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第三部 仲良し姉妹
37 店舗実習2 キッチン
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二日目は、キッチンからスタートした。
シェフは、オーナーの妹さんの香代子さん。背が高くて、ショートカットがとてもよく似合っている。
香代子さんは卒業生だった。それで実習を受け入れていると教えてもらった。
「略語はだいだい入ってる?」
「はい。大丈夫だと思います」
「自信がない時は、必ず確認して。忙しい時ほど、慎重に」
「はい。わかりました」
あたしは昨日、何度かミスをした。優しいお客さんばかりだったから叱られなかったし、オーナーさんからも注意だけですんだ。
でも今日は間違えないようにしたい。
昨日のうちに、お姉ちゃんにもお願いしておいた。もし間違えそうになったら、大きな声を出して、教えてって。
香代子さんから、ドリンクの担当と使用後の食器の片付けを任された。
昨日の桃谷くんと、大浦さんから今朝教えてもらったから、あたしもそうだろうな、と思っていた。
アイスなら氷を入れて、オーダーのドリンクをサーバーから注ぐだけ。
ホットなら作り置きを温めるだけ。
でも、香代子さんの料理のタイミングに合わせないと、氷が溶けて水っぽくなったり、冷めてしまったりするので、あたしのペースで作る訳にはいかない。
それに注文伝票は下にあって、二階での確認ができない。
香代子さんは一度聞いて覚えているらしく、驚いてしまった。
あたしはメモに取って、組みあわせを確認しながら、ドリンクを作ってトレーに載せていった。
昼の混雑時は、お姉ちゃんの助けがなかったら、できなかった。
昼時が過ぎて注文が落ち着くと、香代子さんから「うちのメニューで、気になる物ある?」と聞かれた。
「ピザトーストです。すっごく美味しそうです」
「食べていっていいよ。その代わり自分で作りなね」
「いいんですか!」
教えてもらいながら、作らせてもらえることになった。
「うちのピザトーストは、ピザソースにこだわってるんだ」
香代子さんが冷蔵庫からタッパを取り出した。中にはトマトベースのピザソースが入っている。
「トマトを湯剥きして、種を取ってから、ざく切り。ニンニクと玉ねぎのみじん切りをオリーブオイルで炒めて、トマトを加えて、赤ワインやら砂糖やらバジルを入れて、水分が飛ぶまで煮詰めるんだ。最後に黒コショウと塩で味を調えて完成」
「このトマトも、果物みたいに農家さんから仕入れてるんですか」
「果物は規格外の商品をもらっているけど、トマトは違うよ。水分の少ない、加熱向きのトマトを選んでる」
ピザソースをすくって、トーストに塗る。お客さんに出すのは細いトースト二枚だけど、あたしは一枚で充分。お弁当もあるし。
スライスした玉ねぎとベーコンとマッシュルームをバターで炒めて、少し塩を加える。火が通ったらトーストに乗せて、チーズとピーマンをさらに乗せてトースターで焼く。
パンや具材の焼ける匂いと、溶けたチーズの香りはたまらない。
「それ持って休憩入っていいよ」
「はーい」
うきうきしながら作ったばかりのピザトーストをお皿に移して、階段を上がろうとしたタイミングで、一階から二人も上がってきた。
「わ、ピザトースト。いいなあ」
大浦さんが、真っ先に反応した。
「あなたたちも、好きなの作って食べていいよ」
「いいんですか!」
二人はあたしと同じ反応をして、香代子さんとお姉ちゃんに笑われていた。
大浦さんはイチゴのショートケーキを、桃谷くんはトマトソースパスタを選んだ。
あたしは作り立てを食べたかったので、先に三階に上がる。
一口目からもう美味しいピザトーストだった。コクのあるチーズに負けない、しっかりしたトマトの甘みと酸味。ベーコンのジューシーさともよく合っている。
「これは、美味しい。リピーターになるやつだ」
「あの‥‥‥一口ちょうだい」
お姉ちゃんに向けて呟いたつもりだったのに、背後から大浦さんに話しかけられてびっくりした。
「私のケーキも一口食べていいよ」
上機嫌な大浦さんと一口を交換し合った。
桃谷くんのパスタも一口もらった。ピザソースをベースにしているらしく、これも美味しかった。
シェフは、オーナーの妹さんの香代子さん。背が高くて、ショートカットがとてもよく似合っている。
香代子さんは卒業生だった。それで実習を受け入れていると教えてもらった。
「略語はだいだい入ってる?」
「はい。大丈夫だと思います」
「自信がない時は、必ず確認して。忙しい時ほど、慎重に」
「はい。わかりました」
あたしは昨日、何度かミスをした。優しいお客さんばかりだったから叱られなかったし、オーナーさんからも注意だけですんだ。
でも今日は間違えないようにしたい。
昨日のうちに、お姉ちゃんにもお願いしておいた。もし間違えそうになったら、大きな声を出して、教えてって。
香代子さんから、ドリンクの担当と使用後の食器の片付けを任された。
昨日の桃谷くんと、大浦さんから今朝教えてもらったから、あたしもそうだろうな、と思っていた。
アイスなら氷を入れて、オーダーのドリンクをサーバーから注ぐだけ。
ホットなら作り置きを温めるだけ。
でも、香代子さんの料理のタイミングに合わせないと、氷が溶けて水っぽくなったり、冷めてしまったりするので、あたしのペースで作る訳にはいかない。
それに注文伝票は下にあって、二階での確認ができない。
香代子さんは一度聞いて覚えているらしく、驚いてしまった。
あたしはメモに取って、組みあわせを確認しながら、ドリンクを作ってトレーに載せていった。
昼の混雑時は、お姉ちゃんの助けがなかったら、できなかった。
昼時が過ぎて注文が落ち着くと、香代子さんから「うちのメニューで、気になる物ある?」と聞かれた。
「ピザトーストです。すっごく美味しそうです」
「食べていっていいよ。その代わり自分で作りなね」
「いいんですか!」
教えてもらいながら、作らせてもらえることになった。
「うちのピザトーストは、ピザソースにこだわってるんだ」
香代子さんが冷蔵庫からタッパを取り出した。中にはトマトベースのピザソースが入っている。
「トマトを湯剥きして、種を取ってから、ざく切り。ニンニクと玉ねぎのみじん切りをオリーブオイルで炒めて、トマトを加えて、赤ワインやら砂糖やらバジルを入れて、水分が飛ぶまで煮詰めるんだ。最後に黒コショウと塩で味を調えて完成」
「このトマトも、果物みたいに農家さんから仕入れてるんですか」
「果物は規格外の商品をもらっているけど、トマトは違うよ。水分の少ない、加熱向きのトマトを選んでる」
ピザソースをすくって、トーストに塗る。お客さんに出すのは細いトースト二枚だけど、あたしは一枚で充分。お弁当もあるし。
スライスした玉ねぎとベーコンとマッシュルームをバターで炒めて、少し塩を加える。火が通ったらトーストに乗せて、チーズとピーマンをさらに乗せてトースターで焼く。
パンや具材の焼ける匂いと、溶けたチーズの香りはたまらない。
「それ持って休憩入っていいよ」
「はーい」
うきうきしながら作ったばかりのピザトーストをお皿に移して、階段を上がろうとしたタイミングで、一階から二人も上がってきた。
「わ、ピザトースト。いいなあ」
大浦さんが、真っ先に反応した。
「あなたたちも、好きなの作って食べていいよ」
「いいんですか!」
二人はあたしと同じ反応をして、香代子さんとお姉ちゃんに笑われていた。
大浦さんはイチゴのショートケーキを、桃谷くんはトマトソースパスタを選んだ。
あたしは作り立てを食べたかったので、先に三階に上がる。
一口目からもう美味しいピザトーストだった。コクのあるチーズに負けない、しっかりしたトマトの甘みと酸味。ベーコンのジューシーさともよく合っている。
「これは、美味しい。リピーターになるやつだ」
「あの‥‥‥一口ちょうだい」
お姉ちゃんに向けて呟いたつもりだったのに、背後から大浦さんに話しかけられてびっくりした。
「私のケーキも一口食べていいよ」
上機嫌な大浦さんと一口を交換し合った。
桃谷くんのパスタも一口もらった。ピザソースをベースにしているらしく、これも美味しかった。
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