【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

文字の大きさ
13 / 68

第13話 弟の能力

しおりを挟む
次の日。
リョクを連れて社長室に向かうと、すでにアキトさんとキョウカさんが来ていた。

「おはよう。レイは向こうにいるよ。……リョクくんはここで待っててね。手続きが済むまでは入れないから」

「リョク、少しだけここで待ってて」

「うん。わかった」

アキトさんの穏やかな表情に、昨日のことを知られていないと気づいて、少しだけ胸をなで下ろす。

僕は深く息を吸って、社長室のドアをノックした。

「おはようございます」

僕がスーツに着替えるために部屋に入ったことを確認したレイは、無言でリョクのもとに行った。

*---------------

──カチャ。

ドアが開いた音とともに、リョクの目がレイを捉える。

「アオのこと、まだ『番』にはできてないんだね」
どこか呆れたような、挑発を含んだ声でリョクはレイに向かって言った。

「リョクくん、何を知ってるの?」
アキトが柔らかな声で問いかける。

「それはヒミツ。でも……紋章、まだ不安定だったし」
笑みを浮かべたまま、リョクは一歩、アキトに近づいた。

その瞬間、アキトの表情が一変する。
「っ……」
片耳を抑えて、苦しそうに眉をしかめた。

「アキトに、何をしたの!」
キョウカが即座に間に入り、リョクを強く睨む。

「大丈夫。ちょっと耳鳴りがしただけだから」
アキトが優しく言う。

「どういう意味よ?」
キョウカの語気が鋭くなる。

何も言わないリョクに向かって、

「君が『ルガル』ってこと、アオは知ってるのか?」
レイが静かに問いかける。

空気がピンと張り詰める。

「へぇ、気づいてたんだ。さすが。でもアオには言ってないよ。心配させたくないし、僕のこと守ってくれるアオがかわいいんだよね~」

リョクが笑って肩をすくめる。

「ムルだけじゃなく、ルガルにも効いているようだな」
レイの言葉に、リョクは少し驚いて言う。

「そこまでわかるんだ。ん~。どこまでできるかは試したことないんだ。でもムルのほうが、操作しやすい」

「それって……」
キョウカが言いかけたのを遮るように、リョクが続ける。

「基本、力は使わないようにしてるんだ。アオにバレたら困るし。……でも」
声が少しだけ低くなる。

「アオを傷つけるやつは、絶対に許さない」

その一言に、レイの目が細められる。

「……つまり、君がいたからアオは守られてきた」
「そうだよ。僕がアオを守ってた。アオはルガルもムルからも無条件に狙われる。攻撃っていうよりは好意的な意味合いも含めてね」

「なら、感謝しないといけないな」

「アオに選んでもらえる自信あるんだ。アオが選んだ相手なら俺は反対しないよ。でも、きっとまだ俺の方を優先してくれるよ。」

リョクは小さく笑って、突然、手にしていたカップを傾け、自分の服に、わざとコーヒーをこぼした。
「わっ!」

社長室のドアが開き、アオが慌てて飛び出してくる。

「リョク!? 大丈夫!?」
「手が滑っちゃった……ごめん」
「やけどは? 熱くなかった?」
「ううん、ちょっと濡れただけ。服が汚れちゃった」
大型犬がくぅんと反省するようにアオに助けを求めるリョク。

「僕のシャツ、貸すよ」
「ううん、大丈夫。僕、このまま寮に戻るよ。着替えたいし」
「……そう? じゃあ、下まで送るね」
「すみません。弟を送ってきます」

アオが頭を下げると、何かを思い出したかのようにリョクがポケットから小さな箱を取り出した。

「そうだ。昨日渡せなかったやつ。入浴剤、また作ったから」
「いつもの?」
「うん」

そしてもう一つの小箱を、リョクはキョウカに手渡した。

「……え?」
驚いたキョウカに、リョクはそっと囁く。

「……今日のお詫び。楽しんで」

アオの腰に腕を回し、彼の笑顔に寄り添いながら、背後の三人に向かって、リョクは静かに不敵な笑みを浮かべた。アオだけが、それに気づいていない。

「もっと欲しかったら、また作るから」
「うん。ありがとう」
「じゃあ、お兄ちゃんのこと、よろしくお願いします」
そう言って、2人は部屋を出ていった。

キョウカが唇を噛みながら、ぽつりと漏らす。
「アオくん、あの子の本性、知らないんだよね……」
「でも、リョクくんも悪い子って感じはしなかったけど」
「あんなことされたのに許すの?」
アキトのやわらかい声にキョウカが怒る。

「ただ、アオを守ってたってことは、本当だと思う」
レイの冷静な声が落ちる。

リョクがルガルであることは、レイの中でも予想通りだった。
ただ、その能力の本質は、厄介なものだと、改めて確信した。

*---------------

後日。
「リョク君にコレ渡しておいてくれる?」
キョウカさんからリョクへのプレゼントを渡された。

高級ブランドの時計だ。

「えっ。こんな高価なものは……」
「あっ。いいの。いいの。入浴剤のお礼だから」
「早速使ってくれたんですね! どうでした?」
「すごくよかった。今度は買い取るから多めに作ってって伝えてくれる?」
「ホントですか? わぁ。リョクすごく喜ぶと思います!」
「僕、リョクと一緒によく使うんですけど、アキトさんは社長と使いますか? もし使うなら僕リョクに伝えます!」

ゴホゴホっ。
「リョクくんと使ってるの?」
飲んでいたコーヒーでむせながらアキトさんが確認してきた。

「え? はい。でも今回のはいつもと色が違うんですけど」
何を言われてるかわからなくてきょとんとしてしまった。

「あっ……そういう。レイが最近疲れているみたいだからレイに渡して欲しいかな」
「わかりました!」

「レイに渡したらすごいお礼が貰えるかもよ」
キョウカの何か含んだ言い方に少し不思議な感じがした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田
BL
ドケチで貧乏な大学生の瀧本 純也は、冷徹御曹司の諏訪 冬悟に交際0日、いや、初対面で結婚を迫られる!? 契約から始まった奇妙な結婚生活は、次第に互いの心を少しずつ変えていく。 “契約から本物へ―” 愛を知らない御曹司×愛されたがりの大学生の、立場も性格も正反対な二人が、不器用に心を通わせていく、ドタバタあり、じんわり甘い、ゆるやかな日常BL。 ※最初は少し殺伐としていますが、ゆっくりと変化していく物語です。 ※男同士の結婚が、一般的な世界線となります。 ※関係性をわかりやすくするため、「嫁」や「妻」といった表現を使用しております。 ※同タイトルのpixiv版とは、加筆・修正しておりますので、若干内容が変わっております。 予めご了承ください。 ※更新日時等はXにてお知らせいたします

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

処理中です...