電脳戦隊ネットレンジャー

古河さかえ

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Act.1

2

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『おや、もう仲間割れかい? それはそれでかまわないけど』

 数十メートル離れた電信柱の陰から、とても人とは見えない怪物が現れた。肌の色はよどんだ緑色で人間の髪の毛にあたる部分には赤い毛が、まるで馬のたてがみのようにはえている、瞳は爬虫類の様に金色に光っている。そして蛇の様に長い赤い舌が、チラリとのぞく。両手の五本の指には、長い爪がついている。しわがれた声だったが、おそらく性別は女だろう。

『初めましてネットレンジャーのボウヤ達。アクシはゴーヌのアンティウヌ。残念だけどボウヤ達には今ここで死んでもらうわ』

「皆さん逃げて!!」

 アンティウヌの殺気を感じとった竜也のとっさの判断で、散々と物陰に隠れる五人。アンティウヌが手をかざすと、その手のひらに光が集まり、アンティウヌの手を離れた光が一本の電柱に触れると、電柱はくだけ飛んだ。偶然にも、同に場所に隠れた沙弥と想は、攻撃をよける為、体勢をできるだけ低くして息をひそめていた。

「何でお前がここにいんだよっ!」
「お前、弱そうだから」
「はぁ? 俺より赤いのとか黄色いの守ってやれよ。それにアレ……」

 沙弥は数メートル先の自動販売機の陰でうずくまっている竜也を視線で示す。

「あいつ……竜也? の目、すっかりおびえきってる。あれはイジメられてる奴の目だ」
「ま、確かにイジメられ慣れてる奴の目だな」

 沙弥は想の首に手をのせ、耳を自分の口元に近づける。

「よく考えろ。俺達は『寝て』たんだ。つまりこのネットシティは夢の中だ。夢はいつか覚める。覚めるまで、適当に時間をかせいどきゃいいんだ。でも、そんな事も分からない様な奴らにはそれまでの時間が苦痛だろ」
「――それも分かるけど、そう言ってるお前だって震えてるぜ。本当は怖いんだろ」

 想は小刻みに震えている沙弥の肩にポンと手を置く。図星をつかれた沙弥は想の手をはらい、右手で自分の左手をおさえる。

「うるさい! 早く行け!!」

 大通りに想が飛び出した瞬間、待ちかまえたかのように、アンティウヌは光の玉を想に向かって飛ばす。光の玉の直撃を受けた想は、まるで体中に電流が流れたかようにその場に倒れる。

「想!!」

 その言葉と同時に、物陰から飛び出したのは沙弥だけではなかった、沙弥も竜也も健太も、淳も身近にあった武器になりそうなものを手に取り身構えた。

『そんな物でこのアタシと戦おうってのかい? ボウヤ達』
「アンタと戦う気は最初っからねぇよ、クソババァ」
『バっ……!!』

 一番気にしている事を淳に言われたアンティウヌの顔は、口が裂け、みるみる鬼のように変化していった。アンティウヌがその長い爪で空をかくと、少々離れた場所にいた淳の胸に四本のひっかき傷が現れる。

「!?」

 一瞬、三人とも立ち止まって淳を見る。淳の胸からおびただしい量の血があふれ出し、淳は胸をおさえ、その場にうずくまる。そして再びアンティウヌが空を切ると、健太が右腕をおさえ、その指の間からは、赤い血の色が見えた。

「望月さんっ、想さんをお願いします!」

 沙弥が竜也の顔を見ると、竜也と健太は淳を路地裏へ運ぼうとしていた。沙弥も想を運ぼうと、想の両脇の下に手を入れるが、沙弥一人の力で到底運べる重さではなかった。その時、アンティウヌが想に向けて空を切った。とっさに沙弥はアンティウヌに背を向け、想をかばうように抱きしめた。沙弥の背中に激痛が走ったのは、そのすぐ後だった。

「……っつ!!」

 背中に手を回すと、何かヌルっとするものが手に触れる。それを目の前に持ってくると、沙弥の手に真っ赤な液体がこびりついていた。

『さぁ、とどめだよ……』

 アンティウヌは手を振り上げた。その時、沙弥は気づいた、赤い液体がこびりついた自分の手が段々と透明化していく。目の前の想も。そして竜也達もその異変に気づいていた。
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