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第22話 お願いごと
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「今日の夜は絶対にパーティーに出席してほしいって言ったでしょ!?」
キョウカさんが、いつになく声を荒げていた。
「行かない」
どんなにイライラされても、まったく動じる気配のないレイ。淡々としたその態度に、逆にキョウカさんの怒りがヒートアップしているようだった。
——あの二人って、喧嘩するんだ。「番」になれば喧嘩なんてしないものかと思ってたけど、違うんだな。
痴話喧嘩……夫婦みたい。
胸が、ズキリと痛んだ。そんな自分をなだめながら、ふたりのやり取りを黙って見ていた。
……ぼんやりしていると、ふいにキョウカさんと目が合った。
——しまった、見てるのバレた。
慌てて目を逸らした瞬間、キョウカさんが駆け寄ってきた。
「アオくん! 今夜のパーティー、絶対に行かなきゃいけないの。お願い、レイを説得して!」
「え……僕がですか?」
「今から自分の会社に戻るから、結果はアキトに連絡して。お願いね? 絶対よ!」
そう言い残して、バタン! と社長室のドアを勢いよく閉めて出ていった。アキトさんがキョウカさんをなだめる声が遠くから聞こえる。どうやらそのまま送っていくようだった。
僕はそっとレイに声をかけた。
「社長?」
反応がない。
「……レイ? 今日の予定って、すごく大事だってアキトさんからも聞いてるよ?」
それでもレイは顔を上げない。いつになく、頑なな態度だ。
……うーん。
少し考えてから、そっとレイのそばに行き、耳元で小さく囁いた。
「レイ?」
ようやく顔を上げたレイの唇に、スタンプキスをした。ふふふ。驚いてる。
「僕がスーツ選ぶよ? だから、今日のパーティー出席して?」レイは僕がキスをすると、たいていお願いを聞いてくれる。
「……もう一回」
「え?」
不意を突かれた瞬間、頭を抱き寄せられて、そのまま深く口づけられた。
「んっ……ちょ、待って。ここだと……」
「じゃあ、向こう行く?」
「だ、だめ。今仕事中……!」
「……これも仕事」
「ま、待って。パーティには行く?」
「…………」
「行くって約束してくれたら——」
「約束したら?」
「……今じゃなくて、今日の夜……たくさん、しよ?」
「……たくさん……?」
「今するんだったら仕事中だし、1回だけだよ。それに夜はなし」
「…………」
「どうする?」
「……パーティーに行く」
「ほんと?」
「アオ、言う事聞くから、もっとキスして」そう言って深く長い、キスを交わした。
アキトさんに連絡を入れると、パーティーへの出席準備が終わったところでキョウカさんが飛び跳ねるように社長室へ戻ってきた。
まっすぐレイに抱きつくのかと思ったら——まさかの、僕に盛大なハグ。さらに頬に何度もキスまで。
「ん~っ、さすがアオくん、大好き!」チュッ。チュッ。あまりの勢いに、固まる僕。
その様子を見ていたレイの眉が、ほんの少しだけピクリと動いた。静かに、怒ってる。
アキトさんが慌ててキョウカさんを引き剥がして、ようやく解放された。
みんながパーティーへ出発しようとしていたそのとき、リョクが顔を出した。
「あれ? リョク、どうしたの?」
「ん? アオ、今日残業でしょ? レイさんから『アオと一緒にいて』って連絡あったんだ」
「もう、僕、ひとりでも大丈夫なのに」
「ん~。まだ完全じゃないし、不安定だからだよ」
「不安定? 何が?」
「え? あっ、仕事。仕事だよ。トラブルが来るか来ないかっていう話」
「あっ、そっか」
「じゃあ僕、前の部屋のソファでゲームしてるから。何かあったら呼んでね」
そう言って、リョクは軽く手を振って部屋を出ていった。少しだけ静かになった空間。僕はもう一度、トラップログの動きを確認する。この静けさの裏で、何かが動き出している気がしていた。
キョウカさんが、いつになく声を荒げていた。
「行かない」
どんなにイライラされても、まったく動じる気配のないレイ。淡々としたその態度に、逆にキョウカさんの怒りがヒートアップしているようだった。
——あの二人って、喧嘩するんだ。「番」になれば喧嘩なんてしないものかと思ってたけど、違うんだな。
痴話喧嘩……夫婦みたい。
胸が、ズキリと痛んだ。そんな自分をなだめながら、ふたりのやり取りを黙って見ていた。
……ぼんやりしていると、ふいにキョウカさんと目が合った。
——しまった、見てるのバレた。
慌てて目を逸らした瞬間、キョウカさんが駆け寄ってきた。
「アオくん! 今夜のパーティー、絶対に行かなきゃいけないの。お願い、レイを説得して!」
「え……僕がですか?」
「今から自分の会社に戻るから、結果はアキトに連絡して。お願いね? 絶対よ!」
そう言い残して、バタン! と社長室のドアを勢いよく閉めて出ていった。アキトさんがキョウカさんをなだめる声が遠くから聞こえる。どうやらそのまま送っていくようだった。
僕はそっとレイに声をかけた。
「社長?」
反応がない。
「……レイ? 今日の予定って、すごく大事だってアキトさんからも聞いてるよ?」
それでもレイは顔を上げない。いつになく、頑なな態度だ。
……うーん。
少し考えてから、そっとレイのそばに行き、耳元で小さく囁いた。
「レイ?」
ようやく顔を上げたレイの唇に、スタンプキスをした。ふふふ。驚いてる。
「僕がスーツ選ぶよ? だから、今日のパーティー出席して?」レイは僕がキスをすると、たいていお願いを聞いてくれる。
「……もう一回」
「え?」
不意を突かれた瞬間、頭を抱き寄せられて、そのまま深く口づけられた。
「んっ……ちょ、待って。ここだと……」
「じゃあ、向こう行く?」
「だ、だめ。今仕事中……!」
「……これも仕事」
「ま、待って。パーティには行く?」
「…………」
「行くって約束してくれたら——」
「約束したら?」
「……今じゃなくて、今日の夜……たくさん、しよ?」
「……たくさん……?」
「今するんだったら仕事中だし、1回だけだよ。それに夜はなし」
「…………」
「どうする?」
「……パーティーに行く」
「ほんと?」
「アオ、言う事聞くから、もっとキスして」そう言って深く長い、キスを交わした。
アキトさんに連絡を入れると、パーティーへの出席準備が終わったところでキョウカさんが飛び跳ねるように社長室へ戻ってきた。
まっすぐレイに抱きつくのかと思ったら——まさかの、僕に盛大なハグ。さらに頬に何度もキスまで。
「ん~っ、さすがアオくん、大好き!」チュッ。チュッ。あまりの勢いに、固まる僕。
その様子を見ていたレイの眉が、ほんの少しだけピクリと動いた。静かに、怒ってる。
アキトさんが慌ててキョウカさんを引き剥がして、ようやく解放された。
みんながパーティーへ出発しようとしていたそのとき、リョクが顔を出した。
「あれ? リョク、どうしたの?」
「ん? アオ、今日残業でしょ? レイさんから『アオと一緒にいて』って連絡あったんだ」
「もう、僕、ひとりでも大丈夫なのに」
「ん~。まだ完全じゃないし、不安定だからだよ」
「不安定? 何が?」
「え? あっ、仕事。仕事だよ。トラブルが来るか来ないかっていう話」
「あっ、そっか」
「じゃあ僕、前の部屋のソファでゲームしてるから。何かあったら呼んでね」
そう言って、リョクは軽く手を振って部屋を出ていった。少しだけ静かになった空間。僕はもう一度、トラップログの動きを確認する。この静けさの裏で、何かが動き出している気がしていた。
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