ではないですか……」
「レイラ様のこんなお姿を見ていられるか……」
ニナとコンラッドに支えられ飛竜に乗ってウィンドラまで帰ったらしいが、別れてからの私はもぬけの殻。記憶が曖昧だった。
公になってからは、ただ国のため我武者羅に身を捧げた。長かったのか短かったのかさえ、感覚が麻痺して感じることはない。
同じ年頃の子を見れば、これくらい成長しているのかなと思う。でも、いつも夢で見るクローディアは幼いままだった。私の時間は流れながらも、停まってしまったの。
“公として一国の頂にいるレイラ様に、私が立場を忘れ手紙をお送りしたこと、そして、これから友として口出すことをお許しください”
公国に戻って十六年。初めてオリバーから私の元に手紙が届いた。これまで父とコンラッドが握りつぶしていたのか、オリバーが本当に初めて手紙をしたためてくれたかは分からない。
ただ、十六年経って手紙が届けられたことに、重要な意味があると思った。
“クライヴが亡くなって四年が過ぎ、やっと君の娘が私の娘になるよ。三男のユージーンを覚えているかい? あいつがクローディアの心を射止め、婚約したんだ”
昔の友に戻った文面。クライヴの死。クローディアとユージーン君の婚約。入り乱れる感情を大きく息を吸って整え続きを読む。
“でも、クローディアは王国では苦労する闇属性だろう? 差し出がましいのは承知の上で、レイラにお願いする。彼女に魔法を教えてはくれないか? 幸いハイド領は二人で良い経営状態にしているから、公国に行けそうなんだよ”
「ああ……、クローディアが……」
クローディアがウィンドラに来られるなんて……。会ってはならないと躊躇する気持ちもあった。けれど、名乗らずに会えばクローディアを悲しませることはないと言い訳し、私はただ一人の愛した人との間に生まれた我が子に会う決意を固めた。
名乗れないのは、私の負った罪の償いのほんの一部。それくらい母親がいなかった我が子の苦しみに比べたらどうってことはない。
私は加害者なんだから……。
***
遠くを見つめ長嘆し、レイラ様は俺に語り続けた。
「オリバーがきっかけを作ってくれたのよね。大きくなったユージーン君とも会えて嬉しかったわ。貴方がクローディアの婚約者だと知って、とても安心していたのよ」
「父からは昔の話を何も聞いておりませんでした……」
「そうだったのね。――クローディアの話しを聞いて、娘が経験したあまりの現実に堪えきれず涙を流してしまったわ。きっとオリバーは、私とクローディアがどうしていきたいのかを優先するため何も伝えなかったのね。ユージーン君にも言わなかったのは、そんな想いからじゃないかしら」
「そうかもしれません。父は無骨な騎士ですから。でも、クローディアにはデレデレなんですよ?」
少しだけおどけると、レイラ様の空気が和らいだ気がした。
「こちらに来て――」
言われたとおり、レイラ様の元に歩み寄る。真っ白な手が俺の手をとる。
「ソフィアは亡くなったのね。クローディアからソフィアの話が出てこないから」
「母はその後、流行り病に罹り亡くなったのです……」
「……。ユージーン君は二人に似て、とても強くて優しい騎士になったわ。あれでもコンラッドはそれなりに強いのよ? ――クローディアを助けてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう」
公としての姿はなく、ただ一人の母親として何度も何度も俺に頭を下げる。とても冷たい手だ。剣だこがあるから鍛練を重ねてきた御方と分かるが、とてもか細く心許ない。今にも消えてしまいそうな儚さだ。
俺は父よりまだまだガキなんだろう。どうしても口に出してしまった。
「レイラ様はクローディアに名乗るお気持ちはないのですか?」
「今さら名乗ったところで、あの子を悲しませるだけじゃないかしら……。何一つ母親らしいこともできなかった私には、そもそも名乗る資格などないわ……」
「……分かりました」
レイラ様の気持ちがそれで定まっているのなら、俺がこれ以上立ち入ってはならない。もどかしいが、レイラ様とクローディアが一緒に暮らせるわけではないのだ……。父も分かっていてクローディアをレイラ様に会わせたのだろう。
何か考えるところがあったのかもしれない。
悶々とした気持ちはありながらも、俺はクローディアとレイラ様にとって何が一番望ましいのか、時間をかけて思案していこうと思っていた――
常日頃から騎士団で鍛えていた私のお産は軽く済んだらしい。これで軽いなんて信じられないが、ハイド伯爵家のベテラン使用人のお姉様方が口々に言うのだから本当なのだろう。
クローディアと名付けられたわが娘を、できる限り自分の手で育てた。乳母もつけず、どうしてもクローディアの側を離れる時はニナに頼んで、私は娘のぬくもりを独り占めにしていた。
私と同じ黒髪黒目。まだハッキリとしないから断言できないけれど、目元は私に似て大きい方かも。スラリと通った鼻筋と口もとは、クライヴに似て形が良い。
「親バカだけれど、将来きっと美人になるわね」
「違いないよ。おれたちの可愛い娘だ」
満たされた三ヶ月だった。愛する人と愛する人との子と過ごした、私の人生で一番輝いていた時間。幸福の絶頂。私がいなくなっても、クライヴがクローディアを、クローディアがクライヴを支え、助け合い仲睦まじく生きて行けるよう願った。
それは、私の勝手な望みだったのよね――
そして……、無情にも時は流れ、別れの時が訪れた……。
「レイラ様。公国より、公直属の飛竜が到着いたしました」
「そんなにせっつかなくても、逃げたりしないわよ」
おくるみにくるまれた愛しい我が子を、愛した男に託した。ぬくもりが離れ、冷たくなった腕が空を彷徨う。
「クライヴ……。クローディアをお願いします」
「大丈夫だよ。レイラの使命を果たしておいで。私をクローディアの父にしてくれてありがとう」
ごめんなさい。こんな母でごめんなさい、クローディア。私は貴女を周りにお願いすることしかできないわね。大きくなった貴女に謝ることさえも許されないわね。
「ずっとハイドで、クローディアと一緒に君を待っている」
いいの? それでもいつか、私の役目を果たした日には、二人に会いに来てもいいかしら?
――名のれなくても、罵られてもいいの。いつか訪れるかもしれないその日だけを生きる糧にさせて?
これ以上考えると泣いてしまう。クライヴとクローディアの別れを泣き顔で終わらせたくない……。
それから心を塞いだ。私には泣く資格さえないのだから。
それ以降を思い出そうとしてもよく思い出せなかった……。クライヴの表情も、クローディアが笑っていたのか泣いていたのか眠っていたのかさえも……。
「レイラ様……。グズッ――」
「ニナが泣いても何も解決せん。うるさいから黙れ」
「コンラッド様。貴方様も目が真っ赤ではないですか……」
「レイラ様のこんなお姿を見ていられるか……」
ニナとコンラッドに支えられ飛竜に乗ってウィンドラまで帰ったらしいが、別れてからの私はもぬけの殻。記憶が曖昧だった。
公になってからは、ただ国のため我武者羅に身を捧げた。長かったのか短かったのかさえ、感覚が麻痺して感じることはない。
同じ年頃の子を見れば、これくらい成長しているのかなと思う。でも、いつも夢で見るクローディアは幼いままだった。私の時間は流れながらも、停まってしまったの。
“公として一国の頂にいるレイラ様に、私が立場を忘れ手紙をお送りしたこと、そして、これから友として口出すことをお許しください”
公国に戻って十六年。初めてオリバーから私の元に手紙が届いた。これまで父とコンラッドが握りつぶしていたのか、オリバーが本当に初めて手紙をしたためてくれたかは分からない。
ただ、十六年経って手紙が届けられたことに、重要な意味があると思った。
“クライヴが亡くなって四年が過ぎ、やっと君の娘が私の娘になるよ。三男のユージーンを覚えているかい? あいつがクローディアの心を射止め、婚約したんだ”
昔の友に戻った文面。クライヴの死。クローディアとユージーン君の婚約。入り乱れる感情を大きく息を吸って整え続きを読む。
“でも、クローディアは王国では苦労する闇属性だろう? 差し出がましいのは承知の上で、レイラにお願いする。彼女に魔法を教えてはくれないか? 幸いハイド領は二人で良い経営状態にしているから、公国に行けそうなんだよ”
「ああ……、クローディアが……」
クローディアがウィンドラに来られるなんて……。会ってはならないと躊躇する気持ちもあった。けれど、名乗らずに会えばクローディアを悲しませることはないと言い訳し、私はただ一人の愛した人との間に生まれた我が子に会う決意を固めた。
名乗れないのは、私の負った罪の償いのほんの一部。それくらい母親がいなかった我が子の苦しみに比べたらどうってことはない。
私は加害者なんだから……。
***
遠くを見つめ長嘆し、レイラ様は俺に語り続けた。
「オリバーがきっかけを作ってくれたのよね。大きくなったユージーン君とも会えて嬉しかったわ。貴方がクローディアの婚約者だと知って、とても安心していたのよ」
「父からは昔の話を何も聞いておりませんでした……」
「そうだったのね。――クローディアの話しを聞いて、娘が経験したあまりの現実に堪えきれず涙を流してしまったわ。きっとオリバーは、私とクローディアがどうしていきたいのかを優先するため何も伝えなかったのね。ユージーン君にも言わなかったのは、そんな想いからじゃないかしら」
「そうかもしれません。父は無骨な騎士ですから。でも、クローディアにはデレデレなんですよ?」
少しだけおどけると、レイラ様の空気が和らいだ気がした。
「こちらに来て――」
言われたとおり、レイラ様の元に歩み寄る。真っ白な手が俺の手をとる。
「ソフィアは亡くなったのね。クローディアからソフィアの話が出てこないから」
「母はその後、流行り病に罹り亡くなったのです……」
「……。ユージーン君は二人に似て、とても強くて優しい騎士になったわ。あれでもコンラッドはそれなりに強いのよ? ――クローディアを助けてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう」
公としての姿はなく、ただ一人の母親として何度も何度も俺に頭を下げる。とても冷たい手だ。剣だこがあるから鍛練を重ねてきた御方と分かるが、とてもか細く心許ない。今にも消えてしまいそうな儚さだ。
俺は父よりまだまだガキなんだろう。どうしても口に出してしまった。
「レイラ様はクローディアに名乗るお気持ちはないのですか?」
「今さら名乗ったところで、あの子を悲しませるだけじゃないかしら……。何一つ母親らしいこともできなかった私には、そもそも名乗る資格などないわ……」
「……分かりました」
レイラ様の気持ちがそれで定まっているのなら、俺がこれ以上立ち入ってはならない。もどかしいが、レイラ様とクローディアが一緒に暮らせるわけではないのだ……。父も分かっていてクローディアをレイラ様に会わせたのだろう。
何か考えるところがあったのかもしれない。
悶々とした気持ちはありながらも、俺はクローディアとレイラ様にとって何が一番望ましいのか、時間をかけて思案していこうと思っていた――
1
あなたにおすすめの小説
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~
藤 ゆみ子
恋愛
グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。
それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。
二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。
けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。
親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。
だが、それはティアの大きな勘違いだった。
シオンは、ティアを溺愛していた。
溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。
そしてシオンもまた、勘違いをしていた。
ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。
絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。
紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。
そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
逆行したので運命を変えようとしたら、全ておばあさまの掌の上でした
ひとみん
恋愛
夫に殺されたはずなのに、目覚めれば五才に戻っていた。同じ運命は嫌だと、足掻きはじめるクロエ。
なんとか前に死んだ年齢を超えられたけど、実は何やら祖母が裏で色々動いていたらしい。
ザル設定のご都合主義です。
最初はほぼ状況説明的文章です・・・
白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された令嬢リオナは、家の体面を守るため、幼なじみであり王国騎士でもあるカイルと「白い結婚」をすることになった。
お互い干渉しない、心も体も自由な結婚生活――そのはずだった。
……少なくとも、リオナはそう信じていた。
ところが結婚後、カイルの様子がおかしい。
距離を取るどころか、妙に優しくて、時に甘くて、そしてなぜか他の男性が近づくと怒る。
「お前は俺の妻だ。離れようなんて、思うなよ」
どうしてそんな顔をするのか、どうしてそんなに真剣に見つめてくるのか。
“白い結婚”のはずなのに、リオナの胸は日に日にざわついていく。
すれ違い、誤解、嫉妬。
そして社交界で起きた陰謀事件をきっかけに、カイルはとうとう本心を隠せなくなる。
「……ずっと好きだった。諦めるつもりなんてない」
そんなはずじゃなかったのに。
曖昧にしていたのは、むしろリオナのほうだった。
白い結婚から始まる、幼なじみ騎士の不器用で激しい独占欲。
鈍感な令嬢リオナが少しずつ自分の気持ちに気づいていく、溺愛逆転ラブストーリー。
「ゆっくりでいい。お前の歩幅に合わせる」
「……はい。私も、カイルと歩きたいです」
二人は“白い結婚”の先に、本当の夫婦を選んでいく――。
-
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!
Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。
見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、
幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。
心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、
いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。
そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、
この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、
つい彼の心の声を聞いてしまう。
偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、
その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに……
「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」
なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た!
何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、
あれ? 何かがおかしい……
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる