2 / 7
Act.1
2
しおりを挟む
『おや、もう仲間割れかい? それはそれでかまわないけど』
数十メートル離れた電信柱の陰から、とても人とは見えない怪物が現れた。肌の色はよどんだ緑色で人間の髪の毛にあたる部分には赤い毛が、まるで馬のたてがみのようにはえている、瞳は爬虫類の様に金色に光っている。そして蛇の様に長い赤い舌が、チラリとのぞく。両手の五本の指には、長い爪がついている。しわがれた声だったが、おそらく性別は女だろう。
『初めましてネットレンジャーのボウヤ達。アクシはゴーヌのアンティウヌ。残念だけどボウヤ達には今ここで死んでもらうわ』
「皆さん逃げて!!」
アンティウヌの殺気を感じとった竜也のとっさの判断で、散々と物陰に隠れる五人。アンティウヌが手をかざすと、その手のひらに光が集まり、アンティウヌの手を離れた光が一本の電柱に触れると、電柱はくだけ飛んだ。偶然にも、同に場所に隠れた沙弥と想は、攻撃をよける為、体勢をできるだけ低くして息をひそめていた。
「何でお前がここにいんだよっ!」
「お前、弱そうだから」
「はぁ? 俺より赤いのとか黄色いの守ってやれよ。それにアレ……」
沙弥は数メートル先の自動販売機の陰でうずくまっている竜也を視線で示す。
「あいつ……竜也? の目、すっかりおびえきってる。あれはイジメられてる奴の目だ」
「ま、確かにイジメられ慣れてる奴の目だな」
沙弥は想の首に手をのせ、耳を自分の口元に近づける。
「よく考えろ。俺達は『寝て』たんだ。つまりこのネットシティは夢の中だ。夢はいつか覚める。覚めるまで、適当に時間をかせいどきゃいいんだ。でも、そんな事も分からない様な奴らにはそれまでの時間が苦痛だろ」
「――それも分かるけど、そう言ってるお前だって震えてるぜ。本当は怖いんだろ」
想は小刻みに震えている沙弥の肩にポンと手を置く。図星をつかれた沙弥は想の手をはらい、右手で自分の左手をおさえる。
「うるさい! 早く行け!!」
大通りに想が飛び出した瞬間、待ちかまえたかのように、アンティウヌは光の玉を想に向かって飛ばす。光の玉の直撃を受けた想は、まるで体中に電流が流れたかようにその場に倒れる。
「想!!」
その言葉と同時に、物陰から飛び出したのは沙弥だけではなかった、沙弥も竜也も健太も、淳も身近にあった武器になりそうなものを手に取り身構えた。
『そんな物でこのアタシと戦おうってのかい? ボウヤ達』
「アンタと戦う気は最初っからねぇよ、クソババァ」
『バっ……!!』
一番気にしている事を淳に言われたアンティウヌの顔は、口が裂け、みるみる鬼のように変化していった。アンティウヌがその長い爪で空をかくと、少々離れた場所にいた淳の胸に四本のひっかき傷が現れる。
「!?」
一瞬、三人とも立ち止まって淳を見る。淳の胸からおびただしい量の血があふれ出し、淳は胸をおさえ、その場にうずくまる。そして再びアンティウヌが空を切ると、健太が右腕をおさえ、その指の間からは、赤い血の色が見えた。
「望月さんっ、想さんをお願いします!」
沙弥が竜也の顔を見ると、竜也と健太は淳を路地裏へ運ぼうとしていた。沙弥も想を運ぼうと、想の両脇の下に手を入れるが、沙弥一人の力で到底運べる重さではなかった。その時、アンティウヌが想に向けて空を切った。とっさに沙弥はアンティウヌに背を向け、想をかばうように抱きしめた。沙弥の背中に激痛が走ったのは、そのすぐ後だった。
「……っつ!!」
背中に手を回すと、何かヌルっとするものが手に触れる。それを目の前に持ってくると、沙弥の手に真っ赤な液体がこびりついていた。
『さぁ、とどめだよ……』
アンティウヌは手を振り上げた。その時、沙弥は気づいた、赤い液体がこびりついた自分の手が段々と透明化していく。目の前の想も。そして竜也達もその異変に気づいていた。
数十メートル離れた電信柱の陰から、とても人とは見えない怪物が現れた。肌の色はよどんだ緑色で人間の髪の毛にあたる部分には赤い毛が、まるで馬のたてがみのようにはえている、瞳は爬虫類の様に金色に光っている。そして蛇の様に長い赤い舌が、チラリとのぞく。両手の五本の指には、長い爪がついている。しわがれた声だったが、おそらく性別は女だろう。
『初めましてネットレンジャーのボウヤ達。アクシはゴーヌのアンティウヌ。残念だけどボウヤ達には今ここで死んでもらうわ』
「皆さん逃げて!!」
アンティウヌの殺気を感じとった竜也のとっさの判断で、散々と物陰に隠れる五人。アンティウヌが手をかざすと、その手のひらに光が集まり、アンティウヌの手を離れた光が一本の電柱に触れると、電柱はくだけ飛んだ。偶然にも、同に場所に隠れた沙弥と想は、攻撃をよける為、体勢をできるだけ低くして息をひそめていた。
「何でお前がここにいんだよっ!」
「お前、弱そうだから」
「はぁ? 俺より赤いのとか黄色いの守ってやれよ。それにアレ……」
沙弥は数メートル先の自動販売機の陰でうずくまっている竜也を視線で示す。
「あいつ……竜也? の目、すっかりおびえきってる。あれはイジメられてる奴の目だ」
「ま、確かにイジメられ慣れてる奴の目だな」
沙弥は想の首に手をのせ、耳を自分の口元に近づける。
「よく考えろ。俺達は『寝て』たんだ。つまりこのネットシティは夢の中だ。夢はいつか覚める。覚めるまで、適当に時間をかせいどきゃいいんだ。でも、そんな事も分からない様な奴らにはそれまでの時間が苦痛だろ」
「――それも分かるけど、そう言ってるお前だって震えてるぜ。本当は怖いんだろ」
想は小刻みに震えている沙弥の肩にポンと手を置く。図星をつかれた沙弥は想の手をはらい、右手で自分の左手をおさえる。
「うるさい! 早く行け!!」
大通りに想が飛び出した瞬間、待ちかまえたかのように、アンティウヌは光の玉を想に向かって飛ばす。光の玉の直撃を受けた想は、まるで体中に電流が流れたかようにその場に倒れる。
「想!!」
その言葉と同時に、物陰から飛び出したのは沙弥だけではなかった、沙弥も竜也も健太も、淳も身近にあった武器になりそうなものを手に取り身構えた。
『そんな物でこのアタシと戦おうってのかい? ボウヤ達』
「アンタと戦う気は最初っからねぇよ、クソババァ」
『バっ……!!』
一番気にしている事を淳に言われたアンティウヌの顔は、口が裂け、みるみる鬼のように変化していった。アンティウヌがその長い爪で空をかくと、少々離れた場所にいた淳の胸に四本のひっかき傷が現れる。
「!?」
一瞬、三人とも立ち止まって淳を見る。淳の胸からおびただしい量の血があふれ出し、淳は胸をおさえ、その場にうずくまる。そして再びアンティウヌが空を切ると、健太が右腕をおさえ、その指の間からは、赤い血の色が見えた。
「望月さんっ、想さんをお願いします!」
沙弥が竜也の顔を見ると、竜也と健太は淳を路地裏へ運ぼうとしていた。沙弥も想を運ぼうと、想の両脇の下に手を入れるが、沙弥一人の力で到底運べる重さではなかった。その時、アンティウヌが想に向けて空を切った。とっさに沙弥はアンティウヌに背を向け、想をかばうように抱きしめた。沙弥の背中に激痛が走ったのは、そのすぐ後だった。
「……っつ!!」
背中に手を回すと、何かヌルっとするものが手に触れる。それを目の前に持ってくると、沙弥の手に真っ赤な液体がこびりついていた。
『さぁ、とどめだよ……』
アンティウヌは手を振り上げた。その時、沙弥は気づいた、赤い液体がこびりついた自分の手が段々と透明化していく。目の前の想も。そして竜也達もその異変に気づいていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる