【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第4話 その目に映るもの

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昨日、同じスーツで良いって言われたけど、さすがにそれはと思い僕は朝からスーツを選んでいた。
今日は、弟のリョクが僕の部屋に泊まっていたので相談もできる。

「リョク、このスーツとネクタイの組み合わせどう?変かな?」

「ん?ん~。こっちのネイビーのネクタイの方がよくない?」

「そう?じゃ、こっちにする。兄ちゃんはもう行くから、ちゃんと朝ご飯食べてから学校に行けよ。」

「わかってるって~。俺、今日、そのまま寮に戻るね。」

「わかった。気をつけてね。じゃ、行ってきます。」

笑顔でリョクと別れたものの会社に近づくにつれて緊張感が増す。
今日は社長にも会う日だから。

社長のすべてを見透かされているようなあの眼差しが正直怖い。

そう思いながらも社長室のドアをノックした。

「失礼します。」

「おはよう。待っていたよ。」
ネイビーのスーツと深緑のネクタイ姿のアキトさんが優しい声で待っていてくれた。
僕の様子をみて緊張しているとわかったようだ。

社長室の前室には、アキトさん以外の机はまだ用意されていない。
僕の机はどこになるんだろう。

そうぼんやり考えていると
「じゃ、レイの所に行こうか。」
と言われた。

心の準備がまだできていないのに…と焦りながらもアキトさんの後ろをついていく。

コンコン 

ノック後、社長室のドアがアキトさんによって開かれた。

社長室に足を踏み入れた瞬間、空気が静まり返ったようだった。

空調の音さえ聞こえない。どこか、密閉された「箱」の中にいるような、そんな錯覚。

社長室は思っていたほど広くなかった。

でも扉が3つ……ん?4つ?

「神川くん?気になるところあった?」
キョロキョロと見渡している僕に声をかけた。

「あっ。いえ。すみません。」

「レイ、神川アオくんだよ。今日から僕の下で働いてもらう。」

背筋の伸びた姿勢、乱れのない黒髪、ネクタイの色まで無駄がない。
ただそこにいるだけで空気が変わる。静かで冷たい。
それなのに、目を離せない社長の姿があった。

社長はアキトさんの言葉に応えず、ただ静かに僕の方へ歩いてくる。
靴音もなく、距離が縮まってくる。

社長が、僕のすぐ目の前で立ち止まった。

「か…神川アオです。今日からよろしくお願いします。」

戸惑いながらも挨拶をしたその時、社長と目が合った。

あと少しで、触れるほどの距離。
何も言わない。触れない。けれど、僕の目の奥をのぞき込んでくる。

その瞬間 キーンという耳鳴りがした。
と同時に耳の後ろが急に痛くなった。

「いっ…た…」

咄嗟に社長から目を離して耳の後ろに手を当てた。

後ろで、アキトさんが、僕のその姿を捉えて社長に視線を移し頷いていたことに僕は気付かなかった。

「よろしく。」
社長は静かに言った。

僕がその言葉に返事をする前に、この静かな空気を壊すように
「あっ。そうそう。レイ。午前中は神川くんのスーツを一緒に選びに行ってほしいんだ。」
と明るく話した。

「え?」
「ん。」
僕の驚きの声と社長の肯定の声が同時に漏れた。

「僕は午前中どうしても外せない予定があってね。ごめんね。神川くん、初日から。」
「あ・・いえ。」

「レイが連れて行ってくれるから大丈夫だよ。今から行けるよね?」
「はい。」
社長が怖くて、なるべく2人きりになりたくない。なんて言えるはずもなく僕は答えた。

「じゃ、車手配しておくから、出かける準備して前の部屋で待っていてくれる?
レイ、今から、午後のスケジュール伝えてもいい?」

2人が話し始めたので僕は社長室を出た。

*---------------

アオがでて行くのを確認してからアキトが口を開いた。

「レイと同じ場所が反応したね。ムル因子、覚醒の初期段階。」
「ん。」
「彼をレイのそばに置くの、賭けだとは思ってたけど、悪くないね。」
「確かめる。すぐに」
「触れるの?」
「必要なら」
「でも、気を付けて。彼はこの部屋の違和感にも気づいたから。」
「わかってる。」

そう言ってレイも部屋を出た。
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