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第30話 2人の色香
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「あれ、逆効果だろ」
カナメが呆れたようにアキトへぼそりと告げる。
視線の先には、惜しげもなく色香を漂わせるアオが立っていた。
今日は新事業「イナンナ・ギ・アグ」の発表日。『香りで真実の愛を求める」というコンセプトで立ち上がったそのブランドは、イルジオン社長が愛用しているというだけで宣伝効果は抜群だった。さらにルガルとムルの間では「特別仕様があるらしい」という噂が飛び交い、それを求める人たちが躍起になっている。
本来ならリョクやカナメが登壇するのが自然だが、カナメは目立つことを嫌い、リョクも開発に影響が出るのを避けたかった。結果、レイが登壇し説明を務めることになった。
その様子を少し離れた場所から見つめるアオ。本人は社長秘書としての役目を果たしているつもりだが、会場の視線は違った。儚さを帯びた美貌に、不釣り合いなほど艶やかな色気を放つその姿が、人々の目を惹きつけて離さない。
レイは牽制のつもりで、アオの体に自分の印をつけた。だが一般人にはそれが『レイの香り』だとは分からない。ただ、美しい存在がそこにいる——その事実だけが会場をざわつかせていた。
「でも、カナメさんもなかなかですけどね」
アキトが小声で笑う。
「お……俺は——」
「ふふふっ。カナメは俺のものだもん」
焦るカナメを、リョクが余裕の笑みで抱き寄せる。
「この浮かれポンチな二組、なんとかならないのかしら? 私たちを見習って自重してほしいんだけど?」
キョウカの大人びた一言が鋭く飛ぶ。
「で、アオくんの二つ目の紋章、分かった?」
「今探してるけど、なかなか……カナメさんの方は?」
「こっちもまだ、これといった情報は……」
「でもアオは気づいてないけど、誰かが近づいていてアオも好意がある可能性があるってことだよね?」
全員の視線が、自然とアオに向かう。だが当の本人は壇上のレイを見つめ、こちらの気配には全く気づかない。
やがてレイの挨拶が終わり、アオのもとへ向かおうとするが、「イナンナ・ギ・アグ」の情報を求める質問攻めに遭い、足止めされてしまう。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
アキトが足早にレイのもとへ向かい、その後をキョウカが追う。
一方、アオの周囲にもいつの間にか人だかりができていた。
「あ……あの、イルジオンの関係者の方ですか?」
「は……い」
「今回の新事業、とても魅力的ですね」
「ありがとうございます!」
にっこりと笑うアオの笑顔に、周囲の人間は一瞬で魅了される。
「もっと詳しくお話を……こちらで」
「いや、私と——」
口々に誘いが飛び交う。
「やば……アオが」
リョクが呟いたのと同時に、カナメが人垣をかき分けてアオのもとへ駆け寄った。
「アオ? 大丈夫?」
「あっ……カナメさん」
安心したように微笑むアオ。だが、カナメも同じくらい色気が駄々洩れだったことを忘れている。
会場の空気が変わる。アオとカナメが並んで立った瞬間、周囲の視線が一斉に吸い寄せられた。
アオの柔らかくも芯のある微笑みと、カナメの落ち着いた佇まい。それぞれが纏う雰囲気が甘い香りのように混ざり合い、ゆっくりと空間全体を満たしていく。
二人は何も特別なことをしていない。ただ並んで立っているだけ。それだけで、まるで見えない香気が漂うように、男女問わず息を呑み、視線が二人に吸い寄せられていく。
「……誰? あの二人」
「モデル? いや、もっと……何か、違う」
会場にいる者たちの目には、二人が光を纏っているように映っていた。小声で交わされる囁きが、あちこちから聞こえ、波紋のように広がる。
視線を逸らそうとしても逸らせない。
その多くの視線にアオは少し戸惑い、カナメは視線の熱を感じながらも余裕を崩さず口角を上げ、その場を去ろうとしていた。
カナメが呆れたようにアキトへぼそりと告げる。
視線の先には、惜しげもなく色香を漂わせるアオが立っていた。
今日は新事業「イナンナ・ギ・アグ」の発表日。『香りで真実の愛を求める」というコンセプトで立ち上がったそのブランドは、イルジオン社長が愛用しているというだけで宣伝効果は抜群だった。さらにルガルとムルの間では「特別仕様があるらしい」という噂が飛び交い、それを求める人たちが躍起になっている。
本来ならリョクやカナメが登壇するのが自然だが、カナメは目立つことを嫌い、リョクも開発に影響が出るのを避けたかった。結果、レイが登壇し説明を務めることになった。
その様子を少し離れた場所から見つめるアオ。本人は社長秘書としての役目を果たしているつもりだが、会場の視線は違った。儚さを帯びた美貌に、不釣り合いなほど艶やかな色気を放つその姿が、人々の目を惹きつけて離さない。
レイは牽制のつもりで、アオの体に自分の印をつけた。だが一般人にはそれが『レイの香り』だとは分からない。ただ、美しい存在がそこにいる——その事実だけが会場をざわつかせていた。
「でも、カナメさんもなかなかですけどね」
アキトが小声で笑う。
「お……俺は——」
「ふふふっ。カナメは俺のものだもん」
焦るカナメを、リョクが余裕の笑みで抱き寄せる。
「この浮かれポンチな二組、なんとかならないのかしら? 私たちを見習って自重してほしいんだけど?」
キョウカの大人びた一言が鋭く飛ぶ。
「で、アオくんの二つ目の紋章、分かった?」
「今探してるけど、なかなか……カナメさんの方は?」
「こっちもまだ、これといった情報は……」
「でもアオは気づいてないけど、誰かが近づいていてアオも好意がある可能性があるってことだよね?」
全員の視線が、自然とアオに向かう。だが当の本人は壇上のレイを見つめ、こちらの気配には全く気づかない。
やがてレイの挨拶が終わり、アオのもとへ向かおうとするが、「イナンナ・ギ・アグ」の情報を求める質問攻めに遭い、足止めされてしまう。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
アキトが足早にレイのもとへ向かい、その後をキョウカが追う。
一方、アオの周囲にもいつの間にか人だかりができていた。
「あ……あの、イルジオンの関係者の方ですか?」
「は……い」
「今回の新事業、とても魅力的ですね」
「ありがとうございます!」
にっこりと笑うアオの笑顔に、周囲の人間は一瞬で魅了される。
「もっと詳しくお話を……こちらで」
「いや、私と——」
口々に誘いが飛び交う。
「やば……アオが」
リョクが呟いたのと同時に、カナメが人垣をかき分けてアオのもとへ駆け寄った。
「アオ? 大丈夫?」
「あっ……カナメさん」
安心したように微笑むアオ。だが、カナメも同じくらい色気が駄々洩れだったことを忘れている。
会場の空気が変わる。アオとカナメが並んで立った瞬間、周囲の視線が一斉に吸い寄せられた。
アオの柔らかくも芯のある微笑みと、カナメの落ち着いた佇まい。それぞれが纏う雰囲気が甘い香りのように混ざり合い、ゆっくりと空間全体を満たしていく。
二人は何も特別なことをしていない。ただ並んで立っているだけ。それだけで、まるで見えない香気が漂うように、男女問わず息を呑み、視線が二人に吸い寄せられていく。
「……誰? あの二人」
「モデル? いや、もっと……何か、違う」
会場にいる者たちの目には、二人が光を纏っているように映っていた。小声で交わされる囁きが、あちこちから聞こえ、波紋のように広がる。
視線を逸らそうとしても逸らせない。
その多くの視線にアオは少し戸惑い、カナメは視線の熱を感じながらも余裕を崩さず口角を上げ、その場を去ろうとしていた。
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