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第24話 はじめての冒険!ヴァイスとスライム退治
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「ヴァイス、怖くない? 大丈夫?」
優衣が胸元をのぞき込むと、ヴァイスは小さく顔を出して「キュン」と鳴いた。小さく尻尾を振るその仕草に、優衣の心も少し軽くなる。
「ふふ、ありがと。私のほうが励まされちゃったかも」
薄暗いダンジョンの中、ひんやりとした空気が漂っている。けれど、ヴァイスは逆に生き生きしていた。
「やっぱり、魔素がいっぱいあるからかな。元気そうだね」
胸元でじっとしていたヴァイスだったが、やがて「キューン」と鳴いて身じろぎする。
「ん? 降りたいの?」
「キュ、キュン!」
「わかったよ。でもちょっとだけね」
優衣が慎重に地面へ降ろすと、ヴァイスは嬉しそうにぴょんと前に出る。まだ頼りない足取りだが、目は好奇心でいっぱいだ。
ちょこちょこと興味のあるところに行き、においを嗅いだりしている。
小さな尻尾は楽しそうにピコピコと動いている。
「可愛い……でも、あんまり離れちゃダメだよ?」
そのとき、前方にぷるぷる揺れるスライムが現れた。ヴァイスはぴたりと止まり、耳をぴんと立てる。
「ヴァイス……? 大丈夫?」
「キャン!」
次の瞬間、ヴァイスは勢いよく飛びかかった。スライムはびくっと震え、しゅんと消えてしまう。
「えっ……倒しちゃったの? すごい!」
優衣は目を丸くした。ヴァイスは得意げに尻尾を振り、「キュン」と鳴く。
「もう、自慢げにしちゃって……でもほんと、頼もしいな」
その後も小さなスライムと何度か遭遇した。ヴァイスはぴょんぴょんと跳ね、短い足で一生懸命に飛びかかる。戦うたびに鳴き声が少しずつ自信に満ちていった。
「やるたびに強くなってるね……でも、無理しすぎないでよ?」
しばらくすると、ヴァイスは「クーン」と鳴いて優衣の足元に戻ってきた。
「もう疲れちゃった? ……はい、おいで」
抱き上げると、ヴァイスは安心したように目を閉じ、すぐに「すぅ、すぅ」と寝息を立て始める。
「あはは、寝ちゃったの? 頑張ったもんね」
二人はゆっくりと洞窟を引き返す。外に出た瞬間、春の日差しが全身を包み込み、思わず深呼吸する。
「ふぅ……やっぱり外の空気はいいな」
腕の中のヴァイスを見下ろしながら、優衣はそっと囁いた。
「ヴァイス、今日はよく頑張ったよ。また一緒に冒険しようね」
その声に応えるように、ヴァイスは夢の中で「キュン」と小さく鳴いた。
優衣は笑みをこぼし、幸せそうに彼女を抱きしめて帰路についた。
優衣が胸元をのぞき込むと、ヴァイスは小さく顔を出して「キュン」と鳴いた。小さく尻尾を振るその仕草に、優衣の心も少し軽くなる。
「ふふ、ありがと。私のほうが励まされちゃったかも」
薄暗いダンジョンの中、ひんやりとした空気が漂っている。けれど、ヴァイスは逆に生き生きしていた。
「やっぱり、魔素がいっぱいあるからかな。元気そうだね」
胸元でじっとしていたヴァイスだったが、やがて「キューン」と鳴いて身じろぎする。
「ん? 降りたいの?」
「キュ、キュン!」
「わかったよ。でもちょっとだけね」
優衣が慎重に地面へ降ろすと、ヴァイスは嬉しそうにぴょんと前に出る。まだ頼りない足取りだが、目は好奇心でいっぱいだ。
ちょこちょこと興味のあるところに行き、においを嗅いだりしている。
小さな尻尾は楽しそうにピコピコと動いている。
「可愛い……でも、あんまり離れちゃダメだよ?」
そのとき、前方にぷるぷる揺れるスライムが現れた。ヴァイスはぴたりと止まり、耳をぴんと立てる。
「ヴァイス……? 大丈夫?」
「キャン!」
次の瞬間、ヴァイスは勢いよく飛びかかった。スライムはびくっと震え、しゅんと消えてしまう。
「えっ……倒しちゃったの? すごい!」
優衣は目を丸くした。ヴァイスは得意げに尻尾を振り、「キュン」と鳴く。
「もう、自慢げにしちゃって……でもほんと、頼もしいな」
その後も小さなスライムと何度か遭遇した。ヴァイスはぴょんぴょんと跳ね、短い足で一生懸命に飛びかかる。戦うたびに鳴き声が少しずつ自信に満ちていった。
「やるたびに強くなってるね……でも、無理しすぎないでよ?」
しばらくすると、ヴァイスは「クーン」と鳴いて優衣の足元に戻ってきた。
「もう疲れちゃった? ……はい、おいで」
抱き上げると、ヴァイスは安心したように目を閉じ、すぐに「すぅ、すぅ」と寝息を立て始める。
「あはは、寝ちゃったの? 頑張ったもんね」
二人はゆっくりと洞窟を引き返す。外に出た瞬間、春の日差しが全身を包み込み、思わず深呼吸する。
「ふぅ……やっぱり外の空気はいいな」
腕の中のヴァイスを見下ろしながら、優衣はそっと囁いた。
「ヴァイス、今日はよく頑張ったよ。また一緒に冒険しようね」
その声に応えるように、ヴァイスは夢の中で「キュン」と小さく鳴いた。
優衣は笑みをこぼし、幸せそうに彼女を抱きしめて帰路についた。
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