【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第26話 番になって初めての朝

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まどろみの中、ふわりと柔らかい香りが鼻をくすぐった。
温かくて安心する匂い。レイの匂いだ。

「……ん」
僕が目を開けるより早く、腕がぎゅっと腰を引き寄せた。

「おはよう、アオ」
低く甘い声。ベッドの中、僕を抱きしめているレイの顔がすぐそばにあった。
僕の髪にレイの唇が触れる。
「……レイ」
「ん?」
唇は僕の髪に触れたまま。
「くすぐったい」
「ダメ?」
「……いいけど」
「もうちょっと。このまま」
「ん。わかった」
いつになく甘えるレイがかわいい。

レイの指先が僕の髪を撫で、額にキスを落とす。
それから頬、鼻先、唇——ひとつずつ確認するように。

「アオ」
愛おしそうに呼ぶレイの声がくすぐったい。

「恥ずかしい」

「名前呼んで」

人ってこんなに甘くなるのか? 別人というほどの甘さだ。
こんな姿、他のみんなが知ったら驚くだろう……というか見せたくない。
僕ってこんな独占欲があったんだ。

「レイ、もう僕、無理だよ」

「今日は休みだし、昨日たくさんするってアオが言った」
そう言って、僕の頬に唇を落とすレイ。

朝の陽ざしに照らされて、彼の瞳がいつもより優しく、どこまでも甘やかに揺れていた。
「アオ、いい?」
そんな甘い顔をされて、僕が拒めるはずがない。
「レイってそんなわがままだった?」

「うん」

番になった初めての朝は——
レイの甘えと愛しさに包まれていると思ったのに、激しい独占欲の塊に溺れていった。

目が覚めた時には、ベッドの上にレイの姿はなかった。

でも、僕が起きたのに気づいたのか、すぐにベッドまで水を持ってきてくれた。

「はい」
「ありがとう」
声を出しすぎて喉がひどく乾いていた。
ゴクリと水をひとくち飲む。

「大丈夫?」
心配そうに聞くけれど、大丈夫なわけがない。
こんなふうにしたのは、ほかでもない、心配そうにしている本人なのに。

「無理。動けない。もうしばらくしない」
不貞腐れている僕を愛おしそうに見る。

もう動く力もない。

「これ、リョクが作ってくれたやつ。体を癒す効果があるから」
リョクの名前を聞いて僕の気持ちが沈んだ。

「カナメってどういう人」

「リョクは大丈夫。どちらかというと……カナメのほうが……」

「え? なんて言ったの?」

お風呂から上がり、いつものようにレイにもたれて髪を乾かしてもらっている。
レイが乾かしてくれる間、僕はカナメの情報が入ったタブレットを見ていた。

-------------------------------------------
御香カナメ(オコウカナメ)27歳 
ムル(+)番(-)
幼少期にムル候補とわかり、宿舎に入る
その際、番候補から暴行を受ける
その後、宿舎から姿を消す
独自で情報を集め、依頼があればどんな仕事も引き受けていた
素性はそこまで詳しく追えていない
-------------------------------------------

ドライヤーの音が止まる。
「うちのデータベースに侵入形跡はあったけど、データを盗む痕跡はなくて、自分の実力を試す様子だったからアキトに対応は任せてたんだ」
レイが詳しく教えてくれる。

「じゃ、アキトさん的にはあの侵入がこの人だってわかってたってこと?」
「まぁ、その上で何がしたいかを確かめたかったってところかな」

「どうしてリョクはこの人と一緒に逃げたんだろう。何かされてないかな」
「まぁ、何かされているというよりはしてる側だと思うけど」

「え?」

「なんでもない。でもリョクは無事だと思う。今日アオ宛にボディクリームが届いていたから」

「リョクから?」
「うん。塗ってあげる」

レイはボディクリームを僕の指先に塗り始めた。

「あっ……ほんとだ。これ、リョクのだ」
「わかるんだ」
「うん。リョクがいつもしてくれてたから」
「いつも?」
「え? うん。僕が疲れていた時にいつも塗ってくれてたんだ~」
「へぇ」

「ちょ……もう。そこまで」
止めようとしてレイの方を向いた時、レイの首元から甘い香りがした。

「あれ? レイ? 何か塗った?」
「あぁ。リョクからもらったやつ。気になる?」

「ん~。なんか甘い」

「アオ?」
不思議そうにレイが聞いてくる。
その甘い匂いが気になり、体勢をレイの向きに変えてクンクン嗅いでみた。

「待って。アオ。それ以上は……」
「ん? うん。もうちょっと。レイは僕にボディクリーム塗ってて」
「……わかった。アオ? しばらくはしないって言ったよね?」
「うん。言ったよ」

そう言っていたけれど、僕のこの行動がレイに火をつけてしまったことは言うまでもない。
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