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第一部
11 集落
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「目が覚めたかい」
レーヴェがうっすらと瞼を開いた途端、聞きなれぬ声がかかった。
ぼんやりと見上げた天井から木の温もりが伝わってきて、レーヴェの胸にはこれまで感じたことのなかった穏やかさが広がった。ここは安心していい場所なのだと家の雰囲気で感じとった。
ゆっくりと身体を起こし、声の主に目をやる。
少しふっくらした女性が覗きこんでくる。そのおだやかな表情から、おおらかそうな印象をレーヴェに与えた。
「女の子は別の部屋で寝ているよ。まだ目は覚めてないけど、うなされたりしてないし、よく眠ってる。心配ないよ」
レーヴェの気がかりを察したのだろう、問いかけるより早く女性はイレーネの状態を教えてくれた。
「腹は減ってないかい」
頷くよりも早く、腹が答えた。
彼女は大きな口をあけて豪快に笑うと、レーヴェの前に木の皿をさしだした。
湯気はあまり上がっていないが、香りがレーヴェの鼻腔をくすぐった。それがスープだと悟ると、奪うように皿を受け取った。
差し出される匙に目をやることもなく、レーヴェは皿に直接口をつけスープをすすった。ゆっくりと味わうこともなく、ごくごくと喉を鳴らし、一気に飲み干す。
「うまいかい」
と聞かれて、小刻みにこくこくと何度も頭を揺らす。
「おかわりは?」
遠慮もなく皿を差し出すと、女性は嫌な顔一つせず皿を受け取り、悠然と微笑みながら部屋を出ていった。
腹が少し落ち着いたところで、レーヴェは改めて部屋を見渡した。
向かいの壁際に机と箪笥、右手の窓には一輪の花を活けた花瓶。
木の扉を開いた窓からは陽光がさんさんと降り注ぎ、部屋内は明るい。
冬間近だとは思えない暖かさに満ちているのは、陽光のせいだけではないだろう。
家も調度品も、レーヴェが寝かされている寝台も手作り感で溢れ、人の手の温もりが伝わってくる。
窓の外に別の住居らしい建物が見えることから、森の中に一軒だけこの家があるのではなく、いくつかの家が集まっている集落であることはわかった。が、それがどのくらいの規模であるのか、横になっている状態からではわからなかった。けれど、あの屋敷のある町とは違う雰囲気であることは感じ取っていた。
無事に森を抜け、違う場所に辿り着けたことだけは確かなようだ。それがどのくらいの距離であるのかは予想すらつかないが、あの町から離れることができるかがイレーネの身の次に気がかりであったから、少しでも遠くにこられたようだとレーヴェは安堵した。
さきほどよりも強くスープの香りがした。
お盆を持って戻ってきた女性は、寝台の横にあった小さな机の上にスープの入った木皿ともう一つ、パンがのった皿を置いた。。
さっきは空腹のあまり夢中で一気飲みしてしまったスープを、今度は匙を使い一口一口ゆっくり運ぶ。
口いっぱいに野菜の旨みが広がり、飲み込むと身体の芯から温まっていく。
小さく刻まれたニンジンや芋は、噛み砕く必要もないほどとても柔らかい。
かつて飲んでいたほとんど具のない、うすい味のスープとは比べ物にならない。
家中にある温かい雰囲気は、料理からもたくさん溢れていた。
これが母親の温もりなのだろうかと、家族というものを全く知らないレーヴェに想像をさせた。
「イレーネが目を覚ましたら、食べさせてやって欲しい」
ぽつりと呟いたレーヴェの言葉に、女性は大きく頷いた。
「もちろんだよ」
腹がいっぱいになり、女性からの温かい返事に気が緩み、レーヴェはあくびを繰り返した。ここしばらく緊張状態が続いたせいで、ほとんど眠れなかった。疲労が一気に押し寄せてくる。
「しっかり眠って、元気になるんだよ」
女性に促されて、レーヴェは横になった。彼女が布団を掛けてくれたときには、すでに眠りについていた。
レーヴェがうっすらと瞼を開いた途端、聞きなれぬ声がかかった。
ぼんやりと見上げた天井から木の温もりが伝わってきて、レーヴェの胸にはこれまで感じたことのなかった穏やかさが広がった。ここは安心していい場所なのだと家の雰囲気で感じとった。
ゆっくりと身体を起こし、声の主に目をやる。
少しふっくらした女性が覗きこんでくる。そのおだやかな表情から、おおらかそうな印象をレーヴェに与えた。
「女の子は別の部屋で寝ているよ。まだ目は覚めてないけど、うなされたりしてないし、よく眠ってる。心配ないよ」
レーヴェの気がかりを察したのだろう、問いかけるより早く女性はイレーネの状態を教えてくれた。
「腹は減ってないかい」
頷くよりも早く、腹が答えた。
彼女は大きな口をあけて豪快に笑うと、レーヴェの前に木の皿をさしだした。
湯気はあまり上がっていないが、香りがレーヴェの鼻腔をくすぐった。それがスープだと悟ると、奪うように皿を受け取った。
差し出される匙に目をやることもなく、レーヴェは皿に直接口をつけスープをすすった。ゆっくりと味わうこともなく、ごくごくと喉を鳴らし、一気に飲み干す。
「うまいかい」
と聞かれて、小刻みにこくこくと何度も頭を揺らす。
「おかわりは?」
遠慮もなく皿を差し出すと、女性は嫌な顔一つせず皿を受け取り、悠然と微笑みながら部屋を出ていった。
腹が少し落ち着いたところで、レーヴェは改めて部屋を見渡した。
向かいの壁際に机と箪笥、右手の窓には一輪の花を活けた花瓶。
木の扉を開いた窓からは陽光がさんさんと降り注ぎ、部屋内は明るい。
冬間近だとは思えない暖かさに満ちているのは、陽光のせいだけではないだろう。
家も調度品も、レーヴェが寝かされている寝台も手作り感で溢れ、人の手の温もりが伝わってくる。
窓の外に別の住居らしい建物が見えることから、森の中に一軒だけこの家があるのではなく、いくつかの家が集まっている集落であることはわかった。が、それがどのくらいの規模であるのか、横になっている状態からではわからなかった。けれど、あの屋敷のある町とは違う雰囲気であることは感じ取っていた。
無事に森を抜け、違う場所に辿り着けたことだけは確かなようだ。それがどのくらいの距離であるのかは予想すらつかないが、あの町から離れることができるかがイレーネの身の次に気がかりであったから、少しでも遠くにこられたようだとレーヴェは安堵した。
さきほどよりも強くスープの香りがした。
お盆を持って戻ってきた女性は、寝台の横にあった小さな机の上にスープの入った木皿ともう一つ、パンがのった皿を置いた。。
さっきは空腹のあまり夢中で一気飲みしてしまったスープを、今度は匙を使い一口一口ゆっくり運ぶ。
口いっぱいに野菜の旨みが広がり、飲み込むと身体の芯から温まっていく。
小さく刻まれたニンジンや芋は、噛み砕く必要もないほどとても柔らかい。
かつて飲んでいたほとんど具のない、うすい味のスープとは比べ物にならない。
家中にある温かい雰囲気は、料理からもたくさん溢れていた。
これが母親の温もりなのだろうかと、家族というものを全く知らないレーヴェに想像をさせた。
「イレーネが目を覚ましたら、食べさせてやって欲しい」
ぽつりと呟いたレーヴェの言葉に、女性は大きく頷いた。
「もちろんだよ」
腹がいっぱいになり、女性からの温かい返事に気が緩み、レーヴェはあくびを繰り返した。ここしばらく緊張状態が続いたせいで、ほとんど眠れなかった。疲労が一気に押し寄せてくる。
「しっかり眠って、元気になるんだよ」
女性に促されて、レーヴェは横になった。彼女が布団を掛けてくれたときには、すでに眠りについていた。
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