【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第17話 進展の前

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「はい、アキトさん。これ」

「……あっ、ありがとう」

紙袋を受け取ったアキトさんの手元に、リョクがさらりともう一つ小さな包みを滑り込ませる。

「おまけでもう一つ入れておいたんだ。試してってキョウカさんに伝えて?」
「えっ?」
微妙に赤くなったアキトさんの顔に、リョクはにっこりと笑う。

「あっ、入浴剤持ってきたの? キョウカさん、すごく気に入ってたよ」

「うん。キョウカさんのために持ってきたんだ。アオは使った?」
「ごめん、まだ。今日使おうかな」
「あっ、じゃあ今日はこっちを使って。元気が出ると思うから」

さっき会ったことを心配してくれるリョクの気持ちが嬉しい。

「わかった。じゃあ、さっそく今日使ってみるね」

「うん! じゃあ、僕はそろそろ行くね。アオが泊めてくれないし~」

わざと拗ねているふりをしたリョクは、ふと何かを思い出したように足を止め、社長室のドアを開けた。

「——あ、社長。今日は早く帰って、アオをお風呂に入れてあげてね」

「ちょ、ちょっと!? お風呂は一人で入れるよ!!」
僕だけが状況を理解していないみたいで、一瞬、部屋の空気がピタッと止まる。

リョクはくすくす笑いながら僕の肩を抱き寄せて、ぎゅっと抱きしめる。

「こういうところがいいんだよね~、アオって」

そんな意味不明な一言を残して、満足そうに去って行った。

「もう……僕、一人でお風呂入れるのに。すぐからかうんですよ、リョクは」

半ば呆れて同意を求めたものの、袋の中を確認していたアキトさんは「ん? ああ、そうだね」と上の空な返事。

何か気になることでもあるのかな?

その頃、リョクは会社の玄関を出たところで、黒い服を着た見知らぬ男とすれ違っていた。リョクの目がふとその男に向けられ、ちょっとした違和感を感じる。けれど、足早に去って行く彼を追いかけることはしなかった。

*---------------

僕は、いつものようにアタッカーとしての作業を進めていた。

痕跡?

ファイルのアクセスログに、妙な揺らぎを見つけた。誰かがアクセスしようとして——諦めた? いや、違う。わざと痕跡を残している?

これは……すぐにアキトさんに報告する。

「ありがとう。確認はこっちで進めるから、アオくんは定時で帰って」

「でも……」ログが気になってしまう。

「帰る」というレイの声。

「え? あっ、でも僕、ログが気になるので仕事……」

「帰る」

「でも……」

「アオくん、今日は帰って。明日来られたら指示出すね」

ん? 来られたら……? どういうこと?

まさか、リョクの言葉を真に受けてるの?

「僕、一人でお風呂に入れますけど?」

……その言葉に、返事はなかった。
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